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July 2005

Saturday, July 30, 2005

JR東海313系増備、車両更新で減車とは?

JR東海のニュースリリースによりますと、5年ぶりに在来線車両の置き換えを行うということで、在来線在籍車両の81%がJR化後の新製車となるものですので、輸送改善の効果が期待できます。
 投入線区は東海道線全線、中央線、身延線、御殿場線などとなっていて、平たく言えばJR東海の直流電化路線のうち飯田線を除くほぼ全線に配置されることになりそうです。5年ぶりの登場となることもあって、車椅子対応トイレなどバリアフリーの深度化がうたわれておりますが、必然的にトイレスペースが拡大され、短編成を前提とする限り、収容力を確保するために車内レイアウトが見直されるのかどうか、つまり有り体に言えば転換クロスシートを諦めて、座席数の確保が容易なボックスシートやロングシートなどの選択肢を採用するかどうかあたりが注目点でしょうか。特に今回は名古屋都市圏以外の地域に配置されると考えられますので、並行私鉄との競争がないなど、マーケット特性の違いもありますし、乗客サイドの嗜好も異なると考えられますので、その辺をJR東海がどう考えているかが明らかになります。
 あとメーカーは日車主体となるんでしょうけど、小田急3000系や京王9000系、京成3000系や名鉄のステンレス新車群に見られるブロック工法の車体が採用されるかどうかなど、5年の空白による技術革新要素の現車への反映がどのようになるかも興味深いところです。
 で、本題なんですが、旧型車234両の置き換えに204両の新製ということで、差引30両の減車となるわけですが、これをどう評価するかという点です。素直に考えて、現車が登場する今年秋の時点では、愛知万博も終わってますから、ポスト万博輸送という観点からは、減車は妥当な判断となるわけです。おそらくJR東日本との乗り入れを減らして捻出した113系T編成の分が該当するんだと思います。JR東日本で113系置き換えが加速している現状を考えると、これも妥当なところかとは思います。
 問題はその先でして、ここまではあくまでも現状で需要に見合った輸送サービスが実現していることを前提とする限りは、問題ないと思いますが、例えば御殿場線の国府津口で313系ワンマン列車の乗車率を見ていると、どうも疑わしいところです。E231系5連の山北ローカルがほぼ完全着座で利用されている現状を見ると、短編成化やワンマン化などで合理化の果実を得るのに乗客サービスにしわ寄せがされているように感じざるを得ません。折角新車が入るというのに、なぜか素直に喜べないところです。
 設備投資額250億円としており、1両あたり1.25億円になりますが、JR東日本の新系列車で0.9億円/両を実現していて、それを当てはめると同じ予算で280両増備可能ですし、一般的な1億円/両で計算しても250両の増備が可能なんですが、それだけ車両単価の高い新車を入れることと、同じ予算で車両単価を抑制して新車を多数入れることと、どちらが正しい判断なのか、にわかには判断がつきません。
 このあたりの論点はJR西日本の321系についても述べましたが、車両更新は鉄道会社として重要な問題であり、またコストダウンは私企業としての鉄道会社として避けて通れないテーマであるわけです。会社としての考え方が最も端的に出る部分ということで、注目すべきものといえます。

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Monday, July 25, 2005

商業施設と病院の立地規制?

商業施設や病院の郊外立地を規制・国交省など検討(日本経済新聞2005.7.25.)

























地方圏の大型店の立地規制
現行検討案
市街化区域
商業地域制限なし制限なし
工業地域など制限なし禁止
工業専用地域など禁止禁止
市街化調整区域原則禁止厳格化
非線引き白地制限なし厳格化
農地(転用後)制限なし制限あり

 またぞろ政府の新たな規制を模索する動きです。国土交通省と経済産業省が共同で検討に入ったものですが、3大都市圏を除く人口20万人以上の都市で中心部の人口が10年で1割減というのもショックな話ですが、その原因を商業施設や病院の郊外立地が進んだことに求めるあたりが、何とも近視眼的です。
 もちろん本当の原因はマイカーの普及と道路整備によるもので、商業施設にせよ病院にせよ、地価の安い郊外に立地を求めるのは当然の成り行きです。また特に商業施設においては、商品の納品にも好都合なので、放置すれば郊外に大型商業施設が立地するのは当然過ぎるほど当然といえます。メーカーの工場閉鎖でまとまった再開発用地が発生していることも、商業施設や病院の郊外立地を促進しています。
 また大店立地法により駐車場待ち渋滞など出店に伴う環境影響評価を求められ、誘導員を配置するなど、郊外店特有のコスト負担もあるわけで、結果的に店舗の大規模化で負担を軽減するようになります。となると1店舗では持ちきれず、多数のテナントを集成したショッピングモール形態のものへと進化するのは当然といえます。マイカー利用者にとってはワンストップショッピングとなって利便性が高まる点も見逃せません。
 記事にあるように都市計画法と中心市街地活性化法の改正で、このような現状に歯止めをかけられるかどうかですが、よほどガチガチに規制強化すれば別ですが、実効性は疑問です。またガチガチの規制強化は立地する商業施設や病院にとって、それ自体がコスト要因となることも忘れてはなりません。何か政府官僚にはまちづくりは理解しがたい話なんでしょうか。
 再三当ブログで取り上げておりますが、結論をいえば中心市街地へのマイカーの乗り入れ規制と公共交通の整備によって、集積度を高めコミュニテイを形成することをしないと、結局衰退するものはするんです。中心市街地へ人々が行く動機付けが欠落している限り、人々が都市に集まることはないんです。
 この辺は城下町考、岐阜の場合でも述べましたが、中心市街地に大規模商業施設や大病院を整備したとして、そこへマイカーが集中したときのひどい渋滞を想定できないとしたら、何とも想像力の欠如した話です。それこそ大店立地法を厳格に適用すれば、駐車場へ車を誘導するために多数の誘導員を街中に配置しなければならず、大規模ショッピングモールなど経費倒れになるのがオチです。また当然居住者にとっても良い環境とは言い難いのは言うまでもありません。中心市街地への大規模集客施設の配置は、マイカー規制と交通インフラの整備抜きには考えられません。
 織田信長が稲葉山城のある金華山の麓の町の名を井ノ口から岐阜に変えたのは、中国渭水の畔の岐山の麓から周の国が興ったことにちなんだもので、名君の誉れ高い周の開祖武王になぞらえて、楽市楽座の商業振興でまちづくりをしたもので、理念的なまちづくりが実践されたわけです。その同じ町が今度は郊外店に対抗して中心街にマイカーを呼び込もうとして名鉄岐阜市内線を廃止してどうなったかは既に語り尽くされております。現代日本人は戦国武将より退化しているのかも^_^;。

