« 尼崎事故ATS、緩和曲線、非常制動etc. | Main | ユーザーのふそう離れ? 気になる近所のバス »

Tuesday, May 03, 2005

福知山線、ATS-P設置で運転再開とは?

いささか食傷気味な事故ネタですが、あくまでもメディアの事故報道にフォーカスして続けます。メディアのミスリードが私たちの将来の安全を脅かさないためには重要です。
 で、タイトルのような報道に接して絶句しております。大まかな流れとして、一昨日のJR西日本の会見で「ATS-P設置が必ずしも運転再開の条件ではない」とする見解を述べた翌日の昨日になって「ATS-P設置してから運転再開」と態度を変化させた流れがひとつあります。一方で北側国土交通大臣がほぼ同時刻に「信頼を得るシンボルとして」ATS-P設置を運転再開の条件とすることを表明し、JR西日本の記者会見でも「国交省の指示の有無」に関する不毛なやりとりがなされたようです。ホント、メディアのバカ記者どもにつけるクスリが欲しい-_-;。
 それ以上に不愉快なのが、政治家でもある現役閣僚の売名行為に利用されたことです。次の選挙では落選させましょう(怒)。
 前の記事でATSなどの安全装備について解説させていただきましたが、機械任せの安全対策は必ずしも万全ではありません。107名もの尊い人命が失われた事故に対する所轄官庁の現役閣僚の発言として、これほど国民をバカにした話はありません。でもこんなことが起きるのも、メディアのミスリードがあればこそです。権力に易々と利用されてしまうメディアって何なんだ!と吼えさせていただきます(激怒)。
 ATSに関しては、あくまでもヒューマンエラーをバックアップするものであるということを繰り返させていただきます。高級な装備に交換すれば、それだけで事故が防げるというものではないんです。前の記事でも書きましたが、旧式のATS-SWでも速度照査機能を持たせることは可能ですし、実際、5/2付日本経済新聞夕刊の記事によれば、JR西日本での危険箇所17カ所で設置済みだったんですが、福知山線に関しては、ATS-P導入予定があったので、速照機能付ATS設置を見送ったとあります。JR西日本自身が事故地点の危険性を十分認識していたと同時に、新型ATS設置予定があったがために安全対策の先送りをしていたという重大な問題なんですが、現在のところ電波メディアでは伝えられておりません。
 その一方でJR東日本常磐線の小木津駅での170m,オーバーランを伝えております。170mというのは確かに大きなオーバーランですが、尼崎の事故がなければ、ここまで大きく取り上げられたかどうか、やはり過剰反応と申し上げるしかありません。「バックすると踏切鳴動システムの誤作動の可能性がある」として次駅への進行を指示した指令の判断は、安全側へ判断したという意味で誉められるべきものですが、メディアの扱いは違いますね。果てはヘビが原因の東海道新幹線停電の報まで飛び出し、全国の視聴者に黒こげのヘビを見せるのに何の意味があるのか、ホントことばを失います。
 スピード競争、過密ダイヤなど、事故の背景として語られることも多くなりましたが、安易に事故と結びつける論調には辟易します。事業者としてのJR西日本の危険認識こそが問題なんで、例えば関東の京浜急行では、福知山線よりも過密で神業的なダイヤを、既にJRでは使われなくなった旧国鉄ATS-B形の改良型で乗り切ってます。当然さまざまな安全対策が工夫されているんですが、事業者としての「事故を起こさない」意識こそが大事だということを教えてくれます。

| |

« 尼崎事故ATS、緩和曲線、非常制動etc. | Main | ユーザーのふそう離れ? 気になる近所のバス »

ニュース」カテゴリの記事

鉄道」カテゴリの記事

JR」カテゴリの記事

鉄道事故」カテゴリの記事

Comments

 TBありがとうございます。
 しかし、安全第一を乗る利用者としては、求めるのですが、今回のJRの対応と国の対応が何か釈然としない感じです。また、当ブログに引き続きこの件については載せようと思いますので、時々遊びに来て下さい。

