Sunday, August 16, 2026

災害と戦争

熊本地震*1で爆発事故を起こした嘉島町のイオンモール熊本の続報です*2。郊外型SCでは災害に強いからという理由であえてLPガスを使用するとか。補充可能で都市ガスのように長期間停止となる心配がないということですが、家庭用と違って大型タンクに貯蔵して館内配管で供給されるので、配管の損傷はあり得ます。故に揺れを検知して弁で遮断する保安装置やガス漏れ警報器なども備えられているはずですが、想定を超える揺れの場合作動しないこともあり得るし、ガス漏れ警報器も比重の大きいLPガスの場合は低い位置に設置しないと検知できないなどの問題があり、その辺はとりあえず刑事責任を問わない前提での調査に委ねるしかありません。SNSでは館内に戻ったことを叩くとか、それを命じたテナント企業や許可したイオンの対応への批判もありますが、まずは原因を特定し、問題があればそれを見直して今後に生かすことが重要で、法的な責任追及はその後の話です。イキって見せても何の解決にもなりません。

そして関東では台風15号の上陸と千葉県の豪雨に見舞われました。東から西へ向かい関東直撃という台風は過去にあまり例はなく、また台風通過後もすっきりしない天気が続きましたが、結果的に台風本体よりものちの豪雨被害のほうが大きくなりました。これ特殊な気圧配置の影響だそうで*3、東南アジアの季節風と台風が影響しあってモンスーンジャイアという巨大な渦が太平洋上に出現し、大量の水蒸気を含んだ風をまき散らした結果、台風15号を生み、また湿った暖かい風を関東へ運んだわけです。動きの遅かった台風13号がもたらしたらしいのですが、関東に吹き寄せた熱く湿った風は地形の影響で上昇して上空の-6℃の寒気に触れて積乱雲を連続的に発生させて線状降水帯ととなって大量の雨を降らせたものです。千葉県に被害が多いのは、北総台地や房総半島中央の台地に中小河川が渓谷を刻む地形ゆえに、渓谷に沿って上昇気流となる訳で、24時間で300mmと8月の平年値の3倍を超える豪雨となった訳です。同様に埼玉県南部の入間や飯能、東京都でも武蔵野台地を刻む善福寺川、野川、仙川流域の警報が出されたことも指摘できます。

加えて都市排水の処理能力を超えた内水氾濫でマンホールが飛んだりアンダーパスが水没したりして被害を拡大しました。道路は寸断され鉄道もほぼすべて運休という状況になり、成田空港では足止め客600人とか。そんな中で千葉都市モノレールは正常運行を維持しました。湘南モノレールと同じサフェージュ式懸垂モノレールですが、雨や雪に強い特性が生かされました。そういえば湘南モノレールでも台風で町屋付近の土砂崩れで下道の京急バスが1か月運休したときも正常運行でカバーしました。これ京急バスの大船地区からの撤退の遠因なのかも。5月の京急バス撤退後、江ノ電バスが肩代わりしたものの、昼間2時間間隔という運行頻度はそのままで、船5諏訪ヶ谷循環は鎌倉山止まりとなり、カバーしていた西鎌倉地区から大船駅へ直接行けなくなりました。

こうした自然災害は元々多かった日本ですが、逆にそれ故に太平洋戦争も災害感覚だった為に国の加害責任を強く問われなかったということなのかもしれません。後のノーベル賞受賞日本人学者にとっての太平洋戦争がそれを示唆します*4。学究肌の湯川秀樹はすぐには役に立たない素粒子理論を極めつつ、役に立つ成果を出せないことに葛藤していたとか。アメリカも疑った秘かな核兵器開発は無かったわけですが、当時の時世の一般国民と変わらない意識だったことが見て取れます。学者だから政治的転向は意識しなかったと思いますが、多くの日本人がシレっと転向したことが三島由紀夫を皇道派のような反動に駆り立て、吉本隆明をして大衆の無責任を語る戦後世相に大学者といえども例外ではなかったということですね。今は国立大学の独法化や科研費の削減や重点化などで政府がコントロールしようとしている状況は危ういと言えます。日本学術会議の独法化も要注意です。

ってことでかなり遠回りしましたが、実は災害も安全保障の一部ですし、発生確率で言えば戦争よりも遥かに高い訳で、国民の生命と財産を守るという視点からは、自衛隊は災害出動こそ本分と言って良いですし、災害救助に期待される理由は、戦争の勝敗を分ける兵站、つまりロジスティックス能力故ということです。前線へ兵器や食料などの物資及び兵員を効率よく送り込む能力が、被災地への支援に使えるということですね。そのための現地の情報収集であり具体的な支援策でありということであり、首相の現地入りや防衛相の悪目立ちは無意味どころは被災地の足を引っ張るものですらあるということです。てことはさ、防衛費増額を防衛所予算と紐づけるんじゃなくて例えば設置法が成立した防災庁に予算を持たせて防衛費にカウントするとか、欧州でもスペインやイタリアで堂々とやっていることをすれば国民の理解も得られるし、少なくとも米国製の高価なミサイル買うよりは道理にかないます。アメリカから文句言われたら「軍民デュアルユースです」とシレっと言い放てば良いですし^_^;。H3のみちびき打ち上げ成功も防衛費に入れちゃえばよいです。

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Sunday, August 09, 2026

非対称な日米協調介入

前エントリー*1冒頭で取り上げた為替の日米協調介入について報道が出そろいました。時系列に沿って振り返ります。日本時間の7月31日早朝に第一報です*2。ドル円164円を窺うタイミングでの日銀の円買い介入ですが、ほぼ同時にNY連銀によるレートチェックが行われたこともあり、相場は大きく動いて157円台を付けました。相場はすぐに158円台から159円を窺う水準に戻りましたが、米財務省の異例の円買い介入の予告もあり*3、その後も日銀は波状介入する一方、米NY連銀はユーロ売り円買いで呼応しました*4。日銀の介入資金もFIMAレポ・ファシリティーズという外国政府等への国債担保のドル融資という枠組みを用い、NY連銀もドルを売らずユーロを売って円を買うという異例の動きです*5。

国際決済通貨ドルの信認を守るために、ドル資金の調達に行き詰まった外国政府等を救済する枠組みのFIMAレポですが、金融危機等の非常時に備えた枠組みで、1998年のアジア津優香機器時に東南アジア諸国の救済などで発動されましたが、今回はそれに匹敵する危機感がアメリは側にはあったってことです。円安なのに高市政権の積極財政姿勢は変わらず、日本が大量保有する米国債の売却を止めたかったってことですね。その結果日本はドル建て借金で為替市場にポジションをとるというリスキーなことをしでかしました。しかも波状介入で総額11.7兆円相当の介入です。介入資金はいずれ返済する訳ですが,その時にはドルを買い戻すことになる訳で、タイミングによっては為替差損が発生します。

一方のアメリカはドルではなくユーロを売って円買いした訳で、保有外国通貨の振り替えにすぎませんし、規模も1兆円程度と少なく、協調介入と言いながら非対称です。加えてECB理事の一部からは「聞いてないよー」のクレームも。それでもそれに乗らざるを得なかった日本がアメリカにせがんで実現したものではあります。そしてタイミングを合わせたように食品消費税減税の閣議決定です*6。年間5兆円の財源が必要な一方、効果は国民1人当たり年間3.6万円の減税と限定的ですし、インフレで実質便乗値上げは確実ですから、国民負担の軽減にはほとんどなりません。しかも財源に外為特会活用とか、本当に何もわかってないです。

今回の円買い介入で得た11.7兆円の円資金は外為特会の元入金調達で発行された政府短期証券の返済資金になります。利子や為替差益による剰余金は一定の会計処理後に一般財源に繰り入れられますが、とても年間5兆円レベルに達しないどころかFIMAレポのドル債務の利払いや為替リスクで減額の可能性すらあります。つまり財源にはならない訳です*7。てことでアメリカからも日本の財政悪化にクレームつけられてます*8。アメリカの財政を滅茶苦茶にしているトランプに言われるのは大概ですが、今回の協調介入が決して日本を助けた訳じゃないってことです。それなのに日本の危機感の無さは本当に心配です。

それでも円安是正が必要ということは理解しているようですが、繰り返しますが30年にわたる日本の交易条件の悪化が円安の構造的原因であって、それに対する対策は何もない以上、これからも過度な円安をアメリカに泣きついて助けてもらうしかないってことですね。そして円安はいろいろな弊害をもたらしてますが、一番の問題は外需依存の大手企業にとっては円安は最終利益のかさ上げになることから危機感が乏しいことでしょうか。そのために例えばEVで後れを取っている現実があります*9。

似たような話は鉄道でもありまして、例えば台湾高速哲翁の増備車で2回にわたる入札不調です*10。新幹線輸出のほぼ唯一の成功例と言える台湾高速鉄道で旺盛な需要で増備車投入が決まり、JR東海700S系ベースの700ST系で入札したものの予定価格を上回るということで2回の入札不調が続き、結果的には円安に救われたという事例です。台湾高速鉄道は開業までにいろいろありまして*11、欧州連合が受注して線路や信号システムは欧州方式で作られた一方、地震の多い台湾側の意向で日本の新幹線方式に変更された結果、車両はJR東海700系ベースの台湾向け車両ながら、信号その他のシステムのすり合わせに手間取って、JR東海が技術者を引き上げるといった顛末もありましたが、在来線直通を考えなくてよいことから何とか開業にこぎつけました。しかしこの経験はその後に生かされませんでした。

仏TGVや独ICEなど最初から高速新線と在来線を直通させるシステムとしたのは、元々在来線も4ft8in・1/2(1,435㎜)の国際標準機だったということもありますが、日本の新幹線が在来線と異なる規格故にネットワーク形成がうまくいっていないことを反面教師とした結果です。日本が誇る有責事故ゼロも、独自規格の箱庭鉄道(GardenRail)故と容赦ない評価で、特に外国への売り込みではコスト面で有利ということをセールスポイントにしています。逆に日本の新幹線方式は高コスト故に各国の商談で連敗続き。特に中国の高速鉄道技術のキャッチアップもあってさらに不利になっている現実があります。石破政権で売り込みに成功したといわれるインド高速鉄道も、欧州勢の巻き返しで信号システムも欧州式とすることで、E10系の売込みに暗雲が漂っています。日本のメディアはあまり報じませんが。

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Sunday, August 02, 2026

東京以外全部副首都

HONEBUTOの骨粗しょう症*1を見てられないとばかりにアメリカが手を差し伸べました*2。詳しい検証は当局の発表を待ちますが、米財務省が30日にレートチェックし、31日には円買いユーロ売りの為替介入を実施し、事実上の協調介入となりました。しかしこれ日本を助けたというよりも円の信認低下に巻き込まれて米国債が売られることをブロックしたもので、ユーロ売りで穴埋めしたのは、もはや単独で日本の財政破綻を受け止めきれないのか、ドル覇権維持になりふり構ってられないってことでしょう。

てことで本題ですが、世界的には地価上昇による住居費の高騰を受け、首都圏地域からの人口流出が世界のトレンドになりつつあります*3。コロナ禍を契機としたリモートワークの拡大も理由の1つですが、行き過ぎた人口集積がむしろ渋滞その他の経済損失を生むことから、郊外への人口移転や都市機能の分化による連邦的自律分散など、国によって異なる形ですが、例えばやはり一極集中が言われるフランスでも、パリ近郊を含むイル・ド・フランス地域で人口の域外移転が見られる一方、日本と韓国の首都圏地域では相変わらず転入超過が続いていて一極集中が止まりません。

要因はいろいろあるようですが、一つは大企業の集中で待遇面の優位があることが考えられます。実際にアンケートで「給与が高くなる」という回答が多かったようです。それでも住居費の上昇はそれをスポイルすることになりますが、それでも首都圏転入が止まらない理由の1つが首都圏と地方のジェンダーギャップも指摘されます。地方は女性の就労機会が限られるばかりか家事分担も進まず女性の流出が多いということになります。これは少子化の要因にもなります。同時に地方の最低賃金上昇で首都圏と地方の待遇差をなくす取り組みも必要ということです。こうした点を踏まえると、維新が強引にねじ込んで成立させた副首都法案は問題解決に寄与しない可能性が高いと言えます。

副首都法案自体は首都圏が大規模災害で機能を失った時に備えてレジリエンスを意図したものということで、バックアップ機能を持たせるとしていて、公共投資や民間の本社移転への税優遇や交通網の整備などが言われてます。実際熊本で10年ぶりの大地震が起きて、もしも首都圏だったら?という議論はあり得ますが、やや飛躍した議論です。というのは、首都圏の地価上昇の原因でもある再開発で、首都圏の建物は概して新しい耐震基準に準拠したものが多いという点は指摘しておきます。寧ろ水道の耐震化など地方ほど進んでいないということもあって、能登半島でもそうでしたけど、熊本でも同様の問題が起きています。

