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August 2005

Tuesday, August 30, 2005

郵政と年金の陰で霞む地方分権

刺客だの落下傘だので連日メディアを賑わす総選挙ですが、熱病にかかったようなメディアの報道が、政権の広報活動に利用されている現実は、この国の報道・言論の貧しさを表します。

それでいて今になってナイーブな政策論争を期待するあたり、はっきり言って違うんじゃないかと思います。それ以前に国会で繰り返された論戦や、前回選挙のマニフェストの分析を通じて、本当に問われている問題を掘り下げることをサボってきたメディアの無自覚さに腹が立ちます。また性急に最後はどうなるかしか関心を示さない有権者の思考停止ぶりをどう評価したものか。結果としてメディア報道をウケ狙いに走らせているのかもしれません。早くこの喧噪が終わって欲しい(涙)。

守旧派イメージの新党というのも、イメージ的な混乱を招く原因ですが、案外この辺に本質があるのかもしれません。結局郵便局が無くなるだとかいう議論というのは、過疎地も含むユニバーサルサービスのあり方を問われているわけで、実は重要な問題なんです。

特に国際化、産業構造の変化、高齢化による人口減少で揺さぶられる地方で、地域間競争で勝ち組と負け組に分化したり、都市部への人口集中の一方で山間部や離島などの過疎化進捗が待ったなしで進む現実に直面するわけですから、それを踏まえて社会の構造を変化に適合させるのが構造改革ということになりますので、単純な郵政民営化の是非などで計れる問題ではありません。その辺のフィクション性が、かかる守旧派新党^_^;によってあぶり出されるならば、彼らの存在意義はそれなりにあるということになります。まぁそれなりにではありますが^_^;。

地方の現実がいかに過酷であるかは、中央にいるとなかなか見えてこないんですが、中越地震で孤立した旧山古志村のように、生存にかかわる事態すら生じています。それに対する今のところの政府の答案は、平成の大合併と三位一体改革ということで、いずれも地域のコミュニティを無視した乱暴な議論でしかありません。

自治体が合併して規模を拡大しても、規模の経済による効率化が働くよりも行政区域の拡大による非効率の拡大と合併自治体内部での無秩序開発と空洞化の顕在化という形で矛盾を拡大しますし、三位一体改革に至っては、国の補助金や地方交付税の削除に本音があるために、義務教育費がどーしたというような数字合わせに終始して、行政権限の見直しは進まず、連邦制や道州制のような憲法改正を要件とするような文字通り国の形を変える骨太な議論は皆無です。そういった中で地方の疲弊は進みます。

この辺の切実さが、郵政民営化に反対する心情を形成するわけです。もちろん郵政民営化を阻止したところで地方の疲弊は止まらないし、何の解決にもならないんですが、過疎地向けのサービスだけに焦点を当てれば、民業の補完機能としてのユニバーサルサービスとして大した財政支出を伴わずに実現可能ではあります。この辺は国鉄改革で議論された赤字ローカル線問題が、実は赤字の絶対額でいえば貨物輸送を中心とした幹線輸送の赤字よりも少なかったし、それ以上に幹線ローカル線を問わず国鉄の経営判断を無視した形で新線の引き受けを迫られた結果としての資本費負担の増加で借金地獄に陥ったことにあったことが思い出されます。

一応成功と評される国鉄改革も、徹底した規模の縮小がもたらしたものといえます。その一方で分割や規模縮小を伴わない電電公社の民営化は、新規参入事業者の事業展開を圧迫する独占企業としてNTTを振る舞わせ、ドコモ株上場を巡るインサイダー疑惑が小渕政権を揺さぶったことを思い出させます。民営化された郵便、銀行、保険、窓口4社プラス統括する持ち株会社が利権の温床とならない根拠を示してほしいですね。

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Thursday, August 25, 2005

開業初日にオーバーランのつくばエクスプレス

まずはつくばエクスプレスの開業を祝いたいと思います。初乗りはもう少し先になりそうですが、日本経済新聞の記事から拾います。
(8/24)つくばエクスプレス、開業初日にオーバーラン
webには反映されておりませんが、紙面の方では当面該当編成は手動でブレーキをかけることで対応するそうですが、自動運転が売り物のTXにとっては、初日からトホホなトラブルとなりました。でも電車のブレーキを機械任せの自動化をすれば、状況によっては起こりうるトラブルであることも見ておく必要があります。
 原因は雨でレールが濡れていたことにあるようですが、塗油器の油の影響もあるようで、例によってメディア上では正確な情報が得られない困った事態です。
 開業前から営業ダイヤで試運転して走り込んでいたいたわけですが、その間に発生すれば対応されたたぐいのトラブルでしょうけど、よりによって営業初日とはついてないですが、初物にありがちな初期故障ということで、逆にメディアの異常反応が気になります。
 もちろん初期故障といえども、まかり間違えば大惨事につながる可能性のあるトラブルもあり得るわけで、例えば東海道新幹線の300系でモーターを固定するボルトの折損事故のように、運が悪ければどうなっていたかと背筋が寒くなる事例はありますが、以後は対策されて問題は起きていないわけで、後の対応が重要なんですね。
 何はともあれ走り出したつくばエクスプレスですが、あとメディアで多い論調として開業後10年間は赤字というのもありますが、今日日の鉄道新線で10年で黒字転換ならば好成績の部類といって良いところですが、そのような観点からの報道は見られず、暗に営業不振を示唆するあたりに、報道する側のバイアスが感じられます。
 以前書いた記事でも触れましたが、事業者の首都圏新都市鉄道の優良すぎる財務体質から考えて、累積債務を積み増す心配はほとんどないと言えます。むしろ自治体主導三セクゆえの経営面のイニシアチブにこそ最大の不安材料があると私は考えますし、別の記事で指摘しましたとおり、JR東日本が出資を見合わせた非公式な理由とも関連づけられるのではないかと考えられます。
 逆に自治体主導三セクの悪弊に染まらず、経営のイニシアチブを発揮して、自治体の保有株式を放出して完全民営化するぐらいの展開を期待したいところですが、ちとハードルが高いかも^_^;。

