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February 2005

Thursday, February 24, 2005

川崎市営地下鉄 武蔵小杉経由に

川崎市営地下鉄ですが、当ブログの川崎市営地下鉄 武蔵小杉経由も検討?で既報の通り、ルート変更を打ち出しておりまして、国土交通省から難癖つけられたわけですが、結局川崎市が押し切って武蔵小杉経由にルート変更するとともに、JR横須賀線に武蔵小杉駅を設置で取り上げた横須賀線(正式には東海道本線別線)武蔵小杉駅を07年度にも設置し、武蔵小杉を1大ジャンクションにしようという計画が動き始めました。
 既に駅周辺の遊休地を中心に土地取引が活発化し始めているようで、商業施設や企業の事業所にと引き合いが出ているようです。武蔵小杉はとりあえず第1期の地下鉄整備区間の起点になるわけで、新百合ヶ丘で小田急多摩線との相互直通を打ち出してますから、現在は便利とは言い難い黒川のマイコンシティあたりも、武蔵小杉経由で東京都心へのアクセスが改善する可能性がありますので、実現すれば、確かに元住吉経由の元の計画よりも高いパフォーマンスは期待できます。
 しかし課題は整備費用です。市は事業費負担6,000億円で24万人/日の利用を見込みますが、仮に客単価を200円として年間運賃収入が170億円程度となります。年利4%で計算すると、初年度金利が240億円で元本が減らないどころか累積債務を積み上げることになってしまいます。計算上は事業として成り立ちません。しかもこれはあくまでも市の負担分だけの話で、国の補助金がほぼ同額ありますから、とてもじゃないですけど事業化は無謀です。ましてや補助金目当ての事業であれば、国の財政事情がらいっても許されない話です。
 というわけで、整備費用がネックとなってまだまだ実現のハードルは高いと思いますが、武蔵小杉を交通拠点として位置づけるなど、この辺の考え方は、鉄道空白地帯を埋めるだけの元の計画よりはずっとマシとはいえます。ちょうど秋には市長選挙があり、市民の意見を聴きながら事業推進という立場に立つ阿部市長が二選出馬の意向を示しております。果たして市民の判断やいかに、注目されます。

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“さくら”散る2005年の春

桜の開花もいまだしのこの時期ですが、ちまたでは“さくら”“あさかぜ”の廃止で鉄ちゃん胸騒ぎの今日このごろです。東京駅などでは駅撮り鉄ちゃんと駅員のバトルはあるは、沿線でも望遠片手に“お立ち台”争奪戦はあるは、果てはヘッドマーク盗難事件までと、鉄道関連の廃止イベントの要素テンコ盛り状態です^_^;。
 個人的には東戸塚の抜け道沿いにある土手にへばりついた三脚担いだカメラマンの姿を目撃して、「そういえば廃止だっけ?」と思い出す程度なんですが、以前記事にした夜行列車の生きる道で述べた通り、20系を知る世代としては、14系登場の時点で、20系に比べて省力化優先の安直な造りに失望し、既に今日を予見できたことを述べております。
 以後さまざまなテコ入れ策が講じられたにもかかわらず、結局は生き残れなかったわけですが、同時にサンライズや北斗星・カシオペアなどに、夜行列車生き残りのヒントがあることも指摘させていただきました。ただし九州夜行で実現することの難しさもあります。
 サンライズタイプの列車の難しさは、九州が交流電化であるために、交直両用車を必要とするのに対して、サンライズでは極限までスペースユティリティを追求した結果、交流20kvに対応した絶縁空間の確保が難しいという問題に直面します。解決不可能ではないでしょうけど、サンライズでさえ単独では収支が合わないといわれる中で、車両の開発費を誰が負担するかで躓きます。
 カシオペアタイプの列車は、結局のところ旅行会社の主催旅行でほとんど予約を押さえられているツアー客中心の利用実態があるわけで、今のところは富裕な高齢者世代が中心です。そして旅行先としての北海道人気に支えられているから存続できているというのが実態です。でも九州もかつては人気を集めた地域なんですが、新幹線や航空の利便性が、旅情を否定してしまうようで、カシオペアタイプの列車は望み薄と言わざるを得ません。
 あと可能性があるとすれば、外国人観光客を対象とした国際観光列車としての生き方です。特にアジア地域の経済発展によって、韓国や中国に富裕層が出現し、彼らの旅行先として日本は人気が高いようなので、彼らを受け入れるツアーの行程に組み入れることを前提とした列車設定というのは、考える余地があるかもしれません。それも例えばかつてのオリエントエクスプレスのようなヨーロッパの旧い寝台客車に狭軌台車を履かせて走らせるなど、できるだけ初期投資を抑えた形で実現できれば面白いと思います。本当は20系を復刻して走らせたいところですが、それだと初期投資が嵩む気がします。
 ま、いずれも絵空事なんですが、特に外国人向け観光列車では、ハードもさることながら海外での集客やクルーの接客、受け入れ先の観光地との連携など、JRだけで取り組めるものでもありませんし、全体をうまくコーディネートするのは結構難しいかもしれません。しかしこういうソフトパワーでこそ、日本はアジアをリードする立場だと思うんですが、悲しいかな現段階では鉄ちゃんの妄想の域を出ません。いつしか実現する日は来るでしょうか?