今回の地震は10年前の震源地の南西で、同じ日奈久断層の割れ残りということです。10年前の地震で割れなかった部分に逆にエネルギーが蓄積して今回割れたということです。断層が動くということのメカニズムは複雑で予見可能性はほぼありません。ということで、備えが重要なのに地方ほどそれができていない現実がある訳で、副首都とか言う前に、地方のインフラの見直しこそ重要です。実際市町村役場などの公共施設は建て替えや耐震強化が徐々に進んではいますが、問題は民間の建物で、これは首都圏でも同じですが、強度不足でも耐震強化や建て替えに至らない建物が旧市街地に残るケースが見られます。一方でイオンモールなどの郊外型モールは築年が新しいだけに耐震強度は高かったりします。故に防災拠点として自治体と協定を結んだりしていて、広い駐車場にとりあえず避難できるし、状況によっては商品を支援物資として振り替えることなども可能で、爆発事故を起こした嘉島町のイオンモール熊本は防災協定が締結されていただけに、ショックな事故です*4。爆発事故の原因はわかっていませんが、相応の強度を持った建物の床が抜けるほどの爆発事故が保安装置付き配管からのガス漏れ程度で起きるというのも考えにくいところ。まるで福島第一原発の建屋内のようなドローン映像は謎です*5。また客とスタッフの計4,500人を30分で避難させたイオンの対応はお見事です。爆発事故が想定外だったということです。

今回の被害状況のまとめです*6。日本製紙八代工場の煙突折損は長周期振動が疑われてます。東日本大進さんでも東京の高層ビル群で大きな長周期の揺れが続いたということがありましたが、軟弱地盤などで地震動を受けて共鳴した振動が起きるらしいです。豆腐を振ると遅れて大きく震えるような感じでしょうか。建物は壊れなくても中の人や物は大きく揺さぶられるわけで、高層ビルによる野放図な再開発は見直したほうが良いかもしれません。そして被災地域には多くの工場が立地しており、サプライチェーンの攪乱が問題になります*7。TSMC熊本工場は新しいだけに建物の損傷は見られない一方、精密加工故に機械設備のチューニングがボトルネックになりそうです。自動車関連は九州以外の三菱自動車水島工場の稼働停止など影響大。また八代港と九州道の被災で物流に支障が出ています*8。特に九州道では断層前後の橋脚がズレて桁に段差が生じており、復旧は時間がかかりそうです*9。鉄道は新幹線も在来線も熊本以南の復旧の見通しが立たず、八代駅構内ではJR貨物の停車中の貨物列車が横転したままだったりして、高速道のう回路としても使えない状況です。

それでも地方や民間は助け合って乗り切ろうとしてますが、政府の動きが鈍いのが気になります。例えば自衛隊輸送機でクーラー300台を送り込んだものの、電源が取れないから使えないとか、あるいは犠牲者の数が県の発表と食い違ってたりとか*10、むしろ混乱させてます。体育館の空調とか避難所のプライバシー問題とかは、毎回繰り返されてますが、法律を定めて予算取って確実に執行するのが政府の役割で、それができてないのに目先のやったふりは選挙目当てのステマかい?副首都だって首都機能移転の国会決議に基づいて1992年に国会等移転法が可決成立しているのに、徳島の消費者庁や京都の文化庁ぐらいしか動かない。というかそもそも省庁の官僚は事務屋なんだし地方局もあるし、メールやリモートの活用で非常時の職務継続は可能なはずです。最大のネックは国会だと思いますが、国会議事堂が使えない状況での暫定議事堂を指定する手順を決めるとかやりようはある訳です。一番の問題は官僚による政治家へのレクチャーの都合で国会に近いところにいないと仕事にならないってことか?政治家がまともならこうはならないでしょう。

しかし一方で今回の副首都砲では札幌、福岡、名古屋が名乗りを上げ、大阪と争う姿勢ですが、それに留まらず広島県と群馬県まで表明してます*11。かくして東京以外全部副首都wwwwww^_^;。

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Sunday, July 26, 2026

HONEBUTOが警戒される骨粗しょう症の国

AIの推中華*1で始まったAI投資への疑念をさらに高めるニュースです。オープンAIがテスト中の新型AIが他社AIにサイバー攻撃を仕掛けた暴走事故です*2。ネットと遮断された実験環境の脆弱性をAIが見つけて突破して他社AIを攻撃したというもので、しかも被害企業側からの通報で発覚したということは、オープンAIは気づいていなかったという意味で深刻な暴走です。AI開発に規制をかけなければ再発の可能性は高いと言えます。というよりも、昨今増えているサイバー攻撃の幾つかは善意のユーザーのエージェントAIの暴走の可能性もあると考えられます。

そんなAIを戦略17分野として官民投資をぶち上げる日本政府の責任ある積極財政路線ですが、そもそも日本は主要国の中でAI規制が最も緩い国と見られており、実際個人情報保護法改正で規制緩和するようなチグハグぶりを見せています*3。熾烈な開発競争を繰り広げる米中AI企業にデータを献上するだけで終わりそうな悪寒すらします。ああ家畜人ヤプー。そもそも成長企業に補助金は要らないんだが*4。そして市場の評価もどん底に沈みます*5。HONEBUTOは海外でも通じます。

そもそも日本の停滞の原因がわかってないから官民投資で供給力を高めれば成長できるし、税収増で財政は立て直せるというほとんど根拠のない思い込みをしている訳で、株価だけは上がったけれど、ほとんどキオクシアなどAI半導体関連銘柄の値上がりで、AI投資に疑念が起きれば下げてしまう結果、円安株安債券安(金利高)のトリプル安となります。円は売られ163円台*6、国債が売られて長期金利も上昇しており、また原案段階での金融政策への言及を撤回した一方、国債が売れない現実もあり、あろうことかGPIFの投資区分見直しに言及して政治介入を批判されるという恥さらしを続けてます*7。本音は為替介入したいけどアメリカに止められているし、市場からも見透かされている中で、GPIFの投資ウェート見直しで国債を買わせようとしたということで批判されてます。政治的PKOですね。年金のような巨大機関投資家を動かせば目先の相場を動かすことは可能ですが、その結果リターンが減れば寧ろ将来の年金の国庫負担が増して財政の重荷になります。

株式市場にも円安で異変が起きています*8。元々レガシー企業の存在感が高い日本市場ですが、その結果事業の見直しが進まず市場の淘汰圧も弱いから企業規模が小さく、円安も手伝って海外勢の投資妙味が薄いということが意識され始めてます。つまり株式市場をにぎわせた海外勢の姿勢に変化が見えてきているということです。寧ろ長短金利差の大きい国債投資に妙味を見出す動きが見えています。だけど喜べないのは海外勢の国債投資で保有比率が上がると、デフォルトのリスクが高まる訳で、ますます手堅い財政運営を求められます。

相対的に小規模なレガシー企業が並立して競争環境にある中で、雇用の安定を理由に賃金を抑えながら世界で戦うという言ってみれば飢餓輸出的な戦略によって90年代半ば以降の交易条件を悪化させた結果が今なわけで、円安はその結果です。だから交易条件の悪化を逆転させる必要がある訳で、賃金の上昇や社会保障の充実によって結果的に国内の購買力を高めることが大事です。その結果として停滞していた国内の民間投資が動き出すなら良いのですが、補助金などでレガシー企業を延命させるなら停滞が続くだけです。

損の意味で考えたいのが整備新幹線をめぐるこの動きです*9。これ北陸新幹線と北海道新幹線の事業費膨張で他起動新幹線は開業時期すら不明という状況にあり、また北陸新幹線と西九州新幹線のミッシングリンク解消が見通せない中で、国交省が財源確保に動いたってことです。とはいえ30年という貸付期間は開業時の設備の経年劣化による更新が必要なタイミングであり、通常のリース資産ならば割引されるところを延長し、さらに貸付料値上げまで示唆している訳です。事業費の膨張やミッシングリンク解消や地元負担に対する不満など、30年間で顕在化した問題点に対して安易な手段で財源だけは確保しようという事なかれ主義です。申し訳ないけどこんなことで人口減少下で需要も細るこれからの整備区間の事業化はほぼ不可能です。

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Sunday, July 19, 2026

AIの推中華

これもAIあれもAIたぶんAIきっとAI♪^_^;。AI相場総崩れになりました*1。すわDeepSeekショック再現?*2と思いきや、それだけじゃない様々な要因がかかわります*3。AIブームでデータセンター投資が活発化してエヌビディアのGPUのみならずメモリーも需要急増、建設関連でキャタピラーなど建機メーカー、電力需要増で電力会社、原発再稼働で原子力産業と投資のすそ野が広がる中、米アンソロピックのフェイブルに劣るものの僅差しかもオープンソースで安価だし先端品禁輸で性能の劣る半導体を使って安上がりだし、メモリー高騰で中国メーカーが参入してという形で新たなシリコンサイクルに直面して日韓台の半導体メーカーもトバッチリ。米テック企業の寡占が崩れて元々行き過ぎが心配されていたデータセンターや半導体をめぐる巨額投資が見直しを迫られたわけです。

TACOエントリー*4の個人情報保護法で分かりにくい見せかけの規制緩和とか見当違いのことばかりの日本の成長戦略が役に立たないことだけは確かです。米テック企業の下請けに甘んじながら株価を爆上げし、一時トヨタを抜いたキオクシアも時価総額半減となりました。ムーアの法則で微細化が進んだ半導体ですが、競争市場で最先端品のサプライヤーはTSMCなど少数に絞られ、日本勢は市況品の汎用チップのレッドオーシャンにどっぷり浸かっていたわけで、微細化の限界が見えてきて、複数のチップを組み合わせて機能を高める後工程に比重が移る中で、日本勢は有利と言われましたが、アメリカの輸出制限で最先端品が手に入らない中国は国策で国産化にまい進し、日本がもたもたしてる間に最先端ではないけどAIに使えるチップの国産化を進めてアメリカに追いついてきている訳です。

EVで成功している中国の功利主義的市場型計画経済*5がAIでも機能しています。但しAIでは僅差でアメリカには追い付いていないものの、資金力頼みの力技のアメリカに対して、後追いゆえに同じことをもっと安くできるという非対称競争になっていると言えます。そしてエネルギー争奪戦でも同様のことが起きています。停戦中なのに戦闘が止まらないホルムズ海峡が事実上再封鎖され、油田や製油所などが空爆されて中東の生産能力も減っている中で、イラン産原油が手に入らない中国も同様に苦しいとはいえ、調達先の多様化進んでいるし、そもそもEVが普及しているし、プラスチックや化学繊維などもナフサ以外の代替原料へシフトしている一方、アジア各国が原油や石油製品、LNGのアメリカからの代替調達を増やした結果、アメリカではガソリン価格が跳ね上がって国民の不満がたまっています。中間選挙の年にトランプ大統領は窮地です。そのためEVがまた見直されているとか。

石油製品のサプライチェーンではウクライナ軍によるロシアの石油施設空爆の影響で軽油などの輸出が止まったりと、こちらでも異変が起きていて、また世界規模の製油所の能力が減った分、米製油所のマージン拡大でガソリンや軽油の価格を押し上げてもいます*6。それでもEV普及率の高い中国は涼しい顔ですし、電力料金の安さはAI学習のスケーリング則の面でも有利です。電力の主力は国内炭による割安な石炭火力ですから脱炭素的には問題あるんですが、太陽光や風力といった再生エネルギーや原子力などのエネルギーミックスで安価で安定した電力を実現しており、地政学リスクに強いということで、日米欧の苦境をしり目に安定しています。加えてロシアのシベリアガス田開発で欧州の販路を失って中国向けのガスパイプライン整備の計画から中国が下りてロシアは苦境ですが中国は我関せず。確かに不動産バブル崩壊による内需不振でも積極投資は続いており、この点は日本のバブル崩壊後とは大違いです。

あと軍備増強が周辺に圧力を与えているといわれる中国ですが、GDP比1.7%を堅持しており、経済成長に連動しているだけです。しかしその結果周辺国は対抗策を取らざるを得ないのも確かで、アメリカを当てにできない日本やNATO諸国は軍備増強の財源確保に苦しんでいます。こうした状況で中国と敵対することが現状いかにリスキーかということは言えます。アメリカだって結局対中貿易を増やしてますし。少なくとも中国は日本のような失われた30年のようにはならないことは確かです。逆に出口の見えない日本の失われた30年は失われた21世紀になりそうです。