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Saturday, August 20, 2005

祝、愛知万博1,500万人突破!

以前こんな記事を書いておいて何ですが^_^;、本当に目出度いと思っております。とにかく多くの人が名古屋を訪れ、万博会場に足を運んだことで、万博のために注ぎ込まれた資金が無駄にはならなかったんですから、素直に喜びたいと思います。とりあえず公式ページに敬意を表しておきます。
 要因はいろいろあると思いますが、昨今景気が上向きだそうで、企業が人件費を増やして家計の給与所得が増えていることから、ある種プチ消費ブームが起きているというのがマクロ的な見方になるんだろうと思います。そしてそれを牽引しているのは輸出主導の製造業だそうで、前向きな設備投資も出てきて、政府発表でも景気は回復基調にあって、踊り場を迎えて云々の文言もはずされているところですから、何か未来は明るいような錯覚を覚えます。しかしご安心ください。錯覚なんですから(笑)
 人件費が増えているのも事実ですし、設備投資も出てきているのは間違いないんですが、中身を見ると人件費は主に派遣社員の増加と正社員への賞与の配分の増加に由来します。当然好調なうちは問題が出にくいですが、例えば好調な輸出にかげりが出れば、簡単にカットされる部分の増加であるという点には注意が必要です。
 そしてその輸出にはかげりが見え始めております。ひとつは米国のFF金利の小刻みな上昇で米国消費にブレーキがかかりつつあること、そしてもうひとつは中国の通貨政策の変更の影響です。
 共に解説を端折りますが、いずれも国内経済の過熱をさます狙いがある以上、日本がなんぼ文句を言っても、この方向へ向かうことは止められませんし、実際昨年あたりから輸出は減速傾向にあります。
 ということで、個人的には実感を伴わないんですが^_^;、消費が活発らしいので、国内海外を問わず旅行が活発化しているそうで、天候に恵まれた点も大きいといえます。
 そしてやっぱトヨタでしょう。何しろトヨタが新技術をあれこれプレゼンする場として万博を利用してますから、世界中から集まるトヨタ詣での人々を引きつけるわけですね。トヨタは環境技術で競争優位を確立しようとしてますから、燃料電池バスをはじめいろいろ見せてくれてますが、既に市販車として欧州の一部の都市で営業運転しているベンツの燃料電池バスと、半年ほど博覧会場をデモ走行するトヨタの燃料電池バスのどちらに高得点をつけるかは判断が別れます。ましてアイスランドのレイキャビークのように、テストプラントながら地熱発電の電力を利用した電気分解水素プラントを立ち上げてわずか2台ながら営業車を走らせて、事実上CO2排出を無くす領域で事業展開が進む欧州の事情からすれば、トヨタのプレゼンも日本の現状の遅れを際立たせるだけかもしれません。
 IMTSについても、いわゆるタイヤトラムの一種と考えると、評価軸が見えてきます。オランダで国家プロジェクトとして実用試験段階に達したフィリアスという交通システムが、やはり道路に磁気マーカーを埋め込んでバスを自動運転させるものが開発中ですが、2連接や3連接で輸送力をつけようとしている分、シンプルなシステムです。IMTSのソフト連結によるいわゆるカルガモ走行ですが、制御が複雑な分、輸送力とコストの見合いが厳しいのではないかと思います。ま、この辺は名古屋のガイドウエーバスでも指摘できるところですが、莫大なコストをかけて、それに見合う生産性向上が見られるかどうかで評価が決まるものだけに、現状は博覧会向けのイロモノの感は拭えません。
 この辺にそこはかとなくトヨタの限界が見えてしまうんですが、技術的には完成度も高く、さすがトヨタと思わせるものなんですが、何と言いますか、ギミックを誇るだけのプレゼンならば、江戸時代のからくり人形と同じで、それはけっして明日を拓くものにはならないということは申し上げておきたいと思います。もっと大事なのは背景にある哲学なんですが、トヨタはこの部分が弱いと同時に、日本企業の多くの弱点といえるかもしれません。

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Thursday, August 18, 2005

有楽町線のドアトラブル、安全装置に不具合…事故調(読売新聞)

