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Tuesday, April 26, 2005

スーパーひたち脱線に見る尼崎との違い

はからずも事故の話題が重なるのは本意ではないんですが、メディアの論調に気になるところがありまして、記録に留めたいと思います。
 ま、確かに昨日の今日ですから、尼崎と関連づけてみたくなるのが人情でしょうけど、両者は全く無関係です。常磐線羽鳥駅近くの踏切で脱輪したトレーラーにスーパーひたち23号が衝突し先頭台車が脱線したんですが、損傷の度合いは尼崎の事故とはだいぶ違います。
 元々一次元方向に動きが制約された鉄道においては、正面衝突こそが危険なのであって、衝突を回避するためにさまざまな保安装置が装備され、また鉄道車両も正面は強固に作られていて、大型トレーラーにぶつかったぐらいでは大破しないし、また簡単に脱線もしないし、仮に脱線してもよほど条件が悪くない限り転覆しないんです。かくも安全な交通機関だということを再確認しておきたいと思います。
 鉄道ではフェールセーフという考え方でシステムが構築されていて、異常が発生しても安全側に作用するように考慮されています。ですから鉄道事故は通常単一の原因で起きるわけではなくて、いくつかの複合原因が重なって、幾つもの防護措置をくぐり抜けて事故に至るものです。また過去の事故の解析によって、システムとしての安全度は一般論としては向上します。高い確率で起きる事故に対する防護、被害の最小化も考慮されているわけです。
 その意味ではカーブで脱線して重く巨大なマンションに激突するというのも、折り重なって横向きになるのも、側面を損傷するというのも、尼崎事故がかなり特異な事故であるということです。軽量化による車体強度不足を指摘されたりしてますが、さまざまな安全対策で側面衝突自体が起きないようになっているのが鉄道の特長でもあるわけですし、仮に装甲車のように頑丈な側面にすれば、重量増によって列車の運動エネルギーが増しますから、衝突の衝撃はそれだけ大きくなるわけで、車体の損傷は免れてもマンションの倒壊などでより深刻な被害が出る可能性もあります。この辺は高校の物理の問題だと思いますが-_-;。
 今必用なことは、必要以上に情緒的にならず、冷静に正確な事実関係を見つめることでしょう。また鉄道の安全性は過去の事故の教訓によって得られたものだということを思い起こしていただきたいです。正しく原因究明され再発防止が図られるのでなければ、今回の事故の被害者の皆さんは浮かばれません。
 少なくともスーパーひたちの事故では、むしろ鉄道の安全性を再確認できたということを申し上げたいところです。

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