高千穂鉄道復旧実質断念、地域経済の袋小路
高千穂鉄道の復旧の話題ですが、当ブログでは二度に亘って取り上げました。その続報ですが、残念な結果になりました。
高千穂鉄道、台風被害で全面復旧を断念・部分運行探る記事によれば、槇峰-高千穂間の観光鉄道としての部分復旧に含みを残しているようですが、陸の孤島となる同区間だけの普及で採算をとることは不可能に近く、事実上の事業廃止が確定したものと受け止められています。
復旧費用に関しては高千穂鉄道の公式ページをご参照いただくとして、橋梁の復旧工事は国の災害復旧予算で対応する前提で、高千穂鉄道としての負担が27億円ということですが、注記にもありますように、今回の水害水位に対応した復旧の場合は、さらに加算されるということで、確かに費用面では絶望的なわけです。ただしこのことは事前にわかっていたことではあります。
問題はそれで済むのかどうかです。少なくとも延岡-日之影温泉間の旧日之影線区間では、国道筋からはずれた川沿いの集落を結んでいる高千穂鉄道が、母都市の延岡と結ぶ生命線であるわけで、採算が合いませんから廃止では事実上沿線集落を見捨てることになってしまいます。実際他のローカル線と比較すると旅客の平均乗車距離が長く、地域社会の生活を支えるインフラとしての意味合いは強く、沿線集落の生活は事実上否定されてしまうという現実に直面するわけです。
もちろん順調に復旧されたとしても3年7ヶ月を要するのであれば、復旧まで不便を強いられることに変わりはなく、住民の流出が起きてしまえば、費用をかけて復旧する意味を問われてしまうわけですから、現実的には廃止やむなしとなるのでしょう。
特に高千穂鉄道が自治体主導型第三セクターで、特に広域行政を司る県の意向に左右される組織である点は、この場合不幸な方向へ舵を切ることになります。県単位で考えると、延岡市はあくまでも宮崎市、都城市に続く県内第三の都市であって、その更に後背地となる高千穂鉄道沿線地域は、県内では完全な周辺地域となって、行政的なフォローが及びにくいところと言えます。輪をかけて延岡市が旭化成の企業城下町で、従来は立地企業の税収でそれなりに金回りの良い地域だったことも、県のフォローを鈍らせているのでしょう。旭化成自身は既に10年間新卒採用もなく、地域経済にとってはむしろ重荷になりつつあるのが実状です。企業依存のモノカルチャーが裏目に出ているわけです。
そんな延岡都市圏の中で、高千穂鉄道沿線地域は、五ヶ瀬川沿岸の伝統的農山村地域ですが、地域の特長を活かした経済活動が見られます。農業、林業、観光開発に留まらず、積極的な企業誘致などで地域の特長を打ち出しております。過疎化の進行の中で、地域興しは待ったなしの状況ですが、けっして諦めていないのは、高千穂鉄道のページのリンク集から辿るとよくわかります。高千穂鉄道の廃止が、このようなやる気のある地域を見捨てることになりはしないか、その点が気がかりです。
企業城下町である延岡は、中央とのつながりを重視する傾向が強く、宮崎空港線建設と日豊線高速化で空港まで1時間としたことで満足しているのでしょうが、延岡からさらに五ヶ瀬川沿いに遡るこの地域は、山を越えて熊本や福岡へ結びつく動きも考えられます。実際日之影町で県都宮崎市よりも熊本市の方が時間距離的に近いという状況ですから、事実上県に見捨てられたならば、熊本や福岡への結びつきを強めるのが現実的な選択となるでしょう。結果的に宮崎県全体の活力は低下しますが、そのような意思決定が行われた以上仕方ありませんね。
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