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Saturday, July 23, 2005

地震からの帰還、2時間のはずが5時間でした

というわけで、21時過ぎに無事帰宅となりましたが、しかし凄かった^_^;。
電車ストップ道路渋滞 首都圏(共同通信)
 そもそも週末に仕事が入って、朝から北千住へ向かったんですが、滅多に向かわない常磐線で、朝から415系500番台の土浦行きをゲットして、つくば万博で乗ったことを思い出し、くたびれた車体に時の流れを感じつつ何か得した気分だったんですが、仕事を終えて16時過ぎ、要介護の母の食事介助の日課をこなすのに間に合うタイミングだったこともあって、足取りも軽くホームへ向かうと、E501系の快速上野行きを引き当てるなど、レアものに満足しながらの家路でした。
 上野に着いて山手京浜東北の3,4番線へ向かい、折しも京浜東北の蒲田行きが入線というタイミングでグラリ、一瞬足を取られて立ちくらみかいと自分ツッコミしたら、頭上で番線表示が揺れていて、地震に気付いてそれにしてもなんという大揺れかと思いつつ、到着してドアの開いた電車に乗り込んだら、地震で点検のため発車見合わせの放送がホームに入って、やれやれと思いつつも、この時点ではこれほどの大ごとになろうとは思いもよらずというのが正直なところでした。構内放送で震度5が伝えられ、なるほど揺れたわけだ。
 ま、それでも電車が動くまで待つしか術はないわけで、母の食事介助は親族に電話で依頼して、とりあえず復旧を待つこと1時間、動く気配はないけれど、とりあえず東北線と高崎線は徐行運転ながら復旧したのを横目に、他社線の復旧状況もわからず、改札で汗して乗客を応対しているJR社員氏に話を聞いてみると、情報が不十分ながら東海道線、横須賀線、湘南新宿ラインは止まっている由、東京メトロは全滅ながら都営地下鉄と京浜急行が復旧ということで、上野御徒町まで歩けば、何とか横浜までは行けそうなことがわかり、振替乗車を訪ねると、全社全線で止まっているために、振替乗車の扱いについて合意ができていないということで曖昧な返事。ま、とにかく上野駅では東海道方面の情報が十分ではないようなので、18時頃にとりあえず歩いて南を目指すことといたしました。
 途中御徒町と秋葉原に立ち寄って、最新情報を確認しつつ、それでも東京まで行けばもう少し情報が入るかもしれないと思いつつ、結構道を歩く人が多いのも同じ考え方だろうと励まされながらの道行きでした。そして秋葉原で振替乗車について、とりあえず他社線の乗車券でも乗せることになったとの情報を得、また東京メトロ銀座線、日比谷線の復旧ということで、日比谷線秋葉原駅へ向かいます。途中電気店店頭のテレビに人だかりが。地震で交通がストップしたニュースが流れてました^_^;。でも渦中にあるととにかく情報が欲しいんで、とりあえず足を止めて眺めると、未だ東京メトロは全線ストップのままで、やはり現場の方が情報が早いんですね。
 とりあえず日比谷線で人形町へ、そこから都営浅草線を介して横浜まで京浜急行で向かうことにします。すると人形町でやってきた電車はKEIKYU BLUE SKYのN1000形8連の快特三崎口行きでした。こんな日に限ってまたレアものを引き当てるとは(笑)。
 泉岳寺や京急蒲田で抑止がかかりながらも、20時には横浜へ到着、京浜間をほぼ1時間かけてですから、普段の倍ですが、ここまで来れば先が見えてきます。LED案内表示を見ると16:56発快速アクティー小田原行き、帰宅してから時刻表を見れば3767Mで地震の時刻には新橋~品川簡を運行中だったんですが、駅間か品川駅かどちらかで抑止をかけられ、やっと復旧しても25km/hで徐行運転で、やっとこの時刻に横浜に到着したことになります^_^;。お疲れさま。
 横浜から先は通常の運転速度での運行となり、順調に大船に達しましたが、バスターミナルでびっくり。横須賀線が止まっているので、バス停には長蛇の列が。それにしてもバスで運びきれるでしょうか。出迎えの車も多数出て時ならぬ渋滞に、バスも時刻が乱れっぱなし、這々の体での帰宅と相成りました。
 全体的には足止めを食った乗客も落ち着いてましたし、JR東日本の社員が、熱心に情報提供を行っている姿勢にも好感が持てました。家に帰ってからテレビニュースを見ると「震度5でストップとは脆弱、大地震に対して不安」などという報道がなされてましたが、どうせインタビューの仕方で回答を誘導しているんでしょう。現場は至って冷静というのが私の印象です。それよりも帰宅して読んだ夕刊のエジプトのテロ事件に驚きました。日本人は地震には慣れていて冷静でいられたかもしれませんが、過日のロンドンのテロ事件のときのイギリス政府や国民の冷静さを見るにつけ、事実に反した報道で煽る日本のメディアのしょーもなさに暗澹たる気分にさせられます(怒)。

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Saturday, July 16, 2005

郵便ポストが赤いのは、国民欺くウソのせい?