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Wednesday, February 23, 2005

フジテレビvsライブドアの泥仕合、一般株主の立場は?

本日夕方に、ニッポン放送がフジテレビに新株発行権を与える発表をして、予想されたことですが、ライブドアも差し止め請求をする意向を示し、事態は法廷へと持ち込まれることになりました。何かとてつもない泥仕合になってきましたが、2002年改正商法で認められた新株発行権を買収阻止に使うということについては、初めての事例であり、裁判所がどう判断するか全く読めません。この段階で素人があーだこーだ言っても仕方ないんですが、間違いなく一般の個人株主の立場は顧みられておりません。
 一応ニッポン放送経営陣は、フジテレビによる完全子会社化が「企業価値を最大化すること」であって、万が一フジテレビが権利行使をして株価下落や権利の希薄化が生じる事態に対しては、「公開TOBに応じれば株主の権利は結果的に守られる」そうで、なるほど公開TOBを有利に進めるために一般株主に追い込みをかけたというのが、実際のところなんでしょう。
 どういうことかといえば、ニッポン放送の株価がフジテレビのTOB価格を上回る状況が続いていて、25%に引き下げた目標持株比率をクリアするためには、株価自体を下げる必要があったんでしょう。でなければライブドアの株式買い付けが進んでしまうという見通しの上で、かなりきわどい禁じ手に出たというところでしょう。
 でも一般株主にしてみれば、同じ売るなら高値で買ってくれるライブドアに売った方がいいわけで、どう強弁しようとも、フジテレビ側は一般株主を損させる方向へ舵を切ってしまったわけです。そして錦の御旗が「電波の公共性」だそうです。国から電波帯域の割当を受けて外資規制などの資本規制でぬくぬくとしていて、一方で小企業が大企業の筆頭株主となって支配するねじれた構図は温存されたわけですが、いったい西武コクドグループのねじれた状況と何が違うのか、西武コクド問題をどう伝えてきたのか、全くお寒い限りです。
 気になるのが政財界のフジテレビ側へのエールですが、全く不見識です。商法改正や会計基準見直しで、グローバル時代を睨んでいわゆる国際標準に近づけるための制度の見直しが頻繁に行われていて、素人には理解しづらいものになっておりますが、平たく言えば財界からの要望の多くは、国際標準を装いながら、都合良くいいとこ取りしてサラリーマンの頂点に過ぎない経営陣に最大限のフリーハンドを与えようとする意図が見え隠れしております。今回のニッポン放送の決定も、株式交換によるM&Aが解禁される2006年改正商法で敵対的買収から会社の支配権を守るためのポイズンピル(毒薬)条項を盛り込む要望が以前から財界より出されていたときだけに、何かそれを先取りした感があります。財界にとっては焼け太りのチャンスなんです。
 てことで、「個人株主と書いてカモと読む」という証券小咄が語り継がれてきた日本の株式市場は、とんだところで閉鎖性を露呈したわけです。こんな右向き、内向き、後ろ向きな市場では、個人株主とともに外国人投資家も逃げ出します。ま、それはある種願ったり叶ったりなんでしょうけど、今後の人口減少時代に、金融的に世界から資本を引きつける必要がある日本の将来を暗くします。

