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Tuesday, December 27, 2005

セブン&アイとミレニアム統合で見えた消費の二極化

暮れも押し迫ったこの時期に、立て続けに大きなニュースが流れますが、羽越線事故に関しましては、政府の対応など一部に気になる要素はあるものの、おおむね冷静な対応が見られます。

というわけでこのニュースを取り上げます。

(12/26)セブン&アイ、そごう・西武百との経営統合発表
ザックリ言って押してもも引いても業績の回復しないイトーヨーカドー、店舗数の多さと出店攻勢による新店効果で売上を作りながら既存店前年割れを続けるセブンイレブン、業界としては好調な食品スーパーで少数チェーンに留まるヨークベニマル他、格安フードチェーンと高級店の狭間で居場所を失いつつあるファミリーレストランのデニーズなどなど、近頃パッとしないセブン&アイですが、自身の業績回復を見ず頭越しに景気回復(?)の兆しが見える中での決断として、西武/そごう両百貨店を擁するミレニアムとの経営統合に駒を進めました。

当ブログでも再三取り上げてきましたが、景気回復といっても米中両国への輸出頼み外需頼みの企業業績回復に過ぎない中で、そのおこぼれに与れる人とそうでない人に二分されていわゆる勝ち組負け組に分かれ、前者でプチ消費ブームが起きているという流れの中で、百貨店が業績を回復させる一方でGMSやコンビニは埒外にあるというどうにもならない現実があります。はやりの言葉で言えば下流社会御用達の店しかないとなれば、景気回復→プチ消費ブームに乗っかることもできる道理はありません。

またこの分野にはライバルのイオンが攻勢をかけていて、多店舗化によるスケールメリットを追っています。特に客単価の高い衣料品分野などでは、高級品も廉価品も専門店に敵わず、さまざまな専門店をテナントに取り込んで弱点をカバーしつつ大規模ショッピングモールを各地に展開し、結果イトーヨーカドーの品揃えが中途半端になっている状況があります。

更に言えばロビンソンの呪い(笑)で懲りているセブン&アイとしては、自前で百貨店を立ち上げるのは無理な相談ということで、ちょうど民事再生で業績を回復しつつありながら、投資ファンドが株式を握り再建の出口を探るミレニアムグループと思惑が一致したというわけですね。いわばトヨタのレクサス計画相当のことを企業買収で乗り切ろうという話です。

実にミもフタもない話なんですが、総中流といわれた日本の消費社会に格差が生じている現状を反映した動きということができます。高級ブランド品は売れるけど、廉価品はますます価格弾力性が高まって値下がりが続き、高級品じゃなければ儲からない世の中になりつつあるということになります。総中流社会といっても、完全な平等分配社会ではないわけで、少数の上流のお金持ちが、先駆的な消費行動を取ることで、それが徐々に下の階層へ波及し経済全体を活性化するというヒエラルキー構造はあったわけで、それがいつかはクラウンのコピーに如実に表れておりました。かくしてほんの少しの幸せを求めて仕事に励み、経済は活性化するわけです。

高級品ブームは企業業績に深刻なバイアスを与えます。高級品ほど儲かる世界では、企業は数を狙わず商品を高く売ろうとします。手っ取り早いのは供給を絞ることですから、商品の市場への供給量を減らす方向へ向かうこととなります。工業製品であれば、常に受注残を抱えている状況こそが企業にとって心地よいということになります。その結果欲しいものが欲しいときに手に入る状況から離れるわけで、社会全体としての経済厚生は低下します。

一方下流向けの廉価品はますます消費者の選別が厳しくなり、安くしないと売れないわけですから、次第に体力勝負の世界に入り、モノは売れているんだけど儲からない。儲けを出すために数を売ろうとすれば更に値下げして儲かりにくくなるというジレンマから抜けられなくなります。デジタル家電景気が値崩れで早くも失速している家電業界などが典型的です。また安く売るために製造拠点を海外へ移転し、国内製造の空洞化を加速させて労働分配率を下げれば、下流の家計はますます消費に消極的になり値下げ圧力を増すことになります。更に安く売っても利益を確保しようとすれば、どこかで無理をしなければならず、強度偽装のような不正行為を助長することで更に消費を冷やします。かくして経済は縮み一部の階層を除いて労働意欲を低める結果、経済は停滞へ向かうわけですね。

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