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March 2005

Saturday, March 26, 2005

地価下げ止まり? 実は投資資金流入

公示地価が発表されました。相変わらずの値下がりトレンドなんですが、一部に値上がりが見られ、かつ今回は東京以外の一部地方でも値上がりが見られたことから、またぞろ「地価下げ止まり」観測が見られます。希望的観測は結構なんですが、ミクロの現象でマクロを語る相変わらずの論調はお笑いです。
 面倒なんで先に申し上げておきますが、マクロで見た国土の地価合計は年間GDPの2.5倍程度の水準にあり、国際水準に照らせばまだ割高なんで、バブルの調整は今後も続くと考えられます。また人口減少が現実のものとなりつつありますが、典型的な希少資源である土地の配分を巡っては、人口増加局面では当然値上がりしますし減少局面では値下がりするのは当たり前の話であるということも押さえておきましょう。
 その上でなぜ値上がり地点が出現しているかですが、いくつか要因はありますが、ひとつは土地の非代替性に由来します。個々の土地は世界に一つですから、例えば丸の内や六本木の土地はそこにしかないわけで、代替不可能な少数の土地に希望が殺到すれば、当然値上がりするわけです。
 んで、その少数の希望が殺到する土地というものの実態ですが、最近の傾向はどういう上ものが乗っかっているかによって評価される傾向にあります。つまり土地は生産財であって、利用されて収益を生んで初めて評価されるという当たり前の評価軸が機能するようになってきたということです。もう少し具体的に言えば、最近値上がりした地点は、すべからく再開発された地域ということがいえます。丸の内然り汐留然り港南然りみなとみらい然りです。今回2地点で値上がりが観測された名古屋駅前は、たった2棟の高層ビル建設の結果ですし、仙台駅東口に至っては、東北楽天のフランチャイズ球場整備がきっかけということで、土地の非代替性がよく表れています。
 しかし良いことばかりではありませんで、とりわけ昨今の通信技術の進化スピードは、ちょっと古いビルを継年以上に陳腐化させてしまい、新しいビルが建って値上がりした地域の近隣の地価値下がりを増長します。かくして郊外型店舗の駅前や都心地域への進出や、容積率制限の緩い業務地域でマンションを事業化可能なレベルまで地価を押し下げる要因になっています。ま、その結果住居地域の地価も崩れて戸建ても買いやすくなるなど、これはこれで土地の再配分がうまくいっていると評価することはできますが。
 ただしこの現象の反対側には、過疎地の過疎化の進展がいよいよのっぴきならないレベルに達するという意味合いもあります。実際に居住放棄された集落が出現し始めています。そこまで極端な例はともかくとして、鉄道ファン的に重要なのは、ローカル鉄道の利用度の低下による淘汰圧力の増大です。名鉄のような大企業を以てしても岐阜地区の600v区間を維持できなかったように、地方ローカル線にとっては大逆風の時代ということになります。それは整備新幹線並行在来線転換第三セクターといえども例外ではなく、今後「新幹線はできたけど」という嘆き節が聞かれるようになると考えられます。
 かような状況下で従来の発想の延長線上には明るい未来はやってこないことだけは確実です。逆に言えば土地の非代替性故に、地方でも特長ある開発が行われれば、狭いエリアでの値上がりは可能ですし、その結果地域全体として土地の有効利用がはかられるならば、すなわち地域の活性化ということにjなります。良い例は平地が山に囲まれて利用可能地が限られるために人口の割に集積度が高く公共交通のシェアが高い長崎に見られます。同等の条件をメリハリの効いた公共投資で実現することは決して不可能ではありません。
 というわけで、鉄ちゃん的逸脱の後に本題ですが^_^;、値上がりの要因として、資金ファイナンス面での変化も見逃せません。低金利と株安で預貯金や投資資金がさまよう中で、確実なリターンが見込める不動産投信(REIT)の伸長によって、利回りの見込める一部の物件で取引が活発化した結果、選択的な地価上昇が起きているわけです。当然4月jからのペイオフ実施に伴う資金避難先という側面もあるでしょう。鉄道業界でも東急のように子会社(東急リアルエステート)を通じて沿線地域に投資物件を取得しREIT事業を行うという動きが出ています。東急は結果として投資家の資金を利用して自社沿線の再開発を促進し、土地の含み益を増大させているわけですから、本業の鉄道業とのシナジー効果を狙ったうまいやり方であるとともに、阪急が始めた沿線開発による開発利益還元の私鉄流ビジネスモデルに代わるものとしても注目されます。
 というわけで、当面不動産投信ブームは続きそうですので、投資資金の流れる先の特定物件の値上がりと近隣地区の値下がりの両面で進んでいくものと思われます。