リンク: @nifty:NEWS@nifty:有楽町線のドアトラブル、安全装置に不具合…事故調(読売新聞).
他にもこんな記事があります。
配電盤のふたに不具合か国交省(共同通信)
配電盤カバー形状が原因か=突起接触し装置解除-東京メトロ車掌ら聴取・事故調(時事通信)
というわけで、配電盤のふたの形状が原因で保安装置が解除されていたということらしいです。
 ただし実際にドア開閉するためには、車掌スイッチを操作しなければならないわけですが、車掌は否定しています。事故調としては誤作動の可能性を追求することになるようです。
 あと7010Fらしい事故編成は、初期形の更新車だったのですが、問題の配電盤が新製当初から変更が加えられているのかどうか、オリジナルでも同じ問題が発生する可能性があったのかどうかなどは今のところ不明です。
 本当に不思議な事故です。東京メトロ7000系のオリジナル車は、確か相互乗り入れ協定によって西武鉄道仕様のドアエンジンを装備していたと思いますが、更新車でどうなっているのかまではわかりません。
 各線で相互直通運転を行う東京メトロでは、路線ごとに細かな仕様を乗り入れ相手先に合わせておりましたが、昨今のゼロシリーズなどでは標準化の傾向も見られるようで、外部からの現状把握は困難を極めます。
 さらに更新車となるとどうなのか、元々ドアエンジンなどの装備品は、乗り入れ先で故障したときの応急処置の都合を考えれば、仕様を合わせておくに越したことはないわけですが、昨今の技術革新のスピードの速さからすると、技術革新を妨げる可能性もありますし、機器の小型化などで予備品の備蓄や手配が容易になったという要素もありそうです。
 その一方でハイテク機器に関しては、ブラックボックス化してメーカーのサポートを頼らざるを得ない部分もあるなど、車両保守の現場も変化の波にさらされているのかもしれません。そのような背景で起きた事故であるとすれば、解決策はなかなか容易ではありません。
 果たしてこのミステリアスな事故の原因究明ができるでしょうか。

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Tuesday, August 16, 2005

宮城県沖地震で帰省Uターンラッシュ直撃

地震凄かったですね^_^;。
宮城県沖の地震、負傷者56人に(日本経済新聞)
JR東日本の列車運行情報では、新幹線在来線に甚大な影響が出ております。
 地震といえば昨年の中越地震で走行中の新幹線列車が脱線した事故がありましたが、今回は地震計が働いて直ちに送電停止となったので、脱線は免れました。しかし駅間に停止した列車の救援は、一部で架線の切断もあって遅れに遅れており、運転再開となるともはや今日中に可能かどうかということのようです。
 先日は関東で地震があって、やはり長時間鉄道がストップする事態となり、復旧に時間がかかったわけですが、それを受けて地震時の安全点検の基準を緩和しようなんて話がありましたが、こうしてまた地震が起きてみると、やはり安全点検は万全に行って欲しいと思います。
 中越地震のときは、余震で復旧作業も遅れ、また在来線の復旧が遅れたり、直営の信濃川水力発電所が被災して、不足分を電力会社からの買電でまかなうなど、JR東日本にとっては、経営的に大きな打撃となりましたが、今回は在来線が遅れを出しながらも運転再開しており、明日以降への影響の積み残しは免れそうです。しかし天然災害では打つ手なしではあります。
 ただ、中越地震のときにも言われたことですが、JR各社は地震保険に未加入なんですが、大規模地震が予想され、被災したときの影響の大きさを考えると、少なくともJR東日本とJR東海は地震保険に加入を検討しても良いのではないかと思います。実際JR東日本では2004年度決算で中越地震の影響がはっきり出ているわけですし。
 鉄道事業者の地震保険への加入状況ですが、京浜急行電鉄や京成電鉄が加入しているのは知られておりますが、全体的に不熱心なようです。特にJR東日本はこれで2度目でもありますし、地表を高速で走る鉄道においては、リスクの遮断は経営上も重要問題といえます。国土交通省も安全点検基準の緩和なんか考えるよりも、事業者の経営安定の観点から指導する方が重要だと思うんですがね。

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Sunday, August 14, 2005

民主、公約に独自郵政改革案(共同通信)

