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Friday, September 24, 2004

プロ野球、労働争議の見本として

一連の騒動も、とりあえず球団側と選手会の歩み寄りによって、ストが回避されたことは喜ばしい限りです。実際はこれからが改革の本番なんで、まだまだ気が抜けないところなんですが。
 で、選手会のがんばりにエールを送りつつ、そこはかとなく感じる違和感というか、無力感のようなものを感じてしまうのは何故なのか、そのあたりを書きたいと思います。
 どうも今回のプロ野球選手会のがんばりですが、組合本来の役割を見事に果たしたという意味で、特筆にあたいするものではないかと思うんです。戦後になって認められた労働者の争議権ですが、私たちが見てきたものといえば、イデオロギーに侵されて労働争議に名を借りた政治運動であったり、その対極に位置する労使協調路線の御用組合の両極端ばかりで、実際に組合員の生活と雇用を守る役割は忘れ去られていた感じです。実際「失われた10年」と言われた90年代に、リストラ、賃カツ、外部委託で切り崩された組合のなんと多かったことか。こうなる前に時短と賃下げを組み合わせたワークシェアリングになぜ取り組めなかったのかが悔やまれます。
 今回の球団側と選手会の合意事項は、時短はともかくとして、賃下げやサラリーキャップといった選手会側にも痛みのある内容ですし、ドラフトの見直しなどの課題も提示されています。選手にとっても年俸を下げられるかもしれない話ですから、よくぞ仲間割れせずに団結を維持できたものと感心します。
 「プロ野球スト、団結と分断」のページでも触れましたが、労使の争いでは、常に労働側が多人数で経営側が少人数となります。経営側内部で利害の衝突があっても、調整に費やす時間やエネルギーは相対的に少なくて済みます。対して労働側は、意思統一をはかって調整するだけで時間と労力を浪費します。その上経営側からは切り崩しを仕掛けられます。元々労使は対等ではないんですね。
 今回のプロ野球ストでは「高給取りのプロ野球選手が何を言うか」「違法なストであり、霜害賠償も辞さず」などの圧力発言が相次ぎました。さらに個別にはクビをにおわされた選手もいるようですし、実際スト突入前の選手会内部の事情は、必ずしも一枚岩ではなかったようです。
 ま、ここまで来れたのは、ファンの後押しがあったためといえるかもしれませんが、ある種退路を断って擬似的な共犯関係を選手会内部で醸すことができたことが勝因かもしれません。で、それは私自身の過去も含めて、日本のサラリーマン社会にもっとも欠けていたものではないかと感じます。
 自分の受け取る給料が上がることには興味があるけど、それ以外のことには反応しない組合員を抱えていては、組合の執行部も賃上げ闘争に傾斜せざるを得ないですし、会社がつぶれるなんて考えもしないから、会社からより多くのものを引き出すことに重点が置かれてしまうんですね。雇用を守るために経営陣に注文をつけるなど夢のまた夢、まして組合員に向かって「痛みを分かち合おう」などとは口が避けても言えないわけです。
 その結果どうなったかといえば、多くの企業が国際競争にさらされて利益を確保できなくなり、また厳しい現実を忘れさせる粉飾や手抜きの横行で、不祥事が表面化して破綻した企業も少なからずあります。営業部門は常に期末の数字操作の魔力にはまり、決算後にいつのまにか取り消される架空売り上げで数字を作り、心地よい実績に酔っていました。その数字を鵜呑みにして銀行も貸し出しをしました。それが後になって裏づけがあやしいということがわかって、いわゆる不良債権となったわけです。あるいは管理の手抜きやリコール隠しなどで見かけ上のコストを低く見せて「他社の追随を許さない」競争力に酔いしれて不祥事を起こした企業など、枚挙に暇がありません。
 今回のプロ野球スト騒動では、選手会はそうではない労働争議のあり方を見事に描き出してくれました。それなりに(無駄に^_^;)サラリーマン生活の長い私としては、ある種打ちのめされた感覚があるんですね。スト回避自体は喜ばしいニュースではあるけれど,思いは複雑です。

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