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May 2005

Sunday, May 29, 2005

福知山線6/13運転再開へ

タイトルのニュースが流れました。喜ぶべきことなんでしょうけど、およそ半月で、完全撤去された線路や架線を復旧した上に、ATS-P設置までこなすというのは、日程的にきついんじゃないかと危惧します。
 確かに線路や架線の復旧だけならば、さほど時間はかからないでしょうけど、ATS-P設置については、当ブログの過去に記事でも書きましたが、単に設置すれば良いわけではなく、現場の状況に即した高度なカスタマイズが必要になります。特に速度制限区間手前の速度照査には、設置位置と照査速度の適切な選定をしないと、十分な安全が確保できなかったり、逆に極端な減速で無駄が出たりするわけで、高度なチューニングが必要です。
 忘れられているかもしれませんが、東海道新幹線のATCで、プログラムミスによって速度制限超過状態が見つかった事件を思い起こして欲しいんですが、この手のハイテク機器にこの手の問題はつきものなんです。幸い東海道新幹線では事故などの問題が起きる前に症状が見つかって修正されたので、事なきを得ましたが、運転再開を急ぐあまりテストが拙速に行われるとすれば問題です。とりあえず旧型ATSで仮復旧しておいて、終車後にテストを行い、万全の体制で新型ATSに移行させる方が、より信頼性の高いやり方だということは指摘しておきましょう。

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Wednesday, May 25, 2005

西武鉄道再生策のゆらぎ

昨日(5/24)、所沢で臨時株主総会が開かれた西武鉄道ですが、怒号飛び交う中で、後藤高志新社長が就任して新体制となったものの、経営改革委員会案が承認されるには至らず、前途多難なスタートとなりました。
 経営改革委案は、西武鉄道を軸にコクドとプリンスホテルを子会社化して一体で再生するもので、コクドの大株主である堤義昭氏の影響力を排除するためにコクドは新旧会社に分離して旧会社に封じ込めるとともに、新会社を西武鉄道の子会社とし、さらに2,000億円の増資をみずほコーポレート銀行を中心とする銀行団が引き受けて、堤氏の影響力の排除を行い、一部資産を売却するというものです。
 このスキームを取る限りは、増資自体は堤氏の影響力を実際的に防止するために必要なことですが、同時に銀行以外の一般株主の権利を希薄化してしまいます。それゆえに今回の総会の承認を得るには至らなかったわけです。
 都区内のプリンスホテルをはじめ優良物件の家主で保有資産価値の高い西武鉄道に対し、リゾート開発で不調のコクドでは、資産内容に開きがありますし、確かに銀行団はコクドに資金を貸し込んでいますから、一体再生は銀行による形を変えたデッドエクイティスワップ(負債の株式化)とも取れるわけで、銀行はコクド債権の不良債権化を恐れているから一体再生にこだわっているのではないかという疑念がぬぐえません。
 で、ライブドアのニッポン放送買収劇で登場した村上ファンドの村上世彰氏や外資を中心に西武鉄道の買収案というのがくすぶっているわけです。コクドと切り離して西武鉄道単体で再生した方が、株主価値を高められるという理屈です。一般株主には受けそうな話です。
 ただし現時点では買収案の内容は明確ではありません。鉄道事業者として見たときの西武鉄道ですが、確かに資産内容は優良ですが、こと鉄道事業に限っていえば、疑問符がつきます。鉄道のような巨大装置産業の場合、本業の儲けを本業の更新投資に振り向けることで、競争力を維持することが重要です。逆に更新投資を抑制すれば簡単に巨額の現金が手元に残るために、経営判断を曇らせる要因でもあります。
 この辺は当ブログでは過去にも記事にしておりますが、買収提案の中身が、どれぐらい鉄道事業を踏まえたものなのかについては、慎重に判断する必要があります。この辺もこんな記事を書いておりますが、単に保有資産の含み益で益出しするだけの買収案ならば、買収者に含み益をさや取りされるだけなんで要注意です。最近の記事でも言及しておりますが、まだまだ一悶着ありそうな西武鉄道の再建策といえます。後藤新社長の手腕が問われます。

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Sunday, May 22, 2005

北海道新幹線着工、未解決問題はどーした?

何か北海道新幹線が着工したそうで、ニュースが流れましたが、一方でこんなニュースもあって、どういうことなんだろうかと思いますが、たぶんお得意の既成事実づくりってことなんでしょう。国土交通省のサイトには見つかりませんでした。
 というわけで、当ブログではこんな記事を書いておりまして、一応5/21着工の方針ではあったようで、1日ずれてますが、あくまでも北海道側のみの着工というところがミソでしょうか。つまり本州側は並行在来線がJR東日本の路線で、切り離してもJR北海道に受益が生まれない状況ですから、ペンディングしている状況と見るのが自然です。かついわゆる根元受益問題が解決したわけではなさそうです。
 より厳密に言えば、本州側の並行在来線は、事業主体となるJR北海道の保有する新中小国(信)~津軽今別の間だけで、近接するJR東日本津軽線は対象にはならないはずです。そして切り離し区間は北斗星やカシオペアが廃止ならばJR貨物専用となる区間であり、地元としては財政負担までして残す意味はないわけです。現行の整備スキームでは解決不能です。
 というわけで、いってみれば福井駅高架化で新幹線駅の準備工事を行って既成事実とすることと変わりがないわけです。それでも地元の期待感を膨らませて票に化けさせることはできるわけで、こういったニュースを無批判に全国配信するメディアは、選挙運動を手伝っていると言われても仕方ないところです。

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横浜高速鉄道営業黒字、MM線開業後初の通期決算

タイトルの通りなんですが、5/21付け日本経済新聞首都圏経済欄の記事によりますと、MM線開業後初の通期決算となる05年3月期決算で7億円の営業黒字を計上しました。ただし支払利息の負担が大きく、経常損益は20億3,100万円の赤字となり、建設費の嵩む昨今の新線の問題点を浮き彫りにしています。
 営業収益は74億5,900万円で1日あたりの平均利用人数約121,000人で計画より約16,000人ショートで、通勤客の利用が伸び悩んだものですが、その分定期客の比率が低く、営業黒字となったものと思われます。今後は沿線の官公庁や企業に利用を働きかけるそうですが、定期券割引率の高いJR根岸線が近隣で並行している現状では、転移は難しいのではないでしょうか。定期券限定で他社線との大幅な乗り継ぎ割引を行うなどをしないと、職場で通勤定期代の申請がしにくい状況ではないかと思います。むしろ観光需要を取り込むべく、北千住や浦和美園からの臨時列車を走らせるなどして観光客の集客に励んだ方が、増収の期待もできると思うんですがね。
 細かい数字は、今のところ公式ページでも発表されておりませんが、当面は営業黒字も利払いで吹っ飛ぶ状況が続きますので、天気晴朗なれど波高しなMM線といったところでしょうか。将来は東京地下鉄13号線の開業で集客範囲を拡大できますから、さまざまなところから元町・中華街行きの電車を走らせることで、活性化に期待ができます。
 また沿線開発も課題を抱えつつながら進んでおりますので、将来は明るさを感じさせます。そういう意味で、本牧延長などの夢は当面おあずけにして、足元の営業をしっかりとやってほしいところです。

