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Thursday, October 27, 2005

市営地下鉄計画「支持を得た」? 川崎市の財政再建と開発行政の矛盾

参議院の補選が行われた10/23ですが、同日川崎市長選が行われ、現職の安部市長が2選を果たしました。でもって市営地下鉄計画について支持を得たのだそうです。川崎市民ではない私には、選挙戦で争点となっていたかどうかは定かではありませんが、何だか先日の郵政民営化を争点らしく装った総選挙とダブります。

川崎市の地下鉄計画ですが、これまでの経過は省略いたしますが、二転三転しながらゾンビのごとく継承された計画です。安部市長も当初は見直しも含めた再検討を市民の意見を募りながら、結局一部ルートの見直しによって実施する方向に舵を切りました。このあたりの経緯は川崎縦貫高速鉄道のページでご確認ください。ちなみにルート変更は久末以東で、東横線元住吉接着を武蔵小杉接着に変更するものとなります。

武蔵小杉は09年に横須賀線に駅を設置する計画が発表されており、地下鉄から継走で東京都心への速達ルートとする意図が見られ、元の計画よりは戦略的に優れているとはいえます。また武蔵小杉を交通結節点として位置付けて再開発に弾みをつける発想も優れているのですが、建設に多額の費用がかかり、事業としての採算性はまず論外といっていいほど厳しい事業です。それでも沿線開発によって開発利益が税収増などの形で還元されるならば、いわゆる先行投資としての意義はあるわけですが、果たして川崎市営地下鉄計画はそう言えるでしょうか。

これはあくまでも川崎市民の選択の問題ですから、外野からとやかく言うべきことではありませんが、私の結論としては、都心直結のつくばエクスプレスでさえも沿線開発は決してうまくいっていない現状からすれば、新たな開発用地を創り出し地域間競争を激化させる新線建設は無謀と評価します。

東京と横浜に挟まれ、民間資本によって京浜臨海部の埋立地に工業地帯が造成されて以来、日本の産業資本主義のフロンティアであり続けたわけですが、国家総動員法をはじめとする戦時体制への移行と、戦後それを引き継ぐ産業優先政策によって、常に市民生活は二の次に置かれ続けた川崎市は、確かに交通インフラ整備が遅れていて、市民生活は快適とはいえないのですが、同時に市に多大な税収をもたらしてもくれたわけで、市民の不満を和らげる意味でも福祉中心のバラマキ型市政にならざるを得ませんでした。これは一面企業の超過利潤を市民に還元する数少ないルートでもあったわけです。

しかし国際競争の激化による企業のリストラの進捗によって税収が減り、この体制は持続不可能なものとなります。当然市の行政のリストラも求められます。そんなタイミングで財政再建をスローガンに掲げて当選を果たしたのが安部市長でした。実際市職員の千人規模のリストラを敢行し、赤字の第三セクターを破綻処理しという具合に、敗戦処理を重ねたわけで、この点では一定の成果があったと評価することはできます。しかし安部市長が言う高度経済成長期にできたはずの交通インフラ整備ですが、産業優先で走っていた当時に可能だったとは思えません。加えて国鉄の身勝手が地域のニーズに無頓着でもありました。

当時の国鉄は公社形態の事業体でしたが、国の現業機関としての権限を保有していたので、運輸省の免許を受けることなく、国家独占の名の元に自らの意思で事業を展開できる存在でした。それ故に東京との都市計画を無視した総武快速線を建設しながら、総武線の混雑が限界と見るや営団東西線の東陽町~西船橋間の延伸を要請し、東京都以外の地域に路線延伸の権限を持たなかった営団に対して運輸省が国鉄が事業化しないことを根拠に免許が交付されるという、監督官庁をすら凌ぐ権限を持っていた国鉄が、川崎市の陳情を聞き入れる可能性はかなり小さかったといえます。

その時代のやり残しを今になってやろうということのようですが、人口減少局面で負担ばかり重くなる開発型行政から抜け出せないのが、保守系革新派の特徴でしょうか。思えば小泉政権になってから整備新幹線の新規着工は加速された感がありますし、これ以上無駄な道路を作らないはずの道路公団改革も骨抜きですし、国から地方への改革であるはずの三位一体改革は、最も地方の独自性が生かせるはずの公共事業費を最初から外して議論するから、果たして意味があるのかどうか定かではない義務教育費の国庫負担分の移譲など、数字合わせに終始しているのですが、川崎市のケースでも、地下鉄は作るけど社会保障は切り下げられるとすれば、果たして市民の選択として賢明だったのかどうか疑わしい限りです。

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Comments

そもそもこれからの人口減少社会において、地下鉄のようなイニシャルコストが巨額となる事業を行う必然性があるのか、理解に苦しみます。

平行して南武線が走っているのですから、こちらに手を加えれば済む話だと思います。南武線の混雑が酷いなら通過両数を増やせばよい訳で、ホーム延長などに必要な費用の方が地下鉄建設よりも遥かに安価であることは目に見えています。南武線に10両編成の快速を新設し、川崎から京浜東北線への直通運転を行って都心と直結するなど、既存インフラを活用した改善策はあるはずです。

鉄道不便地域の問題についても、定時性を高めた路線バスの運行(信号機の制御等)など鉄道駅を拠点とした二次的な輸送システムの構築で、地下鉄建設に近い効果が得られると思われます。川崎市の道路事情やマイカー保有率は詳しくは知りませんが、朝のピーク時でも通行量がさほど多くないなら、既存駅を使ったパークアンドライドなどもありでしょう。

本来ならば高度成長の終焉で見直されるべきだった開発型行政、いつまで続くのでしょうか…

Posted by: S.WATANABE | Friday, October 28, 2005 at 12:26 PM

コメントありがとうございます。

仰るように、南武線の機能強化と他線接続駅の改善で、市営地下鉄が果たそうとする役割のかなりの部分は代替可能です。また実際住宅、商業、工業の集積も南武線沿線に集中しておりますので、南武線の機能強化こそ喫緊の課題といえます。

一部駅から離れた団地等については、個別的に交通環境の改善が必要でしょうが、道路事情の悪さなどの課題は確かにあります。一部市民団体で四車線の幅員のある尻手黒川道路へのLRT導入案などはありますが、市民レベルでの議論は低調です。

貨物オンリーの武蔵野南線の旅客化も構想されましたが、丘陵地帯に住宅地が点在する川崎市内の大半の区間は地下トンネルで通過しており、やはり貨物線から旅客化された京葉線と違って後付けで駅を設置することが困難で、結局沙汰止みとなっております。

南武線は私鉄買収線であるために、設備の脆弱さから増強が困難ではあるんですが、南武線沿線の区画整理事業は進まず、都市計画に明確に組み込まれていないことが、南武線の増強を困難たらしめています。

確かに国策に振り回され、自治体としての川崎市は、せいぜい立地企業の儲けの上前を刎ねて市民に還元するぐらいしかできなかったにしても、私権の制限を伴う都市計画が進まなかったのは、市当局の無策が原因です。いまさらそれを取り返そうとうのは、正しく時代錯誤も甚だしい話と言わざるを得ません。

Posted by: 走ルンです | Saturday, October 29, 2005 at 04:46 PM

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