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January 2006

Monday, January 23, 2006

ライブドア問題、閉鎖的市場のトリックスター

世間ではライブドア問題で揺れておりますが、間違いなく一番被害を被ったのは一般投資家です。1/16の東京地検特捜部による突然の強制捜査には驚かされましたが、そもそも何が問題なのか、また金融庁傘下の証券取引等監視委員会(以下“監視委”とする)による告発ではなく、何故に東京地検特捜部が直接動いたのか、また罪状としていわれた偽計取引による証券取引法違反では、罰金500万円程度の微罪で、とてもじゃないけど東京地検特捜部が動くような案件とも思えませんでした。

またニッポン放送買収騒動のときの時間外取引問題や株式100分割などのきわどい手法も含めての訴追であるとしても、それぞれ単独では訴追が難しいものをいくら積み上げたところで、公判を維持できるほどのものが出てくるとも思えませんでした。

そんな中で投資組合を利用した企業買収や資本取引である株式売却益を売上計上して粉飾決算をしたりという事実が出てきて、どうやら堀江社長を含む幹部の身柄拘束は避けられないようですね(記事執筆中に逮捕の報道が流れました)。

以前こんな記事を書いておりますが、基本的には西武コクド問題をはじめとする経営陣による投資家を欺いた事件の流れを踏襲しており、IT企業だからといって特別なことはなかったわけです。ある意味企業経営者が都合良く利用してきた法律の抜け穴を、新参者のライブドアがかなりえげつなく利用した結果、制度の見直しが後追いすることとなって、規制緩和で自由度が高まったといわれる日本の資本市場が弱点をさらしたわけです。言ってみればライブドアのようなトリックスターを生み出した市場の欠陥です。

規制緩和で原則規制から原則自由へと舵を切った最近の日本ですが、同時に自由に伴う結果の責任は厳しく問われるはずなのに、財界のご用聞きに終始して世界的に見ても罰則の緩い資本市場となってしまった結果です。最初から厳しいルールを定めておくことはせず、こっそり抜け道を用意しておいて、ライブドアのような新参者にそこを突かれて慌てて規制強化というイタチごっこの果てに、ルールの複雑さが積み上がり、新たな抜け穴ができてしまうんですから、問題は深刻です。冒頭で述べたように金融庁傘下の監視委が告発したのではなく、地検特捜部が独自に内偵して事件となったというのは、そもそも日本の金融行政の欠陥を露呈したものと見る必要があります。

先日のみずほ証券の誤発注事件でも、新規上場のjcom株の総株式数を越える取引が成立したこと自体が異常事態を表しているにも関わらず、取引を止めて対応することをしなかった東証に代表されるように、日本の資本市場には番人不在で投資家保護はどこ吹く風、トバッチリで損しても自己責任でアンタのせいで済まされてしまう株式投資に個人投資家が大挙参入してきたんですから、市場関係者や企業経営者にとってはカモネギの団体様とっととスって引っ込んでくれれば一番ありがたいわけです。繰り返し書かせていただきますが、株式投資は長期保有による配当利回りとキャピタルゲイン狙いが王道です。

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Thursday, January 19, 2006

高くつく内部補助、公共性と独占の関係

報道によりますと、ヤマト運輸による郵政公社のゆうパック提訴は、ヤマト側の全面敗訴で決着しました。

(1/19)コンビニ「ゆうパック」勧誘訴訟、ヤマト運輸が敗訴
別にヤマトに肩入れするつもりはありませんが、料金見直しとコンビニルートへの勧誘攻勢をかける郵政公社の事業姿勢が独占禁止法に抵触するか否か、また公社が主張する公共性を司法がどう判断するかなどが注目点でした。結果は郵政公社側の主張をほぼ全面的に認めるものとなりました。

ま、ヤマトの主張でわかりにくいのは、宅配便でトップシェアを握る同社が、シェア数パーセントの郵政公社に対して差し止めを求めているという点ですが、郵政民営化で信書便輸送に参入を目論んでいた同社が、親書便法のあまりに馬鹿馬鹿しい参入規制に呆れて参入を見送ったことに関連します。参入を目論んでいただけに、ヤマト自身は郵政民営化推進派の立場だったわけですが、いわゆる抵抗勢力との安易な妥協の結果、参入を見送る羽目となったことへの怒りがあります。

