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Sunday, November 20, 2005

耐震強度不足問題が示すもの

何とも救いようのないニュースですが、こういう記事を見ますと、問題の深刻さを感じます。

(11/19)耐震強度偽造、正規と虚偽のデータを組み合わせ偽造(日本経済新聞)
記事中にあるとおり、構造計算書自体はコンピュータプログラムを使い、数値を入れれば適合不適合のメッセージを表示するというのですから、正規に作成された構造計算書であれば、検査そのものは書類上の形式的な審査で事足りるわけです。

実際は発注者や元請けからのコストダウン要求が強くて、いわば裏技のような方法で答えを出した姉歯建築設計事務所ですが、おそらく恐る恐るやってみたらうまくいったということで、同じ手口を繰り返すことになったのでしょう。また発注者や元請けからのコストダウン要求も強かったようで、それに応えられるがウリだったのでしょう。実際こんなニュースもあります。

(11/19)耐震強度不足、2社に集中・構造計算は姉歯委託(日本経済新聞)
何だか規制緩和で競争激化し、荷主に逆らえず労働強化が進み、重大事故が増えているトラック業界を連想させます。

根本にあるのは過当競争状態での規制緩和という構図です。元々失われた90年代の公共事業大盤振る舞いに談合による高値受注でたかっていた業界ですから、競争力不足で市場から退出すべき事業者がいつまでも生き残り、民間工事でダンピングまがいの安値受注合戦となっている構図が透けて見えます。また金融危機で公的資金で銀行救済を繰り返したいわゆるソフトランディング路線で、やはり銀行を通じて資金を融通してもらって延命した事業者も多数ありますし、日銀の金融緩和政策による低金利に助けられた側面もあります。結果的に潰れていてもおかしくないゾンビ企業を延命させ、なまじ輸出好調で企業業績が回復して景気上向き気分になっている局面だけに、公共事業の減少を補う意味でも民間工事の安値受注の圧力が強まっているわけです。なるほど、こんな状態で日銀の量的緩和が解除されれば、実は危うい日本経済の現実が表面化してしまうわけです。

過当競争下での規制緩和は、本来は市場の淘汰圧力によって、市場から退場者を出すことで、最も効率的なプレイヤーが勝ち残ることで経済厚生の向上をはかる考え方なんですが、それは常にずるをして勝ちを拾うインセンティブを事業者に与えることにもなります。だからこそ市場の透明なルールが整備されていることが、実は大変重要なことですし、政府はそれを正しく判定してルールが実際に機能するようにしなければならないんです。いわゆるザル法は、抜け駆けを督励し二重基準を固定化させて闇勢力に付け入る隙を与えるなど、経済厚生を低下させることになります。今回の事件でいえば、民間の検査機関のチェックさえくぐり抜ければ問題ないという現実が、実は重大な二重基準となっているということを露呈したわけです。制度の改善まで踏み込めなければ、地震になって初めて発覚という阪神大震災の悪夢を繰り返すことになります。

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Comments

昨日TBさせて頂いたhome-9と申します。
建物の構造は最も大切でありながら、居住者には見えない。
であるからこそ、構造計算は大事だし、かつては地方自体により建築確認や検査が行われてきました。これを効率化、迅速化の名の下に、民間で出来ることは民間でという、いわゆる構造改革の一環として、建築確認・検査を「民営化」してしまった。
今回の不正行為の背景は、ゼネコン主導による検査の骨抜きにあります。
従って、政府の責任は免れないと思います。

Posted by: home-9 | Monday, November 21, 2005 at 07:19 PM

TBありがとうございます。仰るとおり政府の制度設計に瑕疵があったと見るべきでしょう。

90年代初頭には公共工事も民間工事もほとんど違わなかった建築価格が、90年代の間に公共工事は上昇し民間工事は下落したわけで、そのこと自体が一物一価の原則に反します。市場が機能していなかったわけで、典型的な“市場の失敗”と断定できます。

そもそもは完成したビルの鉄筋の数や強さは表からは分からないわけで、売り手と買い手の間に情報の非対称が存在するわけですから、制度設計次第で規制が機能するかどうかが決まります。政府の役割が問い直されるべき問題です。

Posted by: 走ルンです | Tuesday, November 22, 2005 at 12:16 AM

今回のことは国土交通省を頂点とした確認審査の体制のなかで、何十年も前から、構造チェックについて殆どなされない慣行の上に発生したものです。現在は国土交通省以下、全ての検査機関で大慌てで近年の物件の見直しをやっておりますが、いまさら何の意味もありません。ある程度の資料がそろった段階で適当に誤魔化すための資料作りにいそしんでおります。
一方で、建築士及び民間の検査機関にたいし各種の規制の強化をいっております。開き直った泥棒にも等しい行為で、国民の目から、自らの責任を隠そうとしております。建築業界全体の倫理問題などとマスコミをあおっております。検査さえまともにしておればこんなことはおきてはいません。警察の追及が殆どないとわかれば世の中の犯罪は激増します。建築確認の構造の審査は今まで殆どなされてなかったのです。今までに今回のようなことが起きなかったことが不思議です。このようなことをしておきながら、なお責任のがれしか考えられない官僚の性癖は、大阪市の問題でもあきらかなように、もはや、一般国民と同様に扱えません。我々は知らぬ間に新しい形の封建国家の国民とされてしまっているようです

Posted by: 封建国家日本の下級国民 | Friday, December 09, 2005 at 06:32 PM

コメントありがとうございます。最近ニュースが多すぎて、少し前の出来事も忘れがちですが、例えば生命保険の保険金未払い問題などでも、低金利下の逆ざや問題には蓋をして、明治安田生命だけをスケープゴートに幕引きをしようという姿勢が見えます。

強度偽装問題も、姉歯など一部の不心得者のせいにして幕引きしたいんでしょうけど、問題が広がりすぎて収拾がつかなくなりつつありますね。あるいは投資バブルの崩壊の序章でしょうか。みずほ証券の誤発注で東証が混乱した事件も象徴的ですね。

結局不始末は国民が尻拭いするしかないんですから、冗談じゃありませんよね。

Posted by: 走ルンです | Saturday, December 10, 2005 at 12:24 AM

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