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Wednesday, March 23, 2005

JR駅直結デパートの1人勝ち、中心街は空洞化

札幌に大丸が進出して2年目、増収となり好調ぶりを見せますが、一方では大通地区の地盤沈下が顕在化し、地域経済にとっては痛し痒しというところです。
 大型商業施設の開業2年目は、一般論では飽きられて売上低迷となることが多いのですが、JRタワーの人気は衰えず、札幌駅の乗降客の増加傾向も続き、文字通りターミナルデパートとして機能している状況が読みとれます。ま、本業を助けるという意味では、成功と評して良いわけです。
 同様に開業4年目のJR名古屋高島屋も、毎年2桁成長を続け、3年目に名鉄百貨店、4年目に三越名古屋栄店を抜いて、矢場町の松坂屋に次ぐ名古屋地区2位となり、04年2月期に累積損失を一掃する好調ぶりです。
 ここで思い出されるのが、97年開業のJR京都伊勢丹ですが、京都高島屋や大丸京都店に売上では及ばないものの、昨年11月まで61ヶ月連続増収を記録するなど、やはり好調です。
 広域集客が可能なJR駅直結の商業施設ですから、自治体単位で見たときの経済効果はあるわけですが、その結果中心街が衰退して空洞化してしまえば、いわゆるモノカルチャーの街となって中長期には衰退を余儀なくされる現実に直面します。表面上は成功に見えるだけに深刻な問題です。横浜などはまさにそうなってます。
 伊勢佐木町に立地する横浜松坂屋は、元々“のざわや”の名で知られた地場の伝統百貨店だったんですが、横浜駅周辺の開発が進んだ結果、衰退を余儀なくされて松坂屋の軍門に下ったわけですが、最近は“ゆず”コンザートで脚光を浴びるぐらいしか話題になりません。それどころか中心街を追い込んだ片割れである横浜三越も、横浜そごうの出店以来低迷が続き、今春撤退が決まっています。
 かように相似象を見せる商業地の盛衰ですが、JR駅直結の商業施設で広域に集客するまでは良いとして、そこから中心市街地へ人を誘導する知恵が現在のところ見られないのが残念です。特に札幌の状況は深刻そうです。
 横浜の場合で言えば、伊勢佐木町あたりの中心街が賑わっていたのは市電時代の話でして、手軽なアクセス手段の有無が影響しているのではないかと思います。確かに根岸線や地下鉄はできたものの、駅直結ではありませんので、街路を走る市電に比べてアクセス手段として中途半端な感は否めません。
 このあたりの事情を見ていくと、中心市街地活性化の手段としてのLRTというのは、一定の説得力を持っていると感じます。残念ながら日本ではまだまだマイナーな考え方ではありますが。

