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Friday, June 24, 2005

横浜市交通局決算速報を読む

地方分権と交通政策の記事でも触れました地方公営交通の問題ですが、横浜市交通局の自動車事業と高速鉄道(地下鉄)事業の決算速報が出ましたので、ケーススタディとして見てみたいと思います。
 大まかなところですが、バスでは老人パス見直しによる分担金(自動車事業では収益の一部)減少とみなとみらい線開業の影響で営業収益が減少する一方、賃金切り下げなどのコスト削減で営業損失を前期より2億円減少させました。経常収支では一般会計からの補助金減少も利払いの減少が寄与し、また保有する土地の売却益で特別利益を計上して、純損益17.5億円の黒字となり、累積損失を21億円→3億円と大幅減少となりました。営業収入や補助金の減少を民間流のリストラで凌いで最終利益を計上するに至った姿は、ひところ言われた公営ゆえの非効率が過去の話になりつつある現状を表します。
 地下鉄ではみなとみらい線開業による都心部の利用減少を北新横浜~あざみ野間と踊場~湘南台間の利用増加がカバーし、収益増にバス同様のコスト削減効果もあって営業黒字13億円増の34億円を計上したものの、利払いが嵩んで70億円の経常赤字となりました。累積債務も70億円増、新線建設(4号線日吉~中山間)とホーム柵設置準備など設備投資資金の調達で借入金が増えたこともあり、次年度以降も営業黒字を継続したとしても経常赤字、累積損失増の傾向は続くものとみられます。
 どちらも借入金利の負担が経営を圧迫している現状が読みとれます。特にバスはリストラ効果とともに借入金利の減少が純利益を生み出しているわけで、逆に新線建設と設備の維持更新が必要な地下鉄では、むしろ金利負担が増えていることから見ても、実は地方公営交通の収支は金利負担で決まる傾向が読みとれます。
 昨今は地方債の発行が盛んで、横浜市は自治体としては東京都に次ぐ高格付けを得て低利で債権を発行できますが、それでも事業としての収益性に疑問のある地下鉄の新線建設では、必ずしもそれを活かせないのでしょう。
 あと過去の債務の大半が財政投融資である点に注意が必要です。特に横浜市では金利4%台のもので、制度として低利資金に借り換えることができない硬直的な仕組みが災いしております。97年に例外的に処理された旧国鉄債務問題に通じる話ですが、公営交通の経営上の最大の重荷は、国でやってる高利貸しの金利負担ということになります。そしてそれはやはり高利を約束して国民から集めた郵貯の利息を支払うための仕組みです。公営交通の赤字は郵貯の金利に化けているわけです。
 リスクテイクしない公的金融に潜む本質的な矛盾は解消されるべきですが、理念のかけらもない現在の郵政改革の政府案では、ユニバーサルサービスを盾に過疎地に局を設置しなければならないわけですが、それを可能にするには、現在の郵貯と簡保のように収益性の高い事業から内部補助して支えるしかないわけで、現状の収益性を維持するためには、発行事業体の信用でリスクプレミアムが変動する結果、金利が変動するはずの地方債や財投機関債の自主運用で、国の信用で決められた固定金利の債権と同様の収支を実現することが可能でなければならないわけで、暗黙の政府保証以外に実現可能性は限りなくゼロに近いといって過言ではありません。
 もちろん理論上は地方債にせよ財投機関債にせよ、プロジェクトファイナンス的な性格から民間や外国人投資家の引き受けの可能性はありますが、国債や政府保証債に次ぐ高格付けに見合う事業の収益性がなければ画に描いた餅となり、結局郵貯銀行と郵便保険の自主運用で塩漬けされ、やはり公営交通の赤字で金利を払う事態は変わらないのかも-_-;。

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