amazon鉄道書
- 北野 道彦: 「町民鉄道」の60年―総武流山電鉄の話 (1978年) (ふるさと文庫〈千葉〉)
第1刷発行が1978年で、その後改訂なしに増刷を続けただけに、内容は古く、また著者は鉄道に詳しいわけではないので、鉄ちゃん的には不満な内容かもしれませんが、町民鉄道という視点で流山線の通史をコンパクトにまとめたという意味で、類書のない存在です。この手の郷土史的鉄道書は、地方出版物にときどき見られますが、再販制度でがんじがらめの日本の書籍流通では埋もれた存在でもあります。それだけに、このような出版物に対して応援の意味でカンパのつもりで購入するのは意味のあることです。ひよっとしたら遺志を継ぐ若手ライターが出現するかもしれませんし、出版不況の折大手出版社の目に留まる可能性もあります。というわけでクリックキボンヌ^_^;。 (★★) 大内 雅博: 時刻表に見るスイスの鉄道―こんなに違う日本とスイス (交通新聞社新書)
スイスの鉄道といえば、接続のよさで利便性を確保することに特徴が見い出せます。当然運行時刻の正確さが前提ですが、独仏伊オーストリアと国境を接し線路もつながっているなかでの正確な運行ですから、島国の日本の鉄道の時刻の正確さとは意味が違います。どちらかといえば大都市圏の過密輸送ゆえにダイヤの乱れの影響が大きいことから時刻の正確さが追及された日本とは大違い、あくまでも旅客の利便性が基準です。最大都市のチューリッヒでも人口36万人ですから、スイス基準ではJR四国でもサービスレベルを上げられるということになります。示唆に富むスイスの鉄道ですが、都市間列車でも15分ヘッドを実現しようというプロジェクトが進行中、成長途上のスイスの鉄道の魅力が詰まった1冊です。 (★★★★)佐藤 信之: 鉄道時代の経済学―交通政策の始まり
交通政策を専門とする著者が、鉄道の歴史と経済学の係わりをわかりやすく解説した好著です。スミスの経済学、ドイツの国家主義経済学、フランスのユートピア社会主義など、各国の歴史過程と鉄道建設がうまく噛み合っております。一方で近代経済学の組マーシャルの解説と、アメリカの鉄道史、最終章の制度学派ヴェブレンの解説など、取ってつけた印象が否めないのは残念なところですが、米鉄道史を盛り込むとボリュームが肥大化してしまうところは痛し痒しです。自由競争の結果荒廃したアメリカの鉄道事情に昨今の経済事情を重ね合わせたかったのでしょう。詳細は参考文献を辿って独習するべきか。 (★★★★)青木 栄一: 鉄道の地理学
ちず鉄ブームというか、書店でも鉄道地図が平積みで売られております。地図マニアの私としては嬉しい限りですが、地図を読むには高度な知識が必要です。その意味で鉄ちゃんの一般教養の書とでもいうべき本がこれです。著者の青木栄一先生は、この分野の第一人者であることは言うまでもおりませんが、特に明治期の日本で鉄道が忌避されたという"伝説"を実証的に覆した点は見事です。海外事情にも詳しく、とりあえずこれ一冊で鉄ちゃんとしての最低限の知識レベルはクリアできそうです。というか、このレベルの知識も持たずに騙る俄か鉄ちゃんが増えた気がします。買うべし。 (★★★★★)列車ダイヤ研究会: 列車ダイヤと運行管理 (交通ブックス)
国鉄分割民営化で実態と会わなくなった"国電"に代わる"E電"の通称が「出来レース」「自作自演」と叩かれたJR東日本の実務者による列車ダイヤと運行管理に関する解説書です。E電とM電は、列車ダイヤ上では厳格な区分が存在していて、ややこしいのは、同一線区で両者が共存している場合もあるんですが、運行管理の手法が大きく異なります。こういった実務者の視点から、鉄道ファンの興味の的である列車ダイヤや運行管理について解説されてます。中身も新幹線からジョイフルトレインや保守間合いまで多岐にわたり、改めて鉄道という巨大システムが、多くの実務者に支えられていることを実感させてくれます。 (★★★★★)野村 正樹: 鉄道地図の謎から歴史を読む方法 (KAWADE夢新書)