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Sunday, March 20, 2005

やっぱ起こったリニモの荷重制限停止

タイトルの通りなんですが、愛・地球博の内覧会2日目の19日、東部丘陵線(リニモ)の3カ所ほどで発車できないトラブルが発生しました。
 原因は乗客が先頭車両に集中したために荷重10トンを越えると自動的に運転停止するシステムが作動したためということで、駅員が後部車両へ乗客を誘導して9分遅れで発車したそうですが、やっぱ新線は“かぶりつき”でというのが仇になったようです^_^;。
 東京のゆりかもめでも、乗客の集中で停止するトラブルがありましたが、特にイベント輸送などで乗客が集中することはあり得るわけで、ゴムタイヤ式や常電導リニアのような荷重に適応性の乏しいシステムを採用したことが、今さらながら悔やまれます。
 新しもん好きは結構ですが、期間限定のイベント輸送への対応であればこそ、実績のあるシステムの採用が望ましいわけです。たぶん正解は地下鉄東山線の延伸だったと思いますが、諸般の事情で実現が難しかったのもまた確かでしょう。また万博後のことを考えると、乗客の減少でランニングコストのかからないシステムが望ましいわけで、万博輸送という“神風”を利用してインフラなどイニシャルコストの負担を担い、事後の負担を軽減するという考え方は理解できますが、ゆりかもめの例を引くまでもなく、間違いが繰り返されてしまうのはどうしたことなんでしょうか。
 ま、そもそも万博をのようなイベントを利用してインフラ整備しようという発想は、古くは東京オリンピックの頃まで遡りますが、このあたりは途上国の発想なんで、先進国ではもっと日常的な住民の便益を最大化する努力が地道に行われている中で、日本だけは相変わらずというのは悲しい限りです。当然こういったコンテクストが岐阜の名鉄線を廃止に追いやったわけで、イベントを誘致しないとまちづくりができないというのがそもそもおかしいんです。
 愛・地球博にしても、構想段階で海上の森(かいしょのもり)という里山を潰して会場設営をしようとして反対運動に遭ってしまい、万博開催の意義を含めて見直された結果が、環境をテーマとした万博開催だというんですが、何かとってつけたような印象は拭えません。環境を言うならば無意味な開発行為を抑制することが先決です。
 リニモは確かに磁気浮上で非粘着駆動ですから、走行抵抗が小さく環境に優しい要素はあります。また非粘着駆動故に、鉄車輪と鉄レールの粘着力で駆動する普通鉄道より勾配に強いなどでルート選定の自由度は増すわけですから、自然の地形を改変する土木工事量を減らして環境負荷を低めることにもなるでしょう。その意味で地下鉄東山線の延伸とどちらが良かったかは確かに即断はできません。それ以前に臨時的な輸送需要を生み出してしまうイベント開催そのものの意義はどうだったのか、問われるところかと思います。
 リニモもそうですしデモ運行される水素駆動燃料電池バスもそうですが、要素技術としては一定の正義があるものを並べても、それをどう活かすかという視点が欠けていれば、むしろ不正義になるんです。
 例えば燃料電池も次世代の動力源として注目されてますが、燃料となる水素を取り出す課程で化石燃料を消費します。わかりやすく言えば、水の電気分解で水素を得てそれを使って燃料電池を駆動した場合、電気分解で投入された電力量と燃料電池で発生する電力量を比較すると、後者は前者の70%止まりなんです。ま、それでも半分は熱で逃げて50%を越えるエネルギー効率を実現できない内燃機関に比べれば効率は高いわけですが、逆に言えば内燃機関と燃料電池の差はたったそれだけなんです。しかも水素は気体ですから、運搬、保管にも特段の配慮は必要です。とりあえず圧縮してボンベに詰める形になってますが、圧縮の課程でエネルギー投入が必要ですし、ボンベ自体も強度を要求されますから、現状では重量を軽減するにも限度があり、ボンベを背負って走る車はそれだけ余分な荷重を負ってエネルギーを浪費するわけで、自動車としてのパッケージングはさほど簡単ではありません。
 まぁこの辺はいずれ技術のブレークスルーで改善の可能性はありますが、要素技術段階での正義は要注意であることに変わりはありません。今や自動車のガソリンエンジンで常識と化している直噴と可変バルブタイミングの技術で、自動車の燃費は向上しましたが、ミニバンブームなどで車体が大きく重くなった結果、ガソリンの絶対的な消費量は増えてしまった現実を反省する必要があります。初代プリウスでユーザーから寄せられた高速走行時のダルさを改善した結果“ハイブリッドシナジードライブ”ならぬ“ガソリンエンジンお節介ドライブ”^_^;となって燃費を悪化させた2代目プリウスなど、やはり失敗を重ねている現実をどう評価すべきなのか、私たちにつきつけられた課題は重いといえます。