整備新幹線関連で動きがあります。西九州新幹線の佐賀県エリアで長崎県の負担を前提に合意しました*7。国とJR級数うが佐賀駅ルート(新鳥栖駅接続)、佐賀県が佐賀空港ルート(舟子屋温泉接続)と別れており、両論併記の方で環境アセスメント手続きを取ってルートと事業費を確定するという形で異例ですが、こうして対立を乗り越えて着地点を探ることは重要です。長崎県知事も負担受け入れを「在りうる」としています*8。新幹線のミッシングリンク解消に動き出したことは評価できます。

佐賀と滋賀で「詐欺だ!」*9でも取り上げましたが、ミッシングリンク解消という観点から言えば北陸新幹線も米原ルートが事業費が少なく早期に開業できるという観点で優れており、小浜京都ルートとの比較で言えば桂川ルートで5.5兆円に対して米原ルート一部直通で2.7兆円、乗換で1.7兆円と半分以下です。しかも積算根拠が公開されていませんから推測ですが、米原ルートの直通と乗換で1兆円の差が出るというのは考えにくく、一体評価の小浜京都ルートの優位性を示すためにする数字の可能性もあります。

加えて言えば高速道路などでは一体評価はすでに行われているそうですが、これいくらでも数字を盛れるということは指摘しておきます。公費投入、しかも地方負担があるがゆえに、保守的な個別評価で数字をはじいて判断するのが本来で、ネットワークがつながることでの上振れ分はあえて計算に入れないのが本来です。結局政治が干渉して判断を間違い意思決定されてしまうということの積み重ねが、失われた30年をもたらしたと言えます。

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Sunday, July 12, 2026

DOGEな猿真似も見苦しい日本のTACO

国会終盤の空転解消で動き出した国会ですが、熟議とは程遠い強引さはTACO(Takaichi Always Charenges Official)*1そのもの。人の話を聞かず答弁を勝手に変える高市首相を国会に出したくない与党は結局数の力で強引に一転突破するしかないわけです。あれこれ突っ込みどころ満載ですが、ここでは2点だけ指摘します。

まずは皇室典範改正ですが、憲法で定義された国民統合の象徴からかけ離れた議論で決着しました*2。産経を除く新聞各紙は審議を尽くさない国会運営に苦言を呈します。これ事実上の憲法解釈の変更ですからね。世論もその点は政権に逆風です。にも拘らず付帯決議で歯止めを狙った中道改革連合が与党に突っぱねられたにもかかわらず賛成に回ったことは禍根を残します。逆に与党の強引な国会運営を批判するチャンスだし、立憲と公明の3党合流で大きな塊を作って政権交代を目指すんじゃなかったのか?

あと個人情報保護法改正案ですが、専門家も警告を発しています*3。経済界からのAI学習のデータ活用で、個人データの利用に本人同意が必要で、匿名化も含めて手間とコストがかかることから規制緩和が求められたものですが、政府はそれに対して情報類型を増やして対応した結果、対応が寧ろ複雑化しますし、漏洩の心配から利用が忌避されることもあります。KDDIのメールアカウント不正アクセスとパスワード漏洩のように*4外部からのアタックや、そもそも企業の法令順守がいい加減だったりということもありますし、仮に漏洩したり利用目的を逸脱しても、個人レベルでは察知できませんし、AIで容易に名寄せされてしまうことになります*5。規制緩和を求めた企業も戸惑っています。

拙速な政権運営は例えばこんなところにも表れてます*6。官僚の言うことを聞かないTACO政権ですが、寧ろ易々と官僚に操られている実態があります。熟議を経て対立を乗り越えた一致点という意思決定の正当性がないからこういうことになる訳です。正当性で官僚を抑えられない。それが如実に表れたのが骨太ショックですが*7。同エントリーで取り上げた京成電鉄の新型特急の続報です*8。京成はスカイアクセス線の部分線増も予定しており、千葉ニュータウン中央~印旛日本医大間で並行する成田新幹線の路盤活用でスカイライナーなど有料特急を160km/hで走らせることで、スピードアップと増発を図るものです。

てことで成田新幹線の遺構の活用となります。元々都心から遠い成田空港のアクセスに新幹線を建設する国策だったもので、成田闘争で遅れた成田空港の建設に併せて成田線分岐点の土屋~成田空港間の路盤とトンネルと空港第2ビル、成田空港の駅部は作られていたわけですが、その煽りで京成電鉄の成田空港線はルートが被るといういことで現在の東成田駅からバス連絡でターミナルビルへ向かうという形で建設され開業しました。しかしせっかく作られた成田新幹線の遺構を活用すべきじゃないかということで、国鉄と京成で争った結果、当時の石原慎太郎運輸相の裁定で単線並列で双方がシェアする形に落ち着きました。

それとは別に成田新幹線の都心側ルートを活用したルート案も提案され、現行京葉線都心ルートから都市計画8号分岐線(有楽町北進線)ルートで押上に至り、押上線から北総ルートで成田空港へ向かうというものでした。結局実現はしなかったものの成田新幹線の遺構活用は模索されて、のちに成田スカイアクセス線として実現した訳です。国家プロジェクトに依拠しながら実現しかかった部分を乗っ取った形です。報道では京成の成田湯川からの新線は高架で新ターミナルに乗り入れる形のようですが、結果的にかつて成田空港駅を名乗った東成田既に近接します。この辺の詳細はまだ報じられておりませんが、芝山鉄道がどうなるかなど絡みます。

そして千葉県と関連9自治体には課題ものしかかります。成田空港拡張で土地収用制度活用で成田エアポート(NAA)に同意しました。県も自治体も成田闘争の記憶から及び腰でしたが、国策ということで渋々同意したものです。用地買収交渉は県と自治体が担うわけです。高齢化や代替わりで穏健化しているとはいえ、国との戦い方の経験値が高い地権者との交渉は簡単ではないでしょう。となると地元への見返りの位置づけの芝山鉄道に何か動きが出る可能性はあります。九十九里延伸までは無理でも若干の路線延長や増発はあるかもしれません。いずれにしても強引なやり方では話は進まなくなるということは言えます。TACOじゃダメなんです。

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Saturday, July 04, 2026

骨太ショックで複雑骨折

前エントリー*1のタイトルで「正体」のつもりで「招待」に誤変換^_^;。しかし内容と齟齬がないのでこのままで訂正はしません。ポピュリズムを呼び込む政治状況は日本に留まらずBrexitやトランプ現象も同様です。結局政治のエンタメ化で絡めとられるどうしようもない現実だけは続きます。

てことで本題に入る前にBusRama最新刊(216号)で和田編集長がEVMJ問題でコメントを載せてます*2。ザックリ言えば地獄への道*3で述べた中国EVのアジャイル開発の波に吞まれて、工業製品につきものの初期不良対策ができていなかったということです。一方でネットで炎上した中国製で詐欺だとか選定プロセスの疑義などは踏み込まない慎重さで好感が持てます。特にブレーキホース損傷などのリコール案件は、修理すれば使用可能だった車もあったはずですが、自動運転社会実験用40台を含む全190台の減損処分には疑義を呈していて大手メディアにはない視点を提供しています。大阪では議会で突き上げられており、まるで証拠隠滅でもするような全車処分はむしろ意思決定過程を不透明にします。少なくとも失敗を認めて教訓を後世に残す姿勢ではありません。これサナエトークンやt中傷動画問題と似ています。

てことで本題ですが、経済財政諮問会議の骨太の方針が発表されました。予想通りの積極財政路線ですが、市場は早速反応しています*4。3日の債券市場で長期金利の指標となる10年物国債金利が一時2.81%をつけて3%をうかがわせる動きとなりました。また金利上昇観測から2日に2.7%で実施された国際入札は不調で、原因は政府が日銀の利上げに消極的なことで円安が進むと市場が見た結果です。利上げしても円安といっても、欧米の金利水準よりかなり低い上にインフレ補正の実質金利は相変わらずのマイナス圏ですから、日本国債を積極的に買う理由がない訳です。

やや長くなりますが、日本経済の複雑骨折ぶりがあぶりだされました。先月の日銀の利上げは予想通りだったけど、政府は難色を示していました。上田総裁は政権の圧にやや弱気だったようですが、病気の治療を理由に異例の政策決定会合欠席となりましたが、審議委員5名が利上げ賛成を表明していましたから利上げは既定路線だったといえます。そして政府は盛んに為替介入をにおわせて市場けん制を試みましたが、ドル円162円台をつけても動かなかったように、実際には原資となるドル預金を4~5月に11.7兆円も使って155円台に戻したものの効果は1月で剥落しさらに円安が進みました。市場は介入警戒ムードで小刻みな動きでしたが、結局介入はないと見てより利回りの良いアメリカ国債やAIブームに沸く株式投資の原資になるドルが買われてじりじりと円安が進みました。政府は意に染まぬ日銀の利上げを今回は為替介入が困難だから容認したという背景が透けて見えます。その裏には為替介入のために保有米国債を売られることをアメリカが嫌っているという事情もあります。

そんな中で明らかにされた骨太の方針が予想されたとはいえ財政出動のオンパレードで、財源としてインフレによる税収上振れを当てにしています*5。2025年度に2.6兆円の剰余金が発生したことから、税収上振れ3兆円を見込んで国債発行を抑えるとしてますが、つまりインフレが進行することを前提にしているわけで、その分国民生活が圧迫されることには向き合わず、単なる帳尻合わせをしている訳ですが、インフレが進めば遅れて金利上昇は避けられないから、国債の利払い費の負担も増すことは考慮されてません。日銀に圧をかければ低金利が続くというアベノミクスの劣化コピー版の経済見通しを打ち出したことで複雑骨折と表現すべき状況です。

そうは言うけど日経平均株価は上がってるじゃないかともいわれますが、これアメリカのAIブームの流れで半導体関連が買われている結果の株高で、半導体以外はほぼ横ばいです。株価以外全部沈没をご参照ください*6。ちなみに同エントリーで取り上げた京成電鉄の押上発着の有料空港連絡列車の続報です*7。現在成田空港ではB滑走路の1,000m延長と3,500m級の新滑走路整で大型機発着が可能な3,500m級滑走路2本として、分散しているターミナルも統合するというもので、実現すれば1.5倍の発着枠拡大が実現しますが、そうなると鉄道アクセスの輸送力不足が問題になります。現状でもスカイライナーやN'EXは満席が多く、アクセス特急や快速エアポート成田も時間帯によって混雑する状況です。

京成電鉄は2027年運転開始を予定する押上発着の湯量特急を30年代に都営浅草線と京急に直通させて羽田空港と成田空港を結ぶ構想で、成田新幹線の遺構を単線並列でJRとシェアする成田湯川~成田空港間を複線高架の別線で建設し新駅を設置し、JRは京成が新線移行後に線路を改築して複線化し、京成は有料特急毎時6本、アクセス特急毎時3本と倍増し、JRもN'EXを毎時4本と倍増する計画です。統合新ターミナルへの移行が前提となりますから、具体的な時期は明示されておりませんが、新滑走路整備を含めて用地買収が難航しており、遅れることは確実です。加えて供用時間拡大問題でも地元の同意が必要で、こちらも流動的です。資金問題は国や県などと協議されるようですが、京成本線ルートや東成田駅、芝山鉄道の扱いなどは報道にはありません。

あとJRは羽田空港アクセス戦を活用した羽田成田連絡輸送を目論んでおり、おそらくりんかい線を介した京葉ルートでの実現を狙っていると思われますが、その場合京葉線から総武快速線への渡り線整備が欠かせません。候補としては高谷支線活用の西船橋ルートと千葉みなと~本千葉を結ぶ連絡線新設などが考えられますが、どちらも実現のハードルは高いといえます。加えて軽京成新線の整備後の複線化と実現時期も京成の後になるという意味で苦しいところです。そしてインバウンドの拡大が前提ですから、円安が進んで国民生活はさらに窮乏すると考えると、手放しで喜べないところです。確かに便利にはなりますが、果たして国民を幸せにするものかどうかは微妙です。

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Sunday, June 28, 2026

ポピュリズムの招待

EVMJ製の万博EVバス150台*1と府内自治体の自動運転バス向け40台の計190台が減損処理されました*2。万博のほろ苦い後始末です。加えて南河内地区で予定されていた自動運転バスは日野のディーゼルバスで行うことになりました*3。有権者の歓心を買って票につなげることしか頭にない維新の雑な政策運営がもたらしたトラブルです。しかしそれに引っかかる有権者ってのもどうなんだか。

