西武鉄道再生策のゆらぎ
昨日(5/24)、所沢で臨時株主総会が開かれた西武鉄道ですが、怒号飛び交う中で、後藤高志新社長が就任して新体制となったものの、経営改革委員会案が承認されるには至らず、前途多難なスタートとなりました。
経営改革委案は、西武鉄道を軸にコクドとプリンスホテルを子会社化して一体で再生するもので、コクドの大株主である堤義昭氏の影響力を排除するためにコクドは新旧会社に分離して旧会社に封じ込めるとともに、新会社を西武鉄道の子会社とし、さらに2,000億円の増資をみずほコーポレート銀行を中心とする銀行団が引き受けて、堤氏の影響力の排除を行い、一部資産を売却するというものです。
このスキームを取る限りは、増資自体は堤氏の影響力を実際的に防止するために必要なことですが、同時に銀行以外の一般株主の権利を希薄化してしまいます。それゆえに今回の総会の承認を得るには至らなかったわけです。
都区内のプリンスホテルをはじめ優良物件の家主で保有資産価値の高い西武鉄道に対し、リゾート開発で不調のコクドでは、資産内容に開きがありますし、確かに銀行団はコクドに資金を貸し込んでいますから、一体再生は銀行による形を変えたデッドエクイティスワップ(負債の株式化)とも取れるわけで、銀行はコクド債権の不良債権化を恐れているから一体再生にこだわっているのではないかという疑念がぬぐえません。
で、ライブドアのニッポン放送買収劇で登場した村上ファンドの村上世彰氏や外資を中心に西武鉄道の買収案というのがくすぶっているわけです。コクドと切り離して西武鉄道単体で再生した方が、株主価値を高められるという理屈です。一般株主には受けそうな話です。
ただし現時点では買収案の内容は明確ではありません。鉄道事業者として見たときの西武鉄道ですが、確かに資産内容は優良ですが、こと鉄道事業に限っていえば、疑問符がつきます。鉄道のような巨大装置産業の場合、本業の儲けを本業の更新投資に振り向けることで、競争力を維持することが重要です。逆に更新投資を抑制すれば簡単に巨額の現金が手元に残るために、経営判断を曇らせる要因でもあります。
この辺は当ブログでは過去にも記事にしておりますが、買収提案の中身が、どれぐらい鉄道事業を踏まえたものなのかについては、慎重に判断する必要があります。この辺もこんな記事を書いておりますが、単に保有資産の含み益で益出しするだけの買収案ならば、買収者に含み益をさや取りされるだけなんで要注意です。最近の記事でも言及しておりますが、まだまだ一悶着ありそうな西武鉄道の再建策といえます。後藤新社長の手腕が問われます。
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