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Saturday, March 12, 2005

リストラ効果で明暗、私鉄大手15社

私鉄大手15社の今期見通しが明らかになりました。日本経済新聞3/12朝刊によれば、経常増益8社減益7社と、まだら模様で、異常気象の影響で本業が不振な中、事業のリストラ効果や関連事業の業績で左右される結果となったようです。
 かつて阪急から始まって、沿線開発によって利用者自体を創り出すというビジネスモデルは、戦後の土地神話と人口増加を追い風に、開発用地の先買いによる“含み益”を担保に銀行から資金を調達して開発事業を進めるディベロッパー的な事業に舵を切った各社でしたが、バブル崩壊と人口減少で揺さぶられており、早晩リストラは避けられない状況ではありました。しかし各社の取り組みには温度差があり、それが結果として業績を左右している状況は読みとれます。
 連結対象会社の切り離しによって、減収ながら増益を実現した近鉄や東急、逆にスーパーの相鉄ローゼンと横浜地下街を子会社化して連結売上高を増やした相鉄など、本業以外のリストラ効果で増益につながるケースが多いのが特長です。難波のホテル売却が寄与する南海と宝塚ファミリーランド閉園が寄与する阪急も“リストラ効果”組です。既にリストラを終えた小田急と京急、堤前会長逮捕でこれからリストラが本格化しそうな西武を加えた8社が増益組で、ほかは減益組となります。
 減益組で目立つのは、03年のタイガース優勝効果が剥げ落ちた阪神で、運賃収入に留まらず興行収入とグッズ収入のトリプル減が響いたわけで、業績はタイガースの成績にかかっているわけです^_^;。他の減益各社も要因はいろいろありますが、運賃収入の落ち込みが激しい上にリストラ未着手の東武鉄道は、正直なところ今後が心配です。
 私鉄各社にとって避けて通れないのが2006年から義務づけられる減損会計ですが、各社の対応は分かれており、前期に特損計上した東急と相鉄は最終損益の黒字転換、京王電鉄は増益となりますが、今期減損実施の名鉄が赤字転落のほか、小田急と阪神が減益となります。タイガースは敗れても財務の健全性では一歩リードです^_^;。
 他社は来期以降に正念場となりますが、バブル期の高値買いがない西武は含み益を吐き出せば何とかなるでしょうし、堤前会長の逮捕はリストラをやりやすくするという意味で、ラッキーだったかもしれません。しかし他社は手付かずですが、今期リストラ効果でぬか喜びする近鉄や南海や阪急でさえ、先行き不透明感は拭えません。
 そもそも減損会計については、鉄道業界で誤解がはびこっているようで、「損したときだけ決算に反映させるのはおかしい」という私鉄首脳がいたりします。事実は企業の財務の健全性を担保する意味ですし、そもそもノンキャッシュ費用として利益から無税で控除できるわけですから、そうして得た流動性を企業の未来のために活用できれば何の問題もないんですが、"黒船扱い"とは時代錯誤です。

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Thursday, March 10, 2005

N700系とFASTECH360(E954系)の間

既にJR東日本からリリースされてますが、営業世界最高速の360km/hを目指す試作車を制作、6月から東北新幹線仙台~北上間で試験走行を行うと発表されました。
 リリースでは新在直通タイプのE955系を2006年春に制作すると発表されてますので、素直に考えれば、現行の“はやて・こまち”タイプ列車の将来のスピードアップを目指していることになります。また、試験走行の結果を営業運転に反映させる時期は、かなり先と考えられますから、営業運転が実現する頃には、東北新幹線の青森延伸、場合によっては青函トンネルを越えて北海道までの開業ということも考えられますので、スピードアップの意味は大きいといえます。
 360km/hという速度がどこから出てきたものかといえば、おそらく札幌まで新幹線がつながったときに、航空との競争条件として東京~札幌4時間程度を実現できるスピードとして考えられたものと思います。東海道山陽新幹線でいえば、現行のぞみのスピードで広島あたりの時間距離に相当するもので、そう考えると、かなり意欲的な目標設定ということができます。
 もちろん実現可能性については、現時点では何ともいえないわけですが、量産前提とはいえN700系で提案された東海道山陽新幹線との将来像の落差に驚かされます。
 ま、こんなこと書くと、即座に「試作車としての位置づけが違う」とか「東海道新幹線が低規格で輸送密度が高いからスピードアップは無理」などの反論が寄せられると思います。ま、実際N700系は次世代車として量産化計画を前提としているわけですから、達成の可否もわからないFASTECH360とは、そもそも比較のしようがないわけですが、しからば東海道山陽新幹線でFASTECH360に相当する技術開発って何があるかと考えると、FASTECH360以上に実現可能性に疑問符がつく中央リニアエクスプレスぐらいしか思い当たりません。しかも中央リニアは基本的に従来型の新幹線とは直通運転できませんから、山陽区間へ向かうには乗り換えを強いられるわけで、東京~博多間で航空との競争などは意識されていないわけで、FASTECH360の方が志しが高いと思うのは私だけでしょうか。
 あと東海道新幹線の「低規格の線路で高密度輸送」の部分ですが、東北新幹線で東海道新幹線以上に低規格で高密度輸送を強いられている区間があるといえば意外でしょうか。種明かしすれば東京~大宮間のことですが、110km/hの速度制限を受けつつ1時間片道最大15本の列車を捌いています。東海道新幹線の東京発着では1時間最大で12本ですし、東京駅の着発線が東北4本に対して東海道6本ですから、東北新幹線の方が折り返し間合い時間を切り詰めて生産性を高めているわけです。短区間の話じゃないかと言われるかもしれませんが、ボトルネックとしての過酷さは相当なものです。
 東海道新幹線の場合は、とりあえず三島あたりまでは限界的な高密度輸送が続きますし、手前の熱海が棒線駅で待避不能で東京側の折り返し可能駅が東京と品川の2駅ですから、東京、上野に加えて大宮でも折り返し可能な東北新幹線よりも条件がシビアだとはいえます。また熱海の待避線設置や新横浜の折り返し設備設置は難しいでしょうから、仮に270km/hから最高速を高めようとすれば、よりボトルネックがきつくなるとはいえます。その点は認めましょう。それでも三島以西限定でのスピードアップの可能性は追求可能でしょうし、また改善が見込めるところへの集中投資は、結果的に投資効率を高めることにもなります。
 そうはいっても建設時期が古く、最高速210km/hの想定で作られた東海道新幹線と260km/hの東北新幹線では、確かに規格の差があることは確かです。ただし先に述べた大宮以南のほか、盛岡以北の整備新幹線区間でも、建設費圧縮のために曲線や勾配を規格外で作ったところがあります。つまり最高速360km/hを実現できたとしても、速度制限を受けながら加減速を繰り返すノコギリ運転を強いられることになります。そしてこういった環境下でスピードアップしようとすれば、必然的に力行性能のパワーアップは避けられないところといえます。また速度制限の影響を減らす意味での簡易振り子機構も採用されますが、現行の速度制限を回避する目的のN700系とは、その志しにおいて似て非なるものと言わなければなりません。そもそもJR西日本が500系を作ったときに「力行性能がオーバースペックで変電所が保たない」といってストップをかけたあたり、スピードアップの意思なしと見られても仕方ありますまい。
 というわけで「次世代新幹線」とひとくくりにはできませんが、N700系とFASTECH360との間には、埋めがたい志の差が存在するわけです。
 加えて北海道新幹線の新規着工を巡って与党から出された「根元受益」すなわち北海道へ新幹線が伸びれば根本を抑えるJR東日本にも受益が発生するから、建設費を負担すべしとする議論に対して、JR東日本は東京駅改良など「根元負担」もあると反論してますが、整備新幹線を機能させるためのスピードアップのための技術開発投資なども「根元負担」の一部といえます。JR東日本に建設費負担を求めるならば、このような自主的な取り組みを阻害することは肝に命じておくべきでよう。