リンク: @nifty:NEWS@nifty:民主、公約に独自郵政改革案(共同通信).
もう1本こんな記事があります。
民主マニフェスト、郵貯限度額を段階的に引き下げ(読売新聞)
更にもう1本
衆院選、郵政論争本格化・公的金融規模縮小論点に(日本経済新聞)
早速自公はおろか、共産、社民の両党からも公約にしないという前言を翻したと言われてますが、私が記憶する限り、民主党は郵政独自改革案として以前から言っていたことで、これといって新しいものはありません。ま、選挙となればお互いネガティブキャンペーンの応酬となるわけですけど、共産、社民がどこに矛先を向けているのか、彼らは政権構想を持たずに政権交代を視野に入れずに選挙戦に臨むわけですから、政権党の補完勢力と言われても仕方ありません。その意味で公明党と大差ない存在です。
 ま、にしても政権交代の可能性を持つ民主党からして、何ともぬるい選挙戦になりそうで、そっちの方が気になります。巷間言われていた郵政で解散なんかしたら、自民、公明の与党陣営は分裂選挙になって民主党を利するだけという見方からして、本当は違うんじゃないかと思います。
 鍵は小選挙区制にあるんですが、この制度は1選挙区で当選者は1人だけとなるので、選挙が政権選択の性格を持つということは言われておりました。しかしそのことを本当に理解していた政治家は、実はあまりいなかったのかもしれません。政治のパラダイムが変わり、従来の調整型リーダーの許でコンセンサスを作るスタイルではなく、ウイナーテイクオールで強固なリーダーシップを確立する形に変化したわけです。
 おそらく最初に気付いたのは小沢一郎でしょうし、現状では次いで小泉純一郎がこのことに気付いて、今回の郵政解散で賭けに出たと見ます。小泉首相は勝てるつもりで解散に打って出たと考えられます。
 連日報じられる反対派選挙区への刺客候補の擁立で、選挙の争点を郵政に絞り込んで国民的関心を醸成して、ある意味政権交代の可能性のある民主党との直接対決を巧みにかわしているとも取れます。つまりこのような中で民主党が郵政を争点にしないというのは、逆に小泉首相の術中にはまるものといえます。
 民主党はやっとそれに気付いてマニフェストに盛り込むことを発表したわけですが、タイミングが悪くて共産党や社民党にまでけなされてしまいました。ある意味マニフェスト選挙となると、従来であれば社民党とは選挙協力の実績もあったわけですが、退潮著しく、小政党として連立前提はやむを得ないにしても、独自の政権構想を打ち出せない社民党と袂を分かつのは致し方ないところです。政権選択選挙であるがゆえに、従来のような曖昧な協力関係では済まなくなるわけです。
 ま、私としては、主義主張はこの際横に置いといて、小泉改革はインチキだと言い続けてきた手前^_^;、政権交代が起きてくれないと困るんですけどね。
 郵政改革の政府案の本質は、郵政公社の株式会社化に意味があるんで、形式的に民間会社となることで、事業展開の自由を手に入れるわけです。しかも暗黙の政府保証のもと、340兆円と言われる郵貯簡保マネーに裏付けられた独占企業となって、国際物流へ進出したりコンビニもどきの物販事業で大規模独占を狙ったりするに留まらず、推進派の政治家や官僚と手を携えて政官業のゴールデントライアングルを作り上げれば、国民の知らないところで民主制ガバナンスの及ばない経済支配の道具となるわけです。また大きすぎる郵政会社は、仮に上場してももはや一般投資家によるコーポレートガバナンスが効かない化け物と化しているわけで、株式市場の株価操作や地価のつり上げその他あらゆるダーティビジネスが可能な厄介な存在と化すことになります。いわゆる焼け太りってやつでして、断じて許すべきではありません。
 というわけで、当ブログでは以前から郵政事業の縮小こそ本当の改革であるという立場をとっております。たまたま民主党の公約と一致しておりますが、あくまでもたまたまであって、理念的に民主党に与するつもりはありませんので念のため。

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規制のためなら縦割りも何のその

商業施設と病院の立地規制?の続報です。
2030年の都市圏人口、9割が減少・国交省予測(日本経済新聞2005.8.14)
国土交通省が発表したものですが、厚生省の外郭団体である国立社会保障・人口問題研究所の2004年の市区町村別の人口推計を全国85の都市圏別に集計した結果で、新たな予測というわけではありません。
 先日の立地規制に根拠を与えようという意図ミエミエですが、普段は縦割りで個々バラバラに動く役人が、新たな規制の可能性があれば簡単に連携するというのが何とも言いようがありません。しかも国立社会保険・人口問題研究所の予測値からして幾つかの仮定の元での予測値でして、地域別人口は産業立地の様態で簡単に変動するものでもあります。それを単純集計して統計的に有意な数値と言えるのでしょうか。予測値はあくまでも期待値であって、期待値は未知の母集団の平均値という性格のものですから、この単純な算術合計は、平均値の算術合計と同じ意味で、統計的に有意な数字と言えないのです。
 webでは反映されておりませんが、紙面の記事では郊外ほど規制が緩い現状を逆に郊外ほど規制を厳しくするのだそうで、それが可能ならば大変結構なことなんですが、具体的にどうするかは明らかではありません。容積率の緩和で低層の建物が多い地方都市圏の中心街を高層化して大駐車場を整備する、文化の香りの乏しい暴力的な都市景観を連想してしまうのですが、そんな都市が住み易い、住みたい都市なのかどうか、よく考えてみましょう。
 確かに郊外の無秩序な開発(スプロール現象)は阻止する必要はあるんですが、例えば少子化によって受験生の減少を社会人向けの生涯教育の場へと転換することで生き残りを図る大学が、一時の郊外立地を見直して、社会人が通いやすい都市中心部へ回帰している現状を見ていただきたいと思います。同様にマイカーの運転ができなくなった高齢者にとっては、電車で通える都市中心部のターミナルデパートが利用しやすいですし、実際京王百貨店新宿本店のように、高齢者戦略を成功させた店舗も出現しています。大規模量販店の駅前立地が加速している現状も同様の狙いが感じられます。同様に病院も高齢者を集めやすい立地へとシフトする可能性は高いと考えられます。
 このように社会の動態を無視して統計数値をいくら弄んでも、将来像は見えませんし、むしろ数字で誤魔化されて背後の悪巧みが見抜けないという官主導の政策論は、眉に唾してかからなければなりません。

