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Sunday, November 06, 2005

都営地下鉄、大江戸線効果で乗客増加

やや地味目なニュースですが、こんな記事見つけました。

(11/5)都営大江戸線の乗客数、上期は4.8%増
汐留など沿線の再開発が寄与したもので、都営地下鉄全体で見ても2.4%増ということですから、増加のボリュームは大きいと言えます。

2000年12月の全線開業時には、駅が深くて地上から遠く不便なこともあって空いていた同線ですが、既に麻布十番など沿線でマンション建設が活発化していて、人口の都心回帰の流れを加速する形となりました。更に遅れて開業した汐留駅周辺の再開発進捗によって、利用者数を押し上げる結果となったようです。

この辺の評価は悩むところなんですが、元々旧国鉄遊休地を中心とした汐留地区の再開発そのものは、バブル崩壊のあおりを受けて停滞していて、再開発地の分譲が進まずお荷物扱いだった上に、官鉄新橋駅の遺跡発掘などもありました。結果的にこの遅れが、地価下落による値頃感と共に、IT革命による通信網のブロードバンド化でオフィスのインテリジェンス化のニーズが顕在化し、容積率などの規制緩和もあって六本木ヒルズなどの都心再開発ブームに火がついて、その波に乗ることができたという意味で怪我の功名だったといえます。また記事にある通り開業後3年で利用者の伸びが止まっていたこれまでの傾向と異なった動きとなったわけです。

大江戸線38駅中、汐留駅が増加率27.7%増加人数4,000人で共にトップで、増加率2位の新御徒町(17.7%)、増加数2位の新宿(2,000人)を大きく上回ることとなりました。ま、元々何もなかったと言ってしまえば身もふたもありませんが^_^;。新御徒町は明らかにつくばエクスプレスの効果でしょう。

ただ、大江戸線が環状路線で、他線との乗換駅が23駅もあることが認知されて利用が増えたという側面もあります。再開発ブームがいつまで続くかは定かではありませんが、大江戸線が第2の環状線として機能し始めたということは言えそうです。

以前記事にしましたが、

商業施設と病院の立地規制?
規制のためなら縦割りも何のその
で郊外開発規制を模索する動きについて述べましたが、大江戸線の現実は、容積率などの規制緩和はあったものの、都市中心部における公共交通整備が、結果的に中心部の集積度を上げることの証左といえます。東京以外でも、横浜のみなとみらい地区も、みなとみらい線の開業までは更地で放置されていたことを思い起こしてほしいところです。

しかし中心市街地活性化法などで再開発を試みた地方都市では、大規模郊外型商業施設への対抗上、中心市街地の道路整備や駐車場整備などの事業が行われることが多いんですが、実際には駅前大通地下に公共駐車場を整備しても、中心街の商店が営業不振で撤退した跡を更地化してコイン駐車場を整備する動きによって、駐車場の供給過剰から値崩れを起こして、公金で整備された公共駐車場が最も料金が高いという笑えない状況になっているのを見かけます。地方に限らず、大船あたりでもコイン駐車場が増えて、遂に100円/60分というところまで出現し、決して駅に近くない松竹跡地のヨーカドー&三越の駐車場や鎌倉芸術館の駐車場が割高になるなどの状況が見られます。思えば岐阜の名鉄線廃止も同じ文脈です。車依存の発想から抜け出さない限り、こんな状況が続くのでしょう。

あと余談ですが、現在検討が進められている郊外立地規制が、都市計画法と建設基準法の見直しで進められている点を危惧します。時限的な特別法によるのではなく、私権の制限を伴う一般法に滑り込ませて規制を恒久化しようという話です。私権の制限は憲法の定めに従って公共の秩序と善良な風俗を犯すものに限定されるはずですが、国民の監視が働かない未熟な民主制下では、利権の隠れ蓑に公共性を持ち出される可能性を指摘しておきましょう。前の総選挙でメディアも国民もコイズミに騙される現状ですからねぇ。

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Comments

丸ノ内線は新宿ー池袋という直線なら難なく通過の距離を大回りしていますね。私のようなもの好き以外は区間乗りが大半でしょう。
大江戸線は新宿ー六本木などは入り口に宣伝しているように考えようによってはショートカットもできます。また都も奨励しています。しかしそれとて地の利があればであって、如何様にも努力しがたいのは勝どきー蔵前や上野御徒町ー新宿西口など俗に言う「北部分」です。しかし乗車率悪い=開発の余地ありでこのところの開発ラッシュで手ごろなマンションが出始めました。
かつての東急が原野に電車を走らせて開発をしていく姿の21世紀版のように思えてなりません。

Posted by: SATO | Sunday, November 13, 2005 12:44 PM

コメントありがとうございます。確かに大江戸線の北部分は弱かったんですが、逆に開発余地ありということで、マンション建設が進んだという面があります。

しかしそれとて都心に近い環状線なればこそ、都心に近い足場の中での開発余地という面はあります。かつての東急田園都市線のように無人の原野に電車を走らせるのとは違って、成熟化した中での開発面の比較劣位が比較優位に転化したものということでしょうか。同じ公共交通整備でも、お金のかけどころを間違えると空気を運ぶことになりかねません。

逆に大江戸線がリニア小型断面で整備されたことが、将来混雑を招くとすれば、その面では目論見を外れたことになりますが、現状はどうでしょうか。建設費の抑制効果はほとんどなかったようですが。

それでも収益性の高い路線を優先的に整備してきた旧営団地下鉄(東京メトロ)とは違った視点から整備された地下鉄が、役割を果たすことの意義は大きいと言えます。

Posted by: 走ルンです | Sunday, November 13, 2005 05:58 PM

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