ゆうパックのコンビニ勧誘問題は、ローソンがゆうパック取扱いを決めたことに端を発しますが、信書便問題が時期的に符合したことと、実質的に参入規制のあるリザーブドエリア(事業の独占領域)を持ち、そこでの超過利潤を内部補助して民間宅配事業者へ競争を挑む行為に対する提訴というわけです。そしてそれが郵政事業の公共性を盾に却下されたという流れになります。

疑問が残るのは、司法が認めた公共性が、郵政公社固有のものであるのかどうかという点です。元々信書便法では民間の事業参入を予定していたはずなんですが、実際は1社も参入を表明していないわけで、信書の定義の不明確さの一方で、ポスト設置義務などのアホらしいほど細かい規制が敷かれていて、民間事業者として参入のメリットがなければ事実上郵政公社の独占事業となることを追認することとなりますが、それをふまえながら司法は郵政公社に公共性を認める判断をしているようです。国際郵便条約が根拠でしょうけど、条約が求めているのはあくまでも表書きした宛先へ郵便物が届くことであって、事業主体の官民の別までは問われていないはずです。この辺は実は政府部内でも議論の対象となっているようです。

(1/13)郵便の民間参入促進検討、総務省研究会が初会合
しかしどうもニュアンスとしては郵政の民営化会社の経営の観点から独占領域を認めよという話になっているようです。あくまでも民間参入はアリバイ作りの感じです。

それというのも信書便法で信書便を定義してわかりにくい神学論争になってしまっていることで、実際はヤマトのメール便のように、利用者に信書ではないと宣言させることでザル法になっている現実があります。これじゃ民間参入するのはよっぽど奇特な会社です。

ちょっと長い前置きになってしまいましたが、ここからが本題です。郵政事業の公共性で問われるのは何かという点ですが、過疎地への郵便集配や郵貯窓口ネットワークによる決済システムのサービスが不採算ゆえに民間参入が困難だから、その部分を保証したいということのはずです。であれば赤字局だけを個別に補助金で救済するのが最もシンプルな解決法です。財政資金を投入しますから国民負担は発生しますが、全国津々浦々あまねくカバーするネットワークを維持することで郵便事業の質を確保するための社会的コストと考えれば、負担すること自体には問題はないでしょう。単独赤字局は全国で6,000局ほどだそうですから、仮に1局1億円の予算を用意したとしても年間6,000億円の負担となります。

これを郵政公社→民営化会社に独占領域を認めることで内部補助するとどうなるかですが、仮に同額のコストを負担するとすれば、独占領域で6,000億円の超過利潤を見込むことになります。超優良企業のトヨタの経常利益が1兆円ですから、6,000億円の超過利潤がいかに途方もない規模のものかということになります。そして財政による補助金であれば納税者によって広く薄く負担することで済みますが、事業者が超過利潤を得るためにはそれだけサービスの価格をつり上げる必要があります。そしてそれは全て郵便利用者の負担となるわけです。つまりは郵便サービスを利用する者に懲罰的課税をするようなものですから、需要を縮小させ郵便サービスの維持をかえって困難にすることとなります。赤字局限定で財政補助する場合であれば、採算が見込める地域で競争的参入を促し、結果的に超過利潤がゼロになるレベルで価格が均衡しますから、国民レベルでは納税者として負担をシェアしながら、それを上回る低価格サービスを利用でき、消費者余剰を得ることとなります。結果的に経済厚生は向上するわけです。

翻ってJRでも多数抱えるローカル線には、新幹線や大都市圏輸送の利益から内部補助がされているわけですが、実は赤字ローカル線にピンポイントで補助金を出した方が、大多数の国民にとってはJRを安く利用できて国民経済的に有利なんですね。三木市長選で第三セクターの三木鉄道の廃止を公約した市長が選ばれました。財政事情だけを理由とする廃止や補助金の打ち切りが納税者の利益に叶うものなのかどうかは、冷静に判断すべき問題かと思います。