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Tuesday, March 08, 2005

湘南町屋駅新駅舎供用開始

かねてより工事が行われていました湘南モノレール湘南町屋駅の駅舎新築工事ですが、3/1に供用開始いたしました。現在、旧階段の撤去その他の残工事を行っております。
 新駅舎は地上階(実際は土手の法面に張り出した人工地盤)上に作られていて、券売機2台に明らかに自動改札機を設置可能な改札スペースにレーンを仕切る柵が設置された無人駅で、改札内(?)に男女トイレ(手すりあり)があって、地上3階相当のホーム階へは、幅が拡がった階段とエレベーターが設置されており、多数設置された監視カメラや非常ベルと共に、バリアフリー対応工事として行われたわけですが、やはりというか、将来の合理化を織り込んだつくりとなっております。
 この工事は、鎌倉市移動円滑化基本構想に基づく事業として行われたもので、構想としては湘南深沢と西鎌倉の両駅が次の候補になっているようです。スペース的には駅直下に駅舎設置が可能な西鎌倉はいいとして、道路上に駅のある湘南深沢が難題でしょう。車庫と本社ビルのあるところへ駅自体を移転すればスペースは取れるでしょうけど、そこまでの大工事は考えづらいですし、どうなるか目が離せません。富士見町はもっと厳しいわけですが^_^;。
 一応鎌倉市の事業ですから、片瀬山、目白山下の両駅は対象ではなく、藤沢市が同等事業を行うかどうかも未確認ですが、湘南モノレールとしては、予算の付くところから順次やればよいわけで、機が熟してから親会社の京浜急行から中古品の自動改札機を譲り受けて安上がりに済ますことが考えられます。Suika対応してくれると利用しやすくなるんですが。
 ま、それでも補助金は貰えるにしても自己負担もあるわけで、徐々に慎重に進めていくということになるのでしょう。新車を投入し、ATC、列車無線、デッドマン装置を装備、全駅ホームの嵩上げまでして、おそらくワンマン化まで睨んでいてあえてスピードダウンまでしながら、上町駅下りホームと乗車口の隙間が原因で合理化が中途半端になってしまった東急世田谷線の轍は踏みたくないでしょう。湘南モノレールの場合は、3連で貫通路はあっても安全上の理由で常時施錠せざるを得ないので、これがネックになる可能性はあります。大規模な資本投下は慎重にならざるを得ないところです。

