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Sunday, June 19, 2005

JR福知山線運転再開

関連ニュースをniftyから拾うと19日付で4本あります。

JR福知山線きょう運転再開、社長が始発運転台に(読売新聞)
福知山線 55日ぶり運転再開(共同通信)
福知山線、運転を再開=脱線事故から55日ぶり-安全性向上、課題に・JR西(時事通信)
JR福知山線・宝塚―尼崎間で55日ぶり運転再開(読売新聞)

 ATS-P地上子の設置、最高速度(120km/h→95km.h)や事故地点の速度制限(70km/h→60km/h)などを見直し、駅の停車時間も長くして安全に配慮しての再スタートということですが、その陰で工事開始時点での地元への説明が不十分だったり、ATS-P設置に関連するテストや乗務員の習熟運転も短期間で行われたことなど、泥縄の感は拭えない気がします。またATS-P車上子を持たないという理由で117系が福知山線から撤退することになりましたが、2扉で客扱いに時間がかかる同車だけに高価な保安装置を装備してまで使い続けることを嫌ったというのが本当のところでしょう。ま、何にしても10万人/日もの利用者がいる都市通勤線の長期運休という異常事態が解除されたことは喜ばしいところです。
 ただ失われた信頼の回復には時間がかかるものと思われますが、これから毎日の安全運行を続けることを通じて理解を得ていくしかないでしょう。その点で気になるニュースがないわけではありません。

JR
西日本「精いっぱい補償」、初の遺族合同説明会(読売新聞)

 補償に関する遺族説明会が18日に開かれて、JR西日本は手厚い補償を約束したようですが、信楽高原鐵道事故を他人事でやり過ごしたJR西日本への不信感は根強く、個別の交渉は難航が予想されます。それと事故の損失に関するニュースです。

安全の誓い、乗客に届くか=運休、振り替えの損失20億円以上-JR西(時事通信)

 鉄道会社にとって事故はかくも高くつく話です。事故を繰り返さないことの重要性を身に染みて感じて欲しいところです。
 ところでJR西日本が今年3月に発表した新中期経営計画(2004年度~2008年度)ですが、この事故の影響で見直しは必至と考えられます。特に東海道線山陽線普通車用の201系置き換え用に事故を起こした207系の後継車の321系7連36本252両の投入計画は見直される公算大と考えられます。
 元々国鉄タイプの旧型車の更新が遅れていたJR西日本にとっては、創業以来初めて減価償却費を超える額の更新投資を実施して、経営基盤を強化しようとしていた矢先の事故だったわけですから、当面の資金を事故の損失補填と補償に充てることを余儀なくされるのは致し方ないところです。逆に言えば大規模な投資計画を策定して予算を組んでいたことで、事故の補償の財源も十分に手当可能なわけで、その意味では不幸中の幸いだったのかもしれません。しかしこれでまたJR西日本の車両更新は遅れることを余儀なくされるわけです。
 ただし冷静に考えると、そもそも普通の120km/h化は新快速のスピードアップと中間駅の新設で必要に迫られていたわけで、既に次回改正で速度の見直しを発表している現状で考えると、321系投入によるスピードアップは当面見送りでしょうから、現有車両で無理のないダイヤで当面を凌ぐこと自体は可能でしょう。さすがにスピードダウンにクレームを付ける人もいなさそうですし。
 ただJR西日本は221系以来高性能車でスピードアップして車両運用効率を高めて収益性を高める路線を踏襲してきたわけですが、その結果高価な新造車は京阪神地区に重点投入せざるを得ず、またスピードアップと震災の復旧の先行で意図せざる乗客増があって、せっかく新造車を投入する片端から車両が足りない事態となって旧型車の置き換えが遅れたばかりか、旧型車の延命改造という前向きでない投資を余儀なくされてしまった従来のやり方を根本的に見直す好機と考えてほしいところです。
 JR東日本では極端な高性能を狙わずに省力化とコストダウンによって車両更新を加速して、結果的に大きな輸送改善効果を生み出しています。ローカル輸送でも両運モハにトイレをつけて乗客スペースが狭く少座席となったために混雑し、座席増設の上連結運転で使用されている125系と、最初から2連ワンマンで乗客スペースを十分取った701系の設計思想の違いは何なのか、よく考えて欲しいところです。

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» JR福知山線、今日運転再開。しかし・・・。 [Simplex's Memo]
あの脱線事故から2ヶ月近くが過ぎた。 今日の始発列車から福知山線は全線で運転を再開する。 しかし、残された課題はあまりに多い。 列車に乗っていた乗客、特に犠牲になった方や列車が激突したマンション等の補償問題。 遺族の方々を始めとする人々にとって長い長い補償交渉が始まる。 普通では考えられない精神的、肉体的な負担を強いられることでもある。 今回、列車に乗っていたり、マンションに住んでいた人には何ら落ち度はない。 その意味か... [Read More]

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» JR西日本 福知山線が55日ぶりに運転を再開 [Jariaの玉手箱]
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