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Saturday, May 21, 2005

道路特定財源が2007年以降余剰

ひっそりとこんなニュースが流れてます。昨日のニュースを起点に余剰金の綱引き閣僚の省益発言などなど、政治の話題も郵政民営化一色ではありません。
 大まかな流れとしては、道路公団民営化の中で本四公団の累積債務を道路特定財源で償還することが決まっていて、一方で小泉政権下での道路整備抑制の方針で余剰となった道路特定財源によって、本四公団の債務償還が06年度中に終了する見込みとなり、07年度以降恒常的に余剰金が出ることが確実となったものです。
 で、ただでさえ借金漬けの政府財政ですから、この余剰金を巡って早速綱引きが始まったわけですが、大まかには医療、年金、介護などで財政需要が拡大途上にある社会保障関連へ回すか、地球温暖化防止のための環境関連に流用するか、引き続き道路整備に使い続けるかの綱引きになっています。ま、それぞれに言い分があって、簡単には決められないのですが。
 気に入らないのは、余剰金が出れば納税者に返すのが財政の基本だと思うんですが、何に使うかで綱引きしているのはたまりません。もちろん財政支出によって社会的便益を供与することも、広い意味で納税者へ返すことではありますが、その意識が希薄だから、使い道を巡る綱引きになるという点は強調しておきます。
 この観点からいえば、2007年以降も本四以外の道路公団の債務償還に余剰金を充てることで、前の総選挙で民主党がマニフェストでうたった高速道路無料化も、現実的な選択肢だったことがわかります。ま、だからあらゆる詭弁を弄してつぶしにかかったふしがあります。税金で負担するなら負担することに変わりはないのですが、確実に高速道路通行料の相対価格は変化します。経済の本質はものの相対価格の変動にあるわけで、例えば高級消費財だったものが技術革新で量産化されて低価格で大量に消費市場に供給されれば、消費者の消費行動そのものが変化するわけで、産業革命以来の劇的な社会の変化は、この観点からほとんど説明可能です。
 というわけで、郵政民営化以上に民意を問うべきことがらだと思うんですが、例によってお粗末な日本のメディアは、きちんと伝える姿勢に乏しいのは困ったもんです。世界の要人たちに言わせると日本のメディア向けの記者会見は(質問がぬるくて)心和むんだそうで、あんたらここまでなめられとんねんで。JR西日本の事故のように、明らかな不祥事のときだけ元気良く声を荒げる困った存在だと早く気付いて欲しいです-_-;。

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Thursday, May 19, 2005

215系快速伊豆号運転

湘南新宿ライン大増発の12月改正で職場を追われたオール2階建て電車の215系ですが、下り5/14,5/21,5/28、上り5/15,5/22,5/29限定で全車座席指定の臨時快速伊豆号として運転されます。以下JR東日本えきねっとを参考に運転時刻を掲載します。





東京品川横浜大船国府津小田原湯河原熱海網代伊東
 8:398:589:189:4910:0510:2510:3210:4410:55
8:318:409:049:199:5910:0710:2610:3310:45





伊東網代熱海湯河原小田原国府津大船横浜品川東京
16:3716:5316:5917:1717:2417:5518:1018:2618:34
16:2816:3716:5417:0017:1817:2517:5518:1018:26

 下りの横浜や国府津での長時間停車に苦労のあとが見られますが、2扉で客扱いに時間がかかる上に、211系と同等品の足回りに重たいダブルデッカーの車体を載せた215系では、スジを入れるのも一苦労といったところでしょうか。湘南新宿ラインに運用されていた頃は、遅れの元凶となっていた同車ですから無理もありません。
 逆に上りは停車時間を切り詰めてますが、基本的に乗せたら降ろすだけですので、これで何とかなるのでしょう。にしても定期列車のスキマに突っ込んだ感じの設定です。
 元々着席通勤の切り札として期待されたダブルデッカーのライナー専用車の215系ですが、快速アクティやホリデー快速に使われたものの、2扉で車内に階段があることも手伝って客扱いに時間がかかるために、使いどころに苦労が見えます。ライナー列車ならば乗るか降りるかだけですから何とかなるのでしょう。
 そういえば常磐線にも1形式1両のクハ415-1901がいますが、現在は混雑時間帯を避けた限定運用が組まれていて、やはり持て余している現状があります。
 それに比べれば一応ライナー列車とはいえラッシュ時間帯に定期運用が組まれている215系はまだましなのかもしれませんが、今後踊り子用の185系が置き換えられる頃には、ライナー兼用で運用効率を高めようとするかもしれませんので、案外短命に終わる可能性もあります。団体輸送や予定臨に使うにしても、今となっては座席数を増やすために採用されたボックスシートではかえって使いにくいかもしれません。
 現在首都圏操配用に使われている183系も、今は旧国鉄形ということで人気ですが、車齢は高いので、いずれは置き換えが取り沙汰されると思います。それと踊り子用の185系に、JR東海から乗り入れる特急東海の乗車率の悪さと、青春18シーズンを除けば空席も見られるムーンライトながらの予定臨格下げも噂される中で373系の運用変更も噂が絶えないところです。時期が来ればこの辺に大きな変化が起こる可能性はありそうです。

p.s.小田急ロマンスカーの注目される話題で盛り上がったところで、小田急グループ3社の名義株のニュースが流れて残念です。西武の場合と違って、グループの株式持ち合いの実態を隠すものだったのですが、日本ではあまり悪いことと認識されていなかったかもしれません。それがこうして表へ出るようになったこと自体が、日本の経済社会の望ましい変化の兆候と見るべきなのかもしれません。