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Tuesday, January 17, 2006

JR貨物の世界戦略、中国海運大手と提携

ライブドア家宅捜索やオジャマモン証人喚問など、目立つニュースの陰で、超マイナーな話題です。日本経済新聞によると、JR貨物と中国海運大手が提携したそうです。

JR貨物、中国海運首位と提携・日中間の物流割安に
記事中にあるとおり、コンテナ船より速く航空より安いというところを狙ったもので、日本国内はJR貨物が、中国国内は提携先のコスコが顧客企業を開拓し、上海-門司港間を船で輸送、中国国内はコスコが、日本国内は北九州貨物ターミナルから全国へJR貨物が輸送する体制を整えます。当面週1便で上海-東京間で4日程度と、航空の3日よりかかるがコンテナ船の6日より速く、運賃も中間帯というのが概要です。

京都議定書で公約された温暖化防止のCO2削減を追い風に、企業の部品調達や製品出荷などのいわゆるシステム物流分野に活路を見出したいJR貨物ですが、人口減少とアジアの台頭による生産拠点の国外流出には抗えず、将来は不透明なところですが、日中間の物流分野への進出は、JR貨物が企業として生き残るためには避けて通れない道です。従来も日通の博多-上海間高速船“上海スーパーエクスプレス”との継送による複合一貫輸送などは手がけておりましたが、現地企業と提携して相互に営業、集配を分担するというところが新しいところです。実際日中間の貨物は工場間を行き来する部品類が多く、双方に工場を持つ企業の社内輸送の側面を持っており、いわば工場のベルトコンベアのアウトソーシングのような性格で、相互依存がここまで深まればこそのビジネスといえます。グローバル化の進捗によって貨物の往来は増えこそすれ減ることはないでしょうから、JR貨物にとっては重要なチャレンジです。

国際物流では民営化される郵政公社も参入を狙ってオランダTNTと提携しましたが、郵政が狙うのは小口貨物混載を中心としながらも総合物流を目指すインテグレーターという業態ですが、JR貨物はあくまでも企業物流に照準を合わせているのがミソでしょうか。定期的、定性的に発生する大量の貨物を扱うことで、効率よく輸送し収益をあげるビジネスモデルです。小口貨物と違って営業窓口も絞り込むなどして収益性を高められます。

国鉄改革では最後まで扱いが定まらず、旅客会社の線路を割安に借りて全国1社でスタートしたJR貨物ですが、青函トンネルや本四連絡橋の開通で海運に対して競争力を得たことと、民営化後の好景気に助けられて好調だったのもつかの間、90年代の不況とトラックの規制緩和で競争激化があって赤字転落、以後なかなか浮かび上がれなかったのですが、トラック絡みで度重なる重大事故が発生し、速度町かや過積載や超過勤務などの違反行為の厳罰化、特に事業者の処罰強化で風向きが変わってきた昨今です。人口減少による影響はトラックよりは受けにくいとはいえ、国内製造業が空洞化すればじり貧は免れない中で、JR貨物のチャレンジにエールを贈りたいと思います。

思えば国鉄の民営化でも、事前に旅客では特定地方交通線の切り離しや輸送需要に見合った減量ダイヤへの移行、貨物ではコンテナと専用貨物などの直行便に集約した規模の大幅縮小を経ての民営化だったわけですが、そうしてスリムになったからこそ、旅客貨物を問わず自らの意思で未来を開くことができるようになったといえます。巨大組織を温存したままの郵政民営化とは決定的に異なるという点は改めて指摘しておきます。

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Monday, January 16, 2006

特特法事業で輸送力増強後混雑率悪化で次の手が問われる京王線

耐震強度偽装事件絡みで京王プレッソインの記事を書きましたところ、京王線のラッシュ輸送の問題に関して複数のコメントをいただきました。お隣の小田急線が複々線化事業を推進中で、何かと比較される京王線ですが、2005年度新造予定の9000系10連の日車豊川からの甲種輸送が14日に行われ、おそらく週明けにも若葉台へ搬入されるなどの動きが出てまいりました。このタイミングで、京王線のこれからを考察しておくのも面白いと思います。

