« November 2005 | Main | January 2006 »

December 2005

Thursday, December 29, 2005

国勢調査速報値が示す日本の未来

先に発表された人口動態統計で出生数が死亡数を下回る人口減少が確認されたのですが、居住外国人を含んだ国勢調査の速報値が出され、改めて人口減少が確認されました。

日本の総人口、初の減少・1億2775万人
これ人口動態統計以上に深刻な現実を表します。つまり出生数や死亡数は基本的に制御不能ですが、外国人の流入などは、経済情勢や制度などで変わり得るということです。

日本は基本的に出入国管理が厳しい国でして、就労ビザの取得は難しいし、留学ビザでも就労制限がかかっていて、国内物価の高い日本での生活を困難なものにしています。加えて移民に対して消極的というよりは、ほとんど病的に排除しているとさえ見えます。はっきり申し上げまして、日本って異常に閉鎖的な国なんだと思い知らされます。ま、だから人口減少を移民で補充という議論が上滑りするんですけど、安い労働力として当てにする本音が見え隠れでは喜んで移住する外国人が現れる道理もありませんが。ただし移民自体は人口減少の歯止めとしては当座しのぎでしかなく、移民が高齢化したときにさらに困難な現実に直面するだけです。

当ブログでは過去にも人口減少問題を繰り返し取り上げておりますが、少子高齢化が問題ではないことを改めて申し上げておきます。少子化と高齢化はそもそも別の現象ですし、人口減少は高齢化の進捗によって多死社会となることの必然的な帰結ですから、目先の出生率が多少改善したぐらいでどうにかなる問題でもないですし、また対策として男女共同参画社会の実現が謳われているんですが、人口減少を止めたいから男女共同参画というのはとってつけたようですし本末転倒です。個人の権利を尊重する社会ならば議論にすらならないはずです。また男女共同参画を推し進めれば、女性の経済力を高めるために高学歴化へと進みますから、晩婚化が進んで少子化傾向を増長することとなります。

というわけで、人口減少に適合した社会システムに切り替える以外に道はないということになります。で、マクロの成長率が低下してGDP(国内総生産)が減少したとしても、それで支える人口が減少すれば、1人当たりGDPの水準を高レベルで安定させることはできますし、その結果として1人当たり所得を増やすことも可能です。そうして多数の高齢者の生活を無理なく支える展望がひらけてくるのではないでしょうか。そしてそれは十分可能です。

労働力人口の減少は、労働力に対する資本の装備率を高めます。つまり工場や機械などの生産設備を少ない人数で使うわけですから、生産性が上がるわけです。しかもこれは自然にそうなるという話です。その結果労働分配率が同じならば労働者1人当たりの所得は増えるはずです。さらに実際は人口減少に伴って余剰または遊休となる設備については、設備更新せずに廃棄すれば、更新費用をファイナンスする予定の減価償却費分のキャッシュフローが宙に浮くわけですから、事業を縮小して労働者に一時金を支給するようなことすら可能です。実は多くの日本企業はこれを嫌っている節があります。で、キャッシュフルになって投資ファンドに買収攻勢をかけられて慌てているというのが、昨今のM&Aブームの謎解きです。結局だれも幸福になれない社会なんですね。

あと国勢調査の都道府県・市区町村別人口を見ると、また違った風景が見えます。人口減少と高齢化は、地方においては既に始まっているリアルな現象です。47都道府県中32道県で減少し、三大都市圏への人口集中が見られ、特に首都圏エリアが顕著ですが、近畿圏では2000年比で増加率1%に満たず、早晩減少へ転ずる気配が感じられます。ま、わかりやすく言えば今は国内で地域間競争の結果三大都市圏へ人口移動して、地方で人口減少と高齢化が同時進行していますが、傾向として三大都市圏へそれが波及するのが、人口減少社会の実像ということになるでしょうか。とすれば高千穂鉄道の廃止に見られるような地方の切り捨ては、まんま日本国全体の将来を暗示すると言えなくもないところが悩ましいところです。

当然国際化の進展は地域間競争も国際化して、日本の年金制度の給付を受けながら優雅な海外リタイアメントを享受する高齢者が増えれば、国富が海外流出することになりますが、外需頼みで輸出に余念がない日本企業のスタンスが変わらない限り、円高メリットを活かせる海外移住のインセンティブは高いといえます。国内で暮らすことに国籍を問わず魅力を感じる人が増えない限り、地方の衰退はそのまま国全体の衰退へとリンクしていると考えられます。ホントそうならないように流れを変えなきゃならないんですけどね。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

Tuesday, December 27, 2005

セブン&アイとミレニアム統合で見えた消費の二極化

暮れも押し迫ったこの時期に、立て続けに大きなニュースが流れますが、羽越線事故に関しましては、政府の対応など一部に気になる要素はあるものの、おおむね冷静な対応が見られます。