Posted by: シュリマスター | Tuesday, May 03, 2005 04:39 PM

こちらこそ、突然のTB失礼いたしました。
 事故報道に接して、情報が錯綜して、どこに正しい情報があるのか、見えにくいのですが、それに乗じての悪だくみ許せません。
 現実問題として、ATS-Pの設置を条件にすれば、今月中の運転再開はほぼ不可能と考えて良いですが、毎日利用しなければならない沿線住民に犠牲を強いることは忘れ去られているんですね。今後とも注目していきたいと思います。

Posted by: 走ルンです | Tuesday, May 03, 2005 05:02 PM

初めまして。JR西日本の危険認識こそが問題は、全くその通りだと思います。
 ただ、停車時間15秒はやはりひどすぎます。規定通りにやったら絶対無理な時間です。そういう意味では、過密が問題ではなく、ダイヤ内容それ自身が問題では。http://www.doro-chiba.org/nikkan_dc/n2005_01_06/n6087.htm
 

Posted by: tiba-tetu | Thursday, June 02, 2005 09:20 AM

コメントありがおうございます。
 ダイヤに問題があったことは、現時点でかなりはっきりしてきてますし、おっしゃるとおりなんですが、なぜそんな無理なダイヤを組んだのか、現場からのフィードバックがなかったのはなぜかなどなど、問題テンコ盛りで、ダイヤを手直しすればよしとも言えませんし、ATS-Pも本来は列車間隔を制御する仕組みであって、速度制限箇所に対して速度照査機能を持たせるには、専用の地上子が必要ですし、第一福知山線を走る車両の一部にはATS-S車上子しか持たないことも忘れられてますし、こうやって不正確な情報が交錯するうちに、既に事故の風化の始まりを感じるのは私だけではありますまい。
 ただし、鉄道を含む運輸事業においては、従業員1人あたりの輸送人キロや輸送トンキロなどの指標で容易に生産性が計れる業種であり、その観点からすれば、より少ない人数でより大勢またはより大量のものをより遠くまで運ぶことに関する経営サイドからの要請は当然ですし、その答案としてのスピードアップなども、それ自身責められるべきものではありません。問題はそれを安全に行えるかどうかなんですが、あいにくATSの設置基準なども法令で規定されていない中で、事業者の自主性に依存している現実はあります。だからいつも事故が起きてから対策されるんですね。

Posted by: 走ルンです | Thursday, June 02, 2005 05:17 PM

Post a comment



(Not displayed with comment.)




TrackBack


Listed below are links to weblogs that reference 福知山線、ATS-P設置で運転再開とは?:

» ATS [ブログで情報収集!Blog-Headline]
「ATS」に関連するブログ記事から興味深いものを選んでみました。ぜひ、読み比べし... [Read More]

Tracked on Tuesday, May 03, 2005 12:57 PM

» 祭日なのに仕事です。 [シュリ’s Caffe]
 今日は、祭日なのに仕事です。  営業と言う仕事なので、祭日は出勤しても仕事はあまり有るものではございません。  今日は、営業所は余り人がいないので朝から電話番です。  お金が詰まった、ゴミが一杯等の電話が沢山来ます。  午後から、外に行く予定です。    一週間以上経った、今JR西日本尼崎列車脱線事故色々取りざたされていますが、最新情報では非常ブレーキが掛かった状態だったとの事です。  確かTVでは、非常ブレーキはあの状況では掛からないと言っていた様な気がします。  そして、ATS... [Read More]

Tracked on Tuesday, May 03, 2005 04:39 PM

» 新型ATSだの、側面強化だの… [新津田沼駅]
新型ATS、車体強化… 安全対策足踏み 全国のJR各社 事故は事故として、JR西日本の責任は絶対に免れるものではありません。 記者会見での逃げの姿勢や情報の錯綜、日勤教育に代表される社内環境の問題など、批判されて当然のことが次々に出てくるので、利用者の目が厳しくなるのは当たり前です。 しかし…。 国土交通省は、JR宝塚線の運転再開について、「新型ATS(ATS-P)の導入後」を条件とする意向の様子。 まぁ、気持ちはわか�... [Read More]

Tracked on Tuesday, May 03, 2005 06:13 PM

» 宝塚―尼崎間の運転再開、最新ATS導入後に [Mizunoto Note]
北側国土交通相は2日、JR福知山線の脱線事故で不通となっている宝塚―尼崎間の運転再開について「新型ATSの整備が前提だ」と述べ、最新型の自動列車停止装置「ATS―P」の整備をJR西日本が同線で完了させない限り、認めない考えを明らかにした。JR西日本はこれ... [Read More]

