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Thursday, December 08, 2005

小田急線高架化訴訟で原告適格の範囲拡大

えーと、この話題ですが、別に私自身高架複々線化に反対しているわけではありませんし、反対運動をしている沿線住民とてそうだろうと思います。問題の訴訟は、あくまでも都市計画法に基づく国の事業認可が適法に行われたかどうかを問う行政訴訟であって、従来狭く解釈されていた原告適格の要件が緩和された改正行政事件訴訟法(4月施行)を受けて、最高裁で原告適格の範囲を拡大する判断が下されたもので、訴えそのものが結審したわけではありませんので、誤解のないようにお願いいたします。今回の訴訟でいえば、従来は事業用地内の地権者にしか認められていなかった原告適格が、都条例に基づく環境アセスメント地域内の住民37名に原告適格が認められたということであって、地裁、高裁で共に「原告適格がない」として門前払いされていた扱いが変わり、引き続き最高裁で審理を続けるということになります。ですからまだ結論は出ていないわけですね。

ということで、新聞報道をチェックしましょう。まずは日経です。

小田急線高架訴訟、沿線住民にも訴えの資格・最高裁初判断
小田急高架化訴訟、最高裁が地権者以外も原告適格認める
続いて朝日です。
原告適格、沿線住民に拡大 小田急高架化訴訟で最高裁
やや詳しい記述が見られます。続いて読売です。
小田急訴訟、アセス地域住民に原告適格…最高裁認める
ほぼ同程度の記述です。

都市計画法という法律は、私権の制限を伴うわけで、自然の地形や様態の変更、用途地域の変更、官民を問わず開発行為などで住民の利害が交錯するわけですから、当然といえば当然なんですが、どのように調整されるのが合理的なのかについては、必ずしも自明ではありません。従来ともすれば公共性という曖昧な表現で押し切られるケースが多かったわけですが、公共性自体、立場によって見方が別れるものであり、唯一の正解があるわけではありません。結局事前に当事者間で話し合って妥協点を探り、法令手続きに従って合意形成するしかないわけですが、往々にして行政側が独断専行し、反対されても力で押し切るケースが多かったわけです。そして訴訟となれば原告適格を問うことで、司法による門前払いを狙うという構図だったわけです。

今回のケースで言えば、小田急線の複々線化事業そのものは、混雑緩和のための必要性があるわけですが、高架化に関しては、厳密に言えば連続立体化事業であって、道路予算が投入される別の事業なんですね。ただ線増されて列車本数が増えると、既存の踏切がすべからく開かずの踏切になってしまいますので、同時に連続立体化する必要から都市計画決定されるわけですが、道路との立体化に関しては、高架方式も地下方式も考えられますし、実現性はともかくとして鉄道を地上に残して道路をアンダーパスやオーバーパスにする方法も考えられます。

実際には地形や地質や地下水脈の様態などを加味し、また鉄道事業法で定められた勾配制限の範囲内で実現可能なプランを作る必要があるわけですから、高架か地下かといった二者択一で選択できるわけではありません。ただ実際の都市計画は30年も前に基本計画で高架化で計画され、都条例に基づく環境アセスメントなどの手続きを経て工事実施計画が策定されるという手順となります。今回はこの課程で住民側から地下方式の希望が出されたのに対して、高架方式との比較検討がなされずに、基本計画段階から高架方式で進んできた流れのままに都市計画決定され事業認可された行政手続きを違法として訴えを起こしたものです。

まぁ正直申し上げまして、私も地下方式は難しいとは思うんですが、問題は高架方式との比較検討がされないままに、基本計画で高架方式としたことを踏襲して手続きを進めてしまったことは、やはり問題だろうと思います。比較検討の結果、事業費が膨張して例えば事後に運賃が高くなるなどの点を住民に説明できていれば、違っていたんじゃないかと思います。ま、実際は万人を納得させることは無理でしょうけど、合意形成にどれだけ手間をかけたかは重要です。

というわけで、今回はあくまでも原告適格の条件緩和だけの判断ですので、本来の訴訟の審理は続くわけですが、一審の東京地裁では側道用地の地権者のみを原告適格として都市計画事業認可の取り消し、事業中止を命じており、二審では原告団全員の原告適格を認めず門前払いした関係で、訴訟内容に関しては判断されていないので、最高裁で原告適格が認められた結果、最高裁で一審の判断の是非を判断するという流れになりますが、これに関してはどちらに転ぶかはわかりません。ただし一審の判断が踏襲されたとしても、既に工事が終わっている区間ですから、一審判決でも原状回復までは求めていないので、あとは原告住民に対する補償をどうするかといった話になるかと思います。別に負けても複々線じゃなくなるわけじゃないんで、むしろ正しい行政手続きを経ないと却って高くつくという経験を行政や事業者にさせる意味合いの方が重要でしょう。いずれにしても最高裁の判断が注目されます。

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