脱堤、西武鉄道は自立できるか?
西武ライオンズ日本一という結果をもって2004年シーズンを終えたプロ野球ですが、同時に堤義明氏のオーナー辞任によって、西武コクドグループの役職から公式に退いたわけですが、誰もこれで堤氏の西武コクドグループ内の支配がなくなるとは見ていないでしょう。
でもいろいろな形で確実に変化の兆しは現れているというのが、この記事の要旨となります。とりあえず早稲田大学のご学友^_^;グループが経営陣から退き、生え抜きと運輸官僚出身者がトップに立つことで、本業回帰を目指す動きが見え始めているあたりに注目したいと思います。
思えば春に発覚した西武鉄道の総会屋利益供与事件が発端だったんでしょう。監査役まで身内で固めて、事実上監査が機能しない上場企業は、何も西武だけに限りませんが、その体制を維持しようとすれば、さまざまな無理を重ねる結果となり、利に敏い闇の勢力につけ込まれたとしても不思議ではありません。
結果として堤氏の腹心中の腹心である戸田博之社長と共に会長職を辞任し、社外取締役2人の選任と併せて7月に倫理委員会と業務改革委員会を立ち上げ、社内改革へと舵を切るという変化が出てきたようです。さらに取引先企業へのコクド実質保有の西武鉄道株を勧めてインサイダー取引を疑われたことで、常務取締役の白柳敏行氏が辞任に至り、堤氏側近が経営陣からいなくなるという椿事と相成りました^_^;。
結果として西武鉄道経営陣は自立経営を志向する動きが出てきたという見方となります。本業の儲けを本業に再投資するから経営基盤が強化されて経営が安定するのは、鉄道業に限りませんが、大規模な資本を要する鉄道業においては、重要な経営戦略です。例えば東急が数々のビッグプロジェクトを当初計画とは違う形であっても実現していって現在の地位を築いたこととか、国鉄資産を継承してスタートが恵まれているとはいえ、毎年着実に投資を続けるJRの姿を今の西武鉄道経営陣はうらやましく感じているようです。
しかし従来は堤氏の個人保証と保有不動産の含み益で銀行融資を引き出すことも、株式のグループ保有で株価を高止まりさせてエクイティファイナンスで資金調達することも今後は難しいわけですから、不採算事業の切り離しなどの事業の見直しが避けられないといえます。
ところがこれが曲者で、例えば日本一に輝いた西武ライオンズはコクドの完全子会社ですが、フランチャイズ球場の西武ドームは西武鉄道が保有し、ライオンズに興行権料を支払っているという関係ですが、年間20億円程度の赤字事業という現状では、見直しせざるを得ないところですが、堤氏が継続保有を希望している限りは難しいですし、同じく堤氏ご執心のプリンスホテルも、赤坂や高輪など都内の好立地物件の多くは西武鉄道の保有でテナント収入を得ている現状ですが、資金調達のために手放すことになったらどうなるかなど、不透明な要素テンコ盛り状態といえます。
とはいえやっと鉄道屋として目覚めた新経営陣には、やはりエールを送りたいと思います。
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Comments
西武鉄道系の関連企業というのはとにかく面白みがないのが最大の欠点です。鉄道ならば質実剛健でもホテルなどはある程度アメニティの部分も必要でしょう。その因子はすべて異母兄の清二氏に持っていかれてしまったのでしょうか?
プリンスホテルのレストラン「トリアノン」などが最たる例で「まずい」「地味」とおよそレストランに似合わない言葉ばかりが続きます。接客が丁寧、この点だけが唯一特筆できたのですが、それもマニュアルに沿ったものでこのあたりの考えは外部の血を入れない限り直らないでしょう。最適な外部、それが実はセゾンなんです。
Posted by: SATO | Saturday, November 06, 2004 01:54 PM
SATOさん、いつもコメントありがとうございます。
>接客が丁寧、この点だけが唯一特筆できたのですが、それもマニュアルに沿ったものでこのあたりの考えは外部の血を入れない限り直らないでしょう。最適な外部、それが実はセゾンなんです。
や、このあたり、確かにセゾンは接客系の経験豊富ではありますが、やはりオーナー企業独特の問題点があります。例えば一時期、悪天候を押して無理なフライトでヘリを墜落させて問題視された朝日航空など「オーナーの意向」を騙られて思考停止というパターンはありがちです-_-;。
西武鉄道でもオーナーへの忠誠心を競う取り巻きの行動にブレーキがかからなかったふしはありますので、総会屋利益供与事件にしろ有価証券報告書虚偽記載事件にしろ、堤義明氏の「知らなかった」は真実かもしれません。もちろん監督責任は免れないんですけど。
Posted by: 走ルンです | Saturday, November 06, 2004 05:43 PM