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Tuesday, June 14, 2005

地方分権と交通政策

ちょっとつかみどころのないタイトルですが、最近思うところが多い論点でもありますので、考えをまとめておきたいと思います。当ブログの悪い癖ではありますが^_^;、少々ややこしい論点に立ち入りますので、長文必至ですがよろしくおつきあいください(笑)。
 4/1付で廃止された名鉄岐阜地区600V線区と日立電鉄ですが、その後代替バスの利用者が大幅に減少したり、岐阜に至っては大野町などで岐阜市へ向かう代替バスよりもJR穂積駅へ向かう路線バスに乗客が流出し、岐阜市の空洞化が深刻化するなどの影響が出ているのですが、行政の対応は後手を踏むばかりか、問題点の把握すらできていないていたらくとなっております。市民生活に大きな影響が出ている現実に自治体が責任を負えないというおかしな現実をどう考えるべきなのでしょうか。
 岐阜といえば市民による廃止反対運動やLRT特区申請、仏コネックス社による買収提案など話題豊富だったんですが、終わってみれば最悪の結末となりました。市当局が結局問題を把握できなかったのか、その市当局の仲介がなければ買収交渉に応じないとした名鉄のかたくなな態度が問題だったのか、いろいろ見方はありましょう。しかし現行制度のもとではこれがたぶん精一杯だったのではないかと思います。
 岐阜市では同じ4/1付で、2003年度から岐阜バスへの移管が進められていた市営バスの移管も終了し、くしくも同日に岐阜市の交通体系はほぼ岐阜バスに一本化される形になったわけです。結局名鉄の岐阜地区からの撤退と地方財政の悪化による地方公営交通の縮小の2つが同時進行で起きたという点に、岐阜の特長が表れています。平たく言えば市営バスの撤退方針が実行段階にある岐阜市は、いかに市民が廃止反対を叫ぼうが名鉄の撤退問題で既に当事者能力を喪失していたといえます。
 地方公営交通の問題点は、結構複雑なんですが、昨今は全国的に見直しの動きが活発で、岐阜市と同日に熊本県荒尾市でも市営バスの民間事業者(産交バス)への移管完了で姿を消してますし、免許上は公営でも業務委託されたケースは東京都や京都市などの大都市にさえ顕れています。公営という経営形態ゆえの非効率が言われ、例えば乗務員の高給問題などが語られることが多いんですが、確かにある時期同一地域の民間事業者に比べて年収ベースで100万円高いということはあったようで、市民による指摘もされたわけですが、その後は賃金の切り下げや嘱託職員の採用などで人件費抑制はかなりの程度進んでいます。ただ同時期に民間事業者でも同等の動きがあった関係で、官民格差是正に至っていないケースが見られることもあります。
 それでも相変わらず公営ゆえの非効率で語られるケースが見られますが、現実はかなり変わってきています。蛇足ながら浜渦副知事更迭問題で揺れる東京都の石原知事も、就任当初都営交通の民営化方針を打ち出しましたが、その後の労使協議で一部営業所を東京都も出資する一応民間事業者のはとバスへ委託したにとどまります。公営では赤字でも民営ならば納税までするということも言われますが、公営でも余剰金を一般会計に繰り入れれば同じですから、経営形態が問題の本質ではないということは、郵政問題と同じです^_^;。
 むしろ公営特有の問題は、鉄軌道事業において顕著な問題です。例えば国家資格である動力車運転免許ですが、三セクを含む民間事業者では必須ですが、公営鉄軌道事業者では免除されます。明治期に確立したいわゆる鉄道事業の国有化原則の残滓なんですが、本来国の専管事項である鉄道事業を行おうとする民間事業者の場合は、国の事業としての鉄道事業と競合することなく補完することが求められ、そのことの認定を受けた証しとして事業免許が交付されるという法体系となっております。加えて実務においても営利を優先して安全無視をしないように動力車の運転を国が認める有資格者に制限し、事業年度ごとの収支報告を国に対して行うなどの細かい規制を行ったわけです。日本初のインターアーバンの阪神電気鉄道が路線の一部が道路併設の併用軌道だったことを隠れ蓑に官営鉄道の並行路線の認可を軌道事業として受けたのは有名な話です。当時軌道は道路交通の一部と見なされ、鉄道と比べて規制が緩かったのです。
 地方公営交通は、基本的に都市内の軌道事業がほとんどで、官営鉄道との競合は考えられず、むしろ鉄道利用者を駅に運ぶフィーダー輸送の担い手として相互補完関係にあるものと見なされました。また民間同様に事業免許の交付を義務づけられ一般財源と切り離した特別会計による収支報告を求められたものの、公営ゆえに民間事業者のように営利優先の安全無視も心配ないということで、現在に至る動力車運転免許の免除は生き続けたわけです。この辺は尼崎事故の制度的側面の記事でも触れましたが、時代の変化に取り残された制度的な抜け穴として指摘しておきます。
 バス事業は当然民間同様の規制を受けるわけですが、岐阜市のように鉄軌道事業を手がけたことのない自治体においても、財政事情が許すならば民間事業者の買収などで鉄軌道事業への参入をうかがったことはあると考えて良いでしょう。実際名古屋市も民間である名古屋電気鉄道(名電)の事業を買収したものでしたし、名電も買収を見込んで郊外線を建設し買収後はそちらを中心に事業を継承し(第一次)名古屋鉄道となる歴史を踏んでいます。公営交通事業は都市のステータスと考えられていたわけです。
 時代は下り、今や全国の自治体は財政悪化に歯止めがかからない状況で、その原因は別途いろいろあるんですが、そうなると赤字を一般財源で補填する公営交通事業がやり玉にあげられることになってしまいます。前述のように人件費の見直しなどはかなり進んではいるのですが、一方でモータリゼーションの進展による中心街の空洞化、いわゆるスプロール現象によって中心部に路線が偏在する公営バスは大きな影響を受けます。同時にバスゆえに増加するマイカーによる道路渋滞で定時運行もままならず、乗客からも見放されることにもなります。
 かつて都市のステータスとして参入した市営バスを維持できない岐阜市に名鉄の撤退はあまりに荷が重い問題だったといって良いでしょう。そればかりか電車優先運行への無配慮やノーガード電停の放置など、市内交通の利便性向上にはついぞ目が向かなかった行政の無能力ぶりに驚かされます。
 また市営バスの廃止と併せて考えると、市内の電車とバスの事業の独占権を要求したコネックス社の主張にも違った意味が見いだせます。彼らは日本の制度は良く知らなかったかもしれませんが、結果的に岐阜バスが市内交通全ての受け皿となる実態を意外にも正確に把握していた可能性はあります。少なくとも岐阜バスよりも自分たちの方がうまくやれると考えていた可能性はあります。
 ま、それでも提案に乗れなかった岐阜市には、そもそも権限がなかったわけです。バス事業も含めて交通事業の免許の交付は国の専管事項であって、岐阜市どころか岐阜県も手が出せない問題ですから仕方ないところです。
 既に廃止された岐阜の名鉄線ですが、生活圏の交通のあり方をその地域で自己決定できない現実は何を意味するんでしょうか。以前にも指摘したことがありますが、そろそろ国の権限で行われる交通事業の免許制度を見直し、地域交通については自治体レベルに権限を委譲してはどうかと思います。免許制度がそもそも鉄道事業の国家独占の産物ならば、地方分権で地域の交通に関して地域で自己決定できるようにすることは、先の見えない三位一体改革よりも実効性のある改革だと思うんですがね。