というわけでこのニュースを取り上げます。

(12/26)セブン&アイ、そごう・西武百との経営統合発表
ザックリ言って押してもも引いても業績の回復しないイトーヨーカドー、店舗数の多さと出店攻勢による新店効果で売上を作りながら既存店前年割れを続けるセブンイレブン、業界としては好調な食品スーパーで少数チェーンに留まるヨークベニマル他、格安フードチェーンと高級店の狭間で居場所を失いつつあるファミリーレストランのデニーズなどなど、近頃パッとしないセブン&アイですが、自身の業績回復を見ず頭越しに景気回復(?)の兆しが見える中での決断として、西武/そごう両百貨店を擁するミレニアムとの経営統合に駒を進めました。

当ブログでも再三取り上げてきましたが、景気回復といっても米中両国への輸出頼み外需頼みの企業業績回復に過ぎない中で、そのおこぼれに与れる人とそうでない人に二分されていわゆる勝ち組負け組に分かれ、前者でプチ消費ブームが起きているという流れの中で、百貨店が業績を回復させる一方でGMSやコンビニは埒外にあるというどうにもならない現実があります。はやりの言葉で言えば下流社会御用達の店しかないとなれば、景気回復→プチ消費ブームに乗っかることもできる道理はありません。

またこの分野にはライバルのイオンが攻勢をかけていて、多店舗化によるスケールメリットを追っています。特に客単価の高い衣料品分野などでは、高級品も廉価品も専門店に敵わず、さまざまな専門店をテナントに取り込んで弱点をカバーしつつ大規模ショッピングモールを各地に展開し、結果イトーヨーカドーの品揃えが中途半端になっている状況があります。

更に言えばロビンソンの呪い(笑)で懲りているセブン&アイとしては、自前で百貨店を立ち上げるのは無理な相談ということで、ちょうど民事再生で業績を回復しつつありながら、投資ファンドが株式を握り再建の出口を探るミレニアムグループと思惑が一致したというわけですね。いわばトヨタのレクサス計画相当のことを企業買収で乗り切ろうという話です。

実にミもフタもない話なんですが、総中流といわれた日本の消費社会に格差が生じている現状を反映した動きということができます。高級ブランド品は売れるけど、廉価品はますます価格弾力性が高まって値下がりが続き、高級品じゃなければ儲からない世の中になりつつあるということになります。総中流社会といっても、完全な平等分配社会ではないわけで、少数の上流のお金持ちが、先駆的な消費行動を取ることで、それが徐々に下の階層へ波及し経済全体を活性化するというヒエラルキー構造はあったわけで、それがいつかはクラウンのコピーに如実に表れておりました。かくしてほんの少しの幸せを求めて仕事に励み、経済は活性化するわけです。

高級品ブームは企業業績に深刻なバイアスを与えます。高級品ほど儲かる世界では、企業は数を狙わず商品を高く売ろうとします。手っ取り早いのは供給を絞ることですから、商品の市場への供給量を減らす方向へ向かうこととなります。工業製品であれば、常に受注残を抱えている状況こそが企業にとって心地よいということになります。その結果欲しいものが欲しいときに手に入る状況から離れるわけで、社会全体としての経済厚生は低下します。

一方下流向けの廉価品はますます消費者の選別が厳しくなり、安くしないと売れないわけですから、次第に体力勝負の世界に入り、モノは売れているんだけど儲からない。儲けを出すために数を売ろうとすれば更に値下げして儲かりにくくなるというジレンマから抜けられなくなります。デジタル家電景気が値崩れで早くも失速している家電業界などが典型的です。また安く売るために製造拠点を海外へ移転し、国内製造の空洞化を加速させて労働分配率を下げれば、下流の家計はますます消費に消極的になり値下げ圧力を増すことになります。更に安く売っても利益を確保しようとすれば、どこかで無理をしなければならず、強度偽装のような不正行為を助長することで更に消費を冷やします。かくして経済は縮み一部の階層を除いて労働意欲を低める結果、経済は停滞へ向かうわけですね。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

Friday, December 23, 2005

SuicaとPASMO相互利用でどう変わる?

