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Saturday, July 09, 2005

JR西日本321系設計見直しの怪

niftyのニュース検索で以下の記事が見られます。

JR西新型車は先頭を低重心に(共同通信)
先頭車両の重心下げる=遺族に配慮しデザインも変更-207系の後継車両・JR西(時事通信)

 以前書いた記事で中期経営計画の見直しに言及し、特にその目玉となる東海道山陽線普通車置き換え用の新車321系投入の見直しに言及いたしましたが、日々古くなる旧型車の置き換えを優先するようです。それはそれで見識ではあります。
 気になるのは先頭車をモーター付にして低重心にするという部分ですが、何の意味があるのでしょうか。事故編成は先頭Tc(運転室付トレーラー)車だったから脱線したとでも言いたいのでしょうか。先頭Mc(運転室付モーター車)だったらオーバースピードでも脱線しなかったのでしょうか。報道だけでは真意は見えません。少なくとも重量の大きいモーター付車の方が遠心力の影響を受けるわけですから、先頭車をTcとするかMcとするかで転覆限界に有意差が生じるかどうかは一意には決まりませんし、そもそも転覆限界近くの速度で営業運転を行うような状況を改善すべきでしょう。
 321系に関しては、既に事故時点でメーカーとの設計協議が進んでいたようで、軽微な仕様変更でとりあえず置き換えを優先するという考え方は、それ自体はとやかく言うべきことではありません。また特に共同通信の配信記事にある側面強度の問題は、現時点で明確な基準があるわけではないので、対応を取れないのは無理からぬところです。基準を明確にするには、どのような想定のものとにどの程度の安全を確保するかによって、対応すべきことがらが変わります。今回の事故のような高速度での転覆による挫屈(折り重なり)による側面損傷は、基本的に多少の補強程度で回避可能ではありません。側構え厚を増してクラッシャブルゾーンとする以外に対策はないわけですが、その分車内有効幅を縮めることになるわけですから簡単ではありません。建築限界、車両限界を簡単に拡大できない鉄道においては、できることに限界はあります。
 加えて側面を損傷する可能性の問題を問うならば、自動車と違ってレール方向に1次元的に動きを規制される鉄道車両に自動車の側面の強度基準を当てはめるのは合理的とはいえません。事故率を考えると側面強化よりも前面強化の方がより強く要請されるわけです。事故報道であまり取り上げられておりませんが、事故車両の207系では先頭車の前面の損傷が大きく、高運転台にして十分なクラッシャブルゾーンを取っているJR北海道や東日本の車両と比べると、問題があるように感じます。それ以前に今回の事故のように、マンションのような質量の大きい固定建造物へ衝突した場合の安全性を車体の強度で確保するよりも衝突を防ぐ方向で考えるべきでしょうから、実際に車体強度の基準を作成する作業は難航することになります。
 そういったもろもろを考えますと、321系についてはもう少し時間をかけて、事故の現実を受けた仕様変更を盛り込んで欲しいと思います。特に低価格であることは、旧型車のより多くの置き換えの観点から重要なんですが、JR西日本に関しては、223系増備のときもメーカーに泣きを入れて値引きしてもらったなどの噂が絶えず、設計そのものからコストを見直す姿勢が欠けているように感じます。その辺の無理が回り回って現場への過重な負担とならないように、大胆な見直しをして欲しいと思うのですが、危うさを感じるのは私だけでしょうか。
 最後に、ロンドンで起きた同時多発テロ事件ですが、現地の報道や市民の対応に冷静さが見られることが救いです。もし日本ならばこうはいかないだろうと思うと暗澹たる気分にさせられます。メディアの客観報道の重要性を感じるところです。

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Comments

こちらがトラックバックしようとしていた矢先にトラックバックを頂いたので大変驚きました。

本題に入りますが、自分も同じように今回の変更については急場しのぎの感は否めず、危なっかしい所があると思っています。

また、321系の両先頭車を電動車に変更することについて、確かに重量が増加するため、貴見の考えも成立すると思いますが、日本では両端の車両を電動車とする事例が多いとはいえない(当方の情報不足もあるのですが)ので、今回の判断が効果的といえるかどうかは時間を要するのではないかと思います。

それから、側面衝突の脆弱性への考察の件、大変参考になりました。確かに自動車と同じように考えることはできないと思います。

最後に、今回の321系は近畿車輛で一括製造される予定になっていますが、その目的は一括製造によるコストダウンにあります。
ただ、その「一括製造」という前提が暫時改良しながら製造していかざるを得なくなったと思われるため、どう対応していくか今後を見ていく必要があるかと思います。