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Wednesday, May 18, 2005

大手私鉄、それぞれの春

小田急と東京メトロのロマンスカー直通運転の話題で盛り上がっておりますが、大手私鉄各社の置かれている状況の違いが、さまざまな形で出てきています。今のところ小田急東京メトロでごく簡単なリリース文が発表されただけの段階で、具体的な詰めはこれからの話ですが、簡単にいえば現状で既に毎日満席状態の夕刻下りのロマンスカーの増発を意図したものといえます。小田急は結構本気で増収に励むつもりですね。
 春は各社の設備投資計画が発表される時期でもあります。個々に立ち入っての論評は別の機会に譲りますが、小田急の意欲的な取り組みの背景には、バブルの清算を終えた財務状況が、攻めに転じることを可能たらしめているといえます。同時に難産の線増工事がやっと完成を見通せる段階にきたものの、気がつけば少子化で利用客の自然減によりピークの混雑率が下がるという想定外の事態に直面し、大規模投資の元を取る必要に迫られていることも見逃せません。もちろん東急田園都市線、京王相模原線や湘南新宿ラインなどへの乗客の流出もあるでしょう。
 財務の健全性でいえば、現在大手私鉄では京王電鉄が抜きん出た存在といえます。大手私鉄では最も高い格付けを獲得し、鉄道事業者全体で見てもJR東日本に次ぐ2番目に位置するのですが、京王新線や相模原線の建設費負担の重さから、資金的に余裕のない状況がバブルに踊る機会を奪った幸運はあります。結果的に地価下落による減損処理の負担が他社に比べて低かったとはいえますが、それでも業界で他社に先駆けて減損処理を行ったことが、現在の地位を築いたといえます。
 同社の掲げる連結ROA(Return Of Asset=総資産利益率)7%という目標は、本業の鉄道事業は装置産業的な性格からせいぜいROA2%程度が関の山なんですが、元々関連事業が小粒で鉄道事業の売上構成比が高い同社にとってはかなり高いハードルといえます。そのために例えば系列の京王百貨店を、運転ができないゆえに郊外型ショッピングモールへ流れない高齢者に照準を合わせたことで、電鉄系百貨店の中で抜きん出た業績を実現しました。2003年にタイガースショップをテナントに入れたらリーグ優勝^_^;という幸運はありましたが。つまり鉄道事業を軸としてシナジー効果を最大限発揮できる付加価値創造形事業に特化した関連事業に絞り込んだグループ連結経営によって実現しようとしてますが、財務の健全性の裏付けがなければ難しい話です。京浜急行などもこの路線を追随しています。
 東急はバブル期に肥大化したグループ企業が軒並み業績を悪化させましたが、逆に本体の電鉄自体は健全経営を続けていたのが幸いし、電鉄主導でグループ企業のリストラを行い、500社あった関連企業を300社まで絞り込んで損切りに目処をつけましたが、その間に田園都市線沿線の未利用地などの潤沢な資産含み益を吐き出してしまい、財務の弱体化は否めないところです。本業好調とはいえ渋谷駅再開発などの大規模プロジェクトを控えて正念場となります。
 逆に本業には課題が多いながら、都区内のプリンスホテルなどの優良物件の家主という保有資産価値の高さから外資に注目される西武は将に好対照といえます。オーナー経営から正常な企業ガバナンスへの移行は波高しですが、本業の潜在価値は高いといえます。東急が辿ったように本業の儲けを本業へ投資する循環を作れるかどうかが問われます。
 在京私鉄各社の中では、東武鉄道が冴えないですが、名鉄や近鉄も同様ながら、路線長の長い私鉄では各線の業績のばらつきの大きさが仇となっているようです。いずれも沿線に観光地を控えながら、国内観光の不振が全体の足を引っ張っているようです。あとどうしてもローカル区間を中心に広い沿線域でモータリゼーションの影響を受けやすいということもあるでしょう。しかしそれ以上に事業規模の大きさが組織の硬直化を生んでいる可能性もあります。事業規模で上回るJR各社と比較しても労働生産性で後れをとっている現実は重いと言えます。
 あと在京以外の各社は、覚醒したJRの汽車ダイヤから都市型ダイヤへの移行で乗客を奪われた面も強く、油断がなかったかは問われます。
 その中で阪急と阪神は、明らかにグループ連結経営を目指しているようですが、阪急は自社沿線の需要掘り起こしを主体にして特急の停車駅を増やしたり、神戸高速鉄道を介した山陽電気鉄道との直通運転の見直しをしたり、JRの駅勢圏外の桂(洛西ニュータウン最寄り)の利便性を重視した京都線10分ヘッドダイヤとか、乗車時間を利用した審査で本業とシナジーを狙う消費者金融事業とか、神戸市営地下鉄との直通運転構想を発表したりと、主に他社との差別化に舵を切っているのに対し、山陽電気鉄道との直通運転の強化と共に、タイガースと阪神百貨店を関連事業の柱に位置づけ、電鉄企業らしさの強い阪神と対照的な行き方が面白いところです。
 大手私鉄15社に東京メトロを加えて16社ですが、各社各様の道を歩む2005年の春といえましょう。

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Monday, May 16, 2005

国土交通省ATS高度化に疑問

やや日が経っておりますが、こんな記事があります。JRや地方私鉄にも大手私鉄並の速度照査機能付きATSの設置を義務づけるということです。
 尼崎事故の制度的側面の記事でも触れましたが、ATSに関する法令上の規定は

