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Thursday, January 06, 2005

支線が元気な京浜急行

日本経済新聞1/6朝刊12面によると、京浜急行電鉄は羽田空港新国際線ターミナルに直結する地下駅の新駅を2009年12月に開業させるそうです。
 新国際線ターミナル自体は、A滑走路とB滑走路に挟まれたエリアに整備が予定されており、新設予定の第4滑走路による発着枠拡大と共に、主にアジア向けの国際定期便受け入れのための施設としてPFI方式(*)で整備が予定されています。東京モノレールも新駅設置を検討しているということで、駅周辺の整備も含めて両者の協議が05年度中にも始まる予定ということで、空港連絡輸送を巡ってほぼ半々にシェアを分け合っている両者の凌ぎ合いは続きます。

* PFI:Private Finance Initiativeの略で、わかりやすくいえば財政資金を使って民間からサービスを購入することに よる社会資本整備の手法。事業主体はあくまでも民間が担い、財政支出額を固定することで、民間のリスクとコスト管理によって、余剰金は利益に繰り入れが可能なので、それをインセンティブとして低コストで公共サービスを提供できるといわれている。

 沿線開発も一段落し、乗客の減少で電鉄各社の経営が苦しい中、増収増益を続ける京浜急行電鉄の躍進の素である空港線をさらに増収へと結びつけようとするわけです。空港を軸に羽田から全国へ“沿線”を拡張しようとばかりに、札幌や福岡の街中や地下鉄車内で広告を展開する京急ですが、新駅開業のあかつきにはソウルや上海でも広告が見られるかもしれません^_^;。
 京急といえば中間ターミナルの横浜での乗客の逸走で、東京側のターミナルである品川の存在感の薄さがあり、また京浜工業地帯の立地企業のリストラで他社に先駆けて乗客減少に直面した苦しい歴史があります。それを空港線延伸で跳ね返した格好ですが、かつては町工場の中を縫う場末感漂う都会のローカル線だった空港線を見事に生き返らせたばかりか、今や経営の柱にまで育ったわけですから、何が幸いするかわかりません。
 というよりも、何か京急は伝統的に支線が重要な役割を演じてきた感じがします。何より大師線ですが、六郷橋~川崎大師間が京急の全身の大師電気鉄道の最初の開業路線で、元々参拝客輸送を目的とした路線だったわけですが、人力車夫の組合からのクレームで川崎駅前へ乗り入れられなかったために、六郷川を越えて大森で官鉄線に接着を図ったことが、後のインターアーバンへの道をひらいたわけです。
 時代は下って昭和になると川崎や鶴見の埋立地に多数の近代工場が立地し、工員輸送を狙って傍系の海岸電軌を設立して川崎大師~総持寺(現京急鶴見と花月園前の中間)に路線を新設したものの、ほぼ並行する貨物専業の鶴見臨港鉄道が旅客輸送を開始することになって、海岸電軌は同社へ身売りされ同社の軌道線となった後に廃止されました。
 戦時中は国家総動員体勢で大師から桜本まで延伸され、再び工員輸送に沸いたものの、戦後川崎市による市電が別ルートで桜本へ達し、塩浜までの区間を市に摂取されて路線短縮を余儀なくされました。川崎市の構想としては大師線全線を譲受して環状線にするつもりだったようですが、京急は手放さずに凌ぎました。その後国鉄による新貨物駅(現川崎(タ))構想によって浜川崎から貨物線が延伸されることになり、ルートが重複する市電の桜橋~池上新田間は市電を単線化して貨物線用地を捻出したものの、池上新田から先は新貨物駅構内に飲み込まれて廃止、大師線も小島新田から先の廃止を余儀なくされました。後に市電は廃止され、大師線は残ったわけですから、なかなか皮肉な歴史のあやを感じます。
 そして川崎市は川崎縦貫高速鉄道の構想に大師線を組み込み、更に六郷川を越えて羽田空港へのアクセスを構想するも、財政難でとん挫する間に京急蒲田でのスイッチバックによる直通ルートが開設され、より低コストに実現させました。民間企業の面目躍如といったところでしょうか。
 大師線そのものは、やはり沿線立地企業のリストラの影響もあって、近年けっして営業成績が良いわけではありませんが、初詣輸送では大活躍します。割引の定期客ではなく、正規の運賃を払ってくれる優良客をまとめて輸送し、車両や要員はラッシュ輸送のない正月期間ゆえに本線から応援も出せますから、ほとんど追加コストをかけずに稼ぎ時を凌ぐわけですから、京急が大師線を手放さない理由はわかる気がします。
 そういえば三崎口へ達する路線も“久里浜線”と称する支線なんですが、どうも支線が元気というのは、京急の伝統なのかもしれません。

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Comments

私も、この記事を職場で読みました。
羽田から国際線が出るというのはいまいちピンとこないものがありますが、4本目の滑走路とあわせてさらに羽田は活気づきそうです。

そして、わずか数キロのただの一支線であった空港線が今では京急の稼ぎ頭になり、新たな需要を生んでいるところに、記事にもありますように「何が幸いするかわからない」と感じます。
最近の京急の羽田の広告は至る所で見ることができます。それこそ本当に海外でも京急の広告が出現するのかもしれません。

Posted by: Kaz-T | Friday, January 07, 2005 at 11:04 PM

京急蒲田も高架化されるのですよね。今のホームの片側から単線で急カーブを曲がるのは、これで良くさばいているなあ、と関心させられます。

Primera

Posted by: Primera | Saturday, January 08, 2005 at 12:18 AM

コメントありがとうございます。

>Kaz-Tさん
 本当に空港線の変貌ぶりは目を見張ります。羽田の国際化については、成田問題と羽田の航空機騒音問題を抱える千葉県への配慮から、国レベルではタブーだったようですが、アジアの発展によってそうは言っていられない状況になってきたということでしょう。アメリカなど太平洋方面へは成田、アジア方面へは羽田という使い分けが考えられているようですが、関空や中部との棲み分けなど課題もあります。

>Primeraさん
 蒲田の立体化事業は30年掛かりの大事業ということで、生きている間に完成を見ることができるのかわかりませんが、とりあえず現状の配線に近い姿で仮設立体化がされるようで、現場は板囲いされてます。正月の箱根駅伝で毎年の変化を楽しみにしましょう^_^v。

Posted by: 走ルンです | Sunday, January 09, 2005 at 11:02 PM

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