マルクスが面白いことを言っていて、同じように貧困の淵にあっても賃労働に雇われた労働者と雇われていない物乞いなどの違いとして、後者は簡単にブルジョワジーに買収されてプロレタリアートに敵対する存在というう意味で「ルンペンプロレタリアート」と呼びました。団結を台無しにする存在として警戒したわけです。同様のことは日本の吉本隆明が大衆について述べたことと通底します。大衆は保守的で目先の利害しか見ないからインテリがいくらアジっても動かず、彼らが動くのは自らの生存に危険が迫った時だけということです。例えば右派インテリの三島由紀夫の檄に反応して武装蜂起しなかった自衛隊員という構図です。

マルクスはまた公娼制度についてもプロレタリアートを懐柔する娯楽と指摘します。娯楽の少なかった初期資本主義社会ではセックスの娯楽としての意味は大きく、故に所謂貧乏人の子沢山で世代を超えた労働力の再生産も安定していましたが、逆に扶養人口の増加は貧困をもたらすので、生殖から切り離されたセックスの必要性もあった訳です。但し資本主義の進化の過程で映画やテレビなどの娯楽が登場してそちらに関心が移ることで、公娼制度のニーズは低下します。更に進めばアイドルやアニメなど作り物のバーチャルな娯楽が登場して消費者としての個人に分断が進みますから、生殖を伴うセックスのようなメンドクサイ娯楽はむしろ敬遠されます。少子化は必然と言えます。

そうなると労働力の補充ができなくなって徐々に経済成長を押し下げますから、資本家が上前を撥ねるのが難しくなります。だから欧米では早くから移民で労働力を増やす政策が採られました。最初は主に植民地住民の本国への移転だったものが、戦後植民地の独立後も移転を受け入れ続けた結果、移民による労働力の補充が続きました。故に移民の多くは旧植民地から旧宗主国へという流れが主流でした。しかし日本は戦前は同じ帝国臣民と言いながら、戦後朝鮮半島出身者などを国民とは認めず、所謂在日問題となっています。だから原因は戦後の日本政府が作ったもので、彼らへの差別は全く正当性がありません。

やや遠回りしましたが、嫌韓嫌中やクルド人問題などのヘイトクライムも娯楽化していることが問題ですが、インフレに苦しむ国民の関心を逸らす意味はあります。国民をシカトして*4やりたいことしかやらないうましか宰相*5が下がったとはいえ高支持率なのも、政治が娯楽化した結果です。文春砲の中傷動画問題はそんな現実を暴いています。しかしその裏で日本の国富は食われています*6。5500億ドルの対米投資で国際協力銀行(JBIC)とメガバンクの協調融資で手当てされますが、メガバンクが音を上げています。ドル建て融資となるけどドル預金は少なく、市場で調達すれば円安が進みますます調達困難になるから難易度は上がります。対策として日銀のドル供給オペや外為特会活用などが言われてますが、日銀オペは経済ショックなどに備えたものだし、外為特会活用は米国債売却につながるとアメリカを刺激するしで打つ手なし。限られた民間銀行の融資余力を減らせば国内を含む民間投資を阻害するしで、基本的に打つ手はありません。てことでアメリカに貢ぐ姿勢は相変わらずですが。

銀行の融資余力の減少は金利上昇を通じて公共投資も民間投資も下押ししますから、政府が掲げる戦略17分野の成長戦略も動かすのが困難です。日銀利上げで銀行は日銀当座預金の超過準備に1%の利子がつく一方、預金金利は1年定期でも0.4%とかって水準ですから、融資余力を拡大するには預金集めが重要ですが、「貯蓄から預金へ」の掛け声で新NISAに家計貯蓄が流れてますから預金獲得のハードルも高くなってます。てことでカネ余りなのに銀行がピーピーいっているという摩訶不思議。まともな経済政策とは程遠い現状です。前エントリーで取り上げた阪急のなにわ筋連絡線や新大阪連絡線も着手できるかどうか。

また阪急の計画の前提のなにわ筋線にも異変が起きています*7。幹となるなにわ筋線の事業費が倍増しています。三セクおおさか高速鉄道が府と市に3200億円の追加出資を要請したものです。大阪府は泉北高速鉄道の売却益で、大阪市は市営地下鉄と市営バスの民営化で手当てした資金では足りず*8、追加出資をすることになるわけですが、万博で見せた泥縄*9は維新しぐさかい!尚、五輪、万博、ワールドカップなどの国際イベントも娯楽として消費されますし、ナショナリズムを鼓舞するから支配層にはおいしい話になります。また副首都や都構想も大阪人の首都東京へのナイーブな対抗心をくすぐり票につなげてます。

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Sunday, June 21, 2026

食われる公共

AIの投資考*1の中傷動画問題で公開された動画の一部に総裁選前の画像が確認されたということで、文春と共同通信が動画公開を見合わせました*2。高市シンパをぬか喜びさせたネタですが、週刊文春今週号記事で種明かしされてます。疑惑の動画20本中4本以外は問題はなく、疑惑は微塵もゆるぎないものです。またサナエトークンの無許可販売は明確な違法行為であり、金融庁がどう動くかはわかりませんが、動画制作者とされる松尾氏が週刊現代の取材には応じず文春に持ち込んだのもサナエトークンでの訴追を逃れるための目くらましの可能性があります。首相案件だけに金融庁は動きにくいとしてもデジタルチンピラのマネタイズに利用された脇の甘さは指摘できます。ちなみにゴーン事件の訴追は金融商品取引法違反で拘束されてますから、扱いが非対称です*3。

そんな中で郵政事業をめぐるこんなニュースもあります*4。郵政民営化の後退というよりも、郵政を支えてきた金融事業の利権切り出しの結果、郵政事業の赤字体質が顕在化したってことです。とはいえ郵便条約で公的に維持する必要があるから公金を投入するというわけですね。こうなることはわかってましたが。結局新自由主義的な民営化路線は、公共部門の事業を民間が儲かるように切り出して食い物にするだけです。そして五輪や万博のような国際イベントも、公共部門が音頭を取って民間に儲けさせるだけってことです。経済成長の結果、投資収益逓減の法則で利益率が傾向的に低下して儲からなくなる一方、新興国の工業化で追いあげられる中で、税金その他で公共部門に集まる公金を狙ったビジネスにシフトしていくという構図です。

これ国鉄分割民営化でも同様のことが起きています。リニアひろば*5の都市計画道路音大のように民営化JRに自治体が便宜を図るような倒錯が起きるわけです。そもそもJR東海の単独事業だったはずのリニア中央新幹線ですが、財投資金3兆円投入も30年低利据え置き後の返済という民間融資ではありえない優遇です。その結果最高益更新という好調ぶりですが、これにはカラクリがあります。ダイヤモンドオンラインで記事になってますが*5、細かい説明は省きますが、静岡工区を含む工事の遅れで余ったお金を金銭信託して資金繰りしていることが明らかになっています。B/Sの右の負債の中に財投資金3兆円が含まれる一方、工事の進捗で支払われる代金は左の資産の部では建設仮勘定で計上されてます。固定資産の一部ですが、当面利益を生まないものとして処理されており、既に財投資金3兆円の一部が充当されています。一方工事遅れによる余剰資金は金銭信託として運用されて配当を得ているわけで、低利の財投資金との利ザヤを稼げるわけですね。静岡工区未着工のおかげでかなりまとまった金額になっているわけです。故に本音は「川勝前知事アザース」となります^_^;。

話変わって整備新幹線問題ですが、北陸新幹線の敦賀~新大阪間のルート問題で国土交通省が新たな試算を与党に示しました*6。紙面に載った表を見て絶句したんですが、一体評価と個別評価を並べて示しており、後者でB/C比0.5の小浜京都ルートが前者では1.1となっていてます。一体評価というのは東京~新大阪間を一体としてみた場合ということですが、つまり従来は事業化される区間だけの評価だったものを、既開業区間を含めた評価ということです。つまり既開業区間の受益を乗っけた結果ってことですが、分母にあたる費用は事業区間の範囲で負担されるわけですから、全くのインチキです。とはいえ京都市の水問題などで反対されてますし、これでまとまる可能性はほぼ皆無です。

そしてリニアと北陸新幹線双方に絡むややこしい問題もあります。2031年開業予定のなにわ筋線関連で阪急が計画するなにわ筋連絡線と新大阪連絡線の事業化が動き出しました*7。阪急としては関空及び新幹線と自社沿線を結ぶ意図ですが、同時に十三の再開発の狙いもあります。しかしリニアと北陸新幹線の新大阪駅の位置が決まらないから新大阪連絡線に関しては駅位置未定のままの見切り発車です。つまりリニアと北陸新幹線が足踏みする限り、手を付けられないってことです。それでも十三の再開発で資金回収は可能という判断なんでしょう。

一方リニアの残土処理でもめる岐阜県御嵩町で結局名鉄広見線の廃止が決まりました*8。みなし上下分離というのは所有権移転せず固定資産税収を線路保守などの費用に充てること上下分離と同等の効果を狙ったもので、並行在来線三セクのIGRいわて銀河鉄道でさ採用されてます。他方文字通りの上下分離で黒字転換したのが近江鉄道です*9。ローカル線存続に関しては民間への利益供与よりも住民の利便性維持が狙いですが、結果的に自治体次第ということです。企業を救うか住民を救うかには大きな違いがあります。

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Sunday, June 14, 2026

AIの投資考

裏・壺・族と暗号資産*1のサナエトークン絡み炎上中の高市首相です*2。やや込み入ってますが、元々サナエトークン問題は週刊現代が追っていたネタですが、週刊文春が総裁選と総選挙の中傷動画問題を取り上げて国会でも質問通告されてますが、当初「週刊誌ネタ」を理由にまともに答えず「秘書を信じる」と啖呵切ったりしてましたが、週刊文春は中傷動画作成者に直接話を聞いて公設第一秘書とやり取りしていた証拠を突きつけているのにまともに答えませんでした。

しかし製作者に共同通信がインタビューして配信したことで、新聞テレビにも取り上げられて逃げ道をふさがれつつあります。しかも動画制作者はサナエトークンの制作者でもあって、文春が入手したzoom音声がサナエトークンの打ち合わせだったということで、現代と文春が別個に追いかけたネタがつながりました。大まかに言えば総裁選ライバルの中傷と総選挙の小選挙区で競合する中道の大物候補者の動画をネットから拾ってAIで編集したもので、製作費は製作者が負担したものだから公職選挙法上の買収には当たりませんが、政治家やタレントの人気を利用したミームコイン発行で大儲けできるわけで、利害誘導罪には問える問題で、買収と同様当事者の罪状が確定すれば連座制で議員辞職と公職追放という処分を受けます。今回のスキャンダルはその可能性が大いにあるということです。

それはそれとしてAIがこうしたところで使われて世論を歪めてしまうことは問題です。こうした世論誘導を外国政府のエージェントが行えば事実上主権侵害となる問題で、デジタルチンピラにシノギを与える隙があったという意味で、高市首相の対応は危機管理の観点からも問題です。経済安保で諜報機関を作ったりしてますが、足許が心許ないじゃシャレになりません。また悪意を以て政権を乗っ取ろうとする動きは国内どころか与党からさえ出てきます。例えばこれです*3。これ故高松宮寛仁親王の信子夫人が麻生副総裁の妹で、政略結婚が疑われて寛仁親王没後離婚しています。そんな麻生氏の肝いりで降って湧いたのが「両院議員の総意」として提出された皇室典範改正議論です。麻生氏の息のかかった旧宮家男子を養子で押し込めば皇室乗っ取りすらできてしまいます。流石に利害のある問題なので徳仁天皇は皇太子時代のお世継ぎ質問に人権発言で答えコロナ禍の五輪名誉総裁としての開会宣言を宮内庁を通して断った人です*4。マジキレです。まあ道鏡の轍を踏む旧宮家男子が現れる可能性は低いですが。

てことで本題ですが、AI規制に慎重だった米トランプ政権が突然ミュトス級AIの外国人利用に規制をかけました。一応アンソロピックの提言をG7財務省中銀総裁会合で取り上げられたこともあり、それを受けての米政府の規制とも考えられますが*5、実際にはそうれを口実にした米政府のアンソロピックいじめです。軍事利用を理由に国防総省への提供を断ったことの報復です。ただアンソロピックも株式IPOを申請しており、政府との対立もその為のマーケティングじゃないかという疑いも持たれています*6。