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Comments

連続投稿をご容赦ください。

中日新聞岐阜県版2010年12月17日17面に
(以下要約引用)
連節バスが岐阜市で来年3月27日に運行を開始する。
運行主体の岐阜乗合自動車(岐阜バス)は2月末から試行運転を始め、
交差点で曲がる場合などの安全性を確認する。
(以上要約引用)

こんなことなら岐阜市内線を今の岐阜大学・同大医学部付属病院まで
整備していたらと愚考いたします。

管理人さんを始め皆様今年もありがとうございました。
よい新年になりますように。

では、失礼いたします。

とまと

Posted by: とまと | Sunday, December 19, 2010 at 07:20 PM

岐阜市の迷走ぶりは今に始まった話じゃありませんが、このニュースは知っておりました。アホらしくて取り上げる気力もありません。

脱力の年末、JRでタカシマヤへGo!

Posted by: 走ルンです | Sunday, December 19, 2010 at 11:36 PM

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廃止直前になっても、市の公共交通に対する将来像は依然として見えない。 年度末だから仕方ないのかもしれないが、主体的に動く様子も窺えず、その動きは鈍いと言わざるを得ない。 前回も触れたが、3ヶ月前の議論を今更追いかけている訳で、虚無感すら感じる。 とまぁ繰り言を言っていてもしょうがないので、前編に続いて平成17年第1回定例会の後半部を見ることにする。 参考:岐阜市議会議事録 市長に就任してはや3年が経過し、�... [Read More]

Tracked on Wednesday, June 15, 2005 at 10:42 PM

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