当ブログにおける郵政民営化関連の過去記事です。
郵政改革、日の丸民営化は錦の御旗?
旅行貯金者の聖地はクマと出会う素敵なところ
郵政民営化の陰の悪だくみ、北海道新幹線着工
うーむ、見事に支離滅裂だ(爆)。
 連日郵政国会をめくる報道合戦が続いておりますが、ものの見事に政局報道ばかりで、国民が最も知りたい民営化したらどーなるの?という話は埋没してしまっております。こういう状況は裏で別の事態が進んでいてもそれをカモフラージュしてしまうおそれがあります。さりとてここまで何だかわからない対立が先鋭化してみると、今さらナイーブな政策論も陳腐だし、んで、某超有名キャスター氏が「政府は説明責任を果たせ」とはいかに。国民の疑問に答えられないのは政府のせいかい。仮にも報道機関たるメディアのあり方を考えていれば、こんな他人事のような言い方はできないはずです。
 郵政民営化で新幹線ができるというのは、いささか誇張した表現ですが、政治は表面をなぞるだけでは本当のところは見えてきません。国会での対立劇の陰で進行するなにかに目配りが欠かせません。少なくとも大規模な利権である郵政の改革には、きれい事では計れないさまざまな思惑が交錯するのは当然過ぎるほど当然のことです。
 というわけで、こんな記事見つけちゃいました。これが郵政民営化とどのように関連するのかは、少し解説が必要です。
 背景として、商船三井側には中国特需で追い風を受ける海運業界の中で、港から先の需要地への足を確保し国際物流体制の中で存在感を増す意味で、国際航空貨物を担うフォワーダーと称する運送会社とのコラボレーションを模索していました。そして相手として最大手の日本通運は大き過ぎるし、まさか郵船航空サービスと組むわけにもいかず、中堅フォワーダーとして近鉄エクスプレスは最適な相手といえます。
 一方の近鉄エクスプレスですが、バッファローズ球団の合併問題でも明らかなように、親会社の近畿日本鉄道の事業リストラの一環として、5%相当の保有株式の売却が検討されておりました。そしてライブドアのニッポン放送買収劇に背中を押され、近鉄保有株式の売却先として商船三井が浮上したというわけで、一応相思相愛の提携といえるものではあります。
 キーワードは中国でして、中国の工業化は、国際分業の大規模な組み替えとして現在進行中の大変化なわけですが、その結果既にUPS,DHL,Fedexなど少数のメガキャリアの寡占といわれる国際貨物分野での合従連衡の始まりというコンテクストがあるわけです。
 えーと、勘のいい方ならここまででピンとくると思うんですが、メガキャリアの一角のDHLが、民営化されたドイツポストに買収されて各国の運送事業者を次々に買収して地位を築いたことが思い起こされます。そういえば郵政公社の生田総裁は商船三井出身でしたっけ。
 そう、なぜに郵政民営化を急ぐのかというと、今このタイミングでないと、中国発の物流合従連衡に乗り遅れるわけで、郵政公社を民営化して官業の縛りを解いて新分野参入をしない限り、電子メールの普及などで毎年2%減の続く親書便輸送でじり貧の郵政事業は永遠に赤字を垂れ流し、事業縮小を余儀なくされることは明白です。そのためには反対派に大盤振る舞いの妥協をしてでも民営化を実現しなければならないわけです。結果的に整備新幹線の新規着工も実現してしまうんですね。
 というわけで、国民の利便性なんぞハナから眼中にない改革だからこそ、過疎地の郵便局の設置基準のような、民営化の意義すら疑わせる妥協が平気でできてしまうわけです。また国民に民営化の意義を堂々と主張できないで、コンビニ化などの夢物語しか語れないわけです。コンビニ業界が既に既存店売上高の前年割れが続き、スクラップアンドビルドで新店効果で売上を稼いでいる現実をご存じないんですね。民営化の果実は事業会社の自由な事業展開というオチです。だから民営化後の株式持ち合いも容認してNTTのように独占企業として政治利権化すれば、政治家はおいしい思いができるわけです。
 とすると、以前から郵政事業のリストラ=事業縮小の必要性は言われていたわけですから、今回の政府案は廃案にした方が事業縮小に寄与するのでしょうか。まぁ、郵政民営化で事業の自由を獲得しても、それだけで事業の成功が保証されるわけではないんで、結局郵政事業は遠からず縮小の道を辿ると考えられます。
 加えてこんなニュースもありますが、財政改革は小泉改革の金看板ぢゃなかったんかい。まぁ一律3%のマイナスシーリングというのは、不要部門は簡単に越えられるけど、安全や社会保障など財政需要の旺盛な部門ほど痛みを伴うことも忘れてはなりません。
 というわけで、私は個人的には民営化賛成にも反対にも与しないでおきます。