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Sunday, March 06, 2005

藤沢市“ツインライナー”の可能性Part2

前の記事で書ききれなかった部分の補足です。主に車両にスポットを当てます。
 まずは運行会社の神奈中の公式ページでリリースを見てみましょう。車両はネオプランN4421というノンステップ連接バスで、全長18mで定員130人とほぼ通勤電車1両分の輸送能力を持ち、MAN製エンジンを最後部に搭載したリアエンジンレイアウトで、国内初の採用となります。
 連接バスといえば、つくば万博シャトルバスに採用されたボルボB10Mというミッドシップレイアウトのアンダーフロアエンジンバスベースの連接バスが国内初で、富士重工がボディ架装をしたことでも話題となりました。この車の一部は東京空港交通でTCAT~成田空港間のリムジンバスとして運行された後、99年に北海道の旭川電気軌道に3台が引き取られ、朝ラッシュ限定の通学バスとして使用されています。
 国内2例目は、千葉の新都心幕張線で京成電鉄が採用したものが98年12月に登場して5年を経過しておりますが、こちらもボルボB10Mシャーシに富士重工7E類似のボディを架装したもので、排ガス対策を別にすれば、メカ的にはつくばの連接バスと変わりません。ミッドシップシャーシですから低床化はできず、ツーステップで後部に連接構造を持たせて後部車体を牽引し、後部車体を支える最後輪は逆相にステアリングして第2輪をトレースすることで、取り回しを良くしています。バリアフリー対策は、後部車体の第3扉に長大な電動スロープを仕込んでいて、かなりスペースに余裕がないと利用できないつくりです。
 国内3例目にしてノンステップ車というのは、時代の要請であるとともに、フィーダーバスとの乗り継ぎを含めて乗り易さがプロジェクトの成否を決める重要な要素となっているので、選択の余地はあまりなかったといえます。リアエンジンで第3軸が駆動軸となるわけですから、後部車体が前部車体を押す形になるわけで、日本の道路事情下での走行安定性は未知といえますが、海外で実績のある方式ですし、一般道路を通常速度で路線限定で走らせる分には、問題ないでしょう。
 問題なのは、つくばに始まる連接バスの運行認可が、今回も含めて特認の形になっている点です。路線限定はやむを得ないとしても、事前に連接バスなど道路運送車両規則の規格外の車両の導入についてガイドラインを明示しておいて、要件を満たすものは原則認可するようにすべきと考えます。例えば東京駅とつくばセンターを結ぶ高速バスに導入された15m級超長尺ダブルデッカーバス“メガライナー”では、1号車がJRバス関東に納入されてから実際の運行開始に至るまでに1年待たされているんですが、未確認情報によれば、事前に国土交通省への相談なしに現車を輸入したことで逆鱗に触れたのだそうです。事実関係は闇の中ですが、このような「憶測」が生じること自体が、制度の不透明に由来するといえます。まして地域交通の改善策として国と自治体の補助事業となっている今回のケースでは、なおさら透明性は重要です。
 思うに国内メーカーで対応できないために輸入に頼らざるを得ない国内規格外の車両が野放図に増えることを警戒して国内メーカー保護のつもりでやっているのかもしれませんが、結果的に規格外車両の開発インセンティブが働かず、必要な場合はユーザーが輸入に頼らざるを得ない状況を作り出しているように見えます。米作農家を補助金漬けにして競争力を失わせている農業政策に似た構図が透けて見えます。
 また道路運送車両規則で決められた規格を前提に道路整備が行われた結果、高さ制限3.8mをクリアするために天井の低いダブルデッカーで居住性を犠牲にしています。同様に海上コンテナの輸送効率アップで高さを増したハイキューブコンテナが増えてくると、そのままトレーラーに積んで需要地へ配送できないなどの弊害も指摘されています。この辺は新幹線以前から精力的にスピードアップに取り組んでいた国鉄が、結局新幹線を作ることでしかブレークスルーができなかった事情に似ています。このあたりで新たなルールが必要と感じます。
 例えば規格外車両の特定路線での運行を計画する事業者に自らの負担で道路インフラの改築をやらせ、代わりに課税面で優遇するなどの方法が取れるならば、今回のツインライナーを軸とする新しい輸送システムの汎用性が高まり、採用する地域や自治体も増えるでしょうし、ある程度の規模が見込めるならば、自動車メーカーによる国産化の道筋も見えてきます。愛・地球博のシャトルバスでデモ運行を予定する水素燃料の燃料電池バスなどに比べれば、ずっと開発可能性が高く応用範囲も広い技術が開発されない現実をどう考えたらよいのでしょうか。あるいはほとんど広島電鉄しかユーザーが見込めない国産超低床LRVのULRV(グリーンムーバーMAX)の開発費を国庫補助するぐらいなら、税制優遇を通してユーザーのやる気を引き出す方が効率的な補助制度になると思うんですが、私たちはまだまだ非効率な政府のもとで眠りこけるしか術がないとすれば、あまりに悲しい現実といえます。