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Saturday, February 19, 2005

中部国際空港(セントレア)開港で変わる?日本の空

2月17日、中部国際空港(以下愛称のセントレアと表記)が開港しました。成田、関空に次ぐ第3の国際拠点空港だそうですが、3空港それぞれに課題を抱える現実が、これから始まるわけです。言い換えれば3つの欠陥空港^_^;の時代が始まるわけです。
 セントレアの特長は、国内線の発着路線数、便数共に成田、関空を上回っている点ですが、既存の名古屋空港の代替ということで、在来路線、便を引き継いだ結果でもあるわけで、伊丹の代替で計画されながら伊丹を閉鎖しなかったためにその伊丹に国内便を取られた関空と違いを見せます。しかも名古屋空港が自衛隊小牧基地に同居していたので、緊急着陸先としては引き続き小牧も使えるわけですから、使い勝手の良さは抜群です。その一方で国際線の便数が少なく、誘致が今後の課題です。
 ターミナルをT字型に配置して両翼を国内線と国際線で使い分けるレイアウトで、テナントをそろえてショッピングその他で乗り継ぎ時間をつぶせるなど、国内線と国際線の乗り継ぎに配慮した作りですが、羽田と成田の乗り継ぎに鉄道やリムジンバスを使わなければならない現状に対してアドバンスを訴えています。この辺は後にできた空港だけに、最初から空港間競争を前提として差別化をはかっているあたり、民間主導で整備された空港らしいところを見せます。
 この辺が世界市場で競争にもまれ続けるトヨタらしさですが、競争には何か相手より少しでも勝っているところがあれば有利になるわけで、それを最初から意識している分、セントレアは成田や関空に対して優位といえます。いわば後出しじゃんけんのうま味があるわけです。
 でもこれって、成田や関空で政府が失敗したことが、ベースにあるわけです。成田は羽田の拡張と比較されたあげくに事業化が突然決定されて、今も続く歴史的反対運動を引き起こし、そのために羽田の拡張によって現実味を増した国際化がすんなり行えない事情を作り出しているんですから、最初から羽田の拡張で進めば、もっとスムーズに進んだのではないかという可能性を否定できません。同様に関空も伊丹の閉鎖が行われないまま宙ぶらりん状態では、国内線と国際線の乗り継ぎを想定した国際ハブ空港になれるわけがありません。
 空港整備で選択と集中ができなかったために、中途半端な空港が複数できて、図らずも役割分担をせざるを得なかった現実が、逆に民間事業として空港事業を成り立たせる隙間をつくったといえます。そういったところで事業を行うトヨタ自動車という会社は、なかなか目先の利いた利に賢い企業といえます。本業の自動車も、日本で組み立ててアメリカで売る車で全体の利益の7割を稼ぎ出しているように、現在の為替水準に適合したビジネスモデルが強さの秘密であって、そういった流れに乗るうまさのたまものといえるかと思います。しかしそんなことができるのも、国を管理しているつもりの政府の愚かさがあればこそ、活躍の場ができるんですから、国民にとっては迷惑であっても、トヨタにとってはすばらしい政府なんですね-_-;。「セントレアで銭湯」なんてさぶいギャグとばしてる場合だろうか。