列車の運行状況及び線区の状況により列車の運転の安全に支障を及ぼすおそれのない場合
を除いて設置すべしとしかありません。具体的には、例えば有田鉄道のような短距離の路線で全線1閉そくで1列車の機織り運行で、なおかつ運転速度が低い場合か、ATCなどより高度な保安設備が完備している場合には設置しなくて良いという除外規定があるだけで、具体的な方式や設置基準は定められていなかったわけです。速度照査機能の義務化は、その不備を補う意味では必要なこととはいえます。
 現実にはこれから設置基準などを具体化することになるんですが、そもそも国鉄分割民営化の時点で法令の規定をより安全側である大手私鉄基準とすると、JR各線およびほとんどのローカル私鉄は違反状態になるために放置されたことを、18年も経ってから見直すという意味ですから、何ともお粗末な行政の対応と言わざるを得ません。
 さらにいえば、大手私鉄で70年代に設置を終えた速度照査機能付きATSですが、各社で方式がまちまちで、例えば奈良電以来の伝統があった近鉄京都線と京阪本線の丹波橋での相互直通運転を中止に追い込んだり、他社線への直通運転を行うのに両方のATS乃至ATCなどの保安装置を装備するなどの無駄を生み出すことになってしまいました。これは当時の運輸省が鉄道事故の後追い的に大手私鉄各社を行政指導して整備した経緯から来るもので、当時既に公社化されてはいたものの、鉄道省時代から国の現業機関として交通行政の枠外におかれていた国鉄に対しては、権限を行使できなかったわけです。このことがJRに対する規制の緩さとして今日まで放置されると共に、純民間企業である大手私鉄に対する過剰な規制の姿勢が、大手私鉄をして行政に対する距離感をもたらしたといえます。つまり下手に事故なぞ起こそうものなら、行政によって締め上げられてひどい目に遭うという学習をしたといえます。
 中小私鉄に関しては、経営上ATSなどの保安装置への投資を行う体力が乏しく、あまり厳しい規制を課すと経営が成り立たないという問題はありますが、その結果信楽高原鐵道をはじめ、島原鉄道、銚子電鉄などで正面衝突事故が起こり、さらに京福電気鉄道福井支社では正面衝突事故で廃業を余儀なくされる事態も起こり、今年起きた土佐くろしお鉄道の事故も、経営体力から保安装置の不備が放置されたことが指摘されています。
 この点に関しては税制面の優遇や助成措置も検討されているようですが、保安装置への投資の重圧に耐えられずに廃線となる事態も心配です。
 あと車体の強度や速度記録など、いくつかの規制が打ち出されておりますが、鉄道に関しては、安全技術について事業者や車両メーカー、信号機メーカーなどが情報を共有できるような国の研究機関を設置して、安全面のチェックを外部から客観的にできる体制づくりが望ましいといえます。残念ながら現状は思いつき的に規制強化が打ち出されているだけで、事故の記憶の風化と共におざなりになっていく心配があります。
 事故は重大な外部不経済をもたらします。事故防止は事業者の努力に負わせるのではなく、国の関与によって安全レベルを維持することで、むしろ事業者の過大な責任を緩和し、鉄道事業の活性化につなげるという発想が欲しいところです。

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Saturday, May 14, 2005

郵政民営化で新幹線ができる?

何か、総務省の上級公務員の更迭騒ぎなんかがあって、他のニュースに隠れてしまった感のある郵政民営化問題ですが、いきなり脂っぽいニュースが流れました。ま、当人たちは官邸の意向に逆らって郵政族のご用聞きみたいな真似をしてたらしいんで、更迭されても仕方ないところです。そもそも公務員の政治活動は禁止されていたはずですが。
 何か1月に流れたニュースが共同通信で配信されて地方紙中心に記事になっているらしいんですが、これがなぜ郵政民営化と関連するかというと、整備新幹線着工や関空二期工事などの大型公共事業を“抵抗勢力”懐柔のために認めるという密約説に由来します。この論点についてはこちらもご覧ください。
 その結果、既に関空二期工事は埋立と造成に予算が付いて既成事実化しつつありますが、整備新幹線については、国の負担分の大半を占める鉄道整備基金の枯渇という問題ががあって、根元受益と称する奇妙な理屈で直接事業に関与しないJR東日本に負担を求めるという流れになっておりますが、法令による根拠がない状態ですから、すんなりとことが運ぶわけではありません。
 その一方で北陸や北海道新幹線ができたときにせっかくできた新幹線で便利な列車が設定できるように大宮から新宿まで地下方式で新幹線をつくって、現在線の騒音対策による徐行をなくすとともに列車本数を増やせるようにしようということのようです。問題はやはり財源ですが、事業費として6,000億円程度が見込まれています。ただし大深度地下を通して私権が及ばない前提での試算ですから、やはり法令上の問題をクリアすることと共に、技術面での検証はこれからということに留意しておく必要があります。
 というわけで、現時点では法令面でも予算面でも裏付けがある話ではないんですが、選挙区向けのリップサービスにはなるということですね。前の記事でも書きましたが、対JR東日本という視点で一方で根元受益を理由に負担を求めながら、他方で輸送力増強を公共工事で行うという矛盾に気付かないという奇妙なことになるわけです。抵抗勢力のホンネは郵政民営化も目一杯骨抜きにした上で、あからさまに要求しにくい大型公共事業の実施を条件闘争で勝ち取っていくということなんでしょう。予算はポスト小泉政権下で誤魔化してひねり出せばよいわけです。ついでに郵政民営化も民営化各社の株式持ち合いで実質国有企業に留めることができれば万々歳というわけですね。竹中大臣の“イコールフッティング”論はどこへやら、実質国有巨大企業と監督官庁の関係も、NTT分割問題の迷走やJR西日本尼崎事故を踏まえると危うさを禁じ得ません。
 財政規律の回復を目的としたはずの郵政民営化ですが、ここまで来ると本当に悪い冗談では済まされないほどに変質してしまっています。いっそ解散して国民に信を問うてくれれば良いんですが、分裂選挙で勝ち目のないものをやるはずもないですし、困ったモンです。

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Sunday, May 08, 2005

尼崎事故の制度的側面

当ブログらしい地味な話題です。
 ボウリング事件などでJR西日本パッシングが続きますが、それ自身はJR西日本の企業体質の問題点をあぶり出してはいますが、事故報道としては枝葉末節の事象がトップニュースになるなど、相変わらずメディアの事故報道は問題だらけです。重要なのは事故を繰り返さないことなんで、その視点からの問題点の掘り下げが重要です。
 福知山線の運転再開ではATS-P設置が条件づけられたわけで、危険を放置した責任は、一義的にはJR西日本にあることは確かですが、その危険な運行ダイヤを是認して改善を指導しなかった国の責任をどう見るかというのは、重要な視点です。少なくとも制度面に事故を誘発する要素が隠れているならば、そこを直さないと事故が繰り返される危険性は去らないことになります。
 運行ダイヤの届出その他の法律手続きですが、現在の制度は

