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所澤 秀樹: 鉄道会社はややこしい (光文社新書)
相互直通、上下分離、共同使用駅など、鉄道会社間のややこしい関係を趣味的に解き明かしたマニアックな1冊です。序幕で東青森駅の変なゴミ箱を取り上げていますが、この駅に関わる鉄道事業者は全部で5社+線路保有者の青森県という複雑さです。詳しくは読んでのお楽しみですが、国鉄改革に絡んで制度が変わったことが、鉄道会社間の関係を複雑化している現実をよく反映した内容です。お勧めです。 (★★★★)小牟田 哲彦: 鉄道と国家─「我田引鉄」の近現代史 (講談社現代新書)
さまざまな大物政治家が関与した鉄道の歴史を取り上げておりますが、時代ごとの背景まで踏み込んで、比較的公平に扱っている点は好感が持てます。また南びわ湖駅や震災で被災した三陸鉄道やJRローカル線など、最近の話題も織り交ぜておりますが、その割りに上下分離や公設民営、整備新幹線などには触れず、鉄道で始まった新しい公共性の模索とは無縁の古式蒼然ぶりです。加えて中国への新幹線輸出問題では筆者の過去の一文で示した慎重論が正しかったとする自画自賛ぶりはちょっとなあという感じです。もちろん中国は問題山積ですが、他人の不幸をネタにしているような不快感は拭えません。 (★★)原田 泰: 震災復興 欺瞞の構図 (新潮新書)
震災の物的毀損額16.9兆円は嘘で、本当はせいぜい6兆円で、民間と公共の別は2:1との推計を元に、震災復興を口実とする増税の悪巧みを暴きます。正直読む進むと胸くそ悪くてつらいんですが、結局利権に群がる人が多ければ復興自体が遅れてしまう構図もあり、真に必要な被災者支援のあり方を考えさせられます。 (★★★)杉浦 一機: 激安エアラインの時代 (平凡社新書)
著名な航空アナリストによるエアライン最新事情です。全日空出資のLCCピーチが3月就航。更にジェットスタージャパンが7月、エアアジアジャパンが8月と続くLCC元年ですが、背景となる世界のオープンスカイ政策の進捗と大手レガシーキャリアの苦境で様変わりした世界の航空事情が日本にも波及したものとして説明されます。レガシーキャリアもビジネスモデルの変更を迫られ、既に運賃の弾力化はかなり進んでいますが、そのあおりを一番受けるのが、新幹線料金の弾力化が難しいJR各社であることも指摘されてます。加えて交通基本法が制定されれば、交通モード毎に縦割りだった交通政策に横串が入り、今までのように空港、新幹線、高速道路の3点セット整備はできなくなると考えられます。整備新幹線の新規着工を決めた政府の判断に疑問を呈するなど参考になります。 (★★★★★)週刊東洋経済 2012年2/25号 [雑誌]
毎年恒例となった鉄道特集です。例によって独自取材で他のメディアとは一味違った記事テンコ盛りです。中国高速鉄道の特許申請問題では、日本企業の知的財産権問題の弱点を指摘したり、そもそも新幹線は世界一ではないしローテクの塊で特段のブレークスルーもないなど、趣味誌も含めてここまで指摘できるメディアは稀有です。鉄道趣味が社会的に認知されてきた今だからこそ、鉄ちゃんもこれぐらい読みこなせないといけませんね。 (★★★★★)難波 功士: 人はなぜ<上京>するのか (日経プレミアシリーズ)
大阪出身、関西在住の筆者による<上京>意識の変遷史です。明治以来のヒエラルキー構造も「坂の上の雲」から「何気に」というところまで相対化されてきた中で、橋下市長の大阪都構想に見られる首都のバックアップという思想が出てくるところには正直違和感がありますが、日本の中央集権構造はそれほど強固なものなのでしょう。その意味で自身を「ジョーキョー者でなかった」という筆者の屈折した立ち位置が見て取れます。 (★★★)武田 元秀: ダムと鉄道―一大事業の裏側にいつも列車が走っていた (交通新聞社新書)
ダム好きで鉄道好きという筆者の初の著書です。ダムに魅せられてゼネコンに入社、後に新聞記者に転身した筆者が各地のダムと鉄道の関係を紹介し、話題の八ッ場ダムも取り上げられています。筆者は決して脱ダム派ではなく、むしろ肯定的な立場ですが、各地のダムをレポートして、黒部川や只見川などを例外として、ダム事業の説得材料とされた「周辺地域の発展」が虚構だあったことを素直に認めています。一読の価値ありです。 (★★★★)原 武史: 震災と鉄道 (朝日新書)
読んでいて眩暈を覚えたしょーもない本です。JR東日本が東北新幹線の復旧を優先してローカル線を見殺しにしているといったネガティブキャンペーンテンコ盛りです。しかも随所に事実誤認があり、いまどき2ちゃんねらーでも通用しないお粗末極まりない内容です。一応鉄道と市民社会を重ね合わせて専門の政治思想史の味付けをしてますが、社会性や共同体の原理などの考察が抜けており、結局鉄道の公共性を無批判に押し付ける鉄ちゃん的独善に陥っています。買う価値なしです。梅原 淳: 鉄道の未来学 (角川oneテーマ21)
執筆中に東日本大震災と中国高速鉄道事故があり、特に後者関連でメディア取材を受け、日本の鉄道技術の優位を語らせようとする姿勢に疑問を呈しております。そんな筆者が日本の鉄道の現状図書る愛を語ったわけですから、バラ色の未来を描いてはおりません。2011年現在の等身大の日本の鉄道の現状から敷衍して未来を語っており、辛口の部分もあります。特にリニアに関する考察は一読の価値ありです。 (★★★★★)ポール・ケネディ: 世界の運命 - 激動の現代を読む (中公新書 2114)
英国生まれの著名な米大学教授が綴る少々エキセントリックで皮肉の効いたエッセイ集です。ここで取り上げたいのは、筆者は実は鉄ちゃんで、日欧の充実した鉄道サービスに感心しつつ、アメリカのお寒い現状を憂います。北東回廊の鈍足高速列車「アセラ」でさえも、9.11以後厳しくなった空港のセキュリティチェックのおかげで利用者が増えているとかで、ブッシュ政権からオバマ政権へと続く騒がしいアメリカの姿を的確に表現しています。 (★★★★)
鉄路的部落のビジュアルな別館
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