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Tuesday, February 15, 2005

メディアは誰のものか? ニッポン放送問題で見えたもの

ライブドアによるニッポン放送のM&A問題ですが、連日メディアを賑わしてはいますが、何か未消化な印象を受けるのは、私だけではありますまい。ライブドアvsフジの対決の構図で語るか、ライブドアの真意を測りかねている困惑の態度か、それに対してフジを除くメディアに出ずっぱりの堀江社長も苛立ちを隠さないという何とも奇妙な展開を見せているのですが、何か日本のメディアの問題点、ひとことでいえば自立できていない点が垣間見えます。
 メディアの報道がわけのわからないテクニカルな問題に終始して問題の本質を見いだせずにいる一方で、インタビューに答える堀江社長の暴露話で問題の背景が見えてくるという構図は、とりもなおさずメディアが報道機関としての機能を果たしていない現実を見せつけます。
 そもそもはフジサンケイグループの複雑な株式持ち合い関係が元々あって、西武コクドグループの有価証券報告書虚偽記載事件の陰に隠れてはいましたが、企業規模の小さいニッポン放送が大きいフジテレビの筆頭株主として支配する構図に問題ありということで、フジテレビはTOB(株式公開買い付け)によるニッポン放送株の50%超取得による完全子会社化によるグループ再編を打ち出したわけです。企業グループの株式持ち合い解消は、株式の流動性を高めますから、一時的に株価の下げ圧力となるわけで、相場より高めの価格設定による公開買い付けという選択をしたと考えられます。
 しかし一方で放送法により外国人持ち株比率が20%に規制されている放送事業で、規制に抵触すれば議決権を返上しなければならないにもかかわらず、外国人による放送局特に在京キー局の株式保有意欲は強く、いずれ規制そのものも撤廃される方向性が見えているという現状で、また改正会社法によって株式交換によるM&Aなど外国企業によるM&Aがやりやすくなると言われている改正が予定されている現状で、あたかもそれらの状況を先取りするかのようなライブドアのアクションに、困惑が走っているものと思われます。なにしろ資本主義の守護神みたいな日本経済新聞までもが、堀江発言が株価の乱高下の原因であるかのような、そしてM&Aの横行を防ぐ法整備の必要性を説く論説を載せてます-_-;。
 問題はそんなことじゃないんですよね。仮にライブドアの買収が成功したとして、ニッポン放送やフジテレビがなくなるわけじゃないんです。単に会社のオーナーが代わるだけで、事業の実態がいかほど変わるのかという点こそが、国民の側から見たときの問題点なんです(*1)。

  *1   オーナーといえばニッポン放送株を8%保有し
      ていた前オーナー一族の鹿内家から今回の
      TOBの幹事証券会社の大和証券SMBCが
      5,000円程度で買い取っていた事実を堀江
      社長が明らかにしておますが、インサイダー
      取引の疑いのあるこのような事実が、報道
      機関によって伝えられないあたりに、日本
      のメディアの病んだ姿が浮き彫りになります。

 日本は自由の国で「報道の自由」があるらしいんですが、一応憲法で規定されてはおりますが、憲法は理念を規定したもので、実際の効力は個別具体的な法律によって定義されるわけです。で、前述の放送局の外資規制や新聞社による持株規制などが、個別具体法ということになるわけですが、これって経営による報道現場や編成に対する影響力の行使を前提としているわけです。でもこれって、メディア企業のオーナーになれば報道内容をいくらでも改変できることを意味します。また政治によるメディアの経営への圧力が現場へ反映されるという意味で、例えばNHKの番組改編問題に代表されるような問題を孕んでいるということになります。理念としての憲法の趣旨は実現していないわけです。
 本来的な報道の自由とは、国民の知る権利の保証手段なんですね。代議制民主主義のもとでは、国民に影響力を行使する公権力の腐敗が問題視されるわけですが、国民個々人の情報力では、権力が正当に行使されているかどうかを監視する手段を持たないので、報道機関が報道を通じて権力の監視を行うことで、国民の知る権利を保証するわけです。つまり本来メディアは国民のものであって、オーナーが誰であれ、国民の知る権利を満たす存在であるからこそ、報道の自由が権利として定義されるわけです。ですから例えばイギリスの公共放送BBCなどでは、法令によって経営の現場への干渉を禁止しています。悲しいかな日本で「報道の自由」が言われるのは、例えば権力を行使する立場にあるとは言い難い田中マキコ議員の長女の離婚問題のような、個人のプライバシーを暴いて金儲けに走るパパラッチどもの自己正当化の手段としてです。「報道の自由」が彼らへのフリーハンドを約束するものでないことは明らかです。
 長くなりましたが、報道機関として、メディアは公共性があるわけで、それ故に規制の対象になるわけですが、報道の自由を直接的に保証する法律で規制するのが本来の姿といえます。資本規制でお茶を濁そうとするから、今回のライブドアの買収劇のようなことが起こると考えるべきでしょう。