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Wednesday, July 13, 2005

相鉄自動車、空港リムジンへ参入

相鉄自動車、沿線から初の羽田行き高速バス運行(日本経済新聞)
 というわけで、二俣川駅~羽田空港間のリムジンバスを7/20より京急バスと相鉄自動車の共同運行で運行開始となります。相鉄沿線からの空港路線は初めてです。
 で、このニュースのニュースバリューはというと、赤字のバス部門の分社化を巡って労使対立が続く相模鉄道で、タクシーと貸切バスの相鉄自動車による路線開設という点にあります。しかも河口湖線も申請中ということで、高速バス用大型バスを6台導入して対応します。当然バス分社を巡る労使交渉にも影響するものとなるでしょう。
 労組の切り崩しと言ってしまえばミもフタもない話なんですが、グループ連結経営を標榜する以上、バス部門の赤字を放置できず、分社して給与体系を鉄道本体から切り離すことは、避けられない話ではあります。実際分社化されて相鉄バスに移行し独自の給与体系となった綾瀬営業所は、単独黒字を達成しています。
 労組にとっては悩ましい話なんですが、鉄道直営である限り、鉄道の黒字でバスの赤字が穴埋めされてしまう状況で収支均衡が可能かどうかという問題は直視する必要があります。鉄道との収支通算を前提に現在の待遇が決まっているときに、それを与件としてバス事業の収支均衡を図ろうとすれば、路線の縮小や減便など縮小均衡へ向かい、結局スケールメリットが効かないレベルまで縮小して長期的には事業廃止しか道がなくなるわけです。
 これに対して現役乗務員の自然退職をあえて補充しない形で徐々に鉄道直営のバス事業を縮小させていく方法はあり得ます。しかし京王電鉄などで試みられたこの方法は、結局時間がかかりすぎて、その間に経済情勢が変化して計画に狂いが出るなどの問題をクリアできず、結局労使対立の中待遇切り下げを伴って直営バス部門の切り離しが行われました。結果としてバス事業の収支均衡は達成されましたが、社員の定着率の低下は見られたようですので、安全運行のために望ましい長期雇用への回帰が次の課題ですが、外科手術を避けて縮小均衡へ向かうのとどちらが正解だったのかは、かなり悩ましい問題です。
 いろいろ背景はあるんですが、そもそも鉄道直営のバス部門の意義というのは、日本の行政の縦割り体質に根拠があります。60~70年代の公共料金抑制政策で鉄道運賃は意図的に低く抑えられ、5%程度のインフレと相まって大手私鉄といえども運賃改定後3年もすれば利益が無くなってしまう状況で、運賃改定周期が異なり改定の査定基準も異なるバス事業を直営で持つことの意味は大きかったといえます。現在から見ると考えられないような話ですが、縦割り行政の実態はあまり変わっていない気がします^_^;。
 現実にはマイカーの増加で利用客が減少し道路渋滞で定時運行が阻害され、更に客離れが続く路線バス事業を鉄道直営では持ちきれなくなってきてます。また80年代後半からブームとなって、一般路線に比べて生産性が高く高収益な高速バス事業で一息ついたのもつかの間、90年代には需給調整規制撤廃の流れを受けてダブルトラック、トリプルトラックなど競争激化で価格破壊へと向かい、一方で人件費が高止まりする中、利益確保が難しくなってきています。
 あと頭の痛い問題は、貸切バスによる格安ツアー運行という路線バス類似行為の横行で、取り締まる法規もなく野放しとなっている問題があります。実はこれ例えば北海道で始まって当時の運輸省の指導で貸切ツアーバスへ追認的に路線免許を交付して、安全運行などの面で縛りを課すなどが過去に行われたんですが、当時と比べても価格競争で過酷な乗務員の勤務実態や車両の整備不良などがあるにも関わらず競争促進の見地からか放置されております。
 本来は安全の見地から国が規制に乗り出すべきですが、路線バスと貸切バスは別物という縦割りの論理が優先するようです。そんな中で浸食される路線バスの側が労使対立していては、ますます事態が悪化するだけになりかねません。これだけ経済情勢が変化している中での鉄道直営バス部門の乗務員の待遇維持は、諦めざるを得ないのではないかと思います。むしろ長期雇用を軸に安全をアピールできる体制づくりに労使が取り組み、悪質な格安ツアーバスの駆逐に動いて国を動かして欲しいと思います。

