自己紹介文
TTY時代のフォーラムに馴染んでおりましたが、さすがにブロードバンド時代になり、いつまでも「DOSが恋しい」とばかり言っていられませんので、遅ればせながらのブログデビューを果たすことにいたしました。
不慣れなため、ボチボチの慣らし運転モードで参ります。よろしくお願いいたします。
興味のあること
鉄道,バス,ドライブ
吉岡 桂子: 鉄道と愛国 中国・アジア3万キロを列車で旅して考えた
朝日新聞の記者として中国とタイの特派員として日本の新幹線輸出の現場を取材する一方、自称乗り鉄としてアジアを中心に鉄道を利用して現地の状況を解説しています。元々日本が積極的に中国に売り込んだ新幹線技術ですが、欧州企業も含めて技術移転を図る中国がいつしか日本のライバルとなって立ちはだかります。タイトルの「鉄道と愛国」は中国の愛国教育と共に温州市の高速鉄道事故で見せた日本の過剰反応やパクり新幹線としてJR東海から出入り禁止にされた川崎重工のトップ取材を通じて、政治に翻弄される鉄道の姿を浮き彫りにします。中国では胡錦涛から習近平に政権が変わってからの変化、高速鉄道計画が多数あるアジア諸国もそれぞれの政治状況ですんなり進まない高速鉄道計画、かくいう日本の整備新幹線も政治性とは無縁ではありません。驚いたの泰緬鉄道の「歴史撰」のコラム。タイ政府が観光振興から世界遺産登録を目指し日本政府が邪魔するという信じがたい事実が明らかにされてます。軍艦島や佐渡金山で韓国がクレームをつけた逆のことです。
(★★★★★)
尾上 哲治: 大量絶滅はなぜ起きるのか 生命を脅かす地球の異変 (ブルーバックス)
著者は地質学者で、ビッグ5と言われる地質時代に起きた生物の大絶滅、特に古生代三畳紀末の大絶滅について研究しています。スモールワールドと呼ばれる生物の小型化とその後の大絶滅、大気の二酸化炭素濃度の変化と気候変動、温暖化、湿潤化、乾燥化、寒冷化、酸性雨などでの陸上生態系の崩壊、岩石の風化加速で栄養塩含む土砂の海洋流入、海水の富栄耀化、生命活動活発化、無酸素化、海洋酸性化といった重大イベントが連鎖的に起きています。それらの時系列の前後関係から連鎖モデルが有力視されている現状を解説しています。但し弱点もあり、特に気候変動や生態系攪乱が進行する現代が大絶滅の前兆なのかに著者の門ぢ意識がありますが、故に後半は推論であることを前提に「間違っているかもしれない」と正直に述べております。また地質時代のタイムスケールは学、昨今の変化をどこまで説明できるかも不明です。しかし既に人間活動への支障は見えていて、ティッピングポイントと呼ばれる重大指標の中には閾値に近づいているものもあります。回避の努力は必要でしょう。
(★★★★★)
弘中 惇一郎: 特捜検察の正体 (講談社現代新書)
村木厚子、角川歴彦。小沢一郎他多数の特捜事件の被告人の弁護を受任した著者が、経験に基づいてまとめた特捜検察の問題点です。検察の犯罪ストーリーに沿った証拠集め、勝手な作文の供述彫塑、認めなければ拘留期間を引き延ばしたり別件操作したり保釈を認めなかったりして、推定無罪の原則を踏みにじっていることを示します。また捜査情報のリークで世論操作までしており、国民側もそれに惑わされないリテラシーが必要です。
(★★★★★)
小林 武彦: なぜヒトだけが老いるのか (講談社現代新書)
生物学的には老化するのはほぼ人類のみで、適者生存の結果としての繁栄であるという視点から、子育てに手がかかる母親を助けるおばおあちゃん仮説で社会性が人類の繁栄に寄与したとする観点から、長い老年期の意味を問い、そこから社会的高齢者としてのシニアの意味を問い直しています。そこから気候変動や生物多様性の消失など人類の未来に暗い影を落とす現実にシニアが対応できるかどうか、言い換えれば公共性を意識し利他的に振舞えるかが問われるということになります。若者から見れば身体能力が衰えてできないことが増えるし死の恐怖を感じるなどマイナスイメージはありますが、決してそればかりではない老いの意味を考えさせてくれます。
(★★★★★)
岸 宣仁: 事務次官という謎-霞が関の出世と人事 (中公新書ラクレ 794)
