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Thursday, December 29, 2005

国勢調査速報値が示す日本の未来

先に発表された人口動態統計で出生数が死亡数を下回る人口減少が確認されたのですが、居住外国人を含んだ国勢調査の速報値が出され、改めて人口減少が確認されました。

日本の総人口、初の減少・1億2775万人
これ人口動態統計以上に深刻な現実を表します。つまり出生数や死亡数は基本的に制御不能ですが、外国人の流入などは、経済情勢や制度などで変わり得るということです。

日本は基本的に出入国管理が厳しい国でして、就労ビザの取得は難しいし、留学ビザでも就労制限がかかっていて、国内物価の高い日本での生活を困難なものにしています。加えて移民に対して消極的というよりは、ほとんど病的に排除しているとさえ見えます。はっきり申し上げまして、日本って異常に閉鎖的な国なんだと思い知らされます。ま、だから人口減少を移民で補充という議論が上滑りするんですけど、安い労働力として当てにする本音が見え隠れでは喜んで移住する外国人が現れる道理もありませんが。ただし移民自体は人口減少の歯止めとしては当座しのぎでしかなく、移民が高齢化したときにさらに困難な現実に直面するだけです。

当ブログでは過去にも人口減少問題を繰り返し取り上げておりますが、少子高齢化が問題ではないことを改めて申し上げておきます。少子化と高齢化はそもそも別の現象ですし、人口減少は高齢化の進捗によって多死社会となることの必然的な帰結ですから、目先の出生率が多少改善したぐらいでどうにかなる問題でもないですし、また対策として男女共同参画社会の実現が謳われているんですが、人口減少を止めたいから男女共同参画というのはとってつけたようですし本末転倒です。個人の権利を尊重する社会ならば議論にすらならないはずです。また男女共同参画を推し進めれば、女性の経済力を高めるために高学歴化へと進みますから、晩婚化が進んで少子化傾向を増長することとなります。

というわけで、人口減少に適合した社会システムに切り替える以外に道はないということになります。で、マクロの成長率が低下してGDP(国内総生産)が減少したとしても、それで支える人口が減少すれば、1人当たりGDPの水準を高レベルで安定させることはできますし、その結果として1人当たり所得を増やすことも可能です。そうして多数の高齢者の生活を無理なく支える展望がひらけてくるのではないでしょうか。そしてそれは十分可能です。

労働力人口の減少は、労働力に対する資本の装備率を高めます。つまり工場や機械などの生産設備を少ない人数で使うわけですから、生産性が上がるわけです。しかもこれは自然にそうなるという話です。その結果労働分配率が同じならば労働者1人当たりの所得は増えるはずです。さらに実際は人口減少に伴って余剰または遊休となる設備については、設備更新せずに廃棄すれば、更新費用をファイナンスする予定の減価償却費分のキャッシュフローが宙に浮くわけですから、事業を縮小して労働者に一時金を支給するようなことすら可能です。実は多くの日本企業はこれを嫌っている節があります。で、キャッシュフルになって投資ファンドに買収攻勢をかけられて慌てているというのが、昨今のM&Aブームの謎解きです。結局だれも幸福になれない社会なんですね。

あと国勢調査の都道府県・市区町村別人口を見ると、また違った風景が見えます。人口減少と高齢化は、地方においては既に始まっているリアルな現象です。47都道府県中32道県で減少し、三大都市圏への人口集中が見られ、特に首都圏エリアが顕著ですが、近畿圏では2000年比で増加率1%に満たず、早晩減少へ転ずる気配が感じられます。ま、わかりやすく言えば今は国内で地域間競争の結果三大都市圏へ人口移動して、地方で人口減少と高齢化が同時進行していますが、傾向として三大都市圏へそれが波及するのが、人口減少社会の実像ということになるでしょうか。とすれば高千穂鉄道の廃止に見られるような地方の切り捨ては、まんま日本国全体の将来を暗示すると言えなくもないところが悩ましいところです。

当然国際化の進展は地域間競争も国際化して、日本の年金制度の給付を受けながら優雅な海外リタイアメントを享受する高齢者が増えれば、国富が海外流出することになりますが、外需頼みで輸出に余念がない日本企業のスタンスが変わらない限り、円高メリットを活かせる海外移住のインセンティブは高いといえます。国内で暮らすことに国籍を問わず魅力を感じる人が増えない限り、地方の衰退はそのまま国全体の衰退へとリンクしていると考えられます。ホントそうならないように流れを変えなきゃならないんですけどね。

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