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Monday, July 11, 2005

“超優良企業”つくばエクスプレスの謎

JR常磐線のダイヤ改正の話題でネット上も賑わっておりますが、今改正の誘因といわれるつくばエクスプレスの開業を来月に控えて競争もヒートアップという論調が多い中で、当ブログでは少し視点を変えて掘り下げてみたいと思います。
 そもそもは国鉄時代の通勤新幹線構想に端を発する計画として構想されました。東京の旺盛な通勤需要の増加に対して、通勤五方面作戦と称する輸送力増強計画が実施中でしたが、中央線の高架複々線工事で都市景観の悪化、日照障害、騒音振動被害などが影響して反対に遭い、土地の収容を巡って反対に遭いと遅々として進まず、また折角線増で輸送力を増強しても、沿線開発を誘発して混雑したりという具合で、大規模投資に見合う効果はなかなか得られませんでした。
 一方1964年に開業した東海道新幹線が、そのスピードと輸送力で在来線との比較で劇的に生産性を高め、高収益路線となったことで、新幹線なら何とかなるという認識が国鉄内部に芽生えます。その高生産性を首都圏の通勤輸送に利用できれば、通勤輸送の劇的な改善が可能ではないかということで、主に東京から100km圏の拠点都市を東京と直結することで、大規模な開発用地を創り出せれば、旺盛な需要の先回りが可能ではないかと考えたとしても不思議ではありません。また開業当初、東海道新幹線で1駅間利用が多かったことも、このプロジェクトに自信を与えるものと考えられておりました。
 そこで全国新幹線網とは別個に、東京から小田原、甲府、高崎、宇都宮、水戸への通勤新幹線計画を立ち上げることとなりました。最高速160km/hで表定速度120km/h程度を想定し、新幹線より規格を下げて地価の高い地域での用地買収をやりやすくし、最大乗車時間が1時間を切ることから立席を容認した詰め込み設計で運賃を安くするなど、実現を視野に入れた構想が練られていて、結構本気だったようです。
 しかし実際に日の目を見ることはありませんでした。当時の国鉄が政治の干渉を受けやすい組織だったことから、票につながらない通勤輸送の改善は優先順位を下げられることとなり、また開業時多かった新幹線の1駅間乗車も、東名高速道路の開通とマイカーの普及で減少し、東海道、東北、上越と新幹線が開業してみれば、朝の上りは列車のない空白の時間帯となり、下りの始発駅への送り込み回送を兼ねた通勤列車の設定が可能なことがわかると、わざわざ通勤目的の新幹線を作る意味も見出せず、ということでいつしか立ち消えとなったわけです。
 時は移りバブル真っ盛りの頃、地価上昇を背景に東京の通勤圏で土地の仕入れ値から開発可能地が限定される中、また五方面作戦で都心アクセスを地下鉄千代田線に依存したためにサービスが硬直化し、柿岡の地磁気観測所の影響で取手以北が交流電化となって、高価な交直両用車を必要とするなど、特殊事情が災いして輸送改善が進まない常磐線の混雑緩和を兼ねて、東急田園都市線をモデルとした鉄道新線を中心に沿線開発と関連事業で自立採算を目指す事業として、鉄道のない研究学園都市つくばと東京を直結し、沿線開発のために中間駅を設置した仮称常磐新線として事業化が計画されました。通勤新幹線構想はここへ来てコンセプトの変更がなされたわけです。
 とはいえ60km弱の高規格新線の建設と沿線の広大な開発用地の取得、同時に区画整理事業による鉄道用地捻出を兼ねた土地の先買いなどで、かなりの資本規模を必要とする事業であり、国鉄末期の財政事情や労使関係のもとでは実現は難しく、また分割民営化が実行段階に至ってなかなか事業化の機会を得られずに推移します。事業の概要は茨城県の公式ページに要領よくまとめられておりますので、ご参照ください。
 何事も行間が重要でして(笑)、いくつかのポイントがあるんですが、89年の「大都市地域における宅地開発及び鉄道整備の一体的推進に関する特別措置法」という長ったらしい名称の法律が成立し、事業主体となる第三セクターに開発用地と線路用地を兼ねた土地の先買いを認め、民間地権者を巻き込んだ区間整理事業を推進することができるようになりました。また都市鉄道整備に関する無利子融資の受け皿となることも盛り込まれるなど、法令によって事業推進の権限を得ることとなり、91年に事業主体となる第三セクター「首都圏新都市鉄道株式会社」を設立し、翌92年に第一種鉄道事業免許を取得し、動き出すこととなります。
 とまぁここまでで既に通常の第三セクター鉄道と際立った違いがありますが、株主構成も特異でして、沿線4都県と12市区町村と、金融機関や沿線企業を合わせた207社の民間株主という構成で、民間に特に有力な大株主が見あたらず、自治体主導型第三セクターといえるんですが、驚くべきはその資本金で、1,850億円という資金を集めております。この金額はJR東日本の2,000億円には及ばないもののJR東海の1,200億円をはるかに上回る日本の鉄道事業者としては2番目の規模となります。当然その分借入金の比率は低く、無利子融資も受けられることから総事業費9,400億円中6%相当の有利子負債しか保有しないという大手私鉄も真っ青な健全すぎる財務体質です^_^;。当然開業後の利子負担も軽いわけで、高速バスより安い認可普通運賃を裏付けております。
 首都圏の複数自治体が結集して余剰金を持ち寄れば、これぐらいの資金が集まるというのは驚きですが、もちろん近隣自治体とのお付き合いで地方債を発行して得た資金で出資している自治体も中にはあるでしょう。この場合事業者である第三セクターに代わって金利を負担することになりますが、開発利益が還元されればそれで良しという割り切りも可能です。また当初予定されていたJR東日本が出資を見送り、穴埋めに広く企業の出資を募った裏にも自治体の苦労があったと思われますが、注目すべきは、事業主体となる第三セクターを軸に各自治体の行政権限が鉄道整備と沿線の一体開発というベクトルで束ねられ、事業推進のイニシアチブを生み出している点です。上記のホニャララ一体的推進法^_^;が効いているものと思われます。制度が資金を集め制度が事業推進のイニシアチブを生み出すというのは、これまでの地域開発には見られない希有な出来事ではないでしょうか。
 もちろんこのことが事業の採算性まで保証するものではなく、営業成績は蓋を開けてみなければわからないのですが、潤沢な資金を背景に真っ直ぐな高架橋にスラブ軌道という新幹線を彷彿とさせる高規格な線路にATC,ATO装備にホーム柵完備のワンマン運転仕様という贅沢なハードで、速度も編成質量も新幹線の半分ですから、1列車あたりの軌道破壊量は1/4かつ新幹線ほどの保守精度は必要ありませんから、極限的な省力化体制で営業できる点は、利子負担の少なさと共に有利ではあります。それでもJR東日本が降りた理由でもある地価下落による居住人口の都心回帰という現実の前で、目論見通りの沿線開発が可能かどうかは未知数ではあります。
 つくばエクスプレスが事業として成功するかどうかはともかく、地域の公共交通整備に大きなヒントを与えてはくれます。ホニャララ一体的推進法^_^;の地方版のような例えば(仮)まちづくり推進法のような法律を制定し、沿線の一体的開発に加えてパークアンドライドやロードプライシングまで制度として定義すれば、地方都市でLRTを整備したりローカル鉄道を存続させたりする可能性がひらけると思うんですが。岐阜市や常陸太田市が為す術なく鉄軌道の廃止を受け入れ、地域交通を衰弱させた不幸を繰り返さないで済み、あるいは神岡鉄道の不幸に際して指摘した高規格なハードでメンテナンスフリーを狙う意味でのテストケースでもあり、また新たな公共交通整備が可能となるならば、バブルの落とし子みたいなつくばエクスプレスですが、地域交通の整備に新たな可能性をひらくものとなりうるのではないでしょうか。
 その意味で開業が待たれますが、昨今の首都圏の新線開業の傾向から、初乗りラッシュは避けられず、ホームドアが仇になってダイヤ乱れっぱなしのスタートが予想されます。ほとぼりが冷めてから普段着の姿を見たいところです。

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Saturday, July 09, 2005

JR西日本321系設計見直しの怪

niftyのニュース検索で以下の記事が見られます。

JR西新型車は先頭を低重心に(共同通信)
先頭車両の重心下げる=遺族に配慮しデザインも変更-207系の後継車両・JR西(時事通信)

