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Sunday, March 06, 2005

藤沢市“ツインライナー”の可能性Part2

前の記事で書ききれなかった部分の補足です。主に車両にスポットを当てます。
 まずは運行会社の神奈中の公式ページでリリースを見てみましょう。車両はネオプランN4421というノンステップ連接バスで、全長18mで定員130人とほぼ通勤電車1両分の輸送能力を持ち、MAN製エンジンを最後部に搭載したリアエンジンレイアウトで、国内初の採用となります。
 連接バスといえば、つくば万博シャトルバスに採用されたボルボB10Mというミッドシップレイアウトのアンダーフロアエンジンバスベースの連接バスが国内初で、富士重工がボディ架装をしたことでも話題となりました。この車の一部は東京空港交通でTCAT~成田空港間のリムジンバスとして運行された後、99年に北海道の旭川電気軌道に3台が引き取られ、朝ラッシュ限定の通学バスとして使用されています。
 国内2例目は、千葉の新都心幕張線で京成電鉄が採用したものが98年12月に登場して5年を経過しておりますが、こちらもボルボB10Mシャーシに富士重工7E類似のボディを架装したもので、排ガス対策を別にすれば、メカ的にはつくばの連接バスと変わりません。ミッドシップシャーシですから低床化はできず、ツーステップで後部に連接構造を持たせて後部車体を牽引し、後部車体を支える最後輪は逆相にステアリングして第2輪をトレースすることで、取り回しを良くしています。バリアフリー対策は、後部車体の第3扉に長大な電動スロープを仕込んでいて、かなりスペースに余裕がないと利用できないつくりです。
 国内3例目にしてノンステップ車というのは、時代の要請であるとともに、フィーダーバスとの乗り継ぎを含めて乗り易さがプロジェクトの成否を決める重要な要素となっているので、選択の余地はあまりなかったといえます。リアエンジンで第3軸が駆動軸となるわけですから、後部車体が前部車体を押す形になるわけで、日本の道路事情下での走行安定性は未知といえますが、海外で実績のある方式ですし、一般道路を通常速度で路線限定で走らせる分には、問題ないでしょう。
 問題なのは、つくばに始まる連接バスの運行認可が、今回も含めて特認の形になっている点です。路線限定はやむを得ないとしても、事前に連接バスなど道路運送車両規則の規格外の車両の導入についてガイドラインを明示しておいて、要件を満たすものは原則認可するようにすべきと考えます。例えば東京駅とつくばセンターを結ぶ高速バスに導入された15m級超長尺ダブルデッカーバス“メガライナー”では、1号車がJRバス関東に納入されてから実際の運行開始に至るまでに1年待たされているんですが、未確認情報によれば、事前に国土交通省への相談なしに現車を輸入したことで逆鱗に触れたのだそうです。事実関係は闇の中ですが、このような「憶測」が生じること自体が、制度の不透明に由来するといえます。まして地域交通の改善策として国と自治体の補助事業となっている今回のケースでは、なおさら透明性は重要です。
 思うに国内メーカーで対応できないために輸入に頼らざるを得ない国内規格外の車両が野放図に増えることを警戒して国内メーカー保護のつもりでやっているのかもしれませんが、結果的に規格外車両の開発インセンティブが働かず、必要な場合はユーザーが輸入に頼らざるを得ない状況を作り出しているように見えます。米作農家を補助金漬けにして競争力を失わせている農業政策に似た構図が透けて見えます。
 また道路運送車両規則で決められた規格を前提に道路整備が行われた結果、高さ制限3.8mをクリアするために天井の低いダブルデッカーで居住性を犠牲にしています。同様に海上コンテナの輸送効率アップで高さを増したハイキューブコンテナが増えてくると、そのままトレーラーに積んで需要地へ配送できないなどの弊害も指摘されています。この辺は新幹線以前から精力的にスピードアップに取り組んでいた国鉄が、結局新幹線を作ることでしかブレークスルーができなかった事情に似ています。このあたりで新たなルールが必要と感じます。
 例えば規格外車両の特定路線での運行を計画する事業者に自らの負担で道路インフラの改築をやらせ、代わりに課税面で優遇するなどの方法が取れるならば、今回のツインライナーを軸とする新しい輸送システムの汎用性が高まり、採用する地域や自治体も増えるでしょうし、ある程度の規模が見込めるならば、自動車メーカーによる国産化の道筋も見えてきます。愛・地球博のシャトルバスでデモ運行を予定する水素燃料の燃料電池バスなどに比べれば、ずっと開発可能性が高く応用範囲も広い技術が開発されない現実をどう考えたらよいのでしょうか。あるいはほとんど広島電鉄しかユーザーが見込めない国産超低床LRVのULRV(グリーンムーバーMAX)の開発費を国庫補助するぐらいなら、税制優遇を通してユーザーのやる気を引き出す方が効率的な補助制度になると思うんですが、私たちはまだまだ非効率な政府のもとで眠りこけるしか術がないとすれば、あまりに悲しい現実といえます。

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