経済ジャーナリストの著者が取材に基づいて昭無きする事務次官の謎。セクハラ辞任や大蔵省不祥事(ノーパンしゃぶしゃぶ事件9、森友事件での公文書改ざんなど世間を騒がせてますが、事務機関の人気が短くなっており、お飾りになりつつある現状です。それもこれも能力によらない採用年次順送りの人事の弊害と、政治主導を標榜する内閣人事局の存在が寧ろ官邸への忖度を生み官僚機構を劣化させている現実があります。
(★★★★★)
市川 嘉一: 交通崩壊 (新潮新書)
交通まちづくりの時代(ぎょうせい2002年)の著者の交通ジャーナリストによる警告の書。当時と変わらない問題意識を持ちつつ、縦割りで総合政策不在のツギハギだらけの日本の現状を憂います。コロナ禍で様変わりした鉄道事業でローカル線維持の困難や人口減少によるs地方の過疎化でバスすら維持困難な一方、けっこくブームが沈静化したLRTなど行き当たりばったりが目立ちます。自動車の世界もCASEに代表される100年に1度の変革期に乗り遅れた日本の自動車産業。一方で自動運転レベル4の容認と低速電動モビリティの不可解に規制緩和。特に歩行者空間への乗り入れの危険性など、交通分野で起きている様々な問題を取り上げております。お勧めです。
(★★★★★)
信濃毎日新聞社編集局: 土の声を 「国策民営」リニアの現場から
中央リニア長野県駅予定地の飯田市上郷飯沼・坐光寺地区。高盛町との境界に近い郊外で、名産の市田柿記憶から不安。作りを記者が手伝いながら聞いた住民の本音。県を挙げてリニア誘致活動をした経緯から反対や不満の声を上げにくい中で、取材陣が丹念に拾った地方紙ならではの調査報道の連載をまとめて書籍化したもの。JR東海の民間事業ながら全国新幹線鉄道線整備法(全幹法)に基づく国策事業故に市や県が用地買収を受託している一方、事業の全体像は民間事業を盾に開示が不十分。地元では長野県駅として飯田線飯田駅併設を希望し、飯田駅貨物施設跡地を市が市街地再開発のタネ地として買い取ったけどバブル崩壊で地価下落して含み損。推進派も「話が違う」と恨み節。トンネル工事で発生する残土処理も県内分は3割しか行き場がなく漂流。沢や谷筋の埋立も36災害と呼ばれる大規模土石流被害の記憶から不安。残土運搬のダンプが生活道路を行き来。送電線工事のヘリの爆音。トンネル工事やダンプの事故もJR東海は開示に後ろ向き。「土の声」が示すリアルに国民は向き合うべきでは?
(★★★★★)
大江 英樹: 90歳までに使い切る お金の賢い減らし方 (光文社新書)
老後2,000万円問題ってのがありました。これが原因って訳じゃありませんが、老後不安からお金の賢い増やし方に関する本は書店で多数見かけます水平積みされてたりします。それに対して本書は真逆の減らし方の指南書です。そもそっも老後不安のナラティブに囚われていることが不幸なことであり、人生の目的はお金持ちになることではなく幸せに生きることですが、だからプライスレスな価値を言い立てるのではなく、貨幣の本質や経済の本質を踏まえた著者の持論が展開されており、大変参考になります。お勧めです。
(★★★★★)
古賀 茂明: 分断と凋落の日本
「安倍晋三の正体」を描いたドキュメンタリー映画「妖怪の孫」の原案本。元経産官僚の著者が非常識な「霞が関の常識」を踏まえて分断と凋落の進む日本の現状を分析します。酷い現実てんこ盛りですが、
余程の富裕層でない限り、国を捨てて海外移住する選択肢はない大多数の国民としては酷い現実を直視して尚希望を捨てないで立ち向かうしかありません。
(★★★★★)
古谷 経衡: シニア右翼-日本の中高年はなぜ右傾化するのか (中公新書ラクレ 790)
ネット右翼の正体はシニア。巷間謂われる若者の右傾化とは異なり、右派論壇のトンデモ言説を無批判に受け入れる50代以上のシニア層の実態は、単なる右派論壇のファンであって本屋に平積みされたヘイト本の類もほとんど買うだけで読まない。故にネット上の主張も平板でステレオタイプ。目立つけど少数派。若い頃右派論壇に関わった著者がその実態を解き明かします。加えてネット環境の進化の結果高初参入した彼らのネットリテラシーの絶望的な低さや、彼らを生み出した日本の民主主義の脆弱さを憂いています。
(★★★★★)