 以前書いた記事で中期経営計画の見直しに言及し、特にその目玉となる東海道山陽線普通車置き換え用の新車321系投入の見直しに言及いたしましたが、日々古くなる旧型車の置き換えを優先するようです。それはそれで見識ではあります。
 気になるのは先頭車をモーター付にして低重心にするという部分ですが、何の意味があるのでしょうか。事故編成は先頭Tc(運転室付トレーラー)車だったから脱線したとでも言いたいのでしょうか。先頭Mc(運転室付モーター車)だったらオーバースピードでも脱線しなかったのでしょうか。報道だけでは真意は見えません。少なくとも重量の大きいモーター付車の方が遠心力の影響を受けるわけですから、先頭車をTcとするかMcとするかで転覆限界に有意差が生じるかどうかは一意には決まりませんし、そもそも転覆限界近くの速度で営業運転を行うような状況を改善すべきでしょう。
 321系に関しては、既に事故時点でメーカーとの設計協議が進んでいたようで、軽微な仕様変更でとりあえず置き換えを優先するという考え方は、それ自体はとやかく言うべきことではありません。また特に共同通信の配信記事にある側面強度の問題は、現時点で明確な基準があるわけではないので、対応を取れないのは無理からぬところです。基準を明確にするには、どのような想定のものとにどの程度の安全を確保するかによって、対応すべきことがらが変わります。今回の事故のような高速度での転覆による挫屈(折り重なり)による側面損傷は、基本的に多少の補強程度で回避可能ではありません。側構え厚を増してクラッシャブルゾーンとする以外に対策はないわけですが、その分車内有効幅を縮めることになるわけですから簡単ではありません。建築限界、車両限界を簡単に拡大できない鉄道においては、できることに限界はあります。
 加えて側面を損傷する可能性の問題を問うならば、自動車と違ってレール方向に1次元的に動きを規制される鉄道車両に自動車の側面の強度基準を当てはめるのは合理的とはいえません。事故率を考えると側面強化よりも前面強化の方がより強く要請されるわけです。事故報道であまり取り上げられておりませんが、事故車両の207系では先頭車の前面の損傷が大きく、高運転台にして十分なクラッシャブルゾーンを取っているJR北海道や東日本の車両と比べると、問題があるように感じます。それ以前に今回の事故のように、マンションのような質量の大きい固定建造物へ衝突した場合の安全性を車体の強度で確保するよりも衝突を防ぐ方向で考えるべきでしょうから、実際に車体強度の基準を作成する作業は難航することになります。
 そういったもろもろを考えますと、321系についてはもう少し時間をかけて、事故の現実を受けた仕様変更を盛り込んで欲しいと思います。特に低価格であることは、旧型車のより多くの置き換えの観点から重要なんですが、JR西日本に関しては、223系増備のときもメーカーに泣きを入れて値引きしてもらったなどの噂が絶えず、設計そのものからコストを見直す姿勢が欠けているように感じます。その辺の無理が回り回って現場への過重な負担とならないように、大胆な見直しをして欲しいと思うのですが、危うさを感じるのは私だけでしょうか。
 最後に、ロンドンで起きた同時多発テロ事件ですが、現地の報道や市民の対応に冷静さが見られることが救いです。もし日本ならばこうはいかないだろうと思うと暗澹たる気分にさせられます。メディアの客観報道の重要性を感じるところです。