遅ればせながら^_^;ビッグニュースを取り上げます。

ICカード:SuicaとPASMO、07年3月から相互利用OK
以前からパスネットとバス共通カードのIC化共通化と、JRSuikaとの相互利用に関してはアナウンスされていたわけですが、単なる磁気カードからICカードへの変更に留まらない注目すべき変化が読みとれます。

元々交通系の磁気カードとしては、券売機で乗車券と引き替えるタイプのプリペイドカードとしてJRのオレンジカードなどのプリペイドカードとしてスタートするわけですが、交通事業者にとっては先払いによる回転差資金を得られる利点があったものの、利用者にとってはあまりメリットはなく、ゆえに高額カードを中心にプレミアムをつけて割安感を訴求したのですが、単純な磁気カードゆえに偽造がはびこり、特に高額カードの偽造は事業者のリスクも大きくなるために急速に取扱いを縮小、廃止せざるを得ない現実に直面します。

一方で直接自動改札機に投入して乗車券として利用できるストアードフェアカードにすれば、乗客にとってもメリットがあるということで、阪急のラガールスルーを嚆矢としてJR東日本のイオカードなどで実現しますが、同じプリペイドカードでも乗車券タイプとするためには、発駅、経由地、着駅などルートを特定する機能が必要となり、書き込まれる磁気情報もそれだけ複雑化しますし、紙の乗車券のように検札なども困難で偽造防止の必要性からセキュリティレベルを高める必要があることもあって、鉄道事業者に高度な設備投資を強いることになります。

それゆえに複数社局で共通化することで、投資のスケールメリットを追求する必要があるわけです。技術革新を伴う設備投資ゆえに量産効果を働かせる必要があるわけです。それゆえにプレミアムは見送られ、また鉄道営業規則上の乗車券という扱いとなることから、事実上の割引となるプレミアムはつけられなかったという側面もあります。磁気カード乗車券が登場したこと自体が営業規則にとって想定外だったとはいえ、やや硬直的な感は否めません。また期待されたイオカードとパスネットとの共通化も、セキュリティレベルの違いから当面は見送られることとなり、次世代のICカードでの実現に向けて協議を重ねることとされたのですが、十分説明が尽くされたとは言い難いところでした。

一方でバス共通カードの方は元々紙の回数券を置き換える目的の回数券カードだったことから、回数券の割引に相当するプレミアムがつけられたのですが、バスの場合は元々回数券が金額式であったことと、車上で乗務員が運賃収受するシステムなので、磁気券への書き込みが鉄道の乗車券カードほど複雑ではないことと、現金扱いよりも客扱いが容易で営業所へ戻ってからの精算業務が簡単ということもあって、プレミアム付で磁気化され急速に共通化されたものの、今度は鉄道の乗車券カードとの共通化を難しくしてしまいました。

ICカード化することで、磁気カードよりも多くの情報を短時間で読み書きできることから、これらの課題をクリアしやすくなるわけですが、バスカードのプレミアム部分の扱いについては、現段階では明確ではありません。おそらく利用実績に応じたポイントを付与してチャージに回せるようにするなどの対応が取られるものと思います。

また乗車券としての決済機能を援用することで、電子マネーとしての機能を付与できるということもあって、今回のPASMOではSuicaの電子マネー機能も共通化されますが、既にSuicaと共通化されたピタパやICOCAなどが乗車券カードとしての共通化に留まっているよりも一歩踏み込んでます。

そのほか定期券機能、子どもカード、記名式カードなど応用範囲が広く、自動チャージ機能などクレジットカード並の信用取引も可能など、サービスも充実し利用者サイドから見れば多機能で使い勝手は良さそうです。この辺はICカードならではといえます。

ただし乗車券カードとしての本質は変わっておりませんので、幾つか細部の詰めが必要です。例えばノーラッチ接続点が複数あるJRとメトロの間でのルートの特定法などですが、似た状況にあるメトロと東急ではパスネット利用に限って事実上の最短経路適用となっているなど、単純に紙の乗車券の置き換えでは済まない部分がありますので、詳細は実施前に発表があると思いますが、どうなりますか注目されます。

更に進んでひょっとしたら日本では難しいと言われた共通運賃制へと進む可能性も指摘しておきます。ICカードによって改札業務が精算など後方業務を含めて省力化されれば、現行の事業者ごとの独自運賃で複数事業者間で接続駅での運賃打ち切り合算の根拠とされる出改札業務の固定費負担分という理屈が成り立たなくなる可能性が出てきます。また人口減少社会にあって、運賃制度面でのわかりやすさやシームレス化が利用を誘発する効果を期待できるなど、事業者にとっては増収のインセンティブとなる可能性があるという点も指摘しておきます。ただし当面は設備投資資金の回収が優先される可能性はありますが。

更に無人駅へのセンサー設置による事実上のセルフ方式への可能性も拓けます。取りこぼしの有無に関する実証データが蓄積されれば、例えば都内の駅でも時間帯でまたは終日無人化というようなことすら考えられますから、鉄道のユーザーインターフェースが将来激変するかもしれませんね。

| | Comments (2) | TrackBack (8)