大手私鉄中間決算の記事でも取り上げましたが、通期見込みで1.2%の利用増を見込む京王電鉄は、本業の好調さが目立ちますが、その一方で特特法事業で長編成化による輸送力増強を実現し、一旦は168%まで緩和された最混雑率の数字を170%に悪化させております。特特法による積立金の取り崩しによる運賃値下げと、久々のスピードアップを伴う準特急を登場させたダイヤ改正が功を奏して、沿線でマンション建設ラッシュが続き、ひところ減少に転じた沿線人口が再度増加するなど、好調な反面、複々線化を見合わせたために次の手が見えない状況にあります。

一方都営新宿線の新型ATC導入を期に都営新宿線で車両置き換えが進む中、6000系後継車両という位置づけの9000系20両登場が2005年度事業計画で発表され、タイミングからいって老朽化の進む6000系30番台直通車の置き換えになるのは間違いないところですが、10連で登場というのが10連固定編成とすれば、当面朝ラッシュ終了後に入庫することになりますから、運用面では制約のある状態になります。ただし中間運転台のなくなる分だけは乗客スペースが増えるわけですから、そうまでしなければならない京王線の苦しい状況を反映しているといえます。

小田急では複々線化事業を推進中も、ラッシュ輸送の改善が進まなかった結果、東急田園都市線や京王相模原線など他社線ルートへの乗客逸走が見られ、沿線人口が増加しながら利用減という事態に至り、大規模投資の元を取る意味で積極策に出て、千代田線直通の多摩急行の設定で多摩ニュータウンで競合する京王から乗客を奪うなどの事態となり、京王も都営線直通急行の設定で巻き返しをはかって対抗するなど、どちらかといえば競争的でないといわれた関東私鉄で競争が活性化された中で、京王線の劣勢が傾向として読みとれます。

大規模工事としては調布市内連続立体化事業を推進中で、国領、布田、調布の3駅が地下化され、特に調布駅の相模原線分岐部の平面交差が解消される予定なので、実現すればダイヤ白紙改正が考えられますが、調布での京王線と相模原線の下り方向への折り返しができなくなるなど、新たな制約事項が加わります。そんな中でどのように輸送改善されるのかは見えておりません。

車両面では7000系のVVVF改造が進捗中ですが、こうなると6000系の淘汰は加速せざるを得なくなると考えられます。同時にVVVF車が出揃った段階で現行の加速度2.5km/h/sを3.0km/h/s程度に見直して運転時分を見直すことは考えられます。また都営新宿線のデジタルATC化に関連して京王線のATC化もしくは現行の多変周点制御ATSを入力装置としたATCによるバックアップ(デジタルATCでパターン制御が可能になる)などで余裕時分を生み出すといった改良は考えられます。ここまで来れば地上線車と直通車の区分はなくなる可能性もあり、時間帯で8連と10連を使い分けるなどで柔軟な運用が可能になると考えられます。ただしピーク時の増発やスピードアップまでは難しいですから、余裕時分の増加で遅延防止になる程度でしょう。

やはり最終的には複々線化へと進まざるを得なくなる気がします。ただし投資の原資をどうひねり出すかは難しいところです。京王が有利なのは現行運賃の安さですが、設備投資のために運賃値上げを利用客に理解してもらうのは難しいところです。当面は現在の特特法による積立金取り崩しを原資とする運賃値下げの期限が2007年12月になり、値下げ分をなくした若干の運賃値上げが予告されてます。この時点で考えられる選択肢は次の通りです。

1.利用増による増収分を反映させて現行の値引き運賃を維持
2.予告通り上限運賃を値上げするが、当面は現行水準の値引きを維持
3.予定通り運賃値上げ
4.特特法事業を申請して上乗せ運賃で複々線化の原資を得る
といったところが考えられます。逆に言えばこの部分のアクションである程度方向性は見えてくるということもできます。

京王線の複々線化では、同時施工される連続立体化事業に実は問題が隠されておりまして、連続立体化事業の条件となる都市計画道路2箇所以上との立体化という条件を満たすのが難しいという問題があります。環七、環八、赤堤通りとは既に立体化されており、沿線の世田谷区や杉並区の都市計画道路整備が進まない状況下では事業化の目処すら立ちません。