今年はスペースXを皮切りにアンソロピック、オープンAIと大型IPOが続きます。但しイラン戦争の影響でインフレが昂進しており、既にECBは利上げを決めたほか、上田総裁欠席ながらも日銀も利上げに動くとみられており*7、米FRBも新議長の下でも利下げどころか年内利上げの観測すらあります。ガソリン価格高騰のみならず雇用統計の強さも利上げを示唆します。そんな中で集中する大型IPOを支える余剰資金の不足が心配されており、インフレに伴う長期金利上昇と連動して売られる債権市場からのシフトだけでは間に合わず、AI半導体関連以外の既存株の倍棄却が起きています。株式ETFでも投資ポートフォリオの見直しで既存株を売ってIPOに備える動きがあります。

これアメリカだけの話じゃなくて日本にも波及してます*8。立役者はキオクシアです。不正会計で破綻した東芝の再建のために売られたメモリー半導体大手ですが、AIデータセンター投資に伴うメモリー需要でAI銘柄とみられて東証の時価総額トップの座をトヨタから奪いました。ただ日本の場合にはキオクシアを外れ値と見れば既存企業の株価は業績好調にも拘らず上げたり下げたりでほぼ横ばい。寧ろスペースXのIPO資金捻出とみられる売りすら見られます。円安ですから日本勢は余分に資金をねん出しないと競り負けます。てことでAI投資に関しては日本にはほぼ勝ち筋が見えません。但しAIがどんな素晴らしい未来を約束するかといえば、冒頭の中傷動画みたいな即物的な錬金術に使われて人々を不幸にするだけではどうしようもありません。新しい価値を生みだす道筋は見えません。まして余剰資金の海外流出は国内投資をますます困難にします。

羽田空港D滑走路で航空機のタイヤパンク事故が2件続いて、その原因が滑走路の破損ではないかと言われています。検証はこれからですが、多摩川河口の水流を邪魔しないために桟橋方式で造成され、試験を繰り返して強度や耐久性に問題がないことは確認されましたが、問題は河口にかからない部分は従来通りの埋立方式で造成されていて、その境界部のジョイントがめくれているのが確認されているということです。これを単純な経年劣化と見て良いのかということです。強度や耐久性に問題がなくても、沈下の可能性がる埋立造成との併用で、ジョイント部がどのように作られているかはわかりませんが、ウイークポイントになる可能性はあります。強度や耐久性に問題がないのなら、全面桟橋方式の造成でも良かったのに、埋立と併用となった経緯が問題になります。おそらくコスト面の問題と土木工事で発生する残土処理の都合が重なったというあたりでしょうけど、日本の玄関口となる重要インフラがご都合主義で作られたとすると問題です。

上述のキオクシア以外の株価停滞の典型は運輸株ですが、ANAとJAlは頃中から回復して業績好調にも拘らず株価がさえないのはホルムズ封鎖に伴う航空燃料の高騰で早くも27年3月期の業績見通しに暗雲で、特にANAが厳しい状況です。意外ですがJALは不採算路線の整理で単価の高い北米路線のウェートが高いことと、やはり北米路線中心の国際線LCCジップエアの連結業績も寄与してます。また中国路線は例の戦狼外交で中国エアラインの運休*10で寧ろ搭乗客が増えていたりします。それでも航空燃料高騰で燃油サーチャージがシャレにならない水準になっております。それでも非運輸事業へのシフトで先んじるJALのほうが有利と言われます。JALはすでにJR東日本との提携を発表してますが、JR北海道や九州など三島会社との提携には可能性がありそうです。工事の遅れで開業が見通せずB/C比悪化で事業そのものの在り方も問われている北海道新幹線を当てにするだけが能じゃないかも。ちなみに工事を巡る談合事件でも揺れてます*11。限られた財源で進める工事は談合で益出しするしか受けられないという意味でリニア談合に通じる問題です*12。

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Saturday, June 06, 2026

リニアひろばと謎の都市計画道路

相模原市の話題です。リニア神奈川県駅脳工事が始まりましたが、橋本駅南口に盛土の高台が出現しています*1。上はリニアひろばと称する神奈川県駅の工事現場を見下ろす公共空間として開放されています*2。平成の大合併で政令市の仲間入りした相模原市ですが、市役所のあるJR相模原駅と交通の結節点と言える小田急相模大野駅とJRと京王の橋本駅いずれも政令市としての集積度は低く、相模大野は町田の商圏に飲み込まれてますし、橋本は製造工場の集積はあるものの集客施設は乏しいところですから、リニア神奈川県駅の設置は相模原市にとっては地域活性化のチャンスともいえる訳で力が入ってます。元々人口が多かった合併前の相模原市ですが、市域を国道16号線が縦断していて基本的に自動車社会なので人の集まる集積地はできにくく、製造業の立地は多いけど閉鎖して商業施設や住宅団地になるところもあり、都市計画の困難な地域ではあります。 そんな相模原市で都市計画道路をめぐる市と住民の対立が起きています。大西大通り線と呼ばれる新たな都市計画道路ですが、1㎞程の区間に住宅100棟他の民有地を通ることから住民との対立が起きています*3。住民が反対する理由は2年前に突然の都市計画道路整備であり、市の説明では圏央道相模原ICとリニア駅のアクセス改善と周辺道路の渋滞緩和ということですが、物流幹線としてトラックの通行が多い圏央道と旅客輸送のリニアをつなぐ意味がよくわからないですし、ICに繋がる道路の起点の橋本五差路の混冊は日常化してますが、事実上行き止まりの橋本駅に通じる道路で混雑緩和に資するとも思えません。ただルートが中央リニアルートのほぼ直上ということで、なるほど民有地下の都市トンネルならば避けられない地上権設定による地代の発生を回避する狙いが透けて見えます。 リニアの事業主体はJR東海ですが、建設工事に必要な用地買収は各自治体に委託されています。特に中間駅設置自治体にとっては地域活性化のチャンスとばかりに都市計画を策定して事業に協力するのはわかりますが、このケースで謎なのは同じ用地買収でも地上権設定と立ち退きを伴う道路整備とでは難易度が違うことで、相模原市はわざわざ面倒なことをしているように見えることです。公共道路下ならば地代は発生しませんから結果的にJR東海に便宜を図る形になります。例えば市職員OBの天下り斡旋のような癒着があるかもしれません。そもそもJR東海には事業費圧縮の動機があります。 中央リニアに関しては2008年委にR東海が東京~名古屋間を自前での整備を打ち出して、その際の事業費を5.1兆円と見積もっていました。この金額は奇しくも市感染買い取り代金の総額と同じで、2017年に終わるローンの終了によるキャッシュフローの余剰をあてにしたものとみられます*4。その際に最短距離の南アルプスを頂戴トンネルで抜ける直行ルートで1件駅の原則を掲げるとともに、中間駅は請願駅ルールで地元負担を求めていましたが、後に方針変更して中間駅設置費用もjr等買い持ちとなりました。おそらく東海道新幹線南びわこ駅凍結を踏まえたものでしょう*5。自治体のちゃぶ台返しを封じたかったか。 結果的に事業費は5.3兆円に膨張した一方、中間駅は予約したアプリチケット所持者しか入場できない無人駅として駅位置もJR東海の都合で決めることにしました。その結果例えば地元はJR飯田駅併設を希望していたのに隣の高森町の市田柿農家の散在する田園地帯に変更されっました*6。飯田市はJR飯田駅貨物扱所の廃止に伴う跡地を将来のリニア駅用地としてバブル期の高値掴みで購入し、市営パーキングにして準備していたのに裏切られた形ですが押し切られました。飯田市より地価の高い相模原市ではその比ではないわけで、実際神奈川県駅の具体化には時間がかかりましたが、相模原市の積極関与で公共施設の統廃合などで用地をひねり出して着工に至りました。駅西側のルート上の民有地通貨もおそらく大深度地下トンネルとして地上権設定せずに施行した調布市の陥没事故*7や品川区の隆起、町田市の地下水噴出、瑞浪市の陥没などトンネルルート上のトラブルが相次いだことから、文句を言われないための都市計画道路整備と見ることができます。しかも相模原市の都市計画道路ですから矢面に立つのは市であってJR東海は関与せずの立場が取れるわけです。 それでも当初5.1兆円だった事業費は5.3兆円からコロナ禍による工事遅延や働き方改革の24年問題などで膨張一途で5.5兆円から一気に11兆円と倍増し、しかも2027年の開業断念どころか今後も人件費と資材費の高騰でいつになるかわからない。ましてや大阪延伸はほぼ無理というところまで来ています。静岡工区では動きがみられますが、県知事の容認姿勢とは裏腹に市長村レベルとの話し合いはいまだ続いていて終わりが見えないし、何よりトンネル残土の処理もめどが立たず、特に岐阜県御嵩町では重金属を含む要管理残土による湿地の汚染問題で反対運動が起きています。御嵩町といえば名鉄広見線の新可児~御嵩間の廃止問題もあり、特に可児市の塩対応で御嵩町が割を食うという問題も起きています。メガロポリス集中の害悪をダブルで受けているわけです。こんなことで地方創生なんか出来っこありませんね。

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Saturday, May 30, 2026

AIするチャッピー

運転再開*1。結局PC買い替えましたが、ソフトとデータの移行に手間取っています。AIが仕事を奪う未来とは異なるニュースですが、一部でそう見られているの草*2。巨人阿部監督が長女に暴行し、長女がChotGPTに相談して児童相談所に連絡し、それを受けて児相が警察に通報し、暴行罪容疑で現行犯逮捕されたということです。5時間の取り調べの後魁皇されており事件化されませんでしたが、有名人ということで話題になりました。

先に申し上げておきますが、誰であれ暴力は許されません。特に家庭内暴力でも特に父親による配偶者や子に対する暴力は、往々にして被害者が口を閉じたりむしろ父親を擁護したりもします。扶養関係で経済的な依存がある場合は特にそうです。その意味で直ちに警察へ通報した児相の判断は正しいし、すぐに動いた警察も正しい対応です。記者会見で代理人弁護士が代読した長女の手紙と称する文書を代読して、その中で長女が「大ごとになって反省している」とあることにも表れてます。この手紙も本物かどうかもわかりませんし、仮に本物でも当事者間の親書を公開の場で読み上げることの違和感もあります。結果的に長女はSNS上でバッシングされてます。結局加害者の阿部元監督は釈明のために長女をダシにしてますし、しかも謝罪相手は迷惑をかけた球団と関係者やファンに対してのものです。ますは長女に謝れ!

当然ながら仕事を失ったのは加害者本人の問題であってAIのせいじゃない。しかし若い年代ほど悩みや困りごとをAIに尋ねることもまた確かで、ChatGPTをチャッピーの愛称で呼んだりしていて、それだけ相談できる頼りになる大人が身近にいないってことなんでしょう。声のデカいオヤジには尻のすわりの悪い話かもしれませんが、AIに仕事を奪われるのは高学歴文系事務職などの労働代替の話です。でも高学歴文系事務職はブルシットジョブをシレっと編み出したりします。例えばAIの未来を吹聴したりAIの使い方やプロンプト作法とか有象無象が早速表れてます。わからないことをカネで解決しようとすればこうなるわけで、管理部門が肥大化して価値創造の現場が搾取される資本主義社会の宿痾です。

一方で株式市場はAI一色で、AIの物語*3に深く反応してます。ニューヨークのみならず東響も高値更新です*4。10社程度の半導体関連企業が相場を押し上げており、その他の一般株は下げているものも多数という状況です。そして取引高も更新されていて、海外勢による買いが集まっています。これは」ニューヨークの相場が上がりすぎたことによるリスク分散の意味もありますが、AI関連が牽引する構図は同じです。イノベーションで異次元の効率化による生産性向上の思惑からAI関連に資金が集まりやすい状況ながら、同時にAI相場への疑問もあり一進一退のボラティリティの高い相場となっています。ボラティリティの高さには別の要因もありますが*5。AIを用いた株式投資が増えて、AIは合理的に同じ判断をして相場を動かすから動きが大きくなるという弊害をもたらします。元々市場は参加者の異なった思惑が交差する中で相場が形成されるものですが、AIはそんな無駄なことはしないからこうなる訳で、AIは実は市場経済と相性が悪いんです。これ内緒^_^;。

AIの」危険性を示したアンソロピックですが,システムの脆弱性発見の能力の高さが悪用の危険を示唆するのは確かでも、限定ユーザーにしか公開されないから実態はわからず、寧ろ米トランプ政権との対立を解消した上で持論のAI規制を飲ませる狙いがあった可能性はあります。実際時価総額ではオープンAIを超えています。いずれにしてもソースコード非公開なので検証の手段はありません。実はAIの一番の問題はここれでしょう。若者が依存するように、ユーザーを依存させて囲い込み、データで丸裸にして心地よい消費を促すデジタルペットとして飼われる存在になります。まるで家畜人ヤプーのディストピアです。

てことで最後にやや野球ネタ。新秋津の連絡船を介した観光列車直通で提携するjr東日本年と西武HDですが*6、TELと秩父のほか狭山のベルーナドームや東海道線の小田原もターゲットとか。小田原は伊豆箱根鉄道のバスの拠点でもあり、小田急と箱根山の因縁はあるものの、今は和解して共同企画キップを売り出す関係ですが、セパ交流戦で西武がヤクルトに2勝1分けは勝ちすぎ?国鉄由来のスワローズをやっつけちゃったけど提携関係大丈夫かwwww。車両はラ・ビュー登場で秩父特急から退いたニューレッドアロー10000系ということで小田原では小田急ロマンスカーとの並びが実現するかもしれません。

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Sunday, May 24, 2026

運休のお知らせ

PC不調につき運休いたします。...