運転速度及度数
の部分は認可制で、具体的な発着時刻などは事前届出とするもので、

   ・最高許容速度(線路構造、車両性能、曲線、こう配などの違うごとに届出)
   ・定期列車の発着時刻
   ・最高許容運行回数

 の3点が事前届出の中身となります。今回の福知山線の2003年のダイヤ改正で中山寺駅への快速停車で1分程度の遅れの常態化が指摘されてますが、制度上は余裕時分を削っての停車駅増加対応そのものは法令違反ではないことになります。もちろん事前届出させる理由は、届出先の地方運輸局などによる事前チェックと改善指導が含意されていると見るべきでしょう。
  ま、実際は国の官僚にそんなチェック機能があるわけがないのは、例えば三菱自動車のリコール隠し事件でも明らかなんで、実態としては事業者の自主性に委ねられているわけです。
 自動列車停止装置(ATS)については

列車の運行状況及び線区の状況により列車の運転の安全に支障を及ぼすおそれのない場合
以外は必ず設けることになっておりますが、方式に関する規定はなく、大手私鉄では設置時点で速度照査機能を持たせることが指導されたものの、JRに関しては国の事業であった旧国鉄時代に自主判断されていた流れできてますから旧式ATSしか設置されていなかったこと自体は、やはり法令違反ではないことになります。
 この辺の評価は難しいところなんですが、確かに軽微なダイヤ修正程度で認可手続きが必要だとすると、事業者はきわめて煩雑な認可事務に忙殺されるわけで、行政事務の簡素化の流れから事前届出制へ移行したこと自体は、理に適ってはいるんです。で、法治国家である以上、法令に抵触しない限りは原則自由でもあるわけで、この面から見れば、JR西日本だけが悪者にされるいわれはないとはいえます。
 しかし鉄道事業は独占事業であるがゆえに、事業者の自主性に任せれば、利益最大化の原則に従って安全投資など直接収益を生まない投資を抑制して利益を得る誘因が働くことになり、重大事故などの社会的損失を被るおそれがあるために、当局による規制が正当化されるわけです。しかしその規制自体が不完全で抜け穴がある状況で、一方では規制緩和による競争促進政策が推進されているわけですから、制度上のあやうさは指摘しておく必要はあります。自由競争というのは、つまるところ落ちこぼれをつくることになりますので、何らかのセーフティネットを用意しなければ現実的にはうまく機能しないわけです。
 誤解のないように申し上げておきますが、JR西日本の問題というのは、優れて個別具体的な問題でして、経営の苦しさなどは三島会社や貨物会社の方が深刻なんですが、本州会社として他2社とほぼ同時期に株式上場や政府保有株放出による完全民営化を求められたことで、他2社との比較がなされるわけですから、経営基盤が弱く、実際株価水準で他社の5~7割の水準でしかないJR西日本にとっては、劣勢の挽回は宿命づけられていたわけで、ある意味制度のスキマにはまったともいえます。
 この辺は国鉄改革のやり残し部分ととらえることが可能です。元々明治期の国有化原則のもとで自身の事業を自身の判断で実行できる事業体だった国鉄が、JRへ移行するときに民間並に免許制度の下で民間の鉄道会社と同列の存在となったものの、国有化原則そのものは制度的に明確に否定されたわけではなく、その残滓が例えば国鉄の事業を継承したJR各社や国に準ずると認定された地方公営交通に対する規制の緩さなどで部分的に残っているわけです。
 そういう意味で参考になるのが3月に起きた土佐くろしお鉄道宿毛駅の事故で、事故の原因は運転士の突然の心神喪失状態により終端駅の車止めに激突した事故だったんですが、保安装置は270m手前のATS-SS(JR四国仕様の旧式ATS)地上子が設置されていて、作動はしたけど非常制動がかかる5秒後までに百数十mの空走をすれば間に合うはずもないですし、EB装置(運転士が1分以上運転操作しなければ警報を鳴らし、5秒以内に対応しなければ非常ブレーキがかかる装置)も運転士が心神喪失して65秒以上は空走するわけですから、役に立たなかったんですが、旧国鉄>地方公営交通に続く公的序列の第三セクター鉄道だった土佐くろしお鉄道ゆえに、規制の穴があった可能性を指摘しておきます。
 ついでにいえばこの列車に乗務していた土佐くろしお鉄道の女性車掌は、終端駅に高速で接近する事態を漫然と見送り、車内電話での運転士への呼びかけや非常ブレーキをかけるなどの対応を取らなかったことが問題視されてますが、尼崎事故でも事故列車の車掌が防護無線の発報を行わなかったなどの点と何と似ていることかと思います。宿毛の事故は尼崎の前兆だったかもしれません。
 信楽高原鐵道事故では裁判開始時点で証拠不十分につき不起訴となったJR西日本ですが、今度ばかりは刑事訴追も免れません。そうなると少なくとも現経営陣も刑事責任を問われるでしょうから、鉄道事業法の定めにより1年以上の懲役又は禁固の刑に処せられた者という欠格事由により、ほとんどの役員は退任せざるを得なくなる事態も考えられますので、一時的に国家管理となる可能性も視野に入れておく必要があります。できればその間に、国鉄改革の抜け穴を塞ぐ法整備が望まれます。