一方東武線竹ノ塚の踏切事故で、いわゆる開かずの踏切問題がクローズアップされ、代田橋-仙川間が重点踏切立体化事業として認められる可能性はあります。そうなれば何らかの形で複々線化への道筋が示されるのではないかと思います。あるいは井の頭通りとの立体化で明大前駅周辺の区画整理事業に着手されれば、とりあえず現在ネックとなっている明大前の混雑解消のための構内線増など部分改良が実現する可能性はひらけるかもしれません。

というわけでファンの間では輸送力増強打ち止めと見られている京王線ですが、まだまだどうなるかわからないところかと思います。

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Friday, January 13, 2006

プリヴェの狙いは東宝だった? 阪急HD株取得問題

のっけから前の記事の訂正です^_^;。プリヴェチューリッヒ企業再生グループですが、外資系ではなく日本の投資会社でした。ま、投資会社の国籍を問うても無意味ですが。

で、続報として阪急HDとプリヴェの両トップが会談し、東宝との経営頭語を言及したものの、具体的な提案等はなかったと報道されてます。

阪急HD・プリヴェトップが会談、東宝との統合構想説明
どうやら本当の狙いは、日比谷や有楽町に優良物件を抱える東宝だったようです。とするとプリヴェが阪急の5%超の筆頭株主になったところで、上場企業である東宝への影響力は限られますから、会談で明らかにしたように具体的な提案というわけではなさそうです。単に阪急HD株が割安だったからということのようです。

もちろん阪急HDと東宝の経営統合、特に不動産部門の統合に関しては、おそらく株主総会の株主提案などで具体策を明らかにする可能性はありますが、長期保有前提で役員派遣などは考えていないということから、純投資と見て間違いないようです。ならばなぜに東宝株ではなく阪急HD株購入なんでしょうか。

東宝は優良資産を抱えるのみならず、根強い人気の宝塚歌劇団や映画でも電車男などのヒット作を出すなど、優良コンテンツを生み出す能力があり、それらが既に評価として織り込まれているとすれば、将来の値上がり余地は小さいと見られますが、それに比べて同じ企業グループに属する阪急HD株に割安感があったということなんでしょう。何だかんだ言って再建途上の企業ですし。更に不動産部門を軸としたグループ再編があるとすれば、阪急HD株主になることで権利確保できると考えれば、プリヴェの行動は一応辻褄が合います。

問題は、東宝が所有する優良資産が、果たしてプリヴェが目論むように有効利用できるのかどうかです。現在の再開発ブームを見ていると、何とかなりそうに見えます。実際こんな報道もあります。

都心のオフィス空室率、6カ月連続5%割れ・12月末
ただし若干の注釈は必要です。

一つは企業再編が加速している点です。金融再編によって5%ルールに抵触する銀行の事業会社株保有が持続困難となり、いわゆる株式持ち合い解消が起こるわけですが、この課程で安定株主を失って漂流した企業は多数にのぼり、株価下落の要因にもなりました。その一方でIT企業や投資ファンドなどの新手の買い手も現れて、玉突き的に企業再編が加速しております。結果的に再編の実態に合わせてオフィスも再編されますから、新しい大型物件が求められるわけです。

二つ目はIT化によるオフィス環境の変化です。IT機器の増加によって、結果的に1人当たりのオフィス面積は増加傾向にあります。また通信インフラの整備された新オフィスに需要が偏っている点もあり、IT化による生産性向上効果で企業のオフィス賃料負担力も高くなっています。

ま、それと日本の企業の多くが、リストラの進捗でキャッシュフルとなっていたり、低金利で資金調達も容易だったり、REIT(不動産投信)やノンリコースローンなど供給側の新しい資金調達手段ができたことなどで、オフィス需要はかなり嵩上げされていると考えられます。

加えて大都市圏の容積率の緩和が、高層ビルによる再開発ラッシュを後押しします。例えば隣接地などの容積率の未利用分を新築ビルに上乗せできるなどで、従来以上に高層化が可能になり、戦略的に容積率の集約が可能なわけですから、例えば東宝が所有する東京宝塚劇場や有楽町マリオンなどの容積率の未利用分が、新たな富を生み出す原資になり得るわけです。