Sunday, December 18, 2005

来年春のダイヤ改正で試される東武鉄道

既に多くのブログで取り上げられております東武、メトロ、東急、JR東日本が絡むダイヤ改正の話題ですが、東武鉄道に焦点をあてて論じます。

ダイヤ改正の詳細は東武鉄道のリリースページでご確認いただくとして、長きに亘って踏襲された東武伊勢崎・日光線のダイヤパターンが大幅に変更されるというのは、かなり大きなニュースといえます。そして従来の輸送サービスを大幅に見直しを迫られるほどに、輸送需要の実態に従来のダイヤが合わなくなったということでもあります。実際に輸送量を落としているのは実績に顕れております。

また2002年の半蔵門線直通開始時点でも、20分ヘッドの区間準急を元のダイヤに挿入するという暫定的なもので、曳舟で浅草発の準急と緩急接続して先発し北千住まで通過した後、新越谷以北の各停区間に入ってせんげん台で曳舟で後発の準急に追いつかれるという苦し紛れのダイヤ構成となっており、停車駅案内も含めてわかりにくいものとなっておりました。それが半直区間準急20分ヘッド→半直急行10分ヘッド、浅草発準急10分ヘッド→浅草発区間準急20分ヘッドと振り替えられた形でスッキリしたものになるわけですから、利用者サイドからはわかりやすくなります。

あと重要なのは、伊勢崎線で久喜と太田で運行を分断し、太田-伊勢崎間のワンマン化とも相まって、無理に直通運転を維持して列車編成長や列車本数がその区間の需要に合っていなかった部分を是正し、直通需要よりも区間需要の掘り起こしに特化したダイヤということがいえます。つまりは東上線の小川町での運行分断と同じことを伊勢崎・日光線でやろうということですね。しかしこの結果各区間の昼間時の運転本数は増えてフリークエンシーは向上しておりますので、少数の直通客を配慮して区間利用客に不便を強いる現行ダイヤよりも充実度は高まります。

その一方で伊勢崎・日光線は東上線と比べて、日光鬼怒川の観光輸送と東京対両毛地区の都市間輸送を担う役割が強く、東上線では既に事実上撤退した対秩父の輸送と対照的です。今回のダイヤ改正では栗橋の連絡線完成を受けてJRとの直通運転が打ち出されていますが、長期低落傾向が続く日光鬼怒川の観光輸送へのテコ入れの意図が読みとれます。

実は東武鉄道としては新宿対日光鬼怒川の輸送に関して、東京の関東バスと組んで東北道経由の高速バスを走らせたことがありました。これがスペーシアの運賃料金に匹敵する運賃で、深夜急行バス用の55人乗りトイレなしワンマン車で走らせるというおざなりな代物で、利用は低迷し、2年ほどで休止に追い込まれました。

今回はそのリベンジという側面もあるでしょうが、日光鬼怒川地区向けの観光輸送の長期低落傾向に歯止めをかけると共に、栗橋以北の日光線の線路容量の過剰に対して半蔵門線直通列車の登場で複々線でも目一杯になりつつある以南の線路容量の救済の意味もあると思います。いずれにしても既存の鉄道資産の有効活用という方向性を打ち出したわけで、従来ともすれば組合がうるさいからとか理由を付けて改革に後ろ向きだった東武鉄道としては一歩を踏み出すことになるわけです。今後の推移が注目されます。

| | Comments (1) | TrackBack (6)

Friday, December 16, 2005

高千穂鉄道部分復旧の模索は続く

高千穂鉄道に関する気になる情報がネット上に流布しているようですが、ちょっとした情報攪乱が見られるようですので、引いた視点で論評いたします。

「高千穂鉄道全線復旧断念と、部分運転に関するアンケート」
読売新聞のローカル版で記事として取り上げられたようですが、槇峰-高千穂間の部分復旧に対する県の不支持を補強するようなタイミングで記事にされた点で、悪意あるリークの可能性を指摘しておきます。アンケート結果だけを見れば沿線住民が存続を希望しながら利用しないと表明したように読めるので、利用しないものを残すために財政支出はできないという県の言い分に合致します。

しかし注意が必要なのは、高千穂鉄道沿線は都市部ではなく、平野ですらなく、元々人口の少ない農山村であって、集落から離れた標高の高い山の斜面に茶畑や果樹園や山林などがあるわけですが、これらは地域にとっては生産の場であり、住民にとっては仕事場であるということを押さえておく必要があります。集落にある自宅から距離と標高差のある仕事場へ向かうには、自動車が必需品ですから、日常的に鉄道を利用する生活でないとしても不思議ではありませんし、そのことを責めるいわれはありません。

それでも買い物や通院では鉄道を利用するかもしれないし、子や孫がいれば通学に鉄道が利用できることの安心感は強いでしょう。まして良い学校へ入れたいと思うならば、通学手段の有無は重大です。このあたりは私も含めて都会生活をしていると見えにくいところです。