Posted by: Simplex | Saturday, July 09, 2005 at 05:44 PM

いつもTBありがとうございます。たまたまSimplexさんのページを早く見つけたもので、今回は私の方からTBさせていただきました^_^;。
 先頭電動車の件ですが、少ない採用事例のうち、京浜急行の公式見解は、軸重の重い電動軸が第1軸にある方が、油膜や粉じんでレール表面の汚れを取ることで、少なくとも第2軸では信号電流が通電し、その分信号のレスポンスが良くなるんだそうで、先頭Tcだと状況によっては2両目で初めて信号電流が流れて信号機の現示が変わることもあるそうで、神業的ダイヤの同社にとっては、重要な問題なんだそうです。
 あと先頭電動車の安定性については、副次的な効果として踏切事故など正面衝突時に脱線、転覆を起こしにくいとしていて、阪急ではむしろこちらの理由で先頭電動車としていますが、標準軌での効果は認められるものの狭軌では未知数としています。いずれにしてもカーブをオーバースピードで進入したときの助けになるという話ではないんですが、煩雑な話なので本文では省略いたしました。
 あと折角次期ダイヤ改正でスピードダウンをうたったんですから、対応するスペックを下げてコストダウンにつなげるなどの対応を期待したんですが、この辺はあいまいです。新しい高性能車と古い国鉄形を併用する限り、無理な運行管理で現場にしわ寄せされる心配があるだけに、こいうったところで姿勢を示して欲しかったと思います。

Posted by: 走ルンです | Saturday, July 09, 2005 at 09:40 PM

走ルンです様。はじめまして。『1両目は高重心構造』と題する読売新聞の記事を見て以来「まさかJR西が電車の編成を変えて、先頭電動車にすることはないだろう」と思っておりましたが、それが現実となるようで驚いています。
http://www.yomiuri.co.jp/features/dassen/200504/da20050430_41.htm
京急の説明では、踏切事故・土砂崩れで先頭車が脱線した場合でも、重いモーター車は転覆しにくい上そのまま慣性で直進するので、隣りの線を塞いで後から来た反対方向の列車と衝突という二次災害が起こりにくいということですよね。電車がジャンプしてしまった福知山線事故は今まで誰も想定していなかっただろうし、モーター付きなら脱線しなかったかなんて今のところわからないのではないかと私も思います。逆に衝突された側のマンションの被害が大きくなっていたかもなぁなんて。

Posted by: Kay | Saturday, July 09, 2005 at 10:35 PM

Kayさん、コメントありがとうございます。読売新聞で早い段階でこのような記事が出ていたとは驚きです。しかもJR西日本は先頭車の高重心原因説を否定するコメントを出しているんですから、結果を見比べるとワケわかりませんね^_^;。
 京急の先頭電動車では転覆しにくいことの説明も、あくまでも標準軌を前提とした話ですから、狭軌のJRで有効かどうかは不明です。
 ホントメディアの報道合戦がともすれば犯人探しに陥ることで、さまざまな珍説がメディア上を賑わせましたが、いちいちツッコミ入れる気にもなれません。中には常用ブレーキ時のメカであるT車優先遅れ込め制御の影響で「玉突きが起きた」という珍説までありましたが、非常制動では各軸にかかる制動力は最大値近似で平準化されるというのは、冷静に考えればわかることですよね。客観報道はいずこに?

Posted by: 走ルンです | Sunday, July 10, 2005 at 12:28 AM

JR酉の新型321系に対して色々と注文つけてますが
321系以外の新型車両も同じじゃないですか?
新型車両は見送りになると思いきや
導入決定したら性能を落とした車両を作れば良かった等
少し考え方が間違ってませんか?
貴方もマスコミと一緒で
JR酉を叩いてるだけにしか思えないですが・・
自分は酉の利用者です。
電車移動を便利にしてくれたのはJRです。
目的地まで早く移動出来るのは魅力じゃないですか!?
魅力だから東日本も高速車両を導入するんじゃないですか?