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Thursday, May 05, 2005

福知山線、ATS-P設置前に復活運転すべき理由

この論点はきちっと書いておいた方が良いと考えました。その前に哲学的前フリを。
 今回の事故の痛ましさはいうまでもないことですし、大変心が痛みます。.GWだってのに心から楽しめない、そんな悶々とした日々を送っているのは誰しも同じでしょう。ただでさえ人の死は悲しいことですし、107名の尊い命が奪われたのですから、もやもやした気分が抜けないし、かといって事故がなかったフリをしても空しいだけです。
人の死は受け入れがたいけれど、生きていく以上、受けとめて前へ進むしかありません。人の死を受けとめたくなかったら、人が死ぬ前に自分が死ぬしかありません。ネット某巨大掲示板風に表現すれば逝ってよしって話です。生きていくことのつらさの多くは、人の死に立ち会うことといえます。
 そもそもATS-Pとは何ものか、あまりにも無理解がはびこってますし、鉄ちゃんでさえ正確に理解している人が少ないことに驚きました。もちろん文系人間の私が技術的解説なんかできるなんておこがましい考えは持っておりませんが、それでも列車を安全に止める魔法の杖でないことはわかります。
 ATS-PのPはプログラムの略で、さまざまなATSの中でもプログラムタイプと呼ばれるものです。さくっといえば先行列車の位置と自列車の速度から、安全な停止点を割り出し、そこまでに安全に停止できる停止パターンを生成してその範囲内を越えて列車が進もうとしたときに、自動的にブレーキをかけて速度を落とすという機能を持ちます。いわゆるパターン速照機能と呼ばれるものです。
 元々国鉄形ATSには速度照査機能がなく、運転士に警報を出す機能とそれを無視したときに非常停止させて赤信号の冒進を防ぐ機能のみだったので、警報後確認ボタンを押してからの運転操作ミスには対応せず、事故が繰り返されてしまいました。それゆえ国鉄の後を追ってATS設置を求められた大手私鉄に対しては、速度照査機能付きのATS設置が指導され、各社各様の方法で行われたわけですが、結果的にATS設置で先行した国鉄は取り残されてしまったわけで、旧国鉄内部で速度照査機能付きATSの開発研究は続けられておりました。非常に高機能であり、かつ停止点へ向かってブレーキの込めと弛めを繰り返すのではなく込め一発で停止させる一段減速が可能なので、高密度運転向きのシステムではあります。
 このように多機能ではあるんですが、それ故に高速走行中に地上子と車上子の間で大量の情報を確実にインタラクティブに伝送する必要があるわけで、設置にあたっては現場に合わせた高度なカスタマイズが必要になりますし、想定されるヒューマンエラーに対して意図したように作動するかどうかについての入念なテストを繰り返す必要があります。それ故に設置費用が高くつくし、カスタマイズやテストの作業量も膨大ですから、使えるようになるまでに時間がかかるわけです。それ故財政難の国鉄末期には、新線として開業した京葉線で導入されるにとどまり、他線への波及はJR移行後となります。ATS-Pは設置に時間も費用もかかるわけです。
 だから福知山線の運転再開でATS-Pの設置を条件づけると、早くても6月末の復旧ということになるわけで、休みが明ければ学校や会社へ行かなきゃならない少なからぬ沿線住民の負担を長期化することになります。阪急宝塚線が並行してはおりますが、乗り換えのロスや利用が集中することによる駅や車内の混雑で体力も精神も消耗し、早起きを強いられる状況を、果たして亡くなった皆さんの御霊は喜ぶでしょうか? 仮にも大都市の通勤線区の話です。長期運休の地域経済への影響も深刻です。バスで代替可能な地方ローカル線とはわけがちがいます。安全面が心配ならば、当面普通のみの運転で仮復旧させる選択肢もあります。塚口を出発してフル加速しても、70km/hには達しませんから。
 本当は国民のこの手の不安があっても、冷静な判断が求められるリーダーたる者が付和雷同するようでは資格なしと言わざるを得ません。力なきリーダーはただただ迷惑な存在と申し上げておきます。

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Wednesday, May 04, 2005

ユーザーのふそう離れ? 気になる近所のバス

久々のバスネタです。
 神奈中の舞岡営業所に日野ブルーリボンシティが登場しました。小型限定路線用のリエッセを除けば、大型バスとしては久々の日野車の登場となります。舞岡もリエッセ以外はオール三菱ふそう車の陣容だっただけに、日野車の登場はニュースバリューのある話題かと思います。神奈中全社で見ても、おそらく日野車の新車はモノコック時代まで遡る話になると思いますから、かれこれ20年ぶりぐらいでしょうか。しかもCNG車ですから、排ガス規制の影響で三菱ふそうバスの新車発売ができなかった影響は直接無関係だと思います。ま、単に日野のディーラーがうまくセールスしただけかもしれませんが。
 と思いきや、やはり三菱ふそうが圧倒的に多数派である江ノ電バス鎌倉営業所(平島)でも、いすゞエルガの新車が登場しております。標準尺のワンステップのようです。ま、江ノ電の場合は、少数派とはいえいすゞ車は元からおりました。ただ富士重ボディなんでぱっと見わかりにくいんですが、特に鎌倉には7EボディのLV324の長尺車がいまして、全国区でも結構な珍車だと思います。ということで、ひょっとしてタイトルのような事態(ユーザーのふそう離れ)が起きているのではないかと思った次第です。
 実際問題として新車の型式認証問題で国土交通省から待ったをかけられていたので、セールスの空白期間があったかもしれませんし、全国のユーザーを見たわけではないんで、即断は禁物ということにしておきましょう。しかしそれぐらい神奈中の日野車デビューは椿事といえます。
 ただこれも繰り返しになりますが、型式認証問題でも触れましたが、元々90年頃と比べれば新車登録台数が半減に近い需要の冷え込みを、ディーゼル排ガス規制による買い換え需要で無理に押し上げているからかろうじて維持されている大型メーカー4社体制ですが、逆に排ガス規制対策で開発費用が嵩張った結果が、メーカーの収益を悪化させている現実も見ておく必要があります。その結果ユーザーは買い換えによる出費を強いられ、メーカーは車は売れるものの、3年ごとに新規制に合わせた新エンジンの開発費で利益を食いつぶし、経営が疲弊しているときに、メーカーの負担となるリコールを内々に処理しようという誘因が働かないといえば嘘でしょう。実際は制度面で無理を重ねているといえます。
 そうはいっても他の3社はリコール隠しを少なくとも表面的にはやらずに凌いでいるわけですから、三菱ふそうの責任は免れないのは言うまでもありません。何が三菱ふそうをそうさせたんでしょうか?
 “零戦の三菱”として名高い名門企業三菱重工の自動車部門が分離独立した三菱自動車の大型車部門を分社した三菱ふそうというややこしい位置づけですが、リコール隠し問題で販売不振となった三菱自動車から役員を引き揚げ距離を取り始めたダイムラーが、三菱ふそうには社長を送り込んでまで守ろうとしているわけですが、リコール隠しの中身は主に分離前の大型車部門が中心だったわけですから、何か奇妙な気がします。逆に言えば三菱は大型車こそ国内トップの地位にあり、国際的にも知られた存在だったので、ダイムラーとしては今さら手放すわけにはいかないわけです。分離後の三菱自動車こそいい面の皮だったわけです。
 三菱ふそうも当初はダイムラーのライバルのボルボに身売りされたのですが、ボルボの撤退と共にダイムラーの傘下におさまるわけですが、この辺の不透明な経過は、結局自らを高く身売りするための分社だった疑いがあります。つき合わされたダイムラーは散財を余儀なくされたわけですね。
 そこまで権謀術策を弄してまでも存続に意欲を燃やす三菱自動車と三菱ふそうなんですが、元々乗用車部門はパジェロなどの人気車はあったものの、他社に対して劣勢は否めなかったんですから、選択と集中で強い大型車部門に経営資源を集中させていれば、リコール隠しのような“ずる”をするまでもなく地位を築き、外資へ身売りも防げたように思いますが、名門意識がフルラインメーカーへのこだわりを捨てきれないまま、ずるずると来てしまったのでしょう。
 同様に「トヨタ、日産と肩を並べる名門」と自負するいすゞが、それでもジェミニやアスカの自社生産は早々にあきらめながら、SUVのビッグホーンの生産継続にこだわって経営悪化した図に酷似します。さらに欧州の乗用車市場を中心に小型ディーゼルエンジンの需要が増しており、実際欧州のエンジン工場は好調なんですが、こういう好調部門をGMに手渡し、利益の出ていない国内生産部門を自前で残すなどチグハグが目立ちます。最終組立を諦めてエンジンメーカーとして集中すれば、おそらくアイシンやデンソーに匹敵するワールドワイドなコンポーネントメーカーになれたかもしれません。90年代にリコール隠しで存亡の危機に立ったやはり名門の富士重工が、レガシイをはじめとしたプレミアムカーメーカーに特化し、バスボディや鉄道車両から撤退して業績を高めたのとは対照的です。
 いすゞは大型車メーカーとしても劣勢は否めず、日野との経営統合も両者の業績の乖離もあってまとまらず、やっとバス最終組立のJバス設立に至ったものの、未だメルファ/ガーラミオの中型観光車の統合に留まり、両者のラインナップの穴埋めに一部車種の相互供給に留まっている現状は、先行きの厳しさを暗示します。一方の当事者の日野は、中型路線車のレインボーHRがノンステップ専用車台だったために継続生産されていたレインボーRJ/RRをエルガミオのOEMのレインボーIIに切り替え、ちゃっかり合理化してトヨタグループらしい抜け目なさを発揮してます。
 日産ディーゼルは中型用エンジンを日野から供給を受けることで、経営資源を大型車の開発に集中した結果、国内メーカーで唯一黒字決算を重ねて経営再建に成功し、遅れていた排ガス対策も尿素触媒技術で一気に優位に立ち、リコール隠し問題で出遅れた三菱ふそうへの技術供与まで決まって地位を築いたことと考え合わせると、企業の盛衰の妙を感じます。