以前の記事でも述べておりますが、軽便規格の旧日之影線部分については、川沿いの集落を縫うようなルートとなっており、山の中腹を通る整備された国道が集落を通らないのと対照的です。このことは、代替交通としてバスを走らせるにしても、鉄道ルートをトレースすることを困難たらしめているわけで、ただでさえ足の遅いバスの使い勝手を更に悪くする懸念があるに留まらず、鉄道の復旧工事に必要な大型トラックや重機の搬入も困難なため、復旧費用を押し上げるなど、悪条件を重ねることとなります。平地の岐阜や日立にして代替バスへの乗客移行が30%に留まる中で、バス代替は無理と言わざるを得ません。余談ですが、道路特定財源の一般財源化の議論で、生活インフラとしての道路はまだまだ不十分といわれますが、五ヶ瀬川流域地域に見られるように、実際は整備された道路は通過交通を利するだけで、地域に恩恵を与えるものではないという現実は踏まえておきましょう。

かくして地域の鉄道復活への熱意は衰えないようです。

台風被害の高千穂鉄道、部分的運行再開を検討
高千穂鉄道、台風被害で全面復旧を断念・部分運行探る
高千穂鉄道社長「部分再開しても経営成り立たず」
一応時系列に並べてみましたが、部分復旧にしても、受け皿となる新会社設立と現三セク解散まで視野に入れて検討されているなど、本気度の高さに驚かされます。

無理もないところですが、鉄道がなくなることで、地域にとっての明るい未来を描けるならば廃止やむなしで済むんですが、実際は上記の通り鉄道の廃止は居住放棄すら引き起こしかねない重大事です。さらにいえば傾斜地の農地にせよ山林にせよ、人の手が入っているからこそ、適度な保水力を保持し、大雨のときには緑のダムとして機能するわけですが、耕作放棄されれば保水力が落ち、大雨が降れば洪水や土石流を引き起こす可能性が高まります。当然次は下流の延岡市が被害を受ける構図です。これをくい止めるための緑の公共事業としての地域再生という視点も必要なのではないでしょうか。

以下は余談なんですが、昨今の緑茶飲料ブームで、原料茶葉が不足しているそうで、特に普及品の機械摘み二番茶の不足で茶葉価格が高騰しているのだそうですが、高千穂鉄道沿線地域でも、茶葉生産に向いた斜面を利用して茶畑が造成されていて、大手飲料メーカーの伊藤園と契約栽培寸前まで交渉が進んだところで台風被害に遭い、話が流れたそうですが、情報がないので後日談までは把握しておりませんが、仮に茶葉が売れて沿線地域に現金収入がもたらされ、それを原資に新会社設立というような流れになれば、伊藤園のお茶を飲むことで高千穂鉄道を応援できるかもしれません。更に踏み込んで、この際伊藤園にも出資してもらって、地域再生ファンドでも立ち上げて、高千穂鉄道の受け皿となる新会社の資金をファイナンスするなんて夢物語が実現しないかなと思う今日このごろです。

| | Comments (1) | TrackBack (3)

Sunday, December 11, 2005

高千穂鉄道復旧実質断念、地域経済の袋小路

高千穂鉄道の復旧の話題ですが、当ブログでは二度に亘って取り上げました。その続報ですが、残念な結果になりました。

高千穂鉄道、台風被害で全面復旧を断念・部分運行探る
記事によれば、槇峰-高千穂間の観光鉄道としての部分復旧に含みを残しているようですが、陸の孤島となる同区間だけの普及で採算をとることは不可能に近く、事実上の事業廃止が確定したものと受け止められています。

復旧費用に関しては高千穂鉄道の公式ページをご参照いただくとして、橋梁の復旧工事は国の災害復旧予算で対応する前提で、高千穂鉄道としての負担が27億円ということですが、注記にもありますように、今回の水害水位に対応した復旧の場合は、さらに加算されるということで、確かに費用面では絶望的なわけです。ただしこのことは事前にわかっていたことではあります。

問題はそれで済むのかどうかです。少なくとも延岡-日之影温泉間の旧日之影線区間では、国道筋からはずれた川沿いの集落を結んでいる高千穂鉄道が、母都市の延岡と結ぶ生命線であるわけで、採算が合いませんから廃止では事実上沿線集落を見捨てることになってしまいます。実際他のローカル線と比較すると旅客の平均乗車距離が長く、地域社会の生活を支えるインフラとしての意味合いは強く、沿線集落の生活は事実上否定されてしまうという現実に直面するわけです。

もちろん順調に復旧されたとしても3年7ヶ月を要するのであれば、復旧まで不便を強いられることに変わりはなく、住民の流出が起きてしまえば、費用をかけて復旧する意味を問われてしまうわけですから、現実的には廃止やむなしとなるのでしょう。