ただし上場REITの表面利回りが3%台になるなど、以前より利回りが悪化しておりますが、今のところREIT人気による元本高が原因とはいえ、賃料収入が配当原資となるREITの仕組みからいえば、今後の供給増に伴う受給の変化次第では空室率が上がって配当が下がるリスクも考えておく必要があります。つまるところ東宝の優良資産をテコに阪急HDが化けてくれるかどうかは、再開発ブーム次第ということころになりそうです。

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Wednesday, January 11, 2006

阪急HDも投資ファンドが株保有、日本の私鉄の資産活用が問われる

村上ファンドによる株式取得が話題になったのは、昨秋のことでしたが、今度は阪急が狙い撃ちです。

投資会社プリヴェ、阪急HDの筆頭株主に
早速阪急HD幹部からはこんな話が出てきました。
阪急HD「中長期的に企業価値向上」・プリヴェが株取得
まぁ相手の真意が分からない段階でのコメントはこんなもんでしょう。

日本の大手私鉄は、阪急の前身の箕面有馬電気軌道による沿線開発による開発利益還元というビジネスモデルが功を奏して、高度な沿線開発が行われ、駅前を中心に資産価値の高い不動産を多数保有しているのが特長ですが、それが投資家には十分に活用されていないと映るようです。資産価値に見合った高収益をあげて株主配当を増やせというのが彼らの言い分なんでしょう。そしてだからこそ私鉄各社は鉄道事業に付帯する関連事業に力を入れているわけで、収益に占める鉄道事業の比率は50%程度というのが相場です。

しかし鉄道事業が免許事業であって、新線建設などの情報は公示され、他のディベロッパーに開発地を先買いされ地価上昇の影響を受けるわけで、高額投資となる鉄道建設の事業リスクに見合った開発利益を得ることが難しいばかりか、場合によっては鉄道事業用地の取得費用が非現実的なレベルまで高騰して、事実上事業が困難になることもあって、国の低運賃政策とも相まって投資不足状態から抜け出せない中で、地価の上昇トレンドでキャピタルゲインを狙った無謀な開発用地取得に巻き込まれて、多くの私鉄企業でバランスシートを傷つけたバブル崩壊に直面します。

その中で阪神がバブルに踊らなかった関西私鉄ではほぼ唯一の勝ち組なのに対し、バブル期の開発用地高値買いでバランスシートを痛めた阪急は、さまざまな斬新な再建策を打ち出してはいるものの、未だ再建途上というのが実態です。果たして投資ファンドにとってもうま味があるのかどうかは何ともいえないところです。日本の大手私鉄のような企業の存在は、欧米では見られないですから、外資の企業再生ファンドといっても未体験分野なはずです。果たして勝算があるのかかえって心配になります。REIT(不動産投資信託)による一部地域の地価の高騰で間違ったサインを受け取っている可能性はありそうです。

村上ファンドの阪神買収では、タイガース球団の株式上場が提案されており、村上世彰氏自身虎ファンだそうですが、宝塚歌劇団の株式上場を提案するプリヴェのトップはひょっとしてヅカファン?^_^;

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Monday, January 09, 2006

大雪でわかった地方の寒~い現実

暮れから続く連日の大雪ですが、漸く峠を越えた模様です。

(1/8)日本海側、大雪のピーク越える・雪による死者67人に
死者67人というのは今回の寒気が台風並みの災害だったことを表します。

連日の報道に接していて、被害が山間の集落に集中している点、また高齢者の被害が甚大である点が目につきます。当ブログでは度々指摘してまいりましたが、過疎と高齢化が進む地方の現実の過酷さに改めて驚かされます。先日の記事でも指摘いたしましたが、今後この傾向が大都市部へも波及することを考えますと、老いて振り返れば手助けしてくれる若い衆がいなかったという現実に直面する未来に戦慄を覚えます。