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Friday, August 12, 2005

公共交通の安全に新組織(共同通信)

リンク: @nifty:NEWS@nifty:公共交通の安全に新組織(共同通信).
こちらにも記事があります。
公共交通の安全を一元監視、国交省が専門部署新設(読売新聞)
局長級をトップとする組織で、業界ごとに縦割りとなっている現行組織に対して横断的に監視できる組織とするところに特長があります。
 監視内容は経営トップが安全対策に積極的に関与しているかどうかとか、危機発生時のマニュアル整備などで、日航のトラブルやJR西日本の事故を踏まえて整備されるもので、これはこれで必要なことなのは間違いありません。特に経営トップへの意識付けという意味は大きいといえます。
 問題は実際に機能する仕組みとなるかどうかという点です。例えば貸切バスを利用した格安ツアーバスのような路線バス類似行為を放置し、現場の安全管理に問題が指摘されている状況を改善できるのかどうかとか、航空、船舶、鉄道、自動車それぞれに異なる事故率を正しく評価して交通政策に反映されるのかどうかなど、不明な点は多数あります。
 あと前の記事で触れたようなデジタル機器のソフトバグ問題など、鉄道では各社バラバラに技術開発されていて、ユーザーインターフェースもまちまちなど、やや混乱した状況がありますが、できれば標準規格を策定して、安全監視に資すると同時に、標準化によるコストダウンを図って地方中小私鉄の負担を軽減するなども考える必要があります。
 なお、別の記事で
170メートル前で常用ブレーキ=マンションとの距離特定-JR福知山線脱線事故(時事通信)
というのがありますが、異種併結によるソフトバグの可能性を指摘した川島本の仮説に説得力を与えます。事故当日、宝塚駅、伊丹駅と立て続けにオーバーランした上に、事故地点のカーブでブレーキ遅れというのは、運転士の未熟だけでは説明がつきません。ソフトバグによって、例えば先行編成と後続編成のブレーキタイミングに微妙なブレが生じていたとすれば、運転士の意志に反して減速しなかったという可能性があるわけです。またブレーキ操作監視のモニター存置は後続編成の1000番台車のものであることも指摘しておきます。

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Thursday, August 11, 2005

:JR西の97編成、速度計表示に最大上下10キロ誤差(読売新聞)

リンク: @nifty:NEWS@nifty:JR西の97編成、速度計表示に最大上下10キロ誤差(読売新聞).
というわけで、またもや福知山線尼崎事故関連でとんでもないニュースです。日経関西版にも記事がありました。
JR西、速度計190両で不具合──表示と10キロ誤差の可能性、プログラムに原因(8月10日)
ちょっとわかりにくいんですが、同じ207系を名乗る電車でも、製造時期の違いで性能スペックにかなり違いがあることは、川島令三氏の著書でも明らかにされておりますが、今回発覚したのは、速度計測に使う先頭車輪の車輪径の違い(780mm~860mm)によって、異種併結した場合に後部編成のデータを拾ってしまうという不具合だそうで、JR西日本では事故編成は旧型だから問題ないとしているようですが、先行編成0番台、後続編成1000番台で、先頭車の車輪径が異なるわけですから、条件的にはデータ読み込みエラーの可能性は皆無ではなさそうです。とりあえずプログラムの応急補正は済ませたということですが、例によって正しい情報がどこにあるのか悩ましいところです。
 川島氏も異種併結自体には問題は少ないとしながらも、制御信号の読み替えでレスポンスが悪くなっていた可能性は指摘しており、異種間のインターフェースの不具合と見れば、いわゆる相性問題として事故につながる不具合を生じた可能性は否定できません。しかもインターフェースがソフト的に定義されていたものであれば、バグの発生自体は防ぎようがないわけです。
 というわけで、まだまだ情報が少なくて判断に苦しむところなんですが、例えばアメリカで発覚したトヨタプリウスのソフトの不具合など、デジタル化した最近のプロダクツ特有の問題が背景にある可能性はあります。

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クールビズでPCダウンの怪

暑苦しい話題が続きます^_^;。
環境省推奨のクールビズですが、空調の室温を+2゜Cとすることと相まって省エネ効果を発揮するものなんですが、服装で人をクールダウンすることはできても、PCの発熱までは面倒は見てくれませんから、そうでなくても高速化で発熱量が増えているPCが、熱でダウンして修
理に出されて、メーカーのサービスは大忙しだとか。当の環境省からして対応に追われる始末だそうです(笑)。
んと、役人の考えることってこんなもんです。そもそもオフィスの空調って事務能率を高めるために導入されたものなんですが、OA化の進展によって熱源となるOA機器が増えてきて、機器を正常に使うためには、既にオフィス空調が必要欠くべからざるものとなっている現実を見
ていなかったわけです。
んで売れているのがUSB扇風機だそうですが、PCを介して電力を消費しますから、果たして空調温度を上げて得られる省エネ効果が期待どおりなのかどうか、環境省はきちんと検証して欲しいところです。
そもそも背広にネクタイは万国共通のユーティリティファッションでして、上着の着脱で寒暖の調整をするほか、オフィスワークではシャツ姿に腕まくりでも、改まって人と会ったり格式ある場所へ行くなどのときにはビシッと決めてという風に使い分けができることに特徴があるわ
けで、役人の浅知恵なぞ及ばない話なんですよね。
この手の話は多いんですが、例えばCO2削減にはマイカー利用から公共交通利用へシフトすることが効果的であることは明白ですが、道路整備が進んで郊外の無秩序な開発、いわゆるスプロール現象と相まってマイカーの利便性が高まれば、公共交通は利用されなくなって採算割れ
で縮小を余儀なくされます。それに対して車の燃費を高めることで対応しようとしても効果は限定的で、むしろ道路予算で公共交通を整備したりマイカーを規制して公共交通へ利用を誘導したり、必要ならば公共交通利用者に財政から補助するなどした方が効果的だったりします。
というわけで、長々と暑い話を続けまして失礼いたしました。我が家のPCも暑さでダウンしまして、やむなくモブログ投稿となりまスた^_^;。