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Saturday, March 05, 2005

藤沢市“ツインライナー”の可能性

既にニュース等で流れてますが、地域交通の整備に関する取り組みとして、注目すべき点があります。
 導入のいきさつなど詳しくは藤沢市の公式ページを参照していただくとして、マイカーからの積極的な転移を促す仕組みに新しさがあります。ひとことでいえば利便性をいかに高めるかに工夫があるわけです。
 小田急湘南台駅に相鉄いずみ野線と横浜市営地下鉄が乗り入れたのは99年のことですが、その結果同駅の利用が増大し、特に駅西口ロータリーを中心に渋滞が日常化していたわけですが、家人による送迎利用の多さがこの事態を招いているわけで、駅までバス利用に切り替えてもらうにはどうすればよいかがポイントとなります。
 バス利用をためらう理由としては、バス運賃の負担が生じるが、対価として時間通りに来るかどうかわからないバスを待ち、混雑していたりドアステップを昇るのがおっくうだったりと、心理的バリアが多数存在するわけで、少なくともマイカーを保有し送迎を担当する家人がいる家庭においては、少ない追加負担で利用できるわけですから、バス側でよほど利便性を高めなければ利用してもらえないわけです。
 そこで収容力の大きい連接バスでしかもバリアフリー対応のノンステップ車を採用し、GPS車載機とナビゲーションシステムを導入して利用者へ運行情報を提供し、バス待ちの心理負担を軽減するとともに、警察との連携で優先信号などで運行支援するPTPS(公共車両優先システム)の導入で定時運行を確保します。あと注目すべきは、急行運転によって連接バスの回転を高めて運行コストを抑える点で、現行の普通バスとは別個に、純粋に増発の形で運行されるので、乗客側にとってはスピードアップの恩恵もあり、利用に関わる心理的抵抗を軽減します。
 そして慶應義塾大学以西の交通不便エリアには“ふじみ号”の名でフィーダーバスを走らせます。バス同士の乗り継ぎは、従来の常識でいえば不安なところですが、PTPSによって定時性が高まればこそ可能性がひらけます。そして乗り継ぎの時間ロスは急行運転で取り返せるので、トータルな利便性は維持できるという考え方になります。フィーダーバスで集めた乗客を乗り継ぎターミナルで連接バスに乗り換えてもらえれば、末端の乗客が希薄なエリアで狭隘路も多いエリア向けの小型バスが多数駅前ロータリーを目指す非効率の解消となり、結果的に交通流をスムーズにするわけです。ま、この辺は実際に機能するかどうか運行開始を待たなければ何ともいえないところではあります。
 こういったケースですと、従来はモノレールや新交通システムなどの軌道系交通システムが提案されることが多かったと思いますが、車両と乗り継ぎターミナルと車載システムと警察の協力などで、既存の資源を有効活用して改善をはかるというのがミソといえましょう。実際藤沢市では軌道系交通システムの導入も検討されたようですが、投資額が莫大で財政難の自治体にとっては高いハードルだったようです。藤沢市の人口は40万人規模で、名鉄600V線の廃止問題を抱える岐阜市と人口規模は同等ですが、城下町の岐阜ほどには都市としての集積度は高くありません。そして市内の最も居住密度の低いエリアの話なんですが、岐阜市が廃止を阻止できなかったのは、あまりにも利便性の低い現状では行政のテコ入れに大義名分が立たない点です。もちろん過去の投資不足の結果ですから何を今さらなんですが、藤沢市の場合には、密集度の低いエリアであえて公共交通による需要の集約に乗り出したわけで、意欲的な取り組みといえます。3月14日の運行開始が楽しみです。

