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Saturday, October 16, 2004

高速バス規制緩和、富士交通の失敗

都合により運休中^_^;の鉄路的部落ですが、台風にもめげず、再開いたします。いきなり反則技のバスネタですが^_^;。
 2002年の道路運送法改正で参入規制が緩和されたバス事業ですが、新規参入のケーススタディとして、仙台市の富士交通の事例は考えさせられます。
 元々規制緩和が先行した貸切バスの事業者であった富士交通ですが、自身も後発参入の新参者で、十分な営業基盤があるとは言いがたい中、次々と新規参入が続く貸切バス事業一本では、価格競争で十分な利益を出せず、目をつけたのが高速バス事業だったわけです。
 仙台を拠点に郡山、福島を結ぶ2路線をまず開設し、既存事業者より安い運賃で同等の頻度で運行し、サービスの一環としてバスガイドを乗務させるなどの差別化政策を取るなど、意欲的なものでした。結果は惨憺たるもので、既存事業者がすぐ値下げで対抗し、富士交通も値下げで対抗、さらに既存事業者も再値下げと叩きあいの値下げ合戦となり、疲弊することになります。その間には福島駅前への乗り入れなど、既存事業者の妨害に遭いながら、公取委への摘発などで対抗しながら良く戦ったのではあります。
 さらに事態を打開すべく仙台~山形間にも参入したものの、やはり既存事業者との値下げ合戦となって、劣勢のまま8月、民事再生法適用を申請、便数削減やガイド常務中止など事業内容を見直しての再スタートとなりました。富士交通の挑戦は何が失敗だったのでしょうか。
 そもそもバス事業の中の高速バス事業ですが、一般道を走る一般路線バスと法令上の差異はありません。運賃は事業者の認可運賃が適用されるのが原則です。しかし一般路線よりも長距離であり、速度も高いので単位時間あたりの走行距離も稼げますから、実際は正規の賃率から値引きを行って、例えば並行する鉄道線の普通運賃程度の金額を恣意的に決めるというケースが多いわけです。
 その結果、高速バスは収益性が一般路線よりも高くなり、元々値下げの可能性は十分あったといえます。とりわけ片道2時間程度の路線では、ワンマン運行で1台1日2往復が可能ですから、1便14名程度の乗車で損益分岐点を越えるわけですから、乗車率の高い路線では、結構な超過利潤を得ているということです。
 だからこそ富士交通は勝算ありと判断しての高速バス参入だったはずなんですが、実はこの超過利潤が曲者でして、既存事業者にとっても値下げの原資になりうるものといえます。そして実際に既存事業者は値下げと増便で対抗し、富士交通を返り討ちにしています。
 ここで独禁法上問題になるのは、既存時業者側の値下げが不当廉売(ダンピング)にあたるかどうかですが、超過利潤がある場合、その範囲内での値下げは原価割れにはなりませんので、独禁法上は問題ないことになります。そしてそのことが富士交通の最大の誤算だったといえます。
 しかし結果として超過利潤は値下げで利用客に還元され、増便までされて利用客の利便性は高められたわけですから、誤算に泣いた富士交通の挑戦は、企業会計上は失敗であっても、国民経済上は得がたい得点といえます。結果として当該都市間の流動が活発になれば、地域経済へもポジティブな影響が出るわけです。競争政策の重要性はいささかも揺るぎないといえます。

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