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Monday, July 04, 2005

M250系ブルーリボン賞受賞の意外

既にネット上で話題になっておりますが、当ブログで取り上げる以上、ナナメ読みになりますことを先にお断り申し上げておきましょう(笑)。
 鉄道友の会という趣味団体の会員の投票で決まるブルーリボン賞に、乗車できない上に夜間運行でまず目撃も叶わぬ貨物電車“スーパーレールカーゴ”ことJR貨物M250系が受賞したことを、意外感をもって見られておりますが、京都議定書の発効を控えてCO2削減が話題になる昨今を考えると、鉄道ファンの社会性はそれなりに健全なのかなと思う反面、貨物輸送のトラックから鉄道や海運への転換を目指すいわゆるモーダルシフトの意義といったところについて、どれだけ正しい理解があるのかは、正直なところ疑問なしとは言えません。それでも地味なJR貨物がこういう形で脚光を浴びることは喜ばしいところです。
 国鉄改革のときに、国鉄時代から赤字体質だった貨物輸送をどうするかについては、ぎりぎりまで決まりませんでした。結果的に地域分割された旅客6社の線路を借りて、全国規模の輸送ネットワークを維持する形で決着しましたが、当初から収支が危ぶまれる存在でした。そのために車両や車両基地や乗務員区などの固有の資産も可能な限り圧縮され、旧国鉄長期債務の返済義務も免除された存在としてスタートしましたが、それだけでは足りず、旅客会社に支払う線路使用料についても、特段の優遇措置がとられることになりました。
 原則はアボイダブルコスト方式といいまして、貨物列車運行によって発生する機会費用(運行しなければ発生しない費用)の負担という考え方で、需要に応じて列車を運行した分だけ費用が発生するわけですから、繁忙期向けに不定期列車を多数設定しておいて、閑散期には少数の定期列車に集約することで費用を圧縮することにより、線路使用料の負担を運賃収入にリンクした変動費とすることができる仕組みとしました。
 一応の基準としては、列車運行に関わる機会費用として動力費、線路保守費、電路保守費、運行管理費などの実費分に1%のインセンティブを上乗せした額となっておりますが、個別具体的な線区毎の線路使用料については、旅客会社との個別交渉で決めるものとされ、さらにJR発足当初の経過措置として、基準に対してさらに値引きした水準でスタートすることとなり、産経新聞の報道などで明らかとなった列車牽引の機関車の両数で決まる方式が、実務上の便法として用いられたらしいのですが、このことがスーパーレールカーゴのスタートを躓かせることになります。
 それ以前にJR貨物発足後に東海道線の貨物列車の牽引トン数として1,300tが最大だったものを1,600tに強化する目的で製造されたEF200という機関車がありましたが、JR東海から「消費電力が大きくて変電所容量が不足する」というクレームがつき、また実際1,600t列車に対応する停車場有効長が不足する駅が多いこともあって、実際の運用に就くにあたってリミッターが装着されてEF66並に性能を下げて使用された経緯がありました。そしてEF65などの老朽機関車の置き換え用にスペックを下げたEF210が登場することになります。
 国鉄形の老朽機関車は多数ありまして、東海道山陽線のような平坦線ではEF210で当面良いとして、非電化の北海道向けのDF200や勾配区間用で重連総括制御可能なEF64を単機で置き換える目的のEH200や青函トンネル区間を含む本州対北海道間輸送用のEH500などが登場するわけですが、置き換え対象線区の内、JR東海所属線区である中央西線へのEH200入線を機関車の両数で決めた線路使用料の不合理を訴えて拒否するなど、JR東海とJR貨物のトラブルは絶えません。
 JR貨物の対トラック輸送のコスト競争力ですが、基本的に700km超で価格優位となると言われます。加えて絶対的に価格優位な対海運でも速度優位となり、海運でカバーできない内陸部には自然優位が働きます。その観点からいえば、最も物流需要の大きい東京~大阪間では十分なシェアを持てないでいるわけで、ここで競争力を高めることは、JR貨物にとって重要な経営課題であるわけです。
 そしてスーパーレールカーゴですが、JR貨物では90年代半ばから、物流市場として規模が大きい東京と大阪を結ぶ動力分散方式の高速貨物電車でトラック輸送に挑戦することが検討され、特に夜間の高速道路を多数運行する宅配便の拠点間輸送トラックのオンレール化に的を絞って開発を進めました。その結果4M12Tの16連で、大型トラックの荷台相当の31ftコンテナを28個搭載可能なM250系を3編成制作し、当面は東京貨物ターミナル~安治川口間に夜間上下各1本の運行を始めることを計画しましたが、お約束のように^_^;JR東海が待ったをかけました。
 JR貨物の言い分としては、従来の高速貨物列車が1,000t牽引で最高速110km/hに対し、編成重量500tで最高速130km/hですから通過トン数と速度の積に比例するといわれる線路破壊量は従来の貨物列車を下回ることを根拠に従来の貨物列車と同じ線路使用料を主張し、JR東日本と西日本は快諾したのに対し、JR東海は500tの重量列車を130km/hで走らせたときの線路破壊の実態は不明であり、十分な検証を経てからしか入線を認めないということで、走り込みのノルマを課しました。
 その結果東京貨物ターミナルと西湘貨物駅の間を何往復も走り込む姿が約1年間も続くことになり、ブルーリボン賞の投票の大票田である首都圏で昼間多くのファンに目撃されたわけです。つまるところM250系のブルーリボン賞受賞の最大の功労者はJR東海ということになりましょうか(笑)。
 JR貨物の今日までの道のりは平坦ではありませんでした。発足当初こそバブル経済の真っ直中で、輸送量を伸ばしましたが、バブル崩壊後の90年代は逆に需要の減少で苦境に陥り、毎年欠損を重ねる状況が続きました。それが大型トラックの重大事故の影響で、大型トラックへのリミッターの装備と荷主企業も含めての取締強化の影響で少し貨物が戻り、さらに最近ではキヤノンや松下やトヨタなど、荷主企業のCO2排出削減の動きに助けられて輸送量を伸ばしつつあり、当ブログでも話題を取り上げております。それでも十分なコスト負担をして線路を借りている旅客会社へ配分するには至らずというのが現状です。JR東海がそれに不満を持つこと自体は、理由があるわけです。
 しからば東日本や西日本はなぜにそのようなスタンスをとらないか、あるいはもっと経営的に苦しい三島会社もそうですが、今後人口減少でドライバーの確保が難しくなるトラック輸送の受け皿として、CO2削減のような環境要因のみならず経済要因でモーダルシフトが進むという読みがあるものと思われます。JR貨物が十分な競争力を獲得したあかつきには、苦しい時期を支えてくれた旅客会社に線路使用料の増額を通じて利益を配分することが期待されるわけですし、人口減少で将来の旅客需要が必ずしも当てにできない中で鉄道路線網を維持する梃子になりうるわけで、その意味でJR貨物への支援は将来へ向けた先行投資であり、旅客輸送が減少へ転じる事態に対する保険の意味があると考えられます。見方を変えれば安全投資を抑制して当面の利益確保に向かったJR西日本が重大事故を起こしたように、JR東海のスタンスが何か決定的なトラブルを引き起こす可能性は否定できないといえます。
 あとありがちな勘違いですが、M250系はVVVF制御ながら、回生制動や遅れ込め制御などの省エネメカが省略されてますが、加減速の頻繁な都市鉄道と違って、長い距離を無停車で走るスーパーレールカーゴのような列車の場合、つまるとこと速度制限を抜けたあとの再力行性能が重要で、つまるところパワーを頼んで力行時間が短時間であるほど電力消費量を抑制できる上にスピードアップにも寄与するものです。東京の渋滞路では高燃費のプリウスがアウトバーンではガス食いなように、使い方を誤れば省エネ技術も無意味です。加えてトラックからレールに切り替わった分だけ確実にCO2削減効果が出るわけで、そちらの効果の方がはるかに大きいということも指摘しておきます。
 最後に最近の貨物輸送に関する話題から、しなの鉄道小諸駅のコンテナターミナル設置による貨物輸送の拡大については、上記のように海運と競合しない内陸県の長野県だけに、荷主の確保ができれば面白いところです。ただし中期経営計画でJR貨物の線路使用料のフルコスト化をうたってますが、このあたりの兼ね合いの難しさは自覚しておいた方が良いでしょう。ま、港湾整備と同等で寄港する船会社に補助するという考え方は成り立ちますが。
 そして本日日経の記事で明らかになりましたが、自動車部品輸送を狙った名古屋~鳥栖間の速達貨物列車の運行が伝えられております。付加価値の高い自動車部品輸送で競争優位を実現できれば、収益力を高める意味からも重要です。
 というわけで、JR貨物は今でこそ苦しい経営を強いられてますが、ある意味鉄道の将来を拓くフロンティアであるということで、惜しみなくエールを贈りたいと思います。