鉄道地図帳ブームですが、元々地図には、歴史が上書きされる性格があるわけですから、その点に着眼した著書という意味で取り上げました。青木栄一先生の鉄道地理学とオーバーラップする領域ですが、買いやすく読みやすい新書版で、著者の見方や主張がコンパクトにまとめられている点で、学術書に近い鉄道地理学よりもとっつきやすい本ではあります。ただ惜しむらくは、事業者名、線名、駅名などを現在時点基準としているせいか、むしろあいまいでわかりにくい、あるいは間違いとまでは言えないけれどあいまいな部分が見られ、とかく重箱の隅つつきが得意な鉄道書分野の読者には読みづらいところもあります。この辺は編集の考え方に左右される部分ですが、手軽に買えて手軽に読める新書ゆえに編集も手軽だとしたら、いただけない話です。着眼点は悪くないだけに、残念な1冊です。 (★★)櫻井 寛: 鉄道世界遺産 (角川oneテーマ21)
筆者の日本経済新聞の夕刊コラムの連載「世界の途中下車」を加筆修正、編集したものです。タイトルの世界遺産にユネスコから指定されている4カ国の5件を冒頭で紹介して、以下は筆者の独断で世界遺産に匹敵する鉄道施設や列車を取り上げます。ただしユネスコの規定で世界遺産指定は動産は不可ですので、車両や列車が指定されることはないのですが、そこは鉄ちゃんの妄想(笑)と笑い飛ばしましょう^_^;。肩の凝らないティータイムブレークに最適です。 (★★★)西川 立一: ルミネの法則―売れない時代に売り続ける強さの秘密
消費不況の最中、増収増益を続ける企業の1つとして、JR東日本の関連会社であるルミネを挙げることができます。毎年15~30%という高率のテナント入れ替えなど、ファッションビルとしての鮮度維持に注力し、PARCOと並ぶブランドファッションビルの地位を得た結果です。CS(顧客満足)は当たり前、ES(従業員満足)で売り場に感動をという取組みなど、従来の小売企業と一線を画す取組みを経ています。JR東日本の小売部門は他にアトレ、NEWDAYS、エキナカのエキュートなど多彩ですが、相互にノンシナジーで発展していることが脅威です。結果イオン、セブン&i、ヤマダ電機に次ぐ業界第4位に位置するほど存在感を増しています。内需振興が叫ばれる昨今、身近なところの成功例として注目されます。 (★★★)小島 英俊: 文豪たちの大陸横断鉄道 (新潮新書 281)
読書の楽しみは、何より他人の経験を追体験できることです。私たちがどう強がってもかつての南満州鉄道の旅行はできないのですが、幸いにも文豪たちが紀行文を残してくれています。夏目漱石、永井荷風、里見弴、林芙美子、横光利一、野上弥生子が旅したアジア、欧州、アメリカを、ふんだんな引用で再現しています。もちろん彼らは鉄ちゃんではありませんので^_^;、他の文献で補強しながら、当時の鉄道事情を再現しております。読んで楽しい1冊です。 (★★★★)阿部 等: 満員電車がなくなる日―鉄道イノベーションが日本を救う (角川SSC新書 29)
この著者の本を取り上げるのは、勇気がいるんですが(笑)、食わず嫌いは禁物と読んで見れば、期待に背かない妄想テンコ盛りです。輸送力増強のためのイノベーションの中身が、東大須田義大教授の総2階建て車両など、どこかで見たようなものばかりで少々拍子抜けです。また低運賃政策が投資不足をもたらし混雑を生んでいるという仮説を設定しながら、論理がこなれていないのが残念です。本気で世間に論争を仕掛けるつもりならば、もう少ししっかりした思想を持ってほしいところです。というわけで暇つぶしにはいいかもしれませんが、本格的な政策論争を期待する人には食い足りない内容です。唯一評価できるとすれば、ICカード乗車券システムを利用した戦略的プライシングに言及した点ですが、着席乗車へのプライシングなどは、等級制や定員制などもっと現実的な設計解が存在します。というわけで使えないアイデアです。 (★★)
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