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Sunday, May 17, 2026

AIの物語が終わるとき

近頃対立が目立ち共同声明がまとまらないG7サミットですが、18~19日の財務相・中央銀行総裁会議では久々にまとまりそうです。主要議題は「ミュトス問題」です*1。ミュトスとは米アンソロピックが開発したAIで、システムの脆弱性を素早く発見する能力が優れていることから、悪用されればシステムへの侵入やウイルス攻撃などに使われる可能性があり、特に金融システムが狙われる危険からアンソロピック自身がリリース先を絞った上で当局に申し出たものです。英語表記で Cloud Mythos でギリシャ語の神話、物語などの口述伝承を意味する名前です*2。

1民間企業が開発した製品で異例の対応ですが、金融システムの安全性が損なわれれば大混乱は確実な訳で、元々AI規制に前向きだった欧州に対して、自国に最先端企業を複数抱え世界をリードするアメリカはそんな欧州を批判していましたし、政府向けリリースに消極的なアンソロピックを政府調達から外したりしてましたが、そんなことを言ってられない事態と認識した訳です。尤も欧州もDeepSeekショック*3を契機に後発国にもチャンスがあると認識して規制を緩める動きを見せていますが。変わらないのがそういう認識すら持たない規制ユルユルの日本です*4。AI悪用のサイバー攻撃はGoogleも報告種を発表しています*5。ロシア、北朝鮮に渡ればシャレにならない事態です。

しかし一方で北京の米中首脳会談ではこんな動きも*6。NVIDEAのファンCEOが突如トランプ大統領に同行しました。目的は当然商談ですが、AI分野でアメリカを猛追する中国にNVIDEAのGPUを売るのは敵に塩か?一説によれば半導体製造でも猛追する中国に対して、最先端品開発で陳腐化した型落ち品を売ることで、中国の対米依存を敢えて誘導するという思惑があるとか。海軍能力がほぼ無かった中国に対して敢えて米軍が合同演習して力の差を見せつけると同時に軍事支出を誘導して経済負担を狙うアメリカの高等戦術ですが、結果裏目になっている現状ではあります。

米中がAI派遣で譲らないのは当然ながら軍事目的がある訳で、アメリカは分厚い金融市場で潤沢な資金を手当てできる環境と共に、政府や金融機関という金離れの良いユーザーがいることが優位性をもたらしている一方、中国式計画経済はそんなアメリカへのキャッチアップに政府が資金を提供するに留まらず、ユーザーに利用を促していて勢いを保つと共に、競争で勝ち残った企業に集約することで標準化を図ることでユーザーにもメリットが生まれるという高度な産業政策を進めています。こんなことできるのは中国の経済規模と人口と更新が進まない先進国より新しい生産設備があればこそですが。

逆にアメリカは技術革新の早さが天井感をもたらしてもいます。実際今のところ確実に利益を出しているのはNVIDEAぐらいで、オープンAIやアンソロピックなどの新興AI企業はNVIDEAの出資を得てAIデータセンターに投資してNVIDEAののGPUを買っている訳で、循環取引が疑われます。加えてGoogleやAmazonなどテック企業がAI企業に出資していて、増益の7割が保有株の評価益という実態もあります。日本のバブル期と似た構図です*7。そしてS&P500などの株式も、AIと金融以外の株式はあまり上げておらず、AIへの警戒感から上がれば利益確定売りが出て下がるということを繰り返してます。

株の上値が重い理由は債券市場にあります。米30年債が売られて利回り5.1%と市場では天井をつけたと認識されて株が売られた流れです*8。債券の評価損を株の益出しでカバーする動きですが、同様の動きは東証市場にも見られます。債券売りは関税裁判で米政府が再度敗訴して財政悪化が止まらないことと*9、ホルムズ海峡封鎖に伴うインフレでFRBが利下げどころか利上げすら視野に入る状況になったことで、金利が押し上げられている状況です。FRBウォーシュ新議長いきなりの受難です*10。とはいえ生産設備の老朽化は如何ともし難く、金融とITの癒着マネーゲームをマクロ調整だけで乗り切ろうとする矛盾が付きまといます。

というわけで、AIを巡って紡ぎ出される物語(Mythos)は国家が絡むから簡単には弾けないだけで、人々を幸福に導く道筋も見えないものです。インフレ防止法(IRA)でバイデン政権が目指した高速鉄道などのインフラ整備の方がマシだった可能性はあります。てことで日本も他人事じゃないんですが、大人の事情で財務省からダメ出しされた北海道新幹線*11にも絡む話ですが、整備新幹線の貸付料を巡る国交省とJRの対立が起きています*12。30年とされた貸付期間終了後国交省は30年延長案を提示したものですが、JR東日本は特に猛反対しています。

30年経過すれば経年劣化で設備の更新もしなきゃならない。自社保有ならば減価償却資金を充てれば良いが国(鉄道・運輸機構)保有で減価償却はないし、特に東北新幹線延伸部のように貨物調整金まで負担してほぼ儲け無しでは鼻血も出ない訳で、実際に減額を示唆する文書もあるということで揉めてます*13。整備新幹線も人手不足とインフレで工事費用が嵩み、事業が進まない中で国交省は財源確保を狙ったんでしょうけど、そうするとJR東日本が予定している盛岡以北の高速化の費用が出ない。そしてJR貨物の経営改善を待って行われる筈の線路使用料の見直しも未だ実現していない中で、貨物調整金も存続せざるを得ないということになります。

勿論運賃や料金の値上げで対応することは考えられますが、動力費その他の値上がりもあって劇的な増収に繋がる訳でもないということで、JR東日本は引けないということですね。尤も北海道新幹線ですらB/C比の悪化で黄信号なのに、今後も新規着工できる区間があるかといえば難しいです。整備新幹線は票になるという政治家の我田引鉄がありますが、燃油代上昇で苦しい国内航空のコードシェアを認めるなどの新たな制度的枠組みを考えるべきでしょう。整備新幹線の物語も終わりに近づいています。長くなりましたのでここまでにします。

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Saturday, May 09, 2026

部活バスの闇

ゴールデンウィーク最終日の6日、磐越道でマイクロバスが事故を起こしました*1。ガードレールにぶつかってバス前部から後部へ貫通しているさまは2012年の関越道ツアーバス事故を思い出させます*2。当時のエントリーではツアーバスによる乗合類似行為問題として取り上げました。当時からレンタカーによるドラーバー付バスレンタルが貸切類似行為ながら、借り手の廉価志向から黙認状態だったこともあり、そうしたレンタカー会社に貸切バス免許を交付して正規の貸切バス事業者にすることで競争条件を整える規制改革が実施されました。その結果貸切バス事業者が増えて競争激化の結果、旅行会社がツアー募集の形で安値で仕入れた貸切バスを用いて催行するツアーバスが都市間運行で乗合バスである高速バスと競合することになり、両者の競争条件の違いから廉価なツアーバスへの批判もあって、高速乗合バスへ寄せる形の規制改革が進められていた時期でもあります。そして関越道でツアーバスが事故を起こしたことから議論が進み、所謂新免事業者による高速バス参入へと繋がりました。

今回の事故は新潟県のバス事業者である蒲原鉄道がレンタカーを手配したもので、学校側から予算を抑えたいとの要望があり、同社名義でレンタカーを手配したものです*3。レンタカーによる貸切類似行為という所謂白バス行為が疑われる案件ですが、幾つか疑問もあります。蒲原鉄道はオールド鉄ちゃんにはおなじみの五泉~村松~加茂を結ぶローカル私鉄が鉄道廃止後バス専業となった会社ですが、ご多分に漏れずのドラーバー不足もあり、自社貸切バスを値引きすることも難しい中で、レンタカー手配を選んだのでしょう。但しレンタカー会社には当該の営業担当者の免許証しか提示しておらず、手配したドライバーは知り合いの紹介で面識はなかったなど杜撰です。しかしレンタカー会社からすればバス事業者の手配だから、本来厳しくチェックされる筈のドライバーの免許証確認をスルーしたかもしれません。

実は部活関連のバス事故は結構起きています。21年悪神奈川県山北町でトレーラーに追突とか、鹿児島県では23年に横転事故を起こしたりということもあります。そして学校の部活では顧問教諭が部活のために大型免許を取得してハンドルを握ることもままあり、その場合はレンタカー利用は出費を抑えられるものの顧問教諭の責任は重くなります。また文科相の部活ガイドラインでも輸送中の安全に関しては記載がなく、この面からもグレーゾーンになっています。背景には文教予算の縮減による学校経営の困難があるかもしれません。

今回は北越高校軟式テニス部の遠征ということですが、名門ということで大会出場や対外試合の機会も多いでしょうから、果たして今回だけの特殊事情なのかもわかりません。少なくとも正規のバス事業者の貸切運賃を負担することは難しかったんじゃないかと思います。そうすると安価なレンタカーで済ませることが常態化していた可能性もあります。そしてバス事業者と学校との間で説明が食い違っていることも、双方の責任回避の姿勢が垣間見えます*4。書面も交わさず事業者は手数料も取らず、学校側も引率教員を添乗させていなかったなど双方に落ち度がありますし、ドライバーは二種免許保持者ではなく事故歴もあったなどいろいろ問題だらけですが、事故が起きて発覚しただけで学校の部活では常態化している可能性はあります。

似たような話として辺野古の転覆事故で修学旅行生に犠牲者が出た事故がありました。こちらはさらにややこしく、部活ではなく修学旅行中の平和教育の一環という学校側の説明があり、また事故船のは元々辺野古の抗議活動船ですが、NPO所有で有償運行ではないということで、その面でも法的にはグレーゾーンです。2022年悪知床半島沖観光船沈没事故を受けて制度化された船舶事業登録は既存事業者の3割止まり。有償運航を前提とした制度なのでそのまま適用は難しいところです。とはいえ死者が出ている以上このままとはいきません。そしてこちらは乗船は教員とNPOの個人的関係から出ているもので謝礼として5,000円支払ったという報道もありますが、儀礼的意味合いはあっても繰り返し集客して謝礼を取っていた訳でもありません。勿論だから安全をないがしろにして良い訳ではありませんし、今回の事故で同様の平和学習は禁止事項になってもやむを得ませんが、政治性からか修学旅行を手配した東武トラベルは無関係なのに一部で叩かれたりしてます。

てことで当事者の蒲原鉄道ですが、明治期の私設鉄道の北越鉄道(→信越本線)と岩越鉄道(→磐越西線)の双方から外れた蒲原地区の中心地村松に鉄道をということで難産の末1922年に免許取得し翌23年に建設着手され同年に磐越西線五泉~村松間を新潟県初の電気鉄道として開業したものの、昭和恐慌真っただ中で第二期線は足踏みの末村松~加茂間が1930年に開業したものの、元々の需要が少なく経営は苦しい状態が続きました。テコ入れ策として直営の冬鳥越スキー場を開設して誘客に努めたもののモータリゼーションで誘客には繋がらず、また貨物輸送も秋のコメ収穫期に偏った需要で経営の支えにならず、1984年には国鉄加茂駅の貨物取扱廃止で貨物営業終了。1985年には村松~加茂間を廃止し一時的には営業的には改善したものの、僅か4.2㎞の営業区間では自家用車やミニバイクへの転移が止まらず、1999年に廃止されバス専業となりました。しかし営業エリアは狭く集客の核も乏しく、昨今のドライバー不足も重荷です。しかしまあ地域密着を地で行くような会社ではあります。故にレンタカー手配も法令違反を承知の上でクライアントの要求に応えたという意味では、善意の対応だった可能性はありそうです。勿論だからといって法令違反が許される訳ではありませんが。