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Wednesday, August 10, 2005

西武鉄道、持ち株会社方式の再建案

暑さ厳しき折、暑苦しい話題です^_^;。
西武鉄道社長「持ち株会社、年度内に設立」
西武鉄道に関しましては、今までもたびたび取り上げてまいりましたが、株主総会で再建案が決められなかったことから、新たな再建案をどうするのか、注目されておりましたが、持ち株会社傘下に西武鉄道、コクド、プリンスホテルの各社を置く形態で行うと発表されました。
 元々の再建案は、コクドを採算部門と非採算部門に分けて、堤前会長の影響力を後者に封じ込めた上で、前者と西武鉄道、プリンスホテルの3社を統合するというものでしたが、堤猶二氏など堤家4兄弟による名義株の所有権確認の提訴が司法により認められ、銀行主導の再建策に異議を唱えられるなど、株主の理解を得られないままに、株主総会でも決定できなかった経緯があります。
 新再建案では、新設の持ち株会社を上場会社として、各事業会社の株主に株式交換で持ち株会社株を割り当て、各事業会社を完全子会社とするわけですが、このときに各事業会社の財務の健全性や収益性を反映した交換比率とすることで、各事業会社の株主間の不公平を是正するとともに、特に財務体質の不健全なコクドの堤義明前会長や堤家4兄弟の影響力を結果的に低下させる効果も期待できるわけです。
 ただ、同時に持ち株会社の株主にとっては、事業会社への直接的な議決権行使ができなくなるなど、新たな問題も発生するわけで、この点は堤家4兄弟と一般株主の立場にさほど違いがないわけですから、年内に株主総会で同意を得て年度内に実施するという発表どおりにことが運ぶかどうかは、まだまだ予断を許しません。なお、外資ほかの企業再生ファンドからの買収提案が多数あったものの、ファンドの同意は取れる見通しだそうです。またライオンズ球団は再建の象徴として継続保有する方針を示しております。
 というわけで、まだまだどうなるかわからない西武再建策といえます。

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Tuesday, August 09, 2005

郵政問題で衆議院解散の不思議

モブロク初投稿ですが、内容とは関係ないですね^_^;。
ま、いろんなこと言われてますが、政府案には問題が多いことは、当ブログでもたびたび指摘しております。
郵政改革、日の丸民営化は錦の御旗?
旅行貯金者の聖地はクマと出会う素敵なところ
郵政民営化の陰の悪だくみ、北海道新幹線着工
郵政民営化で新幹線ができる?
横浜市交通局決算速報を読む
神岡鉄道廃止に見るローカル鉄道廃止と存続の狭間
郵便ポストが赤いのは、国民欺くウソのせい?
特に問題なのは“今、民営化しないと、郵政事業を維持できない”といったたぐいの話なんですが、“改革派”の皆さんの本音が実は郵政事業の維持にあるということで、主眼は国民の利便性ではないんですね。
ま、実際に郵政事業が維持困難になったとして、そこで初めて財政資金を投じてでも維持すべきものかどうかが問われるわけで、公共性だとかユニバーサルサービスだとかは、その時点での国民の意思で判断すべき問題ではないでしょうか。
というわけで、モブログは長文には向きませんね^_^;。

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Sunday, August 07, 2005

つくばエクスプレスで地価下げ止まり?