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Friday, February 11, 2005

城下町考、岐阜の場合

3月限りで廃止が決まった岐阜地区の名鉄600v区間ですが、結局代替交通機関も決まらぬまま、最後の日へ向けてのカウントダウンが続きます。
 細かい内容はよそ者の私には知る由もありませんが、地元住民も自治体も「名鉄だから大丈夫」という油断があったような印象はあります。これは岐阜地区だけの問題ではないんですが、いわゆるフリーライダー問題なんですが、公共交通の廃止のときに、必ず言われる「公共性」について、なぜか私企業である交通事業者(今回は名鉄)に対して求められてしまうんですが、変な話です。
 公共交通機関といっても、国鉄解体後の日本では、私有私営が一応の原則ですから、公共交通インフラの維持は、利用者の支払う運賃によってなされるわけで、運賃で維持費がまかなえないならば、それは社会的に存在が否定されたものとみなせるという考え方が基本なわけで、「公共性」も採算割れによって否定されるはずです。
 しかしそれでは実際に維持可能な公共交通インフラは激減するわけです。実際名鉄岐阜地区についても、赤字基調は今に始まった話ではなく、他線の黒字で赤字を穴埋めするいわゆる内部補助によって存続していたのが実態です。つまり単体としては既に存続不可能だったものを、名鉄の収益路線である犬山線・常滑線・津島線などの乗客の運賃収入で支えていたわけで、本来支えるべき岐阜の市民や岐阜市などの関連自治体は、負担を免れて「ただ乗り」していたというのがフリーライダー論の論旨です。
 ただ実際は当事者にそのような意識は乏しく、議論は迷走を余儀なくされるわけです。存続するにせよ廃止するにせよ、今まで自分たちの懐を痛めずに供給されていた交通サービスをどうするかを、いきなりつきつけられて混乱したわけですね。まぁそれでも利用者ならば存続のための多少の負担増は受け入れる余地はあるでしょうけど、市街地の商店主たちにとっては、大駐車場を備えた郊外店に客を取られて電車のせいとばかりに八つ当たりの対象でしょうから、廃止は当然、負担なんかとんでもない話なんでしょう。
 岐阜市は過去に地方博の観客輸送のシャトルバス運行に支障するという理由で市内本線の徹明町~長良北町間を廃止に追い込んだ前科があります。しかしその結果柳ヶ瀬あたりににぎわいが戻ったという話は聞きません。自治体の判断に商店主側に与するバイアスの存在が推定されます。
 そもそも城下町である岐阜の市街地をモータリゼーションに適合させ、マイカーを誘致しようとすれば、現在の町並みを全て更地にして作り直す必要がありますが、そんなことすれば当の商店主たちが真っ先に反対に回るでしょう。
 城下町の集積は近世の武家政治の結果で、徒歩交通を前提とした狭い街路、軍事上の要請による枡形と呼ばれるクランク状の道路つけ、密集した低層家屋など、およそ自動車交通を寄せ付けない条件てんこ盛りです。基本的には非生産部門である武士による統治の場所ということで、政治的に生成された集積で、いわゆる法人税など商工業者への税負担は存在しませんでしたから、皮肉ですが近代以上に商業資本主義が発展した時代にできた集積で、だからこそ地域の中核都市として明治以降の近代化の時代に、地域をリードできたわけですし、中央政府にとっても、城下町を押さえれば地域を掌握できるわけで、猥雑で不便な現状の街並みこそ、歴史的に生成された遺産なんですね。そこで商売するのに郊外店と力の勝負を試みてもうまくいくはずがありません。
 そういう意味でこの歴史的集積を前提としたまちづくりに知恵を出すのが重要なんです。歴史的街並みの中の個性的な商店にお客さんに電車で来店してもらうという発想がなぜ出てこないのか不思議です。
 といいつつ私の地元の鎌倉市でも、正月三が日の初詣客対応のための市内交通規制で、鎌倉駅周辺からマイカーを閉め出してますが、おかげでバスが時間通り走ってくれるので、1年中正月だとありがたい^_^;などとばちあたりなこと考えちゃいます。でも商工会は交通規制の時期の拡大に頑迷に反対を続けております。マイカーを規制すると売上が下がるんだそうな。しかしほとんどの商店は正月三が日に年間最大売上を記録するんで、何か矛盾してますが^_^;。
 それでも鎌倉は都市規模が小さく、いざとなれば徒歩で十分観光できますし、長谷大仏も江ノ電とバスでカバーできますから、むしろマイカーを規制したほうがうまく行くと思うんですが。
 岐阜の場合、より都市規模は大きくなりますが、中心市街地へのアクセスとして電車を活用できれば、魅力のあるまちづくりが可能だと思います。忠節や日野橋あたりに駐車場を確保して電車に乗り換えてもらう、いわゆるパークアンドライドなどで、とかく画一的になりがちな郊外店に個性で対抗できる目が出てきます。だからこそ仏コネックス社が引き受けたいと名乗りを上げる場面も出たわけです。でも結局空振りでした。
 思うにコネックス社が「市内電車と市内バスの独占営業権」を要求したあたり、欧州との制度の違いを痛感させられます。彼の地では公共交通サービスは電気・ガス・水道と同等の公益サービスであって、自然独占となる業種なので、事業者への事業免許は、同時に独占の容認を意味するということです。独占事業であるから、公共部門の監督干渉が肯定され、公共部門は事業の公益性に鑑みて補助金など必要な支援を行う一方、適切な合理化努力がなされているか監査していくという形で、自治体と事業者が契約して事業を行うという形になるんでしょう。国鉄改革の忘れ物みたいない日本の免許制度とはかなり異なった考え方です。
 で、結局日本側ではコネックス社の申し出を「名鉄にこそその権利がある」などと的外れな対応でつぶしてしまったわけです。だからといって廃止後の受け皿となる第三セクターの設立などの具体策は一切なしで、結局時間切れと相成るわけですが、世界標準となりつつあるLRTを外資の専業会社にやらせてみて、制度上の不備も含めて問題点を洗い出すチャンスを逸してしまったわけです。
 歴史に裏付けられた街並みは大事にしないし世界標準にも背を向けて、この国はいったい何をめざすんでしょうか。

