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Friday, December 16, 2005

高千穂鉄道部分復旧の模索は続く

高千穂鉄道に関する気になる情報がネット上に流布しているようですが、ちょっとした情報攪乱が見られるようですので、引いた視点で論評いたします。

「高千穂鉄道全線復旧断念と、部分運転に関するアンケート」
読売新聞のローカル版で記事として取り上げられたようですが、槇峰-高千穂間の部分復旧に対する県の不支持を補強するようなタイミングで記事にされた点で、悪意あるリークの可能性を指摘しておきます。アンケート結果だけを見れば沿線住民が存続を希望しながら利用しないと表明したように読めるので、利用しないものを残すために財政支出はできないという県の言い分に合致します。

しかし注意が必要なのは、高千穂鉄道沿線は都市部ではなく、平野ですらなく、元々人口の少ない農山村であって、集落から離れた標高の高い山の斜面に茶畑や果樹園や山林などがあるわけですが、これらは地域にとっては生産の場であり、住民にとっては仕事場であるということを押さえておく必要があります。集落にある自宅から距離と標高差のある仕事場へ向かうには、自動車が必需品ですから、日常的に鉄道を利用する生活でないとしても不思議ではありませんし、そのことを責めるいわれはありません。

それでも買い物や通院では鉄道を利用するかもしれないし、子や孫がいれば通学に鉄道が利用できることの安心感は強いでしょう。まして良い学校へ入れたいと思うならば、通学手段の有無は重大です。このあたりは私も含めて都会生活をしていると見えにくいところです。

以前の記事でも述べておりますが、軽便規格の旧日之影線部分については、川沿いの集落を縫うようなルートとなっており、山の中腹を通る整備された国道が集落を通らないのと対照的です。このことは、代替交通としてバスを走らせるにしても、鉄道ルートをトレースすることを困難たらしめているわけで、ただでさえ足の遅いバスの使い勝手を更に悪くする懸念があるに留まらず、鉄道の復旧工事に必要な大型トラックや重機の搬入も困難なため、復旧費用を押し上げるなど、悪条件を重ねることとなります。平地の岐阜や日立にして代替バスへの乗客移行が30%に留まる中で、バス代替は無理と言わざるを得ません。余談ですが、道路特定財源の一般財源化の議論で、生活インフラとしての道路はまだまだ不十分といわれますが、五ヶ瀬川流域地域に見られるように、実際は整備された道路は通過交通を利するだけで、地域に恩恵を与えるものではないという現実は踏まえておきましょう。

かくして地域の鉄道復活への熱意は衰えないようです。

台風被害の高千穂鉄道、部分的運行再開を検討
高千穂鉄道、台風被害で全面復旧を断念・部分運行探る
高千穂鉄道社長「部分再開しても経営成り立たず」
一応時系列に並べてみましたが、部分復旧にしても、受け皿となる新会社設立と現三セク解散まで視野に入れて検討されているなど、本気度の高さに驚かされます。

無理もないところですが、鉄道がなくなることで、地域にとっての明るい未来を描けるならば廃止やむなしで済むんですが、実際は上記の通り鉄道の廃止は居住放棄すら引き起こしかねない重大事です。さらにいえば傾斜地の農地にせよ山林にせよ、人の手が入っているからこそ、適度な保水力を保持し、大雨のときには緑のダムとして機能するわけですが、耕作放棄されれば保水力が落ち、大雨が降れば洪水や土石流を引き起こす可能性が高まります。当然次は下流の延岡市が被害を受ける構図です。これをくい止めるための緑の公共事業としての地域再生という視点も必要なのではないでしょうか。

以下は余談なんですが、昨今の緑茶飲料ブームで、原料茶葉が不足しているそうで、特に普及品の機械摘み二番茶の不足で茶葉価格が高騰しているのだそうですが、高千穂鉄道沿線地域でも、茶葉生産に向いた斜面を利用して茶畑が造成されていて、大手飲料メーカーの伊藤園と契約栽培寸前まで交渉が進んだところで台風被害に遭い、話が流れたそうですが、情報がないので後日談までは把握しておりませんが、仮に茶葉が売れて沿線地域に現金収入がもたらされ、それを原資に新会社設立というような流れになれば、伊藤園のお茶を飲むことで高千穂鉄道を応援できるかもしれません。更に踏み込んで、この際伊藤園にも出資してもらって、地域再生ファンドでも立ち上げて、高千穂鉄道の受け皿となる新会社の資金をファイナンスするなんて夢物語が実現しないかなと思う今日このごろです。

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Comments

TBで訪問された方向けに補足の自己レスです。

私は高千穂鉄道を残せといっているわけではありません。ただ地元で残そうとするねばり強い動きがあることを通じて、鉄道のような交通インフラが、採算が合わないから廃止とか、財政支援ができないから廃止というように、簡単に結論づけて良いのかどうかを考えていただきたいという意味で記事を書いております。「赤字だから廃止」「財政難だから支援しない」で済めば、何にも頭使わなくて良いんですから、その地点に安住している限り、議論でも何でもないわけです。

問題は優れて地域の問題であり、地域として自己決定されるべき問題なんですが、現実的に地域の自己決定を阻む要因が多数あり、結果的に地域を見捨てるようなことが起きてしまうのですが、本当にそれで良いのかどうかですね。

このままこの地域が衰退すれば、今度は延岡が水害でダメージを受け、カトリーナで被災したニューオリンズ状態になるという未来が待ち受けているということは覚悟しておきましょう。さらに日向灘に土砂が流入し、黒潮で流されれば、ブランド魚の関アジ関サバの漁場が荒れて、価格高騰するか、他地域産の偽ブランド魚が横行するかということも起こります。耐震偽造に揺れる日本国としては、後者の可能性が大きいのが悩みですが-_-;。

Posted by: 走ルンです | Sunday, December 18, 2005 at 10:19 AM

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