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Saturday, September 25, 2004

埼玉高速、賃金見直し失敗で改革に「待った!」

週刊ダイヤモンド9/18号に埼玉高速鉄道新社長の杉野 正氏のインタビューが載っています。杉野氏といえば田中康夫知事の要請でエイチアイエスから派遣されしなの鉄道社長に就任し、1年で単年度黒字に回復させた敏腕経営者です。今回埼玉県の上田知事に乞われて埼玉高速鉄道社長に就任したもので、熱い抱負を語っていました。
 鉄道事業の素人であることで、しがらみの無さから成功したしなの鉄道再建でしたが、今回の埼玉高速鉄道の場合は、素人であることがもたらした失敗といえます。
 日本経済新聞9/25朝刊首都圏経済欄の記事によりますと、東京地下鉄(東京メトロ)から出向後転職した61歳以上の運輸部門の社員の給与を700万円台から300万円台へ半減させる改革プランを杉野社長は7月末に打ち出したところ、社員の猛反発にあって該当する社員から雇用契約期限の9.21で退職を通告され、運行停止の危機に陥り、社長の謝罪文と共に案を撤回して事なきを得たということで、前代未聞の運輸社員の退職による運行停止を辛うじて回避したそうです^_^;。
 営業費に閉める人件費の比率が3割強という状況では、人件費にメスを入れること自体は避けられないところですが、該当する47人の社員は、全社員の2割程度ながら、運輸部門の中枢である指令部門に偏っていたことが、運行停止の危機を生み出すことになりました。技術部門などでも同様の事情があり、また事実上東京メトロ南北線の延長線であるという特殊な路線立地の影響もあります。
 東京メトロでは「土屋前知事の要請で株主にもなり、人的協力もしてきた」と憤り、埼玉高速には転職者以外にも39人の出向者を派遣している状況での性急な改革が、問題をこじらせたといえます。専門性の高い鉄道事業では、プロパーの現業社員の育成に3年程度の時間がかかります。新規開業の鉄道の場合、当初は他社の人的支援に頼らざるを得ない弱点が、性急な改革で露呈したわけです。
 この問題は、大都市近郊三セク鉄道に固有の問題といえます。東京メトロの前身の帝都高速度交通営団は、ご存じ特殊法人で、首都東京のの地下鉄の建設と運営を行う主体ということで、旧国鉄と東京都などの出資で設立された経緯から、都県境を越える路線の新設には制約があります。とはいえ東西線と有楽町線はそれぞれ千葉県と埼玉県に路線を伸ばしてますが、前者は公社時代の国鉄の要請で当時の総武線の混雑緩和のための緊急避難として建設され、後者は主に東武東上線との接点を和光市駅に求めた結果で、本八幡1駅だけのはみ出しに都議会の承認が必要だった都営新宿線のケースと決定的に違うのは、国の機関として超越的に振舞う権限を有していたということです。
 えと、まわりくどい話で恐縮なんですが^_^;、もろもろの制約を取っ払って営団自身で浦和美園までの路線を作ることはあり得たかどうかと考えてみればわかりやすいんですが、収益性の高い路線ならば、営団自身で理由をつけて作った可能性は否定できないんで、特殊法人改革で民営化された東京メトロではなおさらといえます。その意味で埼玉高速の不振は、元々収益性の低い路線を無理に建設してしまったことにあって、多少の経営改革で簡単に直る類の話ではないわけです。
 都心側の路線の事実上の郊外延長線という路線立地では、整備にかかる追加コストが相対的に低く、また都心側の路線の培養線としての意味があるなど、スケールメリットが活かせるという意味で、同一事業体による延伸の方が合理性があるわけです。それを敢えて行わなかったことの意味というか重みというか、そういうものが都市近郊鉄道に固有の難しさといえるかと思います。同様の路線立地の北総開発鉄道や東葉高速鉄道が軒並み不振にあえいでいるのは偶然ではありません。
 ただ実際都市近郊でも路線新設にかかる費用は莫大で、一般論として既に民間ベースの採算事業にはなりえない状況があり、鉄道の公益的性格からいって公的な資金を活用することそのものは、考えられてしかるべきでしょう。でも三セク鉄道が解答ではないことははっきりしているといえます。鉄道建設の資本費負担の大きさを考えると、上下分離に解があるのは自明かと思われますが、日本の法体系では基本的に鉄道への助成は公的主体に限定されている傾向があり、補助金を得る方便としての第三セクターという側面が強いために、鉄道への公的助成のあり方についての議論が深まりません。
 ま、上田知事にしてみれば、土屋前知事の負の遺産の後始末での躓きというのは面白くないでしょうけど、功をあせらないことが肝心でしょう。

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