それと来春のダイヤ改正は各駅での停車時間を長くして
余裕のあるダイヤへの変更です。
スピードダウンはしないと思います。
正直スピードダウンはしてほしくないですから・・

Posted by: 新快速 | Sunday, July 17, 2005 at 11:48 PM

目先を誤魔化して、事故の後始末になるとお考えでしょうか。申し訳ないですが、JR西日本に関しては、根本的なところで考え方を改める必要を感じます。
 目先のスピードや運転時分の数字を作るために現場に無理強いをした結果が今回の事故じゃないですか。段階を踏んで線区単位でグレードアップしているJR東日本とは、取り組み方に大きな違いがあります。そこに気がつかなければ、JR西日本はまた同じ過ちを繰り返すおそれがあります。
 基本的にJR西日本のようなとんがった行き方というのは、私も嫌いじゃないんです。だからこそ、今は足元を固めて欲しいと強く願うのです。

Posted by: 走ルンです | Monday, July 18, 2005 at 09:17 AM

走るんですさん、ご意見どうも有難うございます。
再度書かせて頂きますが
荒らしたり言い争いするつもりで
書き込みはしてませんので‥
JR東とは違うと書かれてますが
JR西も琵琶湖線・京都線・神戸線に関しては
段階を踏んで徐々にスピードUPをしています。
それに草津から神戸間の線形は
競合私鉄に比べると
遥かに良いのはご存じでしょうか?
それに過密ダイヤでもありませんし!
朝のラッシュ時間でも新快速は
7〜8分間隔での運転です。
報道では特に尼崎駅発8時台53本が異常と叩いてますが
複々々線での本数なので決して過密じゃありません。
それなら京阪の京橋〜天満橋間(正確には萱島から)は
8時台に43本の電車が走ってます。
今回の報道はJR西叩きとしか思えませんでした。
マスコミなんて本当に必要ないですね。
なので先程述べた区間では余裕のあるダイヤを組めば
スピードダウンの必要はありません。
スピードではなく余裕のないダイヤが
一番の問題点なんです。
他の線区に関しても一番の問題は
ダイヤに余裕がないことだと思います。
これが実際に利用してる私が思っていることです。

Posted by: 新快速 | Thursday, July 21, 2005 at 11:27 AM

新快速さん、ご意見ありがとうございます。
 余裕のないダイヤが一番の問題というご指摘に異を唱えるつもりはございませんが、もう一歩踏み込んで、JR西日本はなぜこのような余裕のないダイヤを組んだのかなんですが、端的に申し上げて運賃収入を増やしたかったからなんですよね。
 既に新快速の度重なるスピードアップと停車駅増で、並行私鉄から面白いように乗客を奪ってきた過去の成功ゆえに、乗客が横這いとなっているここ数年、増収を狙って余裕時分を削り、現場へ負担をしわ寄せさせてきた結果としての事故だったわけです。しかも速度照査ATSなどの安全対策も取らず、にわか仕込みの若い乗務員にハンドルを握らせるなど、安全思想の欠如を問われていると考える必要があります。
 だからこそ事故を踏まえてどう変わったかをアピールできる新型車の登場に際して、先頭台車を電動台車にして帯色を変更しましたという、目先の変化で対応する姿勢に疑問を感じざるを得ないのです。
 事故時点で既に基本設計が終わっていて、軽微な仕様変更しか実際的にはできなかったということもあるでしょうけど、ならばとりあえず発注をキャンセルして半年程度の検討期間を置いても良かったのではないでしょうか。
 もちろんメーカーに対する違約金の問題などテクニカルな問題はありますが、今はJR西日本の安全思想が問われているときだからこそ、あえてそこまでしてほしかったと思います。
 あと付け加えるならば、京浜急行や京阪のように、JR西日本以上にタイトなダイヤを組んでいる鉄道会社もありますが、いずれも車両性能、保安装置、乗務員の技術スキルなどの面で裏付けのある対策が取られています。けっして安全をないがしろにはしておりません。
 また東急や京王のように、ジャーク制御で車両側で制動初速をマイルドにしている会社もありますが、当然ダイヤ上の余裕時分を余分に取る必要があります。また過走余裕ゼロで絶対オーバーランできない終端駅にATS地上子が短い間隔で多数設置されているなど、これでもかとばかりの安全確保の取り組みは多数見られます。
 スピードアップは増収のために行うのであって、安全が優先であることは自明のはずですが、残念ながらJR西日本は安全を後回しにしてしまったわけです。そのことが真摯に反省されているか、注目されるのは致し方ないところです。少なくとも登場した321系を見る限り、疑問が残ります。
 メディアの報道姿勢に関して疑問を持たれるのはわかりますし、当ブログでも指摘してきましたが、知識も状況認識も乏しい記者の配信記事に対して重箱の隅つつきをしても仕方ないんじゃないでしょうか。

Posted by: 走ルンです | Thursday, July 21, 2005 at 10:22 PM

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