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Wednesday, February 09, 2005

“愛・地球博”は岐阜を救わない

最近、更新をサボってますが^_^;、書きたいネタはあるものの、なかなかまとまらない今日この頃です。
 ま、でも一部では話題になっている愛・地球博ですが、地元以外の地域での関心がいまいちという感じです。トヨタ自動車を筆頭に好調な中部経済を誇示するがごとき雰囲気が醸し出されて、長期停滞に疲弊した他地域の視線は冷ややかになるのは致し方ないところでしょう。
 地元にとっては、博覧会自体の経済効果もさることながら、世界へのプレゼンのチャンスでもあり、また博覧会を契機とした公共インフラ整備もあって、否応なく気分が高まるわけで、交通関係だけでも星ヶ丘~万博八草間のリニモ(HSSTと呼ばれる常伝導吸引式浮上リニアモーターカー)の開業と愛知環状鉄道のJRとの直通運転に伴う増強もあって、関心を集めているものと思います。また、直接万博には関係ありませんが、中部国際空港(セントレア)の開港が間に合い、名鉄常滑線の空港延伸も実現し、とりあえず空港関係者の輸送を始めています。
 リニモは名古屋都心に乗り入れていないので、星ヶ丘で地下鉄東山線からの乗り換えで乗客を継送することになっていますが、乗り換えがネックとなって万博輸送の全量をまかなうのは無理ということで、JR中央線愛環を結ぶ名古屋~高蔵寺~万博八草間の直通列車と、万博八草でリニモに乗り換えて万博会場へという2つのルートが用意されました。輸送能力から後者が一応のメインルートという位置づけになります。
 リニモは建設線当時“東部丘陵線”と呼ばれていた路線で、いつからか常伝導リニアで建設することになっていましたが、元々は名古屋市都市計画1号線(東山線)の長久手延伸として構想されていたのですが、名古屋市の財産を市域外に取得する場合は地方自治法の縛りで議会の承認を得る必要があるので、おそらく話が進まなかったのでしょう。加えて名古屋市営地下鉄が中途半端な小型サイズの車両規格で路線を作ってしまったために、輸送能力面で延伸が難しいということもあるでしょう。実際、東山線の補完目的で桜通線が建設され、実現性はともかく若宮大通経由で笹島から丸田町を経て上飯田連絡線とあおなみ線を結ぶ線が構想されていたりしている状況で、現実的に東山線の延伸という選択はあり得なかったと見るべきでしょう。にしても万博終了後が心配なところです。
 前置きが長くなりましたが、タイトルのとおり岐阜地区の名鉄600v区間は3月いっぱいで廃止が決まっています。愛知は万博で開業オンパレードに対して、あまりに対照的な現実といえます。70年の大阪万博では北大阪急行電鉄が万博輸送で債務償還をおおかた終えて、さらに万博輸送後不要となる車両を大阪市へ売り抜けて好業績を維持した成功体験があり、大阪市も地下鉄網を一気に整備し、近鉄はじめ在阪私鉄各社も、万博で来阪した観光客で大いに潤い、関西全体が恩恵を受けたわけですが、成長経済の時代と様変わりした現在、愛知と岐阜という隣県で明暗が出てしまうわけですから、時代の変化は残酷です。元々中部圏の密集度では名古屋への一極集中が起きればまわりが枯れるのは致し方ないところです。中部圏という狭い範囲でも名古屋及びトヨタの地元の三河が勝ち組でほかは負け組になってしまうわけです。
 何ともやりきれない春を迎える中部圏ですが、果たして万博が地元ではどのように受け入れられているか、他地域に住む私にはわからないところです。長くなりましたので、とりあえずこの辺で。