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Friday, March 04, 2005

トヨタ専用列車でCO2削減

3/1の日本経済新聞朝刊のトップ記事ですが、遅ればせながら取り上げます^_^;。
 トヨタ自動車は4月からコンテナ輸送を試験的に始め、来年秋には‘トヨタ号’と称する専用貨物列車の運行につなげる予定だそうです。運転区間は浜松(タ)~盛岡間約800kmで、三河地区に集積するトヨタ系部品工場から日通のトラック網で集荷して盛岡からやはり日通のトラックで金ヶ崎町の関東自動車岩手工場へ運ぶもので、10トントラック40台分の輸送量で満載ならば17,000トンのCO2削減になるということです。実際は現在海運で輸送されているので、3,000トン程度の削減に留まるようですが、トップの地位にある自動車メーカーの取り組みだけに、企業の製造部門に広く波及する可能性があり見逃せません。
 京都議定書の発効により、日本全体で90年時点より6%削減の国際公約がされましたが、実際は8%増加していて、また製造部門を中心に省エネが先行している日本にとっては、一層の削減は乾いた雑巾を絞るようなものと形容されることが多く難しいといわれておりますが、実際は同じ企業の事務部門の排出量がOA化の進展で増えてしまっているという具合にチグハグさが見られます。
 ごく大まかには企業部門では製造で減少事務で増加のほか、家計部門の増加と運輸部門の増加で企業の省エネ努力を食い潰すだけで足りず増加したというのが、全体を概観した日本の現状といえます。あと近年では鉄鋼など一部の素材産業で排出量が増加に転じていて、昨今の中国特需の影響が見られます。実はここら辺に今回のトヨタの取り組みの意義が見えてきます。
 中国や東南アジア、インドなどアジア地域が世界の成長センターとして離陸し始めた中で、ひと足早く成長を果たした日本のポジションは微妙です。特需で共に成長できる大きなチャンスであるとともに、拡大する需要に盲目的に追随すれば、CO2排出量を増やしてしまう悩ましいジレンマに直面しているわけです。京都議定書の枠組みでは、排出権取引ができることになっていますが、アジア向けに生産を拡大したときに想定される排出量の拡大分は排出権の購入で補う必要があるわけで、企業としてはコストアップ要因になるわけです。
 それでも需要されれば生産を拡大しなければ機会損失(チャンスロス)が発生して企業収益を縮小させるわけですから、企業としては解決を模索する必要があるわけです。大まかな解決策としては、生産以外の部門で排出量を削減するか、生産そのものを海外へシフトするかしかないわけですが、社内ネットワークインフラの重要性は例えば生産の海外シフトを行う場合などは生命線ともいえるわけで、事務部門での削減は難しいので、運輸部門でという流れになります。そしてこれは、自動車メーカーとしては自己否定につながりかねない難しい決断だったといえます。
 もちろん今回のトヨタ自動車の専用列車への荷の移行は、それだけ見れば微々たるものですが、他の企業の追随の可能性を考えると、系列の大型トラックメーカーの日野のユーザーを切り崩すことにもなりかねない危うさが潜みます。それに留まらず、現在は不採算部門として旅客会社の線路使用料ディスカウントという事実上の補助によって維持されている鉄道貨物輸送を採算ラインに引き上げる可能性を秘めており、整備新幹線並行在来線問題で明らかになったように、実質的に地方では幹線ルートでさえローカル輸送で単独採算がとれない中で、貨物輸送があることが存続の命綱になった現実を見れば、鉄道貨物輸送の拡大は、現在の枠組みを逆転させた貨物によるローカル旅客輸送への内部補助の可能性を拓くという意味で、中長期的に乗用車の売れ行きに影響を与える可能性があります。この辺は国内市場の将来をある程度見切ってアジアシフトという思惑もありそうです。
 既に個別企業で松下やキヤノンなどでもモーダルシフトは行ってますし、自動車メーカーでも日産が九州工場向けに部品輸送を行ってます。またトラックユーザーである佐川急便では、東京~大阪間の“スーパーレールカーゴ”で宅配荷物の鉄道シフトをしているわけで、トヨタの決断は目新しいものではないかもしれませんが、他社への影響力という意味は大きいといえます。
 翻って同じ中部財界の一角にありながら、貨物を目の敵にする某社はどう見ているでしょうか。案外トヨタの方が鉄道の未来を的確に捉えているかもしれないですね。

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