ライブドア問題、閉鎖的市場のトリックスター
世間ではライブドア問題で揺れておりますが、間違いなく一番被害を被ったのは一般投資家です。1/16の東京地検特捜部による突然の強制捜査には驚かされましたが、そもそも何が問題なのか、また金融庁傘下の証券取引等監視委員会(以下“監視委”とする)による告発ではなく、何故に東京地検特捜部が直接動いたのか、また罪状としていわれた偽計取引による証券取引法違反では、罰金500万円程度の微罪で、とてもじゃないけど東京地検特捜部が動くような案件とも思えませんでした。
またニッポン放送買収騒動のときの時間外取引問題や株式100分割などのきわどい手法も含めての訴追であるとしても、それぞれ単独では訴追が難しいものをいくら積み上げたところで、公判を維持できるほどのものが出てくるとも思えませんでした。
そんな中で投資組合を利用した企業買収や資本取引である株式売却益を売上計上して粉飾決算をしたりという事実が出てきて、どうやら堀江社長を含む幹部の身柄拘束は避けられないようですね(記事執筆中に逮捕の報道が流れました)。
以前こんな記事を書いておりますが、基本的には西武コクド問題をはじめとする経営陣による投資家を欺いた事件の流れを踏襲しており、IT企業だからといって特別なことはなかったわけです。ある意味企業経営者が都合良く利用してきた法律の抜け穴を、新参者のライブドアがかなりえげつなく利用した結果、制度の見直しが後追いすることとなって、規制緩和で自由度が高まったといわれる日本の資本市場が弱点をさらしたわけです。言ってみればライブドアのようなトリックスターを生み出した市場の欠陥です。
規制緩和で原則規制から原則自由へと舵を切った最近の日本ですが、同時に自由に伴う結果の責任は厳しく問われるはずなのに、財界のご用聞きに終始して世界的に見ても罰則の緩い資本市場となってしまった結果です。最初から厳しいルールを定めておくことはせず、こっそり抜け道を用意しておいて、ライブドアのような新参者にそこを突かれて慌てて規制強化というイタチごっこの果てに、ルールの複雑さが積み上がり、新たな抜け穴ができてしまうんですから、問題は深刻です。冒頭で述べたように金融庁傘下の監視委が告発したのではなく、地検特捜部が独自に内偵して事件となったというのは、そもそも日本の金融行政の欠陥を露呈したものと見る必要があります。
先日のみずほ証券の誤発注事件でも、新規上場のjcom株の総株式数を越える取引が成立したこと自体が異常事態を表しているにも関わらず、取引を止めて対応することをしなかった東証に代表されるように、日本の資本市場には番人不在で投資家保護はどこ吹く風、トバッチリで損しても自己責任でアンタのせいで済まされてしまう株式投資に個人投資家が大挙参入してきたんですから、市場関係者や企業経営者にとってはカモネギの団体様とっととスって引っ込んでくれれば一番ありがたいわけです。繰り返し書かせていただきますが、株式投資は長期保有による配当利回りとキャピタルゲイン狙いが王道です。
| Permalink | 0
「ニュース」カテゴリの記事
- 遅れるのは万博だけじゃない(2023.12.03)
- 人口減少は核より怖い(2023.11.26)
- 勤労感謝にAIは勝つ?(2023.11.23)
- サルとロバの法螺吹き合戦(2023.11.18)
- ユニコーンの馬脚(2023.11.11)
「経済・政治・国際」カテゴリの記事
- 遅れるのは万博だけじゃない(2023.12.03)
- 人口減少は核より怖い(2023.11.26)
- 勤労感謝にAIは勝つ?(2023.11.23)
- サルとロバの法螺吹き合戦(2023.11.18)
- ユニコーンの馬脚(2023.11.11)
Comments