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Wednesday, February 02, 2005

みなとみらい線(MM線)1周年

2月1日でみなとみらい線(以下「MM線」と記す)開業1周年となりました。1年前の開業時には、初乗りに大勢の利用者が殺到し、改札制限はおろか警察官まで出て駅の階段規制までして混乱のスタートとなりましたが、とりあえずブームは去って、普段着の姿となったといえます。
 営業成績などはこれから発表されると思いますが、当初の目論見より定期客が少なく、定期外客が多い傾向は相変わらずというところでしょう。
 ただし開業後にいろいろ動きがありまして、ランドマークタワーやクイーンズタワーなどのオフィスビルのテナントの入居率が高まり、日産自動車が新高島駅最寄りに本社移転を決めるなど、MM地区の業務地としての評価は高いようです。渋谷から最短35分で東京都区部の半分の賃料ということで人気を呼んでいるようです。東横線と相互直通運転の効果といえると思います。
 商業地区としてもクイーンズスクエアを中心に活気づき、新たにヤマダ電気などの進出も予定されるなど、まだまだ活発に動きそうです。そして沿線にマンション建設ラッシュがおきるなど、MM線が新たな需要を生み出す傾向も見えてきてます。
 しかし、その一方で横浜駅西口では三越が撤退し、相鉄ジョイナスでもテナントの入れ替えが激しく、野毛地区も地盤沈下が見られるなど、周辺の衰退と裏腹なようです。また元町や中華街では個店ごとに人気に偏りが出て、必ずしも沿線あげて好調とはいかないようです。
 さらに負の側面として週末の道路渋滞をあげておきます。上記のヤマダ電気の出店も、道路渋滞の予想がつかないということで、市の審査が長引いて用地取得が遅れている状況です。これは横浜駅前のそごうなど既存の商業施設の駐車場待ち渋滞が深刻なうえ、MM地区全体でも駐車場スペースに余裕があることもあって、マイカーでの訪問が多いことが原因で、解決は困難といえます。MM線開業以前から走る市バスの100円循環バスが、週末には駐車場待ちの車に行く手を阻まれて進めず、歩行者に追い抜かれて満員の車内から「歩けば良かった」の声が出る状況ですから^_^;、深刻です。日本一割高な100円バスといえましょう。
 またマンションの増加で新住民と地元とのあつれきも出ているようです。何より子どもが増えて学校が足りない状況ということで、都市計画の想定を超えた動きに市当局も四苦八苦というところでしょうか。
 ということで、あれこれ課題を乗せてではありますが^_^;、MM線は快走を続けています。

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