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Tuesday, May 03, 2005

福知山線、ATS-P設置で運転再開とは?

いささか食傷気味な事故ネタですが、あくまでもメディアの事故報道にフォーカスして続けます。メディアのミスリードが私たちの将来の安全を脅かさないためには重要です。
 で、タイトルのような報道に接して絶句しております。大まかな流れとして、一昨日のJR西日本の会見で「ATS-P設置が必ずしも運転再開の条件ではない」とする見解を述べた翌日の昨日になって「ATS-P設置してから運転再開」と態度を変化させた流れがひとつあります。一方で北側国土交通大臣がほぼ同時刻に「信頼を得るシンボルとして」ATS-P設置を運転再開の条件とすることを表明し、JR西日本の記者会見でも「国交省の指示の有無」に関する不毛なやりとりがなされたようです。ホント、メディアのバカ記者どもにつけるクスリが欲しい-_-;。
 それ以上に不愉快なのが、政治家でもある現役閣僚の売名行為に利用されたことです。次の選挙では落選させましょう(怒)。
 前の記事でATSなどの安全装備について解説させていただきましたが、機械任せの安全対策は必ずしも万全ではありません。107名もの尊い人命が失われた事故に対する所轄官庁の現役閣僚の発言として、これほど国民をバカにした話はありません。でもこんなことが起きるのも、メディアのミスリードがあればこそです。権力に易々と利用されてしまうメディアって何なんだ!と吼えさせていただきます(激怒)。
 ATSに関しては、あくまでもヒューマンエラーをバックアップするものであるということを繰り返させていただきます。高級な装備に交換すれば、それだけで事故が防げるというものではないんです。前の記事でも書きましたが、旧式のATS-SWでも速度照査機能を持たせることは可能ですし、実際、5/2付日本経済新聞夕刊の記事によれば、JR西日本での危険箇所17カ所で設置済みだったんですが、福知山線に関しては、ATS-P導入予定があったので、速照機能付ATS設置を見送ったとあります。JR西日本自身が事故地点の危険性を十分認識していたと同時に、新型ATS設置予定があったがために安全対策の先送りをしていたという重大な問題なんですが、現在のところ電波メディアでは伝えられておりません。
 その一方でJR東日本常磐線の小木津駅での170m,オーバーランを伝えております。170mというのは確かに大きなオーバーランですが、尼崎の事故がなければ、ここまで大きく取り上げられたかどうか、やはり過剰反応と申し上げるしかありません。「バックすると踏切鳴動システムの誤作動の可能性がある」として次駅への進行を指示した指令の判断は、安全側へ判断したという意味で誉められるべきものですが、メディアの扱いは違いますね。果てはヘビが原因の東海道新幹線停電の報まで飛び出し、全国の視聴者に黒こげのヘビを見せるのに何の意味があるのか、ホントことばを失います。
 スピード競争、過密ダイヤなど、事故の背景として語られることも多くなりましたが、安易に事故と結びつける論調には辟易します。事業者としてのJR西日本の危険認識こそが問題なんで、例えば関東の京浜急行では、福知山線よりも過密で神業的なダイヤを、既にJRでは使われなくなった旧国鉄ATS-B形の改良型で乗り切ってます。当然さまざまな安全対策が工夫されているんですが、事業者としての「事故を起こさない」意識こそが大事だということを教えてくれます。

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Sunday, May 01, 2005

尼崎事故ATS、緩和曲線、非常制動etc.