Tracked on Tuesday, May 03, 2005 07:52 PM

» 西日本旅客鉄道JRWESTの課題 [偶然に身を任せて]
新式ATS(列車自動停止装置)が導入されていれば今回の事故は防げたと聞く。確かにそうなのだろう。JR西は6月にも新型ATSの使用開始を予定していたというから、遣り切れなさはどうしても残る。 でも。... [Read More]

Tracked on Wednesday, May 04, 2005 12:46 PM

» JR西日本 宝塚線でATS-P型の設置工事を再開 [Jariaの玉手箱]
関連: 朝日新聞:JR宝塚線で新型ATS設置工事 国交相の意向受け マスコミ各社の報道によると、今月2日に北側国交相が「ATS-P型を設置しなければ、事故路線の運行再開を認めない」との意向を示したとか。 で、これを受けてJR西日本は大慌てでATS-P型の設置工事を再開したそうです。 現時点では原因が分からない以上、北側国交相に言われるまで既存のATS-SW型のままで運行再開しようとしたJR西日本を責めるつもりはありません。 それよりも、大臣に限らず、マス�... [Read More]

Tracked on Wednesday, May 04, 2005 06:08 PM

» 福知山線再開の条件 [GonbeのMyBlog]
この記事に関連する項目もご覧ください http://blog.so-net.ne.jp/Gonbe123/2005-04-27(福知山線事故について) http://blog.so-net.ne.jp/Gonbe123/2005-04-29(現場第一主義なぜできない) http://blog.so-net.ne.jp/Gonbe123/2005-05-02(JR西日本なぜそこまで?) とりあえず、福知山線事故関係で自分が記事化するのはこれで区切りを打ちたいと思います。かなりの反響があり、この関... [Read More]

Tracked on Thursday, May 05, 2005 03:24 PM

» 福知山線の復旧とATS-Pの設置 [たなか@さくらインターネット]
先日の列車脱線事故から、2週間が経ちました。いろいろと報道がなされ、少しづつ状況や背景などが分かるようになってきました。 その中で、「速度超過」と「ATS-P」というキーワードが注目されています。事故の原因と、防護できた可能性ということでよく出てくるわけですが、結局は遠因といえる体質に無理やりつないでしまっています。もちろん、体質にも問題があるのは明らかで、私もそれについては述べてきました。 しかし、速度超過を「厳しい労務管理」、ATS-Pを「安全投資抑制」という観点からつないで、『体質だ!』とJR... [Read More]

Tracked on Wednesday, May 11, 2005 01:51 PM

» 土佐くろしお鉄道の事故原因 [かきなぐりプレス]
同じ鉄道事故でも、犠牲者が少なかったので話題にもならなくなった土佐くろしお鉄道の駅舎激突事故は、一つ手前の停車駅から宿毛駅間8・2キロを平均時速123キロで走っていたことがわかったようだ。 宿毛駅の停車位置から約180メートル手前で、ATSによる非常ブレーキがかかり、時速113キロでホームに接近、90キロ程度で駅舎に激突した、というのが県警捜査1課の見解だ。 フルノッチのままで爆走しているわけだから、いくらATSが装備されていてもそんなスピードでは180メートルの距離では制動できるわけが... [Read More]

Tracked on Sunday, May 15, 2005 03:36 PM

» 福知山線、運転再開決まる。 [レガ@日常あれこれ]
JR宝塚線、6月13日にも再開 新型ATS整備にめど JR西日本は107人の死者が出た兵庫県尼崎市の脱線事故で不通になっているJR宝塚線(福知山線)の宝塚―尼崎間の運転を6月13日にも再開する方向で最終調整に入った。  遺族感情に配慮して犠牲者の四十九日法要後、できる限り... [Read More]

Tracked on Saturday, May 28, 2005 11:33 PM

» JR福知山線車両にバカテロ。 [sima2*blog]
脱線事故のあったJR福知山線の車両に誰かがスプレーで落書きをした、というニュース... [Read More]

Tracked on Sunday, August 14, 2005 05:21 PM

« 尼崎事故ATS、緩和曲線、非常制動etc. | Main | ユーザーのふそう離れ? 気になる近所のバス »