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Monday, June 06, 2005

ATACSが拓く未来

JR西日本福知山線の尼崎の事故で鉄道の安全性について関心が高まっております。中には新型ATS万能など誤解に基づくものも多数ありますが、鉄道の保安装置として画期的な新システムがJR東日本によって開発されておりまして、6/5付日本経済新聞のサイエンス特集に取り上げられておりますので、ご覧になった方も大勢いらっしゃると思います。
 現在仙石線あおば通~東塩釜間で走行試験を進めておりますが、サックリいえばGPSによる位置情報を地上の無線アンテナとの間で交信して、先行列車との列車間隔を制御する仕組みで、従来の閉そく区間(200m~1,000m)に1列車しか入れない固定閉そく方式に対して、理想的な移動閉そくのシステムとなり、理論上は20m間隔で列車を走らせることも可能です。
 従来の地上子方式や信号電流方式に比べて、電波を用いることで大量の情報を瞬時に伝送することが可能になるので、大都市圏の高密度輸送線区への導入が期待されます。電波を用いるので、当然ノイズや遮蔽などによる伝送ミスも起こり得ますが、無線装置の配置を工夫するなどで、ミスを検知し補正する機能を持たせることで、最大の課題をクリアして「技術的にはいつでも実用化できる」(開発担当者談)ところまできており、いずれ首都圏などで導入することを検討中ということです。
 まぁ何とも夢のような話でして、ATS-Pでは先行列車の位置情報に基づいて、地上子の配置を工夫することで移動閉そくにかなり近い機能を持たせられますが、それでも閉そく信号機を視認しながらの運転となります。
 ATCの場合はマシン優先で線路に流れる軌道信号回路を車上で読み取って、指令機によって乗務員へ速度を指示する仕組みで、地上の信号機を視認するする必要がないので、速度制限段を増やすことで、きめ細かい制御は可能ですが、信号区間ごとに段階的に速度を落とすために、無駄な空走距離が出て列車間隔を縮めることを難しくします。
 またATSがバックアップシステムであるのに対し、ATCはマシン優先のシステムであるために、作動を確実にするために三重系のバックアップが取られ、それだけ冗長なシステムとなっています。また信号区間に入ってATC信号を受けて初めて速度制限を指示されるので、乗務員があえて先回りをしない限りは、機械的に減速されるために、乗り心地を悪化させてしまうという問題もあります。この辺の問題をクリアするために、一部でデジタルATCが導入され、ATS-Pと同様に先行列車の位置情報に基づいた一段減速の停止パターンで速度制御を行うので、前述の空走距離の無駄を省けるようにはなります。
 それでもレールに流す信号電流によって情報を伝送するシステムですから、レール面の状態によってレスポンスに影響が出ます。油膜や粉じんによる汚損があれば、その部分は電気的に絶縁状態となるわけで、放置すれば危険ですから、周期的にレール表面を研磨してやる必要があります。しかしレールを研磨すれば鉄粉がレール表面に付着し、摩擦係数が高くなってせり上がり脱線の原因にもなりますから、研磨後に電車を何回も走らせて鉄粉をとばす必要があります。これはATC区間のみならず、伝統的な継電連動システムや電子連動システムにおいても同様で、鉄道線路の保守はなかなか手間がかかります。
 と、ここまで書けばJR東日本の意図が見えてきます。無線を利用した伝送システムを使えば、従来に比べて保守作業の省力化が可能になるわけです。もちろんシステム自体の安全性が高ければ、それ自身が将来の事故を防ぎますから、大きな意味で省力化の一部ととらえられます。かつ最小20m間隔も可能な保安装置を採用すれば、ピーク時間帯に列車増発も可能になるわけで、それも30本/時というようなアバウトなダイヤ管理ではなく、最混雑列車の直前にピンポイントで救済列車を挿入するというような形で、実態としての混雑を効果的に解消させるダイヤ設定が可能になるわけですから、新次元の輸送サービスの領域に入るわけです。ほとんど平行ダイヤで変更の余地がないといわれる首都圏の通勤輸送のピークタイムのダイヤに、自由度が増すことの意味は大きいといえます。

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Comments

ATS-Pが導入されたとき、先行列車が赤信号の向うに見えたときには、びびりました。20メートル先に見えたら、どうなるんでしょうね。でも、これだけデジタル制御が進んでいるのに、注意、減速、警戒といった大まかな制御では時代遅れかもしれませんね。

Primera

Posted by: Primera | Monday, June 06, 2005 at 11:47 PM

長年京王線沿線にいましたが、京王線では踏切開閉時間の制御までATSでやってますので、踏切を渡ると左右に電車^_^;というのをよく見かけます。見慣れても見る度にゾクゾクしますが(笑)。

Posted by: 走ルンです | Tuesday, June 07, 2005 at 05:34 PM

京王線はそんな緻密なことをやっているのですか。確かに、踏切を塞いでとまると、大変なことになりますね。でも、あまりに緻密すぎます。JR西日本に爪をあかでも煎じてやりたいです。

Primera

Posted by: Primera | Tuesday, June 07, 2005 at 07:44 PM

かつて運輸省の指導で高価な高機能ATSの導入をさせられたせいでしょうけど、どのみち必要な安全投資ならば、目一杯有効利用して元を取ろうとしたんだと思います。
 いわゆる戦略思考ってやつでして、目先の利益のために安全投資を後回しにする発想とは大違いです。ま、その点JR東日本は画期的な新システムを開発するぐらいですから、よくやっているといえます。

Posted by: 走ルンです | Wednesday, June 08, 2005 at 08:50 PM

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