また多くの自治体で道路の除雪予算を季節半ばで使い果たしてしまった現実があります。これも冷静に考えれば、道路整備の結果として除雪すべき道路が増えてしまった現実の反映でもあります。例年の暖冬傾向で助けられていたために、問題の発覚を遅らせたといえます。従来の土建政治のツケが回ってきたものといえます。

今年の寒気は確かに異常なんですが、気温だけみれば以前はこの程度の寒さは普通だったのですが、おそらく地球温暖化で海水温が上昇した結果、寒気との温度差で大量の水蒸気を発生させ、大雪につながったのではないかと思います。また温度差が大きければ、それだけ大気が不安定となり、積乱雲の発生、ダウンバースト、竜巻などの異常気象が起こりやすくなるということなのでしょう。羽越線の特急いなほの突風が原因とみられる転覆事故も、その意味では関連します。

「国土の均衡ある発展」を大義名分に、国中掘り返して不自然な人工物で固めてきた従来の地方公共事業のなれの果てということなのでしょう。それでは行き詰まるのは以前からわかっていたはずなんですが、方向転換ができずに今に至ったわけですね。カトリーナの悲劇は対岸の火事ではなかったわけです。

しかしここでいささか気になる動きが見られます。

道州制プロジェクトチームが中間報告
地方分権が言われる時代ですが、三位一体改革も進まない中で、またもやワケの分からない動きです。そもそも地方分権とは、中央政府と地方政府の役割を見直して、国民生活に密接に関連する行政サービスについては地方自治体の権限と責任で行い、中央政府は外交、防衛、金融、防疫など中央政府でなければできないものに特化して規模を縮小し、中央と地方の水平分業で効率化しようということのはずですが、基礎自治体としての市区町村、広域自治体としての都道府県、そして国という3段階の階層構造に1段階を加えることの意味は何なんでしょうか。水平分業にふさわしい階層のフラット化こそ必要なのに、省庁の地方組織などの受け皿として道州制を考えているふしがあります。見かけ上国家公務員が減るので行政改革が進んだように錯覚させる効果はありますが、郵政民営化と同じ誤魔化しロジックですね。組織形態をイジって“改革”と称するレトリックにはいい加減うんざりします。

またこんなのもあります。

政府与党、省庁再々編論が浮上・放送と通信の融合など
省庁再々編論・ポスト小泉の主導権争い見え隠れ
将に政争の具と化しています。こんなんでは大雪で犠牲になった皆さんも浮かばれません-_-;。

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Thursday, January 05, 2006

相鉄と東急、新横浜経由直通報道の読み方

1/1付神奈川新聞の配信記事で、相鉄と東急の新横浜経由の直通に関するものがあります。

相鉄と東急、新横浜経由で直通/2015年度開通へ
今のところ他紙の追跡取材はありませんが、この点については後述します。

記事によれば、相鉄の西谷-横浜羽沢間の新線を介したJR東日本との直通運転計画に追加する形で、横浜羽沢-新横浜-日吉間を結んで東横線とも直通運転をしようというもので、相鉄とJR東日本の直通計画と競合すると考えられる神奈川東部方面線の計画を変更して横浜羽沢経由とすることで、計画の実現性を高めようということのようです。結果的に相鉄はJR横須賀線と東急東横線(目黒線?)の双方と直通運転を行う方向で調整中ということになります。


相鉄の西谷-横浜羽沢間の新線約2.4km、総事業費700億円程度という大都市圏の交通インフラとしては比較的リーズナブルな投資案件といえますが、それを新横浜経由で日吉まで伸ばそうというのですから、総事業費は桁が変わってしまうレベルに間違いなくなります。そうまでして話を進めようというのは、新横浜を業務地として売り出したい横浜市が新横浜を経由しないJR貨物線との直通運転に消極的と考えられ、事業化の協議が進まないためではないかと考えられます。つまりJR横浜羽沢までの新線建設を都市鉄道利便増進補助事業として推進するためには、横浜市の同意と出資が欠かせないわけですから、横浜市を協議のテーブルに着けるには、多少のニンジンが必要ということなんだろうと思います。ま、それがわからない横浜市ではないでしょうから、すんなり話はまとまりますまい。