特に高千穂鉄道が自治体主導型第三セクターで、特に広域行政を司る県の意向に左右される組織である点は、この場合不幸な方向へ舵を切ることになります。県単位で考えると、延岡市はあくまでも宮崎市、都城市に続く県内第三の都市であって、その更に後背地となる高千穂鉄道沿線地域は、県内では完全な周辺地域となって、行政的なフォローが及びにくいところと言えます。輪をかけて延岡市が旭化成の企業城下町で、従来は立地企業の税収でそれなりに金回りの良い地域だったことも、県のフォローを鈍らせているのでしょう。旭化成自身は既に10年間新卒採用もなく、地域経済にとってはむしろ重荷になりつつあるのが実状です。企業依存のモノカルチャーが裏目に出ているわけです。

そんな延岡都市圏の中で、高千穂鉄道沿線地域は、五ヶ瀬川沿岸の伝統的農山村地域ですが、地域の特長を活かした経済活動が見られます。農業、林業、観光開発に留まらず、積極的な企業誘致などで地域の特長を打ち出しております。過疎化の進行の中で、地域興しは待ったなしの状況ですが、けっして諦めていないのは、高千穂鉄道のページのリンク集から辿るとよくわかります。高千穂鉄道の廃止が、このようなやる気のある地域を見捨てることになりはしないか、その点が気がかりです。

企業城下町である延岡は、中央とのつながりを重視する傾向が強く、宮崎空港線建設と日豊線高速化で空港まで1時間としたことで満足しているのでしょうが、延岡からさらに五ヶ瀬川沿いに遡るこの地域は、山を越えて熊本や福岡へ結びつく動きも考えられます。実際日之影町で県都宮崎市よりも熊本市の方が時間距離的に近いという状況ですから、事実上県に見捨てられたならば、熊本や福岡への結びつきを強めるのが現実的な選択となるでしょう。結果的に宮崎県全体の活力は低下しますが、そのような意思決定が行われた以上仕方ありませんね。

| | Comments (0) | TrackBack (4)

Thursday, December 08, 2005

小田急線高架化訴訟で原告適格の範囲拡大

えーと、この話題ですが、別に私自身高架複々線化に反対しているわけではありませんし、反対運動をしている沿線住民とてそうだろうと思います。問題の訴訟は、あくまでも都市計画法に基づく国の事業認可が適法に行われたかどうかを問う行政訴訟であって、従来狭く解釈されていた原告適格の要件が緩和された改正行政事件訴訟法(4月施行)を受けて、最高裁で原告適格の範囲を拡大する判断が下されたもので、訴えそのものが結審したわけではありませんので、誤解のないようにお願いいたします。今回の訴訟でいえば、従来は事業用地内の地権者にしか認められていなかった原告適格が、都条例に基づく環境アセスメント地域内の住民37名に原告適格が認められたということであって、地裁、高裁で共に「原告適格がない」として門前払いされていた扱いが変わり、引き続き最高裁で審理を続けるということになります。ですからまだ結論は出ていないわけですね。

ということで、新聞報道をチェックしましょう。まずは日経です。

小田急線高架訴訟、沿線住民にも訴えの資格・最高裁初判断
小田急高架化訴訟、最高裁が地権者以外も原告適格認める
続いて朝日です。
原告適格、沿線住民に拡大 小田急高架化訴訟で最高裁
やや詳しい記述が見られます。続いて読売です。
小田急訴訟、アセス地域住民に原告適格…最高裁認める
ほぼ同程度の記述です。

都市計画法という法律は、私権の制限を伴うわけで、自然の地形や様態の変更、用途地域の変更、官民を問わず開発行為などで住民の利害が交錯するわけですから、当然といえば当然なんですが、どのように調整されるのが合理的なのかについては、必ずしも自明ではありません。従来ともすれば公共性という曖昧な表現で押し切られるケースが多かったわけですが、公共性自体、立場によって見方が別れるものであり、唯一の正解があるわけではありません。結局事前に当事者間で話し合って妥協点を探り、法令手続きに従って合意形成するしかないわけですが、往々にして行政側が独断専行し、反対されても力で押し切るケースが多かったわけです。そして訴訟となれば原告適格を問うことで、司法による門前払いを狙うという構図だったわけです。

今回のケースで言えば、小田急線の複々線化事業そのものは、混雑緩和のための必要性があるわけですが、高架化に関しては、厳密に言えば連続立体化事業であって、道路予算が投入される別の事業なんですね。ただ線増されて列車本数が増えると、既存の踏切がすべからく開かずの踏切になってしまいますので、同時に連続立体化する必要から都市計画決定されるわけですが、道路との立体化に関しては、高架方式も地下方式も考えられますし、実現性はともかくとして鉄道を地上に残して道路をアンダーパスやオーバーパスにする方法も考えられます。