意味不明なタイトルですが、様々なメディアでさまざまな視点から報道が続けられる中、いくつかの疑問が出てまいりました。正直なところJR西日本の安全思想に重大な問題があった可能性を示唆するものばかりで、当ブログでは早い時点で言及した記事をアップしておりますが、重大事故から何を学ぶかが重要ですから、目を背けずに見てまいりましょう。
 ATSに関しては、新型のATS-Pへの交換工事実施中で、6月完成予定だったことで「新型ATSだったら事故を防げたのに」という論調が支配的だったんですが、本日のテレ朝サンデープロジェクトの特集で、ATS-SWでも速度照査機能を持たせることが可能という視点が出てきて、モヤモヤがひとつ晴れました。少なくともJR西日本の「新型ATS設置が間に合わなかった」という説明は成り立たないわけです。
 既に私鉄では名鉄、南海、京阪の各社で、JRでもJR東海では行われている方法ですが、ATS地上子を2個縦に並べて速度センサーの役割を持たせることは可能です。簡単に解説すれば、2個の地上子間を0.05秒以下で通過したときにATSが作動するようになっていれば、地上子の設置間隔を変えることで、任意の速度での照査が可能となります。設置に当たって信号との連動を取る必用もありませんから、倉庫に眠っている予備品を活用するだけで可能です。
 くだんのカーブの手前に設置しておけば、万が一速度超過の場合は警報が鳴って運転士に異常を知らせ、運転士はATSスイッチカットして制動をかけてカーブ手前までに所定の速度に減速すれば問題なく通過できます。万が一運転士が心神喪失状態にあったとしても(今回の事故でも運転士への指令及び車掌の呼びかけに応答がなかったことから疑われている)、非常制動がかかってカーブ手前で停止して事故が防げたわけです。
 緩和曲線についての言及は、鉄道アナリストの川島令三氏が指摘してますが、300Rで必用な緩和曲線長の2/3程度しかないところで、曲線の外側レールを高くするいわゆるカントの規定高さ97mmを徐々につけるのに、やや勾配が急だった点です。当然通常よりも転覆限界を下げることになります。
 しかしここで忘れてならないのは、福知山線上り線の事故地点の現在の線形が、96年のJR東西線開業時に直通化のために変更されたもので、以前は600Rでゆるやかに右カーブして東海道線と直行する手前で左カーブする線形だった点ですが、NHKの4/30の特集番組とTXの5/1の特集番組で言及されてはおりましたが、全体としてメディアへの露出が少ない気がします。
 この点がなぜ重大かと言えば、JR化後の輸送力増強工事の一環として上り線の線路付け替えが行われたんで、緩和曲線長不足などの現況をJR西日本は承知の上で、手前での速度照査や脱線防止レール設置などの防護措置を講じていなかったということになりますから、安全思想が弛緩していたと言われても仕方ありません。いわゆるフェールセーフの考え方の積み重ねが安全を守るものであることは、スーパーひたち事故の記事でも記した通りです。
 そして非常制動問題ですが、乗客の証言から直前に強いブレーキがかかって、先頭車が大きく左に傾いたことが明らかになっております。実際にどういったタイミングで非常制動がかかったのかは依然曖昧ですが、直線区間ならいざしらず、上記の緩和曲線上あるいは曲線部での強いブレーキによって車輪がロックした場合、セルフステアリング機能が働かずに強い横圧がかっかって転覆に至る可能性は高まります。
 この辺は鉄道に詳しい方には釈迦に説法なんですが、少し解説します。車輪のレールに乗っている面のことを踏面と呼びますが、ここに内側から外側へ勾配がつけられていて、いわゆる円柱ではなく円錐面になっております。レールとの接触は点状になっているわけです。カーブを通過するときに遠心力で外側車輪はレールに押しつけられて接触点がフランジ寄りに移動し見かけ上の直径の大きいところで転がります。その一方で内側車輪はレールから離れる方向へずれて接触点が見かけ上の直径の小さいところで転がるわけです。鉄道車両の車輪は左右一体ですから、この結果左右車輪の転がりによる進み具合に差が生じて、いわゆるコーナリングフォースを生むわけです。これがセルフステアリング機能です。鉄道車両はカーブでは自動的にカーブに沿って曲がろうとするわけです。
 この状態で強いブレーキがかかって車輪がロックして滑走したらどうなるかですが、車輪の転がりで生じるコーナリングフォースがなくなって、慣性の法則で真っ直ぐ進もうとしますから、カーブの外に飛びだそうとする力が増大するわけです。ですから速度制限のかかるカーブでは手前で速度を落としてから通過する必要があるわけで、カーブにかかってからの非常制動などは常識的にはあり得ない話といえます。
 しからば誰が非常制動をかけたか? なんですが、いくら若い運転士とはいえ、専門職である運転士がパニックになって後先考えずにレバーを引いたというのは、可能性は皆無ではないけど現実的には考えにくいところです。とすれば2通りの可能性が考えられます。
 1つは無線で呼び出しても応答のない運転士に代わって車掌が指令の指示または自らの判断で非常制動をかけたところ、運悪く先頭車がカーブにかかっていた可能性、もう1つは運転士の心神喪失状態が続いていてEB装置が働いた可能性の2通りです。特に後者は非常制動のタイミングの悪さに対して説得力があります。ATSもそうですけど、私たちは安全対策としての保安装置の装備を充実させれば安全と考えがちですが、機械任せだと細かい制御は難しく、場合によっては安全と逆方向に作用してしまう可能性すらあります。マンマシンインターフェースの設計の難しさは理解しておいた方が良いでしょう。
 運転士の心神喪失による事故といえば、今年3/2の土佐くろしお鉄道宿毛駅で特急が終端駅に突っ込む事故がありましたが、やはりATSとEB装置の隙をついて発生した事故でした。首都圏ではメディアへの露出が少なすぎて見えにくいんですが、経営の苦しい第三セクターローカル私鉄で安全装備が不備だったこと、高速で終端駅に接近しながら非常制動など事故防護措置を取らなかった(取れなかった?)土佐くろしお鉄道の女性車掌の問題などが指摘されてますが、今回の尼崎事故とダブる要素も多々ありますが、メディアでは関連づけて報じた例は今のところ見あたりません。あと大阪で起きた救急隊員をはねた事故や91年の信楽高原鐵道事故など、今回の事故と関連づけるならば同じJR西日本を当事者とするこれらの事故にもう少し言及があって良いと思いますが、あまりありません。なお、信楽高原鐵道事故に関しては網谷りょういち氏の著書をご参照ください。
 逆にスーパーひたち事故その他なぜか事故報道が目立つようになり、高速道でワゴン車横転のような、以前ならばベタ記事にもならないようなものまで取り上げられているのは、明らかにメディアの過剰反応といえましょう。
 逆に軽量化の弊害がやや大きく取り上げられているのは、日比谷線中目黒事故のせいでしょうけど、川島令三氏の指摘はあくまでも低速走行時のせり上がり脱線に対する弱点という点の指摘であって、今回の事故とは別のメカニズムで、軽量化が即危険なような論調には同意しかねます。
 というわけで、あくまでも現在時点でのメディアの事故報道に対する感想をまとめてみました。事故を風化させないことこそが、私たちにできることと考えます。

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