相鉄自動車、空港リムジンへ参入
相鉄自動車、沿線から初の羽田行き高速バス運行(日本経済新聞)
というわけで、二俣川駅~羽田空港間のリムジンバスを7/20より京急バスと相鉄自動車の共同運行で運行開始となります。相鉄沿線からの空港路線は初めてです。
で、このニュースのニュースバリューはというと、赤字のバス部門の分社化を巡って労使対立が続く相模鉄道で、タクシーと貸切バスの相鉄自動車による路線開設という点にあります。しかも河口湖線も申請中ということで、高速バス用大型バスを6台導入して対応します。当然バス分社を巡る労使交渉にも影響するものとなるでしょう。
労組の切り崩しと言ってしまえばミもフタもない話なんですが、グループ連結経営を標榜する以上、バス部門の赤字を放置できず、分社して給与体系を鉄道本体から切り離すことは、避けられない話ではあります。実際分社化されて相鉄バスに移行し独自の給与体系となった綾瀬営業所は、単独黒字を達成しています。
労組にとっては悩ましい話なんですが、鉄道直営である限り、鉄道の黒字でバスの赤字が穴埋めされてしまう状況で収支均衡が可能かどうかという問題は直視する必要があります。鉄道との収支通算を前提に現在の待遇が決まっているときに、それを与件としてバス事業の収支均衡を図ろうとすれば、路線の縮小や減便など縮小均衡へ向かい、結局スケールメリットが効かないレベルまで縮小して長期的には事業廃止しか道がなくなるわけです。
これに対して現役乗務員の自然退職をあえて補充しない形で徐々に鉄道直営のバス事業を縮小させていく方法はあり得ます。しかし京王電鉄などで試みられたこの方法は、結局時間がかかりすぎて、その間に経済情勢が変化して計画に狂いが出るなどの問題をクリアできず、結局労使対立の中待遇切り下げを伴って直営バス部門の切り離しが行われました。結果としてバス事業の収支均衡は達成されましたが、社員の定着率の低下は見られたようですので、安全運行のために望ましい長期雇用への回帰が次の課題ですが、外科手術を避けて縮小均衡へ向かうのとどちらが正解だったのかは、かなり悩ましい問題です。
いろいろ背景はあるんですが、そもそも鉄道直営のバス部門の意義というのは、日本の行政の縦割り体質に根拠があります。60~70年代の公共料金抑制政策で鉄道運賃は意図的に低く抑えられ、5%程度のインフレと相まって大手私鉄といえども運賃改定後3年もすれば利益が無くなってしまう状況で、運賃改定周期が異なり改定の査定基準も異なるバス事業を直営で持つことの意味は大きかったといえます。現在から見ると考えられないような話ですが、縦割り行政の実態はあまり変わっていない気がします^_^;。
現実にはマイカーの増加で利用客が減少し道路渋滞で定時運行が阻害され、更に客離れが続く路線バス事業を鉄道直営では持ちきれなくなってきてます。また80年代後半からブームとなって、一般路線に比べて生産性が高く高収益な高速バス事業で一息ついたのもつかの間、90年代には需給調整規制撤廃の流れを受けてダブルトラック、トリプルトラックなど競争激化で価格破壊へと向かい、一方で人件費が高止まりする中、利益確保が難しくなってきています。
あと頭の痛い問題は、貸切バスによる格安ツアー運行という路線バス類似行為の横行で、取り締まる法規もなく野放しとなっている問題があります。実はこれ例えば北海道で始まって当時の運輸省の指導で貸切ツアーバスへ追認的に路線免許を交付して、安全運行などの面で縛りを課すなどが過去に行われたんですが、当時と比べても価格競争で過酷な乗務員の勤務実態や車両の整備不良などがあるにも関わらず競争促進の見地からか放置されております。
本来は安全の見地から国が規制に乗り出すべきですが、路線バスと貸切バスは別物という縦割りの論理が優先するようです。そんな中で浸食される路線バスの側が労使対立していては、ますます事態が悪化するだけになりかねません。これだけ経済情勢が変化している中での鉄道直営バス部門の乗務員の待遇維持は、諦めざるを得ないのではないかと思います。むしろ長期雇用を軸に安全をアピールできる体制づくりに労使が取り組み、悪質な格安ツアーバスの駆逐に動いて国を動かして欲しいと思います。
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