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Saturday, July 02, 2005

神岡鉄道廃止に見るローカル鉄道廃止と存続の狭間

またひとつローカル鉄道の廃止が決まりました。神岡鉄道の廃止が6/30に報じられ、既にネット上でも話題になっております。
 同社は神岡鉱業の貨物輸送に依存していたのですが、昨年10月にトラック輸送への切り替えによって、既にカウントダウン状態になっていたとはいえます。元々旅客輸送需要が旺盛とはいえない地域に立地するだけに、鉄道としての存続は難しいとはいえます。
 ただ行政の対応には疑問が残るところでして、例えばこんな記事があります。あとJR福知山線事故の影響で安全対策の強化を求められたことも響いているのは、この記事からも読みとれます。
 まぁ実際存続は難しいわけですが、神岡鉱業の親会社の三井金属に依存して生き残った線だけに、行政としては寝耳に水の感もあるとは思いますが、地域の交通をどうするのかについて、明確な方針も持たないおざなりな行政の対応にはうんざりさせられます。
 気になったのが飛騨市という自治体ですが、平成の大合併で2町2村が合併して発足した市であるわけですが、発足から1年少々で早くも自治体として存在意義を突きつけられた格好です。地域コミュニティの実体がどうなっているかを私は知る立場にはありませんが、市の中心機能が旧古川町エリアに存在するであろうと推察され、国道41号線がこの流れに合った交通ルートである点から見て、神岡鉄道が地域交通としていかほど活用されていたかは疑問が残ります。あるいは県境を越えて富山市の広域エリアに位置づけられていた可能性はありますが、それでも旧神岡町エリアにしか恩恵のない路線であれば、旧古川町エリアの住民に財政負担を強いる話は難しいわけです。合併特例債のアメをちらつかせてまで行った平成の大合併が、地域社会に何の恩恵も与えない典型例として記憶に留めておきましょう。
 それでも日本の現行の制度の中で、財政支援を効果的に行って路線存続をはかる手はあります。地方自治体で認められた目的外税の活用によって、例えば神岡鉄道沿線住民と沿線立地企業に“交通税”などの名目で課税することは可能です。わかりやすい受益者負担です。
 でまぁこれを直接事業者に補助金として渡すのは能がないですし、年を追うごとに設備更新や安全対策などの投資が必要な鉄道事業においては、基本的に増収の難しいローカル線では年々欠損の額が大きくなる傾向は避けられません。つまり年々税負担も増えることになります。いくら受益者負担の原則をふりかざしても、納税者の同意を得るのは難しいでしょう。
 以前わたらせ渓谷鐵道の全線年間定期の話題でも申し上げましたが、定期券制度を逆手に取って、納税者に定期券を配ってしまうというのが、ひとつの解となります。輸送統計上は毎日1往復の利用とカウントされますから、利用実態を底上げすることになります。もちろん単なるバーチャルな数字づくりに留まらず、実際に定期券で沿線住民に利用していただくことも狙いのひとつとなります。加えて全国の鉄道ファン向けに通信販売でもすれば、値段にもよりますが、購入する人は出てくるでしょう。過疎地のローカル鉄道は、これぐらいしないと維持できません。
 同時にこれは優れて過疎地のコミュニティ確保政策となります。意図的に鉄道利用を誘導することで、地域コミュニティが保たれ、特に高齢者の孤立を防ぎ医療や介護などの生産性向上に寄与できれば、市町村合併による行政効率の向上を上回る便益を住民は得られます。このあたりは地方分権と交通政策の記事でも触れました。
 最近話題の郵政民営化ですが、過疎地の局の維持が盛り込まれたことで、有名無実な民営化となったわけですが、最近の過疎地の郵便局員の仕事として、配達や郵貯、簡保の勧誘よりも過疎地の孤立老人への声かけや見守りなど、自治体の民生委員のような役割を担っております。本来は自治体の役割であるはずの部分が合併で行政区域が拡大した結果、目が届かなくなって、民営化されて営利を求める郵政会社に肩代わりさせるという変な話になってしまいます。まさに地方では長生きも命がけです。
 またサービスを維持する仕組みとして実質的に財政投融資の仕組みを受け継ぐ郵政会社の自主運用に名を借りた高利貸しで独立行政法人や自治体からかすめ取った利子を充てるんですから、この面からも行政効率が高まるわけがありません。
 あとローカル線はどうしても維持に力点が置かれる結果、往々にして必要な設備投資を抑制されたり、線路の保守精度を落としてコストダウンをはかるなどで、無理な益出しや赤字圧縮で結果的に時を経て弱体化される傾向にあり、私鉄のみならず例えばJR西日本の中国山地の非電化ローカル線では保守精度を下げて15km/h制限などということすら行われておりますが、結果的に利用者にそっぽを向かれてじり貧になり赤字幅が拡大するわけです。
 発想を変えて通過トン数の極端な少なさを逆手に取って、軌道狂いの少ない重軌条化やスラブ軌道化などで10年単位の無保守軌道構造とするなどして延命する方が、結果的に長期に存続が可能になると思うんですが、日本ではローカル線イコール低規格が当たり前で、むしろ保守費用が嵩む現実に直面するわけです。事業者への運営費補助が納税者の理解を得にくい日本だからこそ、資本増強による劇的な高規格化でメンテナンスフリーを実現するという発想がほしいところです。この場合は沿線住民や企業から株主を公募するなど、必ずしも自治体が絡まなくても可能ですが、株式公募をやりやすくするための支援策には工夫の余地があります。財政負担を伴わずに路線を維持しようという甘い考えは捨てた方が良いでしょう。同時に安価な高規格軌道を実現できる技術開発が望まれます。

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