相模鉄道、レバレッジドリースで新車調達
日本経済新聞8/31(火)首都圏経済欄によれば、相模鉄道は2003年度に試験的に1編成8両を調達したのに続き、今年度は3編成24両をレバレッジドリースで調達、資金負担の軽減を狙います。
調達車両は10000系で、言わずと知れたJR東日本"走ルンです"(私のコテハンですね^_^;)の相鉄版。リース方式ですと、日本の会計規則ではリース料が全額損金扱いとなり税法上有利になる上、有利子負債に計上しなくてよいので、バランスシートの改善になるわけです。加えてこのレバレッジドリースの場合は、投資家から集めた資金を活用することで、調達コストを圧縮できるメリットもあります。
大まかな仕組みは、SPC(特定目的会社)を設立して金融機関から資金を借り入れ、車両メーカーに代金として支払って車両を取得、鉄道会社にリースしてそのリース料を原資とした配当を約束して負債を小口証券化して投資家に販売し、リスクを分散するものです。鉄道車両は事業用資産ですから、資産価格は原価法すなわち調達価格で計上され減価償却される形になりますが、実際に事業用資産として収益を生み出す装置という観点からは、もっと異なった価値基準で評価が可能です。リース方式によって所有者とユーザーを分けることによって、この部分の差異が顕在化するわけです。そして大都市圏の鉄道で使われる鉄道車両ならば、長期間安定的に収益を生み出すことが期待できるわけですから、このような調達方法が有利な形で成り立つというわけです。
加えて現状のような低金利のもとでは、事業の大本の資金の調達コストすなわち借り入れ金利が低いわけですから、現時点で組んだリースは将来の金利上昇局面でのリスクヘッジとなります。さらに低金利ゆえに投資家にとっては銀行預け入れ金利よりも高い利回りが期待できる分魅力的なわけで、資金調達を容易にするわけです。もちろん金利上昇時には証券の時価減価のリスクを負うわけですけど。
日本では阪急電鉄が所属車両64両の売却とリースバックを組み合わせる形で導入されたのが最初の事例ですが、この場合は減価償却によって簿価が下がっていたこともあり、リースを組むに当たっての車両価格再評価で50億円の評価益を生み出すという成果が出ました。その後同社では新車導入で活用され、関東の京成電鉄でも新車をレバレッジドリースで調達しています。鉄道事業は金を失う道と言われますが、経年で確実に所属車両は使い減りし陳腐化していきますから、計画的に新車への置き換えは避けられません。しかしバブルの後遺症でバランスシートを毀損した会社にとっては、そういった必要な投資すら滞る事態も起こります。先送りすれば確実に将来のハンデとなるわけですから、このような車両調達手段が開発されたことの意義は大きいといえます。
ま、しかし鉄ちゃんも金融知識が必要時代なんですねぇ。
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