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Thursday, January 19, 2006

高くつく内部補助、公共性と独占の関係

報道によりますと、ヤマト運輸による郵政公社のゆうパック提訴は、ヤマト側の全面敗訴で決着しました。

(1/19)コンビニ「ゆうパック」勧誘訴訟、ヤマト運輸が敗訴
別にヤマトに肩入れするつもりはありませんが、料金見直しとコンビニルートへの勧誘攻勢をかける郵政公社の事業姿勢が独占禁止法に抵触するか否か、また公社が主張する公共性を司法がどう判断するかなどが注目点でした。結果は郵政公社側の主張をほぼ全面的に認めるものとなりました。

ま、ヤマトの主張でわかりにくいのは、宅配便でトップシェアを握る同社が、シェア数パーセントの郵政公社に対して差し止めを求めているという点ですが、郵政民営化で信書便輸送に参入を目論んでいた同社が、親書便法のあまりに馬鹿馬鹿しい参入規制に呆れて参入を見送ったことに関連します。参入を目論んでいただけに、ヤマト自身は郵政民営化推進派の立場だったわけですが、いわゆる抵抗勢力との安易な妥協の結果、参入を見送る羽目となったことへの怒りがあります。

ゆうパックのコンビニ勧誘問題は、ローソンがゆうパック取扱いを決めたことに端を発しますが、信書便問題が時期的に符合したことと、実質的に参入規制のあるリザーブドエリア(事業の独占領域)を持ち、そこでの超過利潤を内部補助して民間宅配事業者へ競争を挑む行為に対する提訴というわけです。そしてそれが郵政事業の公共性を盾に却下されたという流れになります。

疑問が残るのは、司法が認めた公共性が、郵政公社固有のものであるのかどうかという点です。元々信書便法では民間の事業参入を予定していたはずなんですが、実際は1社も参入を表明していないわけで、信書の定義の不明確さの一方で、ポスト設置義務などのアホらしいほど細かい規制が敷かれていて、民間事業者として参入のメリットがなければ事実上郵政公社の独占事業となることを追認することとなりますが、それをふまえながら司法は郵政公社に公共性を認める判断をしているようです。国際郵便条約が根拠でしょうけど、条約が求めているのはあくまでも表書きした宛先へ郵便物が届くことであって、事業主体の官民の別までは問われていないはずです。この辺は実は政府部内でも議論の対象となっているようです。

(1/13)郵便の民間参入促進検討、総務省研究会が初会合
しかしどうもニュアンスとしては郵政の民営化会社の経営の観点から独占領域を認めよという話になっているようです。あくまでも民間参入はアリバイ作りの感じです。

それというのも信書便法で信書便を定義してわかりにくい神学論争になってしまっていることで、実際はヤマトのメール便のように、利用者に信書ではないと宣言させることでザル法になっている現実があります。これじゃ民間参入するのはよっぽど奇特な会社です。

ちょっと長い前置きになってしまいましたが、ここからが本題です。郵政事業の公共性で問われるのは何かという点ですが、過疎地への郵便集配や郵貯窓口ネットワークによる決済システムのサービスが不採算ゆえに民間参入が困難だから、その部分を保証したいということのはずです。であれば赤字局だけを個別に補助金で救済するのが最もシンプルな解決法です。財政資金を投入しますから国民負担は発生しますが、全国津々浦々あまねくカバーするネットワークを維持することで郵便事業の質を確保するための社会的コストと考えれば、負担すること自体には問題はないでしょう。単独赤字局は全国で6,000局ほどだそうですから、仮に1局1億円の予算を用意したとしても年間6,000億円の負担となります。

これを郵政公社→民営化会社に独占領域を認めることで内部補助するとどうなるかですが、仮に同額のコストを負担するとすれば、独占領域で6,000億円の超過利潤を見込むことになります。超優良企業のトヨタの経常利益が1兆円ですから、6,000億円の超過利潤がいかに途方もない規模のものかということになります。そして財政による補助金であれば納税者によって広く薄く負担することで済みますが、事業者が超過利潤を得るためにはそれだけサービスの価格をつり上げる必要があります。そしてそれは全て郵便利用者の負担となるわけです。つまりは郵便サービスを利用する者に懲罰的課税をするようなものですから、需要を縮小させ郵便サービスの維持をかえって困難にすることとなります。赤字局限定で財政補助する場合であれば、採算が見込める地域で競争的参入を促し、結果的に超過利潤がゼロになるレベルで価格が均衡しますから、国民レベルでは納税者として負担をシェアしながら、それを上回る低価格サービスを利用でき、消費者余剰を得ることとなります。結果的に経済厚生は向上するわけです。

翻ってJRでも多数抱えるローカル線には、新幹線や大都市圏輸送の利益から内部補助がされているわけですが、実は赤字ローカル線にピンポイントで補助金を出した方が、大多数の国民にとってはJRを安く利用できて国民経済的に有利なんですね。三木市長選で第三セクターの三木鉄道の廃止を公約した市長が選ばれました。財政事情だけを理由とする廃止や補助金の打ち切りが納税者の利益に叶うものなのかどうかは、冷静に判断すべき問題かと思います。

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