実際には地形や地質や地下水脈の様態などを加味し、また鉄道事業法で定められた勾配制限の範囲内で実現可能なプランを作る必要があるわけですから、高架か地下かといった二者択一で選択できるわけではありません。ただ実際の都市計画は30年も前に基本計画で高架化で計画され、都条例に基づく環境アセスメントなどの手続きを経て工事実施計画が策定されるという手順となります。今回はこの課程で住民側から地下方式の希望が出されたのに対して、高架方式との比較検討がなされずに、基本計画段階から高架方式で進んできた流れのままに都市計画決定され事業認可された行政手続きを違法として訴えを起こしたものです。

まぁ正直申し上げまして、私も地下方式は難しいとは思うんですが、問題は高架方式との比較検討がされないままに、基本計画で高架方式としたことを踏襲して手続きを進めてしまったことは、やはり問題だろうと思います。比較検討の結果、事業費が膨張して例えば事後に運賃が高くなるなどの点を住民に説明できていれば、違っていたんじゃないかと思います。ま、実際は万人を納得させることは無理でしょうけど、合意形成にどれだけ手間をかけたかは重要です。

というわけで、今回はあくまでも原告適格の条件緩和だけの判断ですので、本来の訴訟の審理は続くわけですが、一審の東京地裁では側道用地の地権者のみを原告適格として都市計画事業認可の取り消し、事業中止を命じており、二審では原告団全員の原告適格を認めず門前払いした関係で、訴訟内容に関しては判断されていないので、最高裁で原告適格が認められた結果、最高裁で一審の判断の是非を判断するという流れになりますが、これに関してはどちらに転ぶかはわかりません。ただし一審の判断が踏襲されたとしても、既に工事が終わっている区間ですから、一審判決でも原状回復までは求めていないので、あとは原告住民に対する補償をどうするかといった話になるかと思います。別に負けても複々線じゃなくなるわけじゃないんで、むしろ正しい行政手続きを経ないと却って高くつくという経験を行政や事業者にさせる意味合いの方が重要でしょう。いずれにしても最高裁の判断が注目されます。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

Wednesday, December 07, 2005

耐震強度偽造、大臣認定プログラムで改ざん

今日もいろいろなニュースがありまして、紀勢線のオーバーラン脱線事故だの行政訴訟の門前払いを減らす可能性のある小田急高架複々線事業訴訟での原告適格を巡る最高裁の新判例だのと、取り上げたいニュースも多々ありますが、いずれも続報を待って別の機会に取り上げたいと思います。

というわけで、さっぱり見通しが立たない強度偽造問題ですが、こんな記事を見ますと、眩暈がしてきます。

(12/7)構造計算、認定ソフトを総点検へ・耐震偽装受け国交省
当ブログでは初っぱなに耐震強度不足問題が示すもので触れておりますが、そもそも強度計算そのものは、大臣認定プログラムに数値を打ち込んで、エラーメッセージが出なければOKということを前提に、検査態勢が組まれていたわけですが、数値が改ざんされた嘘の強度計算書を提出し、検査を通ってしまったことに問題があるわけで、制度上の瑕疵であるという立場で一貫しておりましたが、今になってやっと国交省も動き始めました。

しかも手口が、大臣認定プログラムで作成した構造計算書データを市販のエディタにコピペしてエラーメッセージを削除したり数値を改ざんしたりして、認定ソフトのフォームに戻して印字するというものだそうで、頭痛いのは政府関係者が一様に驚いている点です。コンピュータに詳しい人なら、直ぐに思いつく手口ですが、有効なプロテクトがされていない認定ソフトがあったことの方が驚きです。また検査で見破られなかったのも無理もないところで、たとえて言えばエクセルでデータを打ち込んで関数で返してきた値をいちいち検算しないのと一緒ですね。コンピュータがない頃は電卓叩いて縦計横計が「合わねぇ!」と言っていたもんです^_^;。

これでますます国の責任ってのがはっきりしてきましたが、こうなると当然姉歯だけの問題か?という疑問が沸いてきます。やホント、武部さんじゃないけれど、本当に全棟検査が必要かもしれません。あと81年の建築基準法改正前の物件や、改正後でも手抜き工事で図面通りに作られていないために完成後検査を通らない物件なんざ多数ありますから、それらを全て対策していかなければ、今度は国民の間で不公平感を醸成することになってしまいます。つくづくアホな政府は高くつきます。

