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Sunday, October 16, 2005

高千穂鉄道復旧は成るか?Part2

前の記事で思い切り脱線しちゃいました^_^;。しかし高千穂線のうちの旧日之影線部分について語るには避けて通れない部分でもあります。国の直轄事業だった戦前の国鉄の、末期の建設線の多くは、旧日之影線のようないわゆるローカル線でした。もちろん地元選出議員による利益誘導の結果だったのでしょうけど、いわゆる建主改従で鉄道の恩恵を国土の隅々に行き渡らせようという意思決定が為された結果と見ておきましょう。

日本の鉄道は草創期から国土の骨格として位置づけられておりましたから、国有化以前の私設鉄道の時代から、官設鉄道への連絡が免許条件として課され、日本鉄道が東京の市街地を避けて建設した官鉄連絡線が後の山手線となるなど、幹線鉄道網の整備に重点が置かれていたわけです。その集大成として第一次鉄道国有化で有力私鉄が官鉄に併合され、以後民営の鉄道は、一地方の需要に応じて建設されるいわゆる地方鉄道と定義されたわけです。

その一部は大都市部に立地し、都市の発展と呼応しながら発展し、合従連衡を経て、現在の大手私鉄各社が形成されたわけですが、それ以外の地域では、地元の零細な資本を集めて、脆弱な装備で鉄道事業を行うものが多かったのです。そしてそのような零細な鉄道は、昭和期には勃興するバス事業の挑戦にあえなく敗退して、事業廃止に至るものすら出てくるようになります。それでも地方が鉄道を渇望し、中には資本を集められない地方もある中で、国鉄による地方線区の建設が行われることになります。当然予算制約の中での建設ですから、幹線筋と比べてグレードを下げざるを得ないわけで、旧日之影線のような脆弱な鉄道施設をお守りしながら維持することとなります。

それに比べて戦後、しかも鉄道建設公団による建設線として作られた路線は、財政投融資で潤沢な資金を得られたこともあって、渓谷を跨ぐ高高架のコンクリート橋のような、ローカル線にしては立派すぎる贅沢な造りとなっております。しかし今回の台風被害ではそれが明暗を分けました。被害を受けたのが、主に旧日之影線区間に集中しているのは、決して偶然ではありません。路線のハードの成り立ちが、そのまま災害リスクの差となって出現してしまったわけです。

また多くのローカル線が、鉄道施設の更新投資の原資を稼ぎ出せずにいるために、建設時期の事情で低グレードで建設された路線では特に、設備更新の重荷が大きく、、鉄道の存続に影を落としています。奇しくも高千穂鉄道でも、発足時に積んだ経営安定基金が取り崩されて残高が減り、在籍車両が耐用年数を迎えて車両更新をする費用すらままならない状況が既にあったわけですから、冷たい言い方ですが、台風で被災するまでもなく、存廃を取り沙汰されるのは時間の問題というところにいたわけです。

救いは災害救援資金の援助が得られる点で、流出した橋梁や路盤の復旧は、国と地方の折半で地方財政への負担にはなるものの、普及の道筋はつけられそうですが、上ものの線路や信号機やまして車両までは面倒見てもらえないわけで、実際こうして廃止に追い込まれたローカル私鉄は数多あります。ま、この先は知恵の絞りどころなんですが、考え方をほんの少しずらせば、そもそも設備更新の費用すら稼ぎ出せずに、線路や車両の保守に余分な支出を余儀なくされていた鉄道を、災害復旧を名目に資本増強して存続させようという話ならば、それほど無謀な話とも言い切れません。実際高千穂線として延長開業した区間は無事で、観光鉄道として先行復旧させようという話が出ているぐらいです。

以前神岡鉄道の記事でこのように書いてます。

発想を変えて通過トン数の極端な少なさを逆手に取って、軌道狂いの少ない重軌条化やスラブ軌道化などで10年単位の無保守軌道構造とするなどして延命する方が、結果的に長期に存続が可能になると思うんですが、日本ではローカル線イコール低規格が当たり前で、むしろ保守費用が嵩む現実に直面するわけです。事業者への運営費補助が納税者の理解を得にくい日本だからこそ、資本増強による劇的な高規格化でメンテナンスフリーを実現するという発想がほしいところです。この場合は沿線住民や企業から株主を公募するなど、必ずしも自治体が絡まなくても可能ですが、株式公募をやりやすくするための支援策には工夫の余地があります。財政負担を伴わずに路線を維持しようという甘い考えは捨てた方が良いでしょう。同時に安価な高規格軌道を実現できる技術開発が望まれます。
ローカル線が大都市通勤線や新幹線と決定的に異なるのは、通過トン数の少なさなんです。ということは、それを逆手に取って、軌道狂いの少ない頑丈な線路を高くない頻度で軽量ディーゼル車で走らせる分には、線路保守の劇的な省力化が可能ということです。このように発想すれば、むしろ高千穂鉄道の存続問題は、新しい鉄道を創るという夢のある話になるということです。もちろん実現には資金面の裏付けが必要で、決してハードルは低くはないのですが、実現不可能とはあながち言えないでしょう。

最近欧米では、治水目的のダムの廃止や河川の護岸の撤去により元の自然状態に戻す緑の公共事業が行われるようになりました。経済学でも自然の贈与という言葉がありますが、経済学ではそれにプラス人間の働きが価値を生み出すと教えます。とすれば自然の資源の中から人間にとっての有用物を取り出すのが経済活動ということで、その結果元の自然が疲弊して人間にさまざまな不利益を与えるならば、元の自然を回復することもまた人間にとって有用といえるわけです。いわゆるオルタナティブな世界、もう一つの世界という考え方ですが、経済成長のモノカルチャーに犯された日本では、未だ少数派に留まります。そんなことを考えさせる高千穂線問題といえます。今後は私たちの選択にかかっているのかもしれません。

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» 高千穂鉄道復旧費の見積が出る。 [Simplex's Memo]
台風14号がもたらした大災害で全線運休中の高千穂鉄道。 今日の毎日新聞にその復旧費見積が出た旨が掲載されているのを見る。 記事の要旨は次のとおり。 ○高千穂鉄道の復旧費を試算していたJR九州コンサルタンツは同社に見積書を提出した。復旧費は総額で100億円以下になる見込み。 ○JR九州コンサルタンツは災害現場を調査し、過去のJRの災害復旧事例における工事費を参考に復旧額を算出した。 ○高千穂鉄道全線にある103カ所の橋梁の内、崩落した第1五ケ瀬川鉄橋(�... [Read More]

Tracked on Thursday, November 03, 2005 at 10:01 PM

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