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Friday, November 25, 2005

耐震強度偽造、木村建設破産で問われる銀行のモラル

耐震強度偽装問題で、メディアの一部にはアネハ、ヒューザー、シノケン、キムラ、イーホームズの悪役五人衆たたきに狂騒しているようですが、ネットでもそういった論調があるのが残念です。今はまだ真相は藪の中、まだまだ未解明の事実は多いし、今断定的にものを見るよりも、より多くの事実を掘り起こして、より多くの教訓を得ようではないですか。

そんな中でこんな記事が出て、一部に溜飲を下げる向きもあるようですが、被害者救済が滞る深刻な事態に思い致さないのは無責任でしょう。

木村建設社長「月末にも自己破産申請」・耐震強度偽造問題
さらに奇怪なのが放送も新聞も、ほとんどのメジャーメディアが次のニュースを並列的に取り上げているというのは、何たるイマジネーションの貧困かと思わずにはいられません。
大手銀6グループの中間、最終利益前年比21倍の1.7兆円
並べてみると、要するに(大手が関与しているかどうかはともかく)銀行が木村建設から資金を引き揚げた結果、被害者への賠償責任を負うはずの木村建設による賠償が困難になったということです。ま、日経からしてこういった問題意識がないというのは情けないところです。

と思いきや、読売により詳細な記事がありました。

強度偽装、木村建設破産申し立てへ…社長表明
またネットではTBをいただいた時評親爺さんが、余談としながらも、更に個人的論考をされてます。ということで、担保として差し入れたわけではない当座預金口座で債権が相殺されたという社長発言がありますが、事実とすればとんでもないことです。被害者への賠償を差し置いてその原資を横取りして自行の債権を保全したということですから、モラルを問われる事態です。まして不良債権問題で目処がついて最高益を更新するイマドキの銀行での貸し剥がしというデキゴトというところに漂う違和感は何なんでしょうか。

こういったディティールに、往々にして問題点が見えてくるものです。そりゃ銀行側の言い分としては、木村建設の責任の有無に関わらず、預金者保護の観点から事業を継続しがたい事由と捉えてのことでしょう。また大手行と違って不良債権処理が道半ばといわれる地方金融機関ならばなおさらでしょう。実際栃木県の足利銀行の実質国有化による破綻処理が行われたのは記憶に新しいところです。

木村建設に関しては、私自身詳しい事情はわかりませんが、熊本県八代市に本社を構えているところからすると、おそらく元々は公共工事を主に手がける地場の有力ゼネコンだったんだろうと思います。それが財政再建で公共事業が削減され、事業が先細りになる中で、ローコスト建築で民間工事に活路を見出そうとしたのでしょう。またそれを武器に中央へも進出し、全国区デビューした、ある意味地場の期待の星のような会社だろうと思います。そういう会社であれば、ある意味貸出先が細る一方の地方金融機関にとっては、優良貸出先として貸し込まれていたとしても不思議ではありません。銀行としてはみすみす融資先を見落として収益機会を損なうことは避けるべきですし。

しかし銀行が果たして適切なリスクテイクをしていたかどうかは、はなはだ疑わしいところです。建築でローコスト化するためには、大まかに言って工事の数をこなし工期を短縮することで、資材や機材を使い回し、調達の値下げ圧力を働かせることと、工事代金決済までの運転資金の金利を少なくすることぐらいしか手がありません。そしてそれらを深度化させようとすれば、それ自体が手抜き工事の誘因として働く可能性がありますので、そうさせないだけの何某かの見返りがあるか、施工管理が厳格かなど、地場ゼネコンとしては高いハードルをクリアする必要があります。つまり業態としてそれなりにリスキーだということです。

一方の銀行サイドから見れば、リスクのある事業への融資そのものは、ベンチャーの孵化器としての機能を考えれば一概に否定すべきではありません。ただしリスクに見合うリスクプレミアム(リスク分の上乗せ金利)を融資先に請求し、それを原資として貸し倒れ引当金を積み立てておくことが必要なんですね。成長性のあるものになるベンチャーならば、多少の上乗せ金利は負担しても中長期的には返済能力があるはずですから。

実際の銀行の融資の現場では、銀行間の競争が激しくて、とてもじゃないけど上乗せ金利なんか請求できないし、すれば融資先に他行へ逃げられてしまうだけとなります。結果としてベンチャーと似て非なるインチキ会社を助けてしまう可能性があるわけです。真性ベンチャーとインチキは初期段階は外見的には見分けにくいですが、事業に成長性があれば結果的に高い金利も負担できるようになってくるわけですが、インチキ会社はそこまで辿り着けずにメッキが剥がれ落ちるわけですから、上乗せ金利の請求は、銀行の健全経営には欠かせないことといえます。

とまぁ大手行の中間決算好調のニュースとは裏腹に、地方金融の現実はかくの如きで、とてもじゃないけど金融危機は脱したとノー天気に言うことはできません。更に2007年10月には、大手行を上回る規模の超巨大郵貯銀行が参入するっていうんですから、狂気の沙汰としか思えませんな。アホラシ-o-。

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Comments

”木村建設”は、熊本ローカルラジオ、テレビ放送ではコマーシャルソングがよく流れていました。ここ5~6年かなぁ?目立ち始めたのは?熊本市近郊でタクシー労務に就いている者には、「コマーシャルソングだけが耳に残っていて、実態の無い会社」という印象です。八代(40Km彼方)から、熊本市に支社等を置かずに、イキナリ、東京本社を置くなんて、その辺りが何か胡散臭さそうな感じですね。

Posted by: oohno1jp | Monday, November 28, 2005 at 05:11 PM

コメントありがとうございます。なるほど、最近売り出し中の会社ではあったわけですね。しかし県庁所在地の熊本を飛び越えて東京で事業展開している会社が、地元地上波局でCMというのも妙な話ですが、逆に局に泣きつかれたのかもしれませね。

木村建設の破産については、続報が乏しく、特に記者会見で明らかとなった銀行の当座預金相殺問題など、事実関係を明らかにすべき問題のはずですが、メディアの反応が悪いのは何故なんでしょうか。引き続き注目していきたいと思います。

Posted by: 走ルンです | Monday, November 28, 2005 at 08:16 PM

熊本ファミリー銀行 八代支店は木村建設が施工したようで、自分とこの建てかえ費用は確保しておこうなんて思ってたりして。(そんなことはないでしょうが....。)

Posted by: 浄眼 | Tuesday, November 29, 2005 at 01:20 PM

ハハハ^o^、座布団1枚!

Posted by: 走ルンです | Tuesday, November 29, 2005 at 05:43 PM

  突然で恐縮ですがご招待です
 「ヒューザー/耐震強度」にちなんだ最新のクイズがあります。
 お近くへおいでの節は、どうぞ拙宅へもお立ち寄り下さい
http://blog.q-q.jp/200511/article_167.html
(ご迷惑でしたら、お手数ですがコメント、TBの削除をお願いします)

Posted by: 素町人@思案橋 | Wednesday, November 30, 2005 at 11:31 AM

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