実際日吉で東横線なり目黒線なりに接着したところで、湘南新宿ラインのスピードを凌駕するのは難しく、投資の回収は容易ではありません。第一JR横須賀線武蔵小杉駅が設置されれば、武蔵小杉乗換で相当カバーできる需要ですし、都心側の東横線/目黒線の車両限界の小ささや編成両数の制約などで、線路がつながっても有効に機能する保証はないですから、ま、日の目を見ることはありますまい。

というわけで、他紙、他メディアが沈黙している理由も、わざわざ追加取材するより公式発表を待った方が確実ということに尽きると思います。

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Wednesday, January 04, 2006

いなほ脱線事故、風対策に決め手なし

新年早々の事故ネタにて失礼いたします。12/25の特急いなほの脱線事故で、2005年は事故の年だった印象が強まりましたが、報道で実態が明らかになるにつれ、自然の力に畏怖する思いが強まります。2日から復旧工事は始まったものの、視界良好とはいかないようです。

脱線招く?局地的突風、鉄道各社の対策に決め手なし
記事にもありますが、風速計で事前に強風を捕捉して列車に警報を発するにしても、実際は局地的な突風に対応するのは難しく、特に寒冷前線が通過中だった事故当時の現地では、竜巻やダウンバーストなど強い上昇気流や下降気流がみられる不安定な状況だったと考えられますから、水平方向の風を捉えることしかできない風速計ではそもそも計測不能だったと考えられます。

また事故地点付近は最上川河口近くの沖積平野で、市街地から離れた田園地帯だったこともあり、風を減衰させるような建造物も見られず、また北西の季節風の方向との不幸な一致もあって、風の通り道になっていた可能性があります。加えて護岸のための堤防の高さで規定される鉄橋の高さに合わせて前後に盛土のアプローチ区間があるなど、方向の問題を別にすれば、比較的どこにでも見られるロケーションの場所であるだけに、有効な事故対策が求められるのですが、記事中にあるとおり具体策は「白紙」というのが偽らざるところといえます。

そんな中で風速計の増設や風速規制の強化や防風柵の設置などに加え、JR東日本では当面事故地点付近の日常的な徐行運転を打ち出しているのですが、いずれも事故につながる可能性を低くすることにはつながるでしょうけど、決め手とは言い難いところがつらいところです。

ま、こういうときこそ鉄ちゃんがオピニオン性を発揮すべきだと思います。そもそも1両40t以上の車両を横転させるほどの強い局地的突風が日常的に見られるとしても、今回の事故のようにたまたま走行中の列車を直撃する確率はいかほどのものでしょうか。おそらく離発着時限定での航空機の強風の影響による事故よりも低いと思うんですが、離発着時を除けば風の影響をあまり受けない航空機に対して、地表を走る鉄道は、常に影響を受ける可能税があり、その分風速を多くの地点で計測せざるを得ないのですが、実際のところは限度があります。少なくとも無限にコストはかけられないわけですから。

鉄道としても防風林の整備などは行われてはきたのですが、今回の事故地点のような河川流域地域では難しい相談です。また事故地点近くの道路の防風柵が飛ばされて店舗の看板を直撃したように、物理的な遮蔽物を設置すれば済むわけではなく、場合によってはそれ自身が二次災害を引き起こす可能性も視野に入れておく必要があります。風の通り道ならば風力発電の風車を設置すれば、多少は風力の減衰に役立つかもしれませんが、効果はいかほどでしょうか。こうなるとJR単独での対策とはいかず、地元の自治体や電力会社などとの協調関係の中で模索するしかありません。

事故地点は日本海縦貫線を形成する貨物幹線であり、長期に亘る運休は経済への影響も心配されるところです。1日も早い復旧が望ましいのですが、JRとしては地元及び乗客へ説明できる安全対策を盛り込む必要はありますから、悩ましいところです。ただし事故列車の運転士の証言で遅延にも関わらず強風を意識して120km/h制限を-15km/hの105km/h程度で走っていたことや、事故後の乗客救助や幹部の迅速な対応など、福知山線事故のJR西日本の対応とは対照的な対応だった点は、特筆すべきだろうと思います。鉄道会社はかくあるべきでしょう。

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