タイトルのような特集を日本経済新聞地域版で発見いたしました。
(8/2)茨城県内路線価7.5%下落――TX沿線、下げ止まり感、13年連続下げ
というわけで、相続税などの評価基準となる路線価が発表され、茨城県もご多分に漏れず下げたわけですが、下げ幅が縮小し、栃木や長野を下回り、その原因としてつくばエクスプレス沿線地域の一部で下げ止まりが見られるということです。結構なことなんですが、路線価の評価法は確か92年から収益還元法を取り入れた方式にに変わっているわけで、法令の後押しもあって開業前から沿線地域では区画整理事業が活発化しているわけですから、造成されて土地の利用度が高まった結果なわけで、ある意味当然のことなんですけど^_^;。
 実際茨城県の平均路線価は47都道府県中44位で現評価法となった92年の47%の水準に留まるなど、厳しい状況にあります。なお、たまたま路線価の発表される8月の開業ということで、タイムリーな話題にリンクして記事が書かれたものと思いますが、本来実勢価格がわかれば良いはずなのに、さまざまな理由で土地の価格が4種類も存在するバーチャルな状況は、土地に対する特に行政サイドの特別なスタンスが影響しています。だから路線価が関連話題となったこと自体には大した意味はないんですが。
 重要なのは茨城県がリソースをTX沿線に集中させていることなんですけど、以前にも指摘したとおり特定地域への開発リソースの集中は、結果的にそれ以外の近隣の地域の地価を押し下げる効果があるという点に注意が必要なことは、大都市圏で再開発地域とその近隣の関係にも見られる現象です。茨城県でいえばTX沿線から外れた水海道や石下、下妻など常総線沿線や江戸崎や玉造など霞ヶ浦沿岸地域などが特に影響を受けることになると思います。
 ということになると、このエリアをフランチャイズとする関東鉄道の経営への打撃はかなり大きいといえます。もちろん影響は単純ではなく、守谷付近で宅地開発が進めば、商業集積のある取手への買い物客が増えることで常総線の利用客は増やせるでしょうし、逆に通勤通学客が減少すれば、保守費が嵩むディーゼルカーをピーク時に合わせて多数保有する必要がなくなる分、コストダウンが可能になるなど、プラス要素もありますが、水海道以北のローカル化が更に進むなど、状況は厳しいといえます。さらに自衛隊百里基地のジェット燃料輸送を失った系列の鹿島鉄道を支えられなくなることは考えておく必要があります。必要ならば茨城県は第三セクターによる経営引き受けなどの対応を迫られます。
 JR常磐線への影響も単純ではありません。
(7/23)JR東、TXに対抗――常磐線、土浦以南6駅美化
JR東日本の7月改正でE531系新車による特快新設やフレッシュひたちの増発など、TXを意識した改正と言われておりますが、単純な競争関係と考えるのは早計です。元々TX自体が常磐新線として常磐線の混雑緩和を目的とした路線であったわけで、関鉄常総線と同様にピーク時の混雑緩和に寄与するならば歓迎すべきことのはずです。しかしTX沿線で開発が進むことで、常磐線沿線市街の空洞化が進むようであれば、それをくい止める必要があるわけで、新車投入やスピードアップに留まらず駅の美化までして旅客を誘致することは重要なことといえます。
 一方のTXも新しい鉄道として旅客誘致には意欲を見せます。
(7/15)TX車内で無線LAN、動画配信・TV電話可能に
つくば市など学園都市であり官庁や企業の研究施設が立地する地域ということもあり、また今後も研究開発型の施設誘致に特化されると予想されるだけに、TX利用者のビジネス利用を重視して、さまざまなアイデアで旅客を引きつけようとしています。当初は予定されていなかったTX2000形のボックス席手すりにテーブルを仕込んだりして、無線LANでノートPC利用を想定しています。果たしてこの辺のユーザーの評価はどう出るでしょうか。
 ただしTXにも弱点はあります。全駅ホーム柵と車両ドア連動のホームドアを設置しておりますが、この方式は安全面では優れていても、混雑対応に弱点があり、開業後の試し乗りでダイヤが乱れることが予想されます。一時的な開業景気だけならば良いのですが、開業後のピークタイム対応やイベント輸送など、混雑に対する対応如何では使えないとの厳しい評価もあり得ます。
 また守谷以北のデッドセクションと交流電化によって、ある意味バブルの頃の混雑緩和に苦しんでいた常磐線の悩みを引きずることになります。つまり茨城県内で開発事業が成功し、TXに旅客が集中したときに、機動的に高価な交直両用車が増備されるかどうかという問題です。一応TXを運営する首都圏新都市鉄道(株)は資本余力がありますので問題はないとは思いますが、JR東日本が資本参加しなかった同社経営陣に、的確な経営判断が可能かどうかは未知数です。あるいは自治体主導三セクの悪弊で、例えば茨城県のために高価な車を追加するなら茨城県と関連自治体で増資を引き受けよなどともめて、意思決定がうまくいかない可能性はあります。
 あくまでも推測の域を出ない話なんですが、このあたりの事情は、JR東日本が出資を断って経営参画しなかったことにも通ずるものがあるかもしれません。元々開業年度を2000年度と設定して事業に着手され、流山市以南では区画整理も順調で、都区内は主に地下を通ることもあって、全くの新線には珍しく都心側で工事が進んでいたのですが、柏市内とつくば市内で区画整理事業が大幅に遅れ、開業年度を2005年度に変更し、都心側の工事をスローダウンさせた経緯があります。前後関係は精査しておりませんが、JR東日本が出資を断った次期と符合します。
 状況から言えば、2000年頃に流山市以南で部分開業の目はあり得たと思うんですが、そうならなかったのはなぜなのかということなんです。車両はJRで廃車が進む103系を一時借用し、三郷市の旧武蔵野操車場跡地の再開発地域など仮の車庫を確保して、とりあえず開業して利用者を引きつけることができれば、投下資本の回収が早まるばかりでなく、全線開業後の旅客誘致にも有利なわけで、総事業費を抑制して利益を生み出せるわけですが、あくまでも推測であるとお断りしておきますが、この辺の意思決定を巡ってJR東日本と茨城県及び関連自治体との間に、抜き差しならない対立が発生したのではないかと睨んでおります。
 そう考えると、時期的にniftyの鉄道フォーラムで常磐新線は標準軌で新幹線サイズというガセネタが、会社関係者の意向として流れたことなどが思い出されます。免許上はあくまで常磐新線は狭軌で守谷以南DC1,500v、守谷の北のデッドセクション以北AC20kv電化で変更はされておらず、いかにも素人っぽい夢物語が関係者の証言として出てきたあたりに、自治体主導三セクの性を見てしまうのですが。ただしくどいようですが、これらはあくまでも推測の域を出ませんので、そのようにお読みください。