ま、多少は教訓を引き出すとすれば、安全を守るはずの国の制度が不完全な可能性があるという現実を指摘しておきましょう。JR福知山線尼崎事故でも、法令ではATSの設置は義務づけられていたけど設置基準はなかったし、ダイヤ改正の国の認可も、事前に危険を見抜くことはできなかったなどなど、法令を守ってさえいれば自身が守られるという法治国家の原則が揺さぶられる事態です。技術革新の進捗で変化の激しい中で、法律は後追いを強いられる以上、企業の対応としては単に法令の条文を遵守するだけでは不十分で、更に踏み込んで情報開示して安全をアピールするしかないのでしょう。またその部分で受け入れられる企業とそうでない企業に振り分けられてしまう現実もあるという風に、厳しく自らを律するものが勝者の権利を得るということも言えそうです。

その意味では一番しょーもないのは解釈改憲や行政訴訟の門前払いやわかりにくい行政指導などなどで定評ある^_^;日本国政府鴨新米-_-;。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

Saturday, December 03, 2005

耐震強度偽装でホテルコンサル登場

何か、訳わかんない展開になりつつありますが、とりあえずはこちらから。

(12/2)都内の経営コンサル、建築主に平成設計推薦
業界では有名人らしいのですが、京王プレッソインをはじめ宿泊特化型低価格ビジネスホテルを投資家に推奨していたといいうことで、木村建設子会社の平成設計を推奨し、平成設計は姉歯建築設計事務所に構造計算を下請けしていたという流れだそうですが、そのコンサルがまた釈明会見を開いてるんですが、何ともはやです。
姉歯関連のホテル16件で指導=建築士とは「面識ない」-偽造関与否定・総研所長
総研の会見で否定したのは以下のニュースです。
仲介コンサルにも通報=姉歯氏、指摘に「びくびく」-耐震偽装で設計事務所社長
というわけで、強度偽装は姉歯建築士の独断であって我々も被害者というお馴染みのロジックです-_-;。

ま、いずれ事実関係も明らかになるでしょうけど、何といいますか、これらのホテルがいずれも低価格を売りに最近作られたものばかりで、当然の如くローコスト建築で作られているわけです。しかも京王や名鉄など、どちらかといえば私鉄業界の勝ち組企業がカモにされている実態が明らかになりました。とっても不吉な出来事です。

といいますのも、京王プレッソインが典型的ですが、京王電鉄自体は本業が好調で、不動産関連の減損処理もいち早く終わらせて、手元資金に余裕がある状態だったわけで、当然格付けも上がりますが、そうなると株価が安値で放置されれば買収の対象となるリスクが出てきます。それ故に個人株主への積極的な株式の売り込みを行い、株価を高める努力をしていたわけですが、株主にしてみれば、余分な現金を抱え込むならば株主へ還元せよという話になります。とはいえ毎日の運行を維持する上で何が起きるかわからない鉄道事業者にとっては、手元現金を簡単に放出するわけにもいかず、現金を遊ばせるよりも手頃な投資案件があれば、そちらに資金を回して、収益機会を拡大する必要があるわけです。株主に支持される上場企業ゆえの悩みといえます。

そういった中で、例えば他社株や社債への投資でも良いんですが、自身の本業に関係のない他社株の保有は、いわゆる持ち合いなどの安定株主対策にはなりますが、投資として魅力のある会社が乏しかったのは、先に苦境を脱出した優良企業ゆえの悩みといえます。この辺が投資家としての上場企業の難しさなんですが、少なくとも株主が納得できる投資案件でなければ、いつ株主代表訴訟に遭うかもわかりません。上場はしてませんが、JR三島会社やローカル三セクなどで経営安定基金の運用先として社債や外債を積極的に購入した結果、例えばマイカル債やアルゼンチン債などでデフォルト(債務不履行)の憂き目にあった例は枚挙に暇がありません。超優良企業つくばエクスプレスもマイカル債で損失を被っております。

というわけで、ローコスト建築の格安ビジネスホテルというのは、純投資としては魅力があるわけで、まして実績を積み上げたコンサルの推奨があれば、株主も説得しやすいということで事業目論見が出来上がることを止めるのは難しいところです。つまるところ優良上場企業がカモにされたという話になるわけです。

こんなことが起きるのは、つまるところ異常な低金利の成せる技です。行き場のないマネーが徘徊し、少々怪しげな投資案件であっても、もっともらしい演出がされていれば、引っかかってしまう現実があるわけですね。この点は個人も企業も大差ないのが日本の現実として認識しておいた方がよさそうです。巷ではボーナスシーズンということで、企業業績の回復もあってボーナスが増額される会社が増えているそうで、それを先取りするように日経平均15,000円台を回復、また外貨預金や外貨建てMMFなどの人気もあって円安が進行、それがまた輸出企業の業績を押し上げるという好循環だそうですが、バブル期の悪夢をゆめゆめお忘れなく。間違ってもボーナスを注ぎ込まない方が良さそうです。株を買うなら来年まで待ちましょう。

| | Comments (2) | TrackBack (1)

« November 2005 | Main | January 2006 »