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Saturday, July 02, 2005

神岡鉄道廃止に見るローカル鉄道廃止と存続の狭間

またひとつローカル鉄道の廃止が決まりました。神岡鉄道の廃止が6/30に報じられ、既にネット上でも話題になっております。
 同社は神岡鉱業の貨物輸送に依存していたのですが、昨年10月にトラック輸送への切り替えによって、既にカウントダウン状態になっていたとはいえます。元々旅客輸送需要が旺盛とはいえない地域に立地するだけに、鉄道としての存続は難しいとはいえます。
 ただ行政の対応には疑問が残るところでして、例えばこんな記事があります。あとJR福知山線事故の影響で安全対策の強化を求められたことも響いているのは、この記事からも読みとれます。
 まぁ実際存続は難しいわけですが、神岡鉱業の親会社の三井金属に依存して生き残った線だけに、行政としては寝耳に水の感もあるとは思いますが、地域の交通をどうするのかについて、明確な方針も持たないおざなりな行政の対応にはうんざりさせられます。
 気になったのが飛騨市という自治体ですが、平成の大合併で2町2村が合併して発足した市であるわけですが、発足から1年少々で早くも自治体として存在意義を突きつけられた格好です。地域コミュニティの実体がどうなっているかを私は知る立場にはありませんが、市の中心機能が旧古川町エリアに存在するであろうと推察され、国道41号線がこの流れに合った交通ルートである点から見て、神岡鉄道が地域交通としていかほど活用されていたかは疑問が残ります。あるいは県境を越えて富山市の広域エリアに位置づけられていた可能性はありますが、それでも旧神岡町エリアにしか恩恵のない路線であれば、旧古川町エリアの住民に財政負担を強いる話は難しいわけです。合併特例債のアメをちらつかせてまで行った平成の大合併が、地域社会に何の恩恵も与えない典型例として記憶に留めておきましょう。
 それでも日本の現行の制度の中で、財政支援を効果的に行って路線存続をはかる手はあります。地方自治体で認められた目的外税の活用によって、例えば神岡鉄道沿線住民と沿線立地企業に“交通税”などの名目で課税することは可能です。わかりやすい受益者負担です。
 でまぁこれを直接事業者に補助金として渡すのは能がないですし、年を追うごとに設備更新や安全対策などの投資が必要な鉄道事業においては、基本的に増収の難しいローカル線では年々欠損の額が大きくなる傾向は避けられません。つまり年々税負担も増えることになります。いくら受益者負担の原則をふりかざしても、納税者の同意を得るのは難しいでしょう。
 以前わたらせ渓谷鐵道の全線年間定期の話題でも申し上げましたが、定期券制度を逆手に取って、納税者に定期券を配ってしまうというのが、ひとつの解となります。輸送統計上は毎日1往復の利用とカウントされますから、利用実態を底上げすることになります。もちろん単なるバーチャルな数字づくりに留まらず、実際に定期券で沿線住民に利用していただくことも狙いのひとつとなります。加えて全国の鉄道ファン向けに通信販売でもすれば、値段にもよりますが、購入する人は出てくるでしょう。過疎地のローカル鉄道は、これぐらいしないと維持できません。
 同時にこれは優れて過疎地のコミュニティ確保政策となります。意図的に鉄道利用を誘導することで、地域コミュニティが保たれ、特に高齢者の孤立を防ぎ医療や介護などの生産性向上に寄与できれば、市町村合併による行政効率の向上を上回る便益を住民は得られます。このあたりは地方分権と交通政策の記事でも触れました。
 最近話題の郵政民営化ですが、過疎地の局の維持が盛り込まれたことで、有名無実な民営化となったわけですが、最近の過疎地の郵便局員の仕事として、配達や郵貯、簡保の勧誘よりも過疎地の孤立老人への声かけや見守りなど、自治体の民生委員のような役割を担っております。本来は自治体の役割であるはずの部分が合併で行政区域が拡大した結果、目が届かなくなって、民営化されて営利を求める郵政会社に肩代わりさせるという変な話になってしまいます。まさに地方では長生きも命がけです。
 またサービスを維持する仕組みとして実質的に財政投融資の仕組みを受け継ぐ郵政会社の自主運用に名を借りた高利貸しで独立行政法人や自治体からかすめ取った利子を充てるんですから、この面からも行政効率が高まるわけがありません。
 あとローカル線はどうしても維持に力点が置かれる結果、往々にして必要な設備投資を抑制されたり、線路の保守精度を落としてコストダウンをはかるなどで、無理な益出しや赤字圧縮で結果的に時を経て弱体化される傾向にあり、私鉄のみならず例えばJR西日本の中国山地の非電化ローカル線では保守精度を下げて15km/h制限などということすら行われておりますが、結果的に利用者にそっぽを向かれてじり貧になり赤字幅が拡大するわけです。
 発想を変えて通過トン数の極端な少なさを逆手に取って、軌道狂いの少ない重軌条化やスラブ軌道化などで10年単位の無保守軌道構造とするなどして延命する方が、結果的に長期に存続が可能になると思うんですが、日本ではローカル線イコール低規格が当たり前で、むしろ保守費用が嵩む現実に直面するわけです。事業者への運営費補助が納税者の理解を得にくい日本だからこそ、資本増強による劇的な高規格化でメンテナンスフリーを実現するという発想がほしいところです。この場合は沿線住民や企業から株主を公募するなど、必ずしも自治体が絡まなくても可能ですが、株式公募をやりやすくするための支援策には工夫の余地があります。財政負担を伴わずに路線を維持しようという甘い考えは捨てた方が良いでしょう。同時に安価な高規格軌道を実現できる技術開発が望まれます。

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