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Saturday, August 06, 2005

尼崎事故、ブレーキかけず高速でカーブ進入…調査委

リンク: @nifty:NEWS@nifty:尼崎事故、ブレーキかけず高速でカーブ進入…調査委(読売新聞).
同じくniftyのニュースサイトからです。
運転士、非常ブレーキ使用せず=通常ブレーキ作動も遅れ-ATS記録解析・事故調(時事通信)
日経関西版に詳しい記事がありました。
尼崎JR事故で脱線の快速、百十数キロでカーブ進入──直後に常用ブレーキ、事故調調べ
ニュースサイトのリンクは公開期限が短いですが、記事名から有償検索や縮刷版などで記事を辿ることはできますので、ご活用ください。
 大まかに言えば、ATSの記録装置の解析により、事故列車の運転士は伊丹駅発車後、事故地点のカーブまで減速せず、緩和曲線に入ってから常用制動で減速し、外に大きく傾いたものという見方が示されました。非常制動については運転士による操作の記録が残っていないところから、連結器の破損による編成分離で作動した可能性が高いようです。事故原因はオーバースピードですが、運転士のブレーキ操作に大きな遅れが見られたことから、なぜブレーキ操作が遅れたのかに、次の焦点が移ります。
 繰り返し報道された伊丹駅でのオーバーランや日勤教育の問題などで、運転士が正常な判断力を失っていたらしいことは推察されますが、この辺になりますとメディアの報道姿勢がとっ散らかってきてしまいますが、あくまでも再発防止が重要なんで、そのために何を改善すれば良いのか、冷静に見ていく必要があります。
 まずATSですが、度々指摘された速度照査ATSの設置については、国土交通省の通達によって危険個所への設置が決まり(脱線防止ATS新たに設置(共同通信))、従来設置基準がなかったATSを活用した事故防止策が各社で進捗することになります。福知山線に関しては営業再開前にATS-P設置工事を終えておりますので、要件は満たしておりますが、旧式のATS-Swでも速度照査機能を持たせることが可能なことは、既に指摘しておりますとおりです。
 車体の側面強度の問題については、まだ何も決まっていないんですが、尼崎事故に関して言えば、側面強度以上に先頭部の衝突安全への配慮不足を感じます。怖い話なんですが、1両目と2両目の損傷が激しかったことが、後続車両の損傷を軽減した現実を直視せざるを得ません。側面強度もさることながら、マンション地下駐車場の仕切壁に衝突した1両目が、衝突によって長さが2/3程度に縮まってしまったことを思い出して欲しいんですが、正面衝突に対して変形するクラッシャブルゾーンとそれに保護された変形しないコア部分を設定していなかった結果、全長が縮んだ1両目と横向きになってマンション側壁に叩きつけられた2両目が衝撃を吸収して後続車両を保護したという皮肉な結果となったと見るべきでしょう。先頭モーター車だったら回避できた問題ではありません。
 そして奇怪なのが運転再開時に見直されたダイヤなんですが、余裕時分の少なさが運転士の焦りをもたらし事故の誘因となっているという指摘に対して、駅停車時分の見直しは行われたのですが、運転速度を120km/hから95km/hへ下げた結果、駅停車時分を除けば余裕時分の少なさは相変わらずで、これで本当に事故対策になるのか疑問が残ります。ま、これは事故車の代替車と噂されるJR東日本武蔵野線から発生した103系8連の緊急トレードが絡むのかもしれませんが、足の遅い103系でも使えるダイヤにしたとしたら、相当レベル悪質な冗談としか言いようがありません。
 何か最近、安全に対する当事者の揺らぎを感じてしまいます。先日の地震でも、エレベーターが多数停止し、そのほとんどが耐震基準が強化されてから設置された新しいものだったことから、緊急停止を震度4以上から震度5弱以上に緩和が通達されたり、鉄道の運転再開が遅れたことを受けて、線路の目視確認の要件を緩和する動きもありますが、安全を守ることと利便性は、ある程度トレードオフの関係となるのは致し方ないところなんですけど、不満の声に押されて?揺らぎが生じているとすれば、それはむしろ安全を損なうものと言わざるを得ません。仮に安全に支障がないというならば、そのことをきちんと説明すれば済むことなんですが、例えばJR西日本は、福知山線のダイヤ見直しや321系の設計変更が安全に寄与するという説明には納得しがたいものがあります。
 最後になりますが、川島令三氏が近著で尼崎事故を取り上げております。本日8/5現在書店店頭で現物を確認しておりませんので、内容は未確認ですが、無知な報道記者なんかよりも視点の豊かさは確かですので、フライング気味ですが^_^;お薦めとさせていただきます。

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