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Tuesday, May 05, 2026

大人の事情でNoと言えないこどもの日本

こどもの日本Part3です*1。両エントリー共にミサイルネタですが、関連する話題がイラン戦争関連で英エコノミスト誌のコラムで取り上げられてます*2。戦争状態のホルムズ海峡周辺の衛星写真は西側企業に対しては軍事的理由でシャッターコントロールと呼ばれる規制がされます。撮影場所や解像度を制限することで軍事機密を保持するためです。しかしSNS上には中国企業による鮮明な衛星写真が多数リリースされてます。そしてそれがイランによる湾岸諸国の米軍事施設や石油施設、LNG施設へのミサイルやドローンによる打撃を可能にしている現実があります。中国の衛星画像技術はほぼアメリカと遜色ないレベルということです。

てことは日本の防衛力強化で反撃能力としてミサイル配備が進む状況ってのは無効じゃないかってことですね。仮に存立危機事態になったとしてもミサイル基地は先に潰される可能性が高い訳です。また湾岸の米軍基地が攻撃されたように、日米安保による国内米軍基地も攻撃対象になることを示します。こどもでもわかる話ですね。しかし大人の事情でそれを指摘する話はメディアにもほとんど載りません。しかし1973年の第一次オイルショックでは事情が違いました。当時の田中角栄首相がキッシンジャーに「文句あるならアメリカの石油を寄越せ」(意訳)と言い放ったことは指摘されてます*3。親イスラエルのニクソン政権にアラブ寄りの外交姿勢を懸念されてのやり取りですが、当時の田中首相は緊急事態の認識から危機対応としてこういう舵取りをしたもので、政敵の福田赳夫氏を大蔵大臣に任命し、持論の日本列島改造論を封印して総需要抑制策を認め、経済分野の全権委任をしたものです。以後公共事業の抑制や東北、上越新幹線の建設凍結などで狂乱物価を収め、国民に省エネ自粛を呼び掛けました。

田中氏にとっては不本意な意思決定でしたが、状況に応じたプランBという意味で今こそ参照されるべきですが高市政権は景気腰折れ懸念を公言して対応しません。高市首相は19年前に科学技術庁長官時代に「イノベーション25」と呼ばれる文書に記述した技術力に対する強いこだわりを反映した危機管理を成長につなげる方針として展開されてます*4。

ここで思い出されるのが石原慎太郎氏と盛田昭夫氏の共著[Noと言える日本」*5で盛田氏が指摘した日本の半導体なしにアメリカのハイテク兵器は造れないというくだりです。時は日米半導体摩擦の最中で日本の半導体産業が世界をリードしていましたが、その後失速して今に至ります。その現実をアップデートできていないのでしょう。危機管理を安保防衛と狭く認識して日本抜きでアメリカの兵器産業も成り立たないと二重に現実とズレた認識だから、1973年の第一次オイルショック以上の今そこにある危機を認識できず*6、安保防衛で成長という妄想に取りつかれているとしか思えません*7。こんな高市首相が目指す憲法改正での緊急事態条項が如何なるものか。防衛を口実にした独裁にしかならないのは言うまでもありません。

石原氏はその後都知事になって金融危機対応として都出資の新銀行を設立して銀行の貸し渋り対策を打ち出しましたが、素人判断の甘い融資審査で不良債権の山を築き負の遺産を残しました。その新銀行東京の資産を継承したきらぼし銀行が都出資の優先株400億円の年内返済を発表しました*8。これも日銀の利上げで金利復活したから融資の利幅が増えて実現したことでもあり、低金利政策が終わったことも影響してます。リーダーの思い込みの後始末が如何に厄介かを示します。

そして高市首相ですが、一方で明らかに現実認識が変なところが見られます。成長17分野を巡る民間との認識のずれがあります*9。南海フェリーの代替新造船はコスト高で断念されるけど*10防衛関連で政府が買う艦船建造は取り上げられている一方で、自動車は除外されて業界から驚きの声、EVの壁*11はガン無視。食糧安保上重要なコメ増産は見直すのに高く売れるイチゴは注力とかチグハグ過ぎて眩暈がします。

てことで最後に鉄分補給^_^;。難工事で遅れている北海道新幹線の事業費膨張で財政審議会がB/C比を見直した結果「中止すべき水準」と*12。但し便益(分子のB)はそのままに費用(分母のC)だけを見直した結果ですが、重金属残土の処理や硬い岩石層で切羽の破損とかトンネル工事に伴う不確実性から更に費用は膨張する可能性がある一方、インフレによる上振れでJR北海道の受益に基づく線路使用料の増額がどこまで可能かとか、外部経済効果の上振れとかは計算されていないので、片手落ちの議論とは言えますが、現在の整備新幹線スキームでは解決困難なことも確かです。例えば燃油高騰で苦境にあるエアラインのコードシェアを解禁してJR北海道以外からの線路使用料収受と共に、経営悪化確実なエアラインの救済策を便益に加えるというような工夫が必要と考えます。

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Saturday, May 02, 2026

債務の壁

日銀の4月利上げは確実視されてましたが、結局見送られました*1。行間を読ませる良記事です。本当は利上げしたかったけど大人の事情で見送りを決めたと読めます。政権の牽制発言もですが、国債の買い手不在という現実が重くのしかかります*2。債券市場はインフレ警戒モードなのにお構いなしに財政拡大で国債発行を増やすから、日銀が動けない状況です。つまり米FRBや欧州ECBのように量的引締め(QT)でベースマネーを減らしてから利上げという手順を踏めないから、未だに減らしてはいるものの日銀の国債買い入れを続けざるを得ない状況があります。ベースマネーは民間銀行が口座を持つ日銀当座預金に積み上がっており、政策金利の指標となる銀行間の短期市場が機能せず、超過準備に付利することでしか金利操作ができず、日銀の収支悪化で債務超過さえ起こしかねない状況です。

しかも政府は財政拡大基調を変える気さらさらなし。例えばこのニュースです*3。防衛費増強も消費減税もガソリン補助金も問い欲張っている訳ですが、既にガソリン補助金が巨額になって予備費を食い尽くす勢いです*4。ホルムズ海峡封鎖は長引きそうですし、仮に解除されても石油施設やLNG施設の破壊もあり、歳出量は減りますし、現状足止めされている船舶が目的地で荷降ろししてまた戻るという行程は相応の時間を要します。その間に備蓄が尽きたりすれば打つ手を失います。その時には補正予算となってますます財政拡大となり、国債消化が厳しくなって長期金利上昇となります。よりタイトな化成品は中国からの輸入が増えております*5。コロナの時のマスクを彷彿させますが、安価な中国製品の輸入は国産メーカーの市場を奪う可能性があり、レアアースのようなチョークポイントにもなり得ます。尚、中国はこの状況でも備蓄放出を行わず寧ろ増やしています。

そして伝家の宝刀の為替介入が行われました*6。160円70銭まで進んだ円安が一気に155円台まで戻し、投機筋にダメージを与えた模様ですが、これで留飲を下げてるのは問題です。日本国債の消化で海外投資家へのセールスが行われていて徐々に増えているのですが、彼らにとっては弱い日本円の投資は為替ヘッジとセットであり、実は投機筋の正体は彼らだったりする訳ですが、為替介入で噂させたら彼らも国債買わなくなりますよね。愚かです。国内勢は日銀をはじめ銀行は過去の大量買いが災いして特に地方銀行で金利上昇による評価損を抱えている状況で、買い増しは厳しいですし、生保なども同じような状況でとても買い増しは無理です。買い手の居ない公債を発行し続ければ長期金利はさらに上がります。そうすると国債の利払い費が上昇して更に財政を圧迫します。八方ふさがりになる訳です。

これ思い当たるニュースがありまして、東葉高速鉄道の債務危機問題です*7。営業収支は黒字ながら2000億円の債務を抱えており、金利上昇で利払い費が増えれば資金が枯渇して所謂黒字倒産状態になります。回避策は東京地下鉄、京成電鉄と沿線自治体による資本増強と運賃値上げですが、後者は元々高運賃で寧ろ値下げを求められており*8、これ以上上げれば今でさえ見有られる利用忌避が進んで逆効果ですから、結局資金支援となりますが、自治体出資の三セク鉄道故に協議がまとまるかどうかは微妙です。それでいて船橋市に請願駅が建設中*9。請願駅ですから船橋市が負担する100億円は別枠ですが、支援を求められる各自治体の協議を複雑にする可能性はあります。

以下蛇足。東葉高速鉄道の莫大な債務は工事時期がバブル期に当たり、用地買収難で事業費が膨らんだことが響いています。鉄道建設公団のP線工事という枠組みで、工事主体は鉄建公団ですが、実際には低利の資金提供で利子補給受けられるものの、実費である元本への支援はなく事業費の膨張がこの結果を生んだ訳です。債務の壁が立ちはだかる状況はわーくにの縮図です。

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Thursday, April 30, 2026

AIの壁

壁はEVだけじゃない*1。中国の計画経済はAIも同様です。特にフィジカルAIの進化著しく、ハーフマラソンで男子世界記録を更新しました*2。チャイナスピードと呼ばれるハイテク分野のスピード進化ですが、フィジカルAIは際立ちます。SDVの究極であるロボタクシーは複数都市で稼働している一方、ヒト型ロボットでは抜きんでた存在です。ハーフマラソンの成果はつまるところヒトの身体能力を超えたということを示す重大なマイルストーンです。

AIは大量のデータを学習に用いますが、ネット上のデータを使う生成AIは早くもデータを食い尽くしてしまっています。どれだけ大量でもネット上のデータ自体は有限なのに処理能力の進化で早くも天井に突き当たっている訳です。しかも元々玉石混交と言われ真偽が定かではないデータも多数あるので、下手すればウソ製造機になりかねない訳ですが、リアル世界からデータを取得するフィジカルAIならそういう問題もなく優れたデータを大量に学習できる訳です。そしてヒト型ロボットならば労働の代替に使うことも可能な訳ですが、その時に問題になるのが発熱です。制御の半導体も駆動のモーターも電気で動く訳で、抵抗熱を生みます。そして熱は半導体にとってもモーターにとっても性能劣化の原因となります。故に長距離の持久走をこなすには冷却システムが肝になる訳で、ハーフマラソンを走ったヒト型ロボットはそこを改良して結果を出したということになります。バッテリー容量の問題も制約条件になります。その意味で生身のヒトのエネルギー源は糖質などのバイオ燃料ですからロボットよりも環境ににやさしいとは言えます^_^;。

既に中国では政府補助金を得て複数社から量産型のヒト型ロボットが売り出されており、採用企業にも補助金が出る仕組みがあります。これEV普及機の販売補助金と同じですが、産業の立ち上がりを支援していずれ終わらせるという形です。この結果初期には多くのプレーヤーが補助金目当てで参入して競争を繰り広げる一方、ある段階で補助金を止めて以後市場競争に任せて淘汰を経てチャンピオンを育成するという手順となります。巨大な中国の国内市場で競争で鍛えられて勝ち残った企業はその時点で世界的大企業になるということです。

加えてメーカーのみならずユーザーにも補助金を出すことで普及を早め、EVロボタクシーのような新ビジネスにつなげるという巧みな戦略という訳です。ヒト型ロボットもいろいろな使われ方をして例えば茶摘みのような高スキルを求められる肉体労働現場にも導入されているとか。家事労働や介護などケア労働も当然視野に入りますが、一方で葬式の進行役とかコスプレなどエンタメ分野と、よくわからないところにも使われているようですが、そうしていろいろな現場で試されて最適解が求めらてそれがメーカーにフィードバックされれば好循環を生むことにもなります。人手不足で苦しむアメリカや韓国が開発を後追いしてますが、中国国内市場の圧倒的なボリューム感の前には劣勢です。但し現状AIの最先端はアメリカの生成AIにあり。中国は未だDeepSeekなどでキャッチアップする位置付けです*3。しかしAIの社会実装の観点からは中国の進め方は理に適っています。

それなのに後追いしかできないわーくに*4。27日に日経平均株価が終値で初の6万円台をつけましたが、フィジカルAI関連でファナックなど産業ロボット銘柄が買われました。日本が得意とする分野ですが、狙われてるのは現場データだったりします。今のままでは米韓企業の下請けに甘んじる可能性が高いと言えます。それでいいのか?また雇用情勢にも変化が起きています*5。AIのビジネス利用で学習コストが高いのに少子化で希少化して初任給が上昇している新卒採用を抑えようという日本企業の姿勢です。但しそうなるとAIエンジニアやデータサイエンティストが足りないから中途採用で補充しようということですね。これが横並びで起きるとどうなるかと言えば即戦力の中途採用者の待遇が上がる一方、新卒の売り手市場が終わる可能性があります。

既にアメリカでは雇用慣行の違いもあって若年失業率が高止まりしていましたが、それどころか高給取りのプログラマーやSEの解雇にまで踏み込んでいます。日本の場合はゼネラリストとして採用される文系事務職の採用減という形で現れることになります。しかしそれで得られる間接部門の合理化だけではAI活用とは言えない訳で、それによる生産性向上も限られたものとなりますし、ヒト型ロボットのところで触れたAIのエネルギー消費問題がAIデータセンターの電力爆食い問題でも生じます*6。人がこなしていた事務仕事をエネルギー消費の激しいAIで代替すればエネルギー自給率の低い日本の交易条件を悪化させて円安インフレで国民生活を窮乏化させることになります。食料自給率も低いですがエネルギーよりは輸入依存は低いし増産余地はあります。どっちがマシ?

