西武鉄道に創業家から買収提案
えー、政権の広報に堕したメディアの空疎な報道合戦で、他のニュースが霞んでしまうのは困ったもんですが、報道の公共性を主張するなら、まずは悔い改めよです。
とりあえず日経だけで本日3本あります。
(10/31)堤清二氏ら、西武鉄道買収を提案・持ち株会社案に対抗
(10/31)堤猶二氏ら、西武鉄道買収提案を発表へ
(10/31)堤猶二氏「TOB提案、一般株主に不利な再生案を是正したい」基本的に当ブログの西武鉄道、持ち株会社方式の再建案という記事で言及しておりますが、銀行主導の色彩が濃い持株会社方式による西武コクド一体再生案を「一般株主に不利」として阻止する目的だそうで、特に経営権を取得しようといったことではないようです。
記事によれば西武鉄道株の80%はコクドの保有となっており、20%相当の一般株主は、西武鉄道の上場廃止で、流動性を失って減価した株を売るに売れず、損失を被ったわけですが、現再建案では株式の評価額が700円程度と低すぎるということで、高値で買い取ることを提案しております。
またコクドとの一体再生案に疑問を呈しておりますが、これも専門家からは以前から指摘されていた点で、実際安定したキャッシュフローを生む鉄道事業に対し、統合予定のプリンスホテル共々不採算事業が多く、再建は困難と言われております。銀行サイドとしては堤義明前会長の個人保証で貸し込んだ融資が不良債権化するのを恐れているわけで、一般株主の立場は顧みられていない点を突いてきたということです。一応経営陣との和解の意向を示しておりますが、銀行の意を受けた現経営陣が協議に応じる可能性は低いと見られます。
鉄道事業だけを考えた場合、装置産業である以上、事業の儲けを設備更新などに再投資して、事業基盤を強化するのが正解なんですが、確かに持株会社方式による再建案では、採算性に疑問のあるリゾート関連施設への内部補助など、不透明な対応を許す余地があるという意味で、好ましくはありません。
また
(10/27)堤前コクド会長ら有罪、西武に罰金2億円・東京地裁ということで、既に有罪判決が出ている堤義明前会長の実質支配は続くわけで、いくら増資で持分比率を薄めるといっても、株式上場復活を目指すならば問題はあります。
この辺は今をときめく村上さん^_^;も
(10/28)村上ファンド「西武取締役を訴えよ」・監査役に要求ということでお怒りのようですし、元々持株会社による一体再生には反対の立場を表明してましたから、堤家4兄弟と利害は一致しています。
というわけで、なかなかスッキリいかない西武鉄道の再生ですが、まだまだひと山もふた山も越えなければならないのでしょう。というわけで、相続を巡るトラブルは、結局多くの人を不幸にしますね。
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Comments
経済的側面は記事の読み込みが足らず私自身のコメントは出せないのですが、兄弟心理で考えることはできます。
堤兄弟の話はそれだけで書庫が一杯になるほど語られる分野で(堤学^^;)経営者には必読の分野なんでしょう。加えて兄は辻井喬として作家の側面で経営や回顧など記録に残すと言う面では他の鉄道名家(後藤、小林、根津)とは一線を画していると思います。
兄からすれば「鉄道」というのは本当は欲しかった業種だったのではないでしょうか。帝王の裁定により流通を与えられ、不遇から先端への脱皮、なにか「飢え」というものを氏には感じます。人生の大半を終えた今、千載一遇のチャンスがやってきた気がします。
私個人とすれば清二氏に鉄道を経営して欲しいと思います。芸術家が経営した鉄道、考えるだけでも夢があります。
PS:清二氏の手記「父の肖像」を借りてみることにしました。
Posted by: SATO | Tuesday, November 01, 2005 10:29 AM
コメントありがとうございます。
清二氏もご学友の側近を置いて経営をするなど、義明氏と似たところもあるんですが、その側近の人はイエスマンとは対極の、苦言も言えるご意見番だったあたりが兄弟でも性格の差が出ているようです。
鉄道事業そのものへの執着があったかどうかはわかりませんが、セゾングループにもコクドと業態がダブる西洋環境開発という会社があったり、あるいはヘリコプターの朝日航空という会社がエアーリンクというコミューター航空会社に出資して運輸業進出をうかがったりと、それなりに脂っこいところはありました。
しかし事業の失敗を自覚してリタイアした人ですから、もはや経営者として返り咲こうとは考えていないと思います。むしろ世間を騒がせた一族の不始末へのけじめという認識ではないかと思います。
Posted by: 走ルンです | Wednesday, November 02, 2005 12:32 AM