あとここでは踏み込みませんがAIにはその他にも様々な不都合があります。その1つが日本のAI規制の緩さ、特に著作権を巡る緩さです*7。詳細はここでは踏み込みませんが、欧米でAI規制が議論されている一方で日本は基本ビジネスの邪魔はしないというスタンスです。故にデータ爆食い電力爆食いのAIデータセンターを米テック企業が日本に作ろうとしています。その結果TSMC熊本第二工場でAI向け最先端品の生産を決めたり、ラピダスの先端品の売り先として有望視されてます。しかしこれ日本のデータを搾取するに留まらず、半導体生産に欠かせない電力や水の搾取でもある訳です。しかも日本でAIを利用すればライセンス料でデジタル赤字が拡大することになります*8。日本はますますビンボまっしぐら。他にも様々な壁のあるAI分野ですが、別の機会に取り上げます。

当然日本は中国とは社会課題が異なるから日本独自の社会実装を目指す形でAIを活用する余地はあります。そんなニュースがこれです*9。欧州鉄道カンパニー発のHMAXと呼ばれるAIソリューションを横展開して送電網やビル管理に横展開するというもの。現場発のデータを生かして課題解決するものです。日本でも課題解決型のAIスタートアップは登場してますが、死の谷を越えて離陸するのを待たずに、日立のような大手企業がこうした取り組みをすることは注目されます。

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Sunday, April 26, 2026

EVの壁

製造業の壁*1冒頭の日経平均4万円の壁から1年4か月弱、最高値をつけたものの6万円の壁が立ちはだかります*2。しかも半導体関連が上昇した一方その他株は低調です。ホルムズ海峡封鎖が続く中で先行するNYダウは下げてます*3。週明けの東京市場も下げると見られます。イラン戦争の影響が長引くことを市場が織り込んでいるということです。株価の上昇自体は円安とインフレの結果ですから手放しで喜べませんが。

しかし危機感の薄いわ―くにの政府。日本船籍の船がペルシャ湾に40隻以上足止めされていて、その分輸送力が減っている上に、米国産原油その他の輸送を喜望峰ルートやパナマ運河ルートで迂回輸送することで長い船旅となり輸送効率を下げますから、運航頻度が下がって結果的に輸送力不足になります。実際タンカーや輸送船の争奪戦で運賃が高騰し、パナマ運河通航料も高騰してます。故にアメリカ・カナダ・メキシコ産の原油を代替調達しても輸送コストが上昇してますから、石油関連品の値上がりは避けられません。これインバウンドで混雑が常態化した江ノ電で、12分ヘッドのネットダイヤを維持できずに14分ヘッドに伸びた結果、所要時間が片道4分増えて運行頻度を下げて結果的に輸送力14%減で混雑を助長し、繁忙期には乗車待ちの長い列ができる状況に似ています。輸送路の目詰まりはサプライチェーンの機能を低下させます。

早速こんなニュースも*4。幸いというかバス事業者はドライバー不足で減便が相次いでいてバス自体は余っている状況で、塗装面積の広いバスの生産調整はやり易いとはいえ、現状が続けば自動車生産にも重大な影響が出るということになります。バス・トラックのディーぜルエンジンの排ガス浄化装置尿素SCRに使うアドブルーも不足してますが、これもドライバー不足が救いでも、肥料原料との取り合いは起こります。こうなると追浜と湘南の2工場閉鎖を決めた日産がEVの開発生産を中国に移しますが*5、これが正解になる可能性は指摘しておきます。

製造業の壁でも指摘したようにテスラと中国のEVメーカー以外の自動車メーカーはガラケーメーカー化していますが、それを最も実感しているのがリーフで量産EVの先陣を切った日産ということですね。特に中国のモーターやインバーターやバッテリーの進化は、中国政府の産業政策もあって爆発的なイノベーションを引き起こし、テスラも中国製造拠点でその恩恵に預かった結果、伝統的自動車社メーカーを後塵に追いやった訳です。そのキモは早すぎる技術革新に尽きます。最先端の技術を取り込むには新車開発を短期間に行う必要がある一方、市場投入後により新しい技術を纏って後追いするライバルが出る訳ですから、必然的に陳腐化が早まり中古車のリセールバリューを低下させます。それを防ぐ為にはソフトウエアでアップグレードできるようにする必要があり、CASEと言われた自動車産業の変化がSDV(Software Defind Vehicle)へと必然的に進化せざるを得なくなったということです。わかりやすく言えばパソコンやスマホのように進化が早い一方でソフトウエアの更新で性能アップすることで、ハードとしてのEV販売後の収益機会をメーカーにもたらすことになります。クルマ作りのアーキテクチャーの根本的な変化です。対応するには新車開発を短期間で行うと同時に統合車載ソフトの拡張性を持たせることが必要ということです。

その為にはモジュール単位の電子制御ユニット(ECU)を統合して最終的には高性能ECUで全体を制御するという形まで視野に入れる必要があり、単独でそこまで出来るのは日本ではトヨタがギリギリというところでしょう。その意味では結構重要かもしれないニュースはこれです*6。デンソーは既にECUやインバーター向けパワー半導体を生産してますが、EV化を睨んでのM&A提案をロームに断られました。尚、ロームとのパワー半導体統合を目指す東芝は阪急電鉄、三菱電機は大阪市交という鉄道のローンチカスタマーに育てられたパワー半導体大手です。これがトヨタの電動化に影響する可能性はあります。一方一時は日産救済の期待を背負ったホンダは大変なことになってます*7、ソニーとの合弁解消で自動運転も遅れを取ることになります。こうなったのは実は2輪車の不振が影響しています。元々4輪車は赤字体質だったけど2輪車の世界王者故の超過利潤で穴埋めされていたから競争力を維持できていたのが、アジアの新興勢が電動化で躍進して市場を奪われて狂いが生じました。50㏄原付規制に護られて対応が遅れたことも影響していると言えます。

中国の産業政策を補助金漬けと見るのは間違いで、実は計画経済の流れで政府が産業の方向性にコミットして民間企業を動員するというソビエト型から進化した市場型功利主義的計画経済と言えるもので、実はお手本は高度経済成長時代の日本です。当時ブレトンウッズ体制で1ドル360円の固定相場に護られ、安価な原材料資源を輸入して国内で加工して付加価値をつけて輸出するという加工貿易立国の前提で、主要輸出先はアメリカだから太平洋ベルト地帯に生産拠点を集め港湾を整備するという方向性は明らかでした。故に国鉄が東海道新幹線の建設を決断できました。そして実は産業政策の担い手は日銀でした。当時の金融政策は固定相場維持の必要から国内景気が過熱したら直ちに公定歩合を上げて民間融資による信用創造を抑制し、景気が冷えれば下げて融資を促進するというシンプルなものでした。その日銀が窓口規制という銀行の融資指導も行っていて、当時の通産省の助言に沿って優先融資先を産業単位で示すということをやっていました。それに沿って民間銀行が個別企業に競って融資する形で、鉄鋼、機械、自動車、石油精製、化学などの製造業を後押ししていて、丁度中国の功利主義的計画経済とそっくりでした。

政府が後押すする産業分野に優先的に融資された結果、銀行預金主体の家計貯蓄をリスクマネーに変換するという金融の基本が機能していた訳です。だから「貯蓄から投資へ」なんて誰も言わないし銀行融資による現物投資のリターンは利息の形で預金者にも還元されていました。故に中国は米ドルの通貨覇権に対抗すべく人民元の国際化を模索してますが、IMF-SDR的な通貨バスケット連動には踏み込んだけど変動相場制への移行は足踏みしている訳です。その突破口として中央銀行仮想通貨(CBDC)のデジタル人民元による貿易拡大を狙い、ウクライナ戦争で窮地のロシアやイラン戦争関連もイラン産石油取引やホルムズ海峡通行料もデジタル人民元を推していると言われています。

こういう状況ですから地獄への道のEVMJ*8が生産委託した新興企業には怪しげなものがあっても不思議ではありません。EVMJに見る目がなかっただけです。幸い地元の江ノ電バスは実績のあるBYDの大型と小型を導入しており、その完成度の高さは実車で実感しております。たかがEVされどEV。目利き力って大事です。

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Saturday, April 18, 2026

地獄への道は善意で敷き詰められている

サプライチェーンが出鱈目だった*1EVMJが民事再生手続きを申し立てました*2。果たしてホワイトナイトは現れるか?

情報が少ないんですが BusRama誌211 に掲載されたEVMJ社長インタビューで、元々インバータやバッテリーのメーカーのスタートアップ企業で自社技術を盛り込んだEVバスやトラックの製造販売を目論み、製造は中国メーカーに託すファブレス企業としてスタートし、ゆくゆくは北九州市の本社工場で最終組み立てまで行うということで、現時点で製造はすべて中国の協力会社に委ねている状況です。つまり技術系スタートアップながら自動車生産の経験はなく、中国の協力企業もBYDや吉利のような大手ではなく必ずしも実績があったわけではないようです。

EVの開発はスマホなどで見られるアジャイル開発の要素はあるし、技術革新のスピードが早く、とにかく意思決定の速さが求められることも確かですが、実車の販売となれば越えなければならないハードルは高い訳で、国内12社の自動車メーカーでもてこずっていて、特に大型商用車ではFCVバスのトヨタSORAはあるものの、耐久財の乗用車と違って産業財となりますから頑丈で長期間の使用に耐えてトラブルも少ないなどさらに高いハードルとなります。その意味でファブレスでアジャイル開発という着眼点は良いのですが、中国の複数ある協力企業の実力が伴っていなかったようで、インパネのデザインやスイッチ類の不統一とか性能のバラツキで国内向けのチューニングに苦労したようです。つまりNVIDEAのようなファブレス企業はTSMEのような高度な技術の協力工場がなければ画に描いた餅になりかねない危うさはあったと言えます。

つまり協力工場選びで躓いて実績のない中国企業に製造委託したばかりか、中国当局の保安検査でも不合格だったのに国内向けではないからと認可され、また経緯はわからないけどBYDに決まりかけた万博バスを「国産」の謳い文句で逆転して採用が決まり、実力不相応の大量受注してしまったが故に、国交省の型式認証も甘くなって以下略という流れです。大阪では府と市の危機管理が甘かったと議会で突き上げられてますが、はっきりした悪党が見当たらないという意味で、タイトルの欧州の古い諺(英語表記では The road to hell is paved with good intentions)ですが、良かれと思って悪い結果をもたらすということです。尚 BusRama も折に触れてEVMJを取り上げて所謂提灯記事かという記事を掲載してますが、メディアの性格上広告主であり業界を統べる日本バス協会が推すEVMJを悪く書けないという忖度はあったと考えられます。情報の受け手としてそれを推察できるリテラシーは大事だと気づかされます。

これオルツの循環取引事件で見られた上場スタートアップ故の数字で結果を示せという市場の圧に負けたことに似ていて、EVで劣後する日本のバス業界の期待の星という圧がこうさせたと見ることもできます。そして日本ではスタートアップが育たないという残念な現実もあります*3。おそらく政府肝いりの半導体メーカーのラピダスもこうなるかも。失われた30年は必然の結果です。

そして70年代の2度のオイルショックを上回ると見られるイラン戦争を巡る政府の危機感のなさも大概です。こんなニュースに眩暈がします*4。これ制服自衛官が国歌歌っただけなら問題ないんですが、自民党大会という政治イベントの場で、しかも制服着用でとなると自衛隊法違反を問われる問題です。「法的に問題ない」と強弁するも世論に叩かれ自民党内からも「軽率」の批判が出て高市首相も小泉防衛相も「事前に知らされていなかった」と言い逃れ。事実だとすれば文民統制に疑義が生じるし「私人としてノーギャラで」となると休暇中の自衛官歌手が呼ばれてボランティアとして制服徴用して歌ったということになってますますヤバい話になるのだが。こちらの善意はどす黒い。

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