東海道新幹線新ATCにバグ
1年前にもATCの制限速度の設定に誤りがあって、速度超過運転をしていた東海道新幹線ですが、3/18改正から全面的に使用開始した新型デジタルATC(ATC-NS)でまたもバグが見つかりました。
東海道新幹線の新ATCにプログラムミス・JR東海自列車と先行列車の位置情報データの伝送タイミングに問題があったもようで、車上装置の処理能力をオーバーフローして非常停止したものということで、昨年のATCトラブルが僅かとはいえ日常的な速度超過という危ういものだったことに比べれば、とりあえず停止した今回のトラブルは、安全上の懸念がない分マシではありますが、何ともお粗末です。
ま、バグが見つかったということは、適切に対策される限りは、改善できるのですから、それはそれで良いのですが、今回は安全側へブレてくれたから良いようなものですが、報道だけではフェ-ルセ-フがシステム上で確保されていたのかどうかは定かではありません。というか、この辺は日本企業の弱点に直結する話なんで、またしてもかというのが正直な感想です。
日本企業の製造神話とでも申しあげますか、凝り性といえるほどに精密なつくり込みを得意とし、優秀なプロダクツを世界へ送り出した工業力が、デジタル時代になって、システム自体がソフト化している昨今、日本の精密加工の伝統だけでは、闘えなくなっているということです。そして日本が誇る新幹線技術も例外ではないということにほかなりません。むしろ精密加工などの得意分野があるために、ソフト力を磨くことがおろそかになっている気がして仕方ありません。
デジタル時代になってもアナログなリーダー達が変われないのは、メーワクではありますが^_^;、ある意味仕方ないところはあるんですが、若年層も含めて優秀なIT技術者が不足していて、インド人エンジニアに依存する日本のIT産業の弱点がそのまま出ているわけです。それを象徴するような出来事かと思います。
デジタル技術者の貧弱さは、とりもなおさず日本の数学教育の貧困の反映であって、以前話題になった「分数ができない大学生」(正確には「かつてはできたのに、やり方を忘れた大学生」だそうですが)問題の延長線上の問題なんですね。テクニックとしての計算能力に成果の比重が置かれているために、システム設計のような論理力を問われる場面で、証明問題など論理力を鍛える訓練が決定的に不足している結果といえます。これはそう簡単に解消できない問題です。
というわけで「愛国心」を法律で押し付ける前に、やるべきことがあるんですがね。
| Permalink | 0
「ニュース」カテゴリの記事
- 三つ子の赤字(2024.10.12)
- 地方は創生できない(2024.10.05)
- いしばしをたたいてわたる(2024.09.28)
- 赤字3Kの掟?(2024.09.21)
- JRの掟?(2024.09.15)
「経済・政治・国際」カテゴリの記事
- 三つ子の赤字(2024.10.12)
- 地方は創生できない(2024.10.05)
- いしばしをたたいてわたる(2024.09.28)
- 試練の9月(2024.09.08)
- 迷子の台風(2024.08.31)
「鉄道」カテゴリの記事
- 三つ子の赤字(2024.10.12)
- 地方は創生できない(2024.10.05)
- いしばしをたたいてわたる(2024.09.28)
- 赤字3Kの掟?(2024.09.21)
- JRの掟?(2024.09.15)
「JR」カテゴリの記事
- 三つ子の赤字(2024.10.12)
- 地方は創生できない(2024.10.05)
- いしばしをたたいてわたる(2024.09.28)
- 赤字3Kの掟?(2024.09.21)
- JRの掟?(2024.09.15)
「都市間高速鉄道」カテゴリの記事
- 三つ子の赤字(2024.10.12)
- いしばしをたたいてわたる(2024.09.28)
- 赤字3Kの掟?(2024.09.21)
- JRの掟?(2024.09.15)
- 迷子の台風(2024.08.31)
Comments
なぜ数学教育とデジタル技術者の貧困が結びつくのでしょうか? 計算力重視の指導方法に関しては否定はしませんが、その結果誰もがルートまで理解できるという他国ではなかなか例の無い社会ができているという側面はご存じないのでしょうか?
デジタル技術といってもソフト設計のそのごく一部の「ロジック」な考え方に起因していることと想像しますが、デジタル技術というのが数学のみで構成しているとは思っていませんよね。
もう少し総合的な考察が欲しかったです。
Posted by: SATO | Thursday, April 13, 2006 08:47 AM
システムを構成するメインストリームに数多くのサブルーチンが絡み合って構成されるソフトで、各パートが論理的に破綻せずに全体として有用な働きをするためには、論理的な思考力、構想力、構成力が問われるわけですが、概念さえ理解していれば、エクセルで計算したほうが速くて正確な平方根問題を引き合いに出す意味が理解できません。ヒトヨヒトヨ、ヒトナミニ、フジサンロクと数学を丸暗記問題にすり替えてしまった平方根問題の病根は深いといえます。
数学だけが論理力を鍛えるわけではありませんが、論理力を鍛える有用な教材であるのに、活用されていないことに問題があるんです。例えば国語の長文読解でも、長文の文脈を追跡して読者が再構成するからこそ、作者の体験を読者が追体験できるわけで、やはり問われているのは論理力なんですが、原文の一部分を切り出して「作者の真意」を問う問題をいくら解いても身につかない能力です。ですから数学だけが問題だと述べているのではなく、数学に代表される教育の現状を問題視したいんです。
Posted by: 走ルンです | Thursday, April 13, 2006 05:40 PM
>各パートが論理的に破綻せずに全体として有用な働きをするためには、論理的な思考力、構想力、構成力が問われるわけですが
これは数学力ではなく、国語力、論理力の問題だと思うのですが。エクセル利用にはマシンが必要なことをお考えください。ルートの暗記には電気も紙もいりません。ルートを知ることが有益とは思いませんが、暗算は他国に誇る我が国の数学教育の表れです。
Posted by: SATO | Friday, April 14, 2006 12:18 AM
文章にしろ数式にしろ、ヒトの思考の道すじを表現するツールであって、表現されるからナレッジとして共有できるわけです。コンピュータプログラムもヒトにとって有用なアウトプットを得るために、ヒトが記述し転記し翻訳されるわけですから、文章を書いたり数式を起こすのと基本的に同じです。
小学校で分数式の解き方を丸暗記で覚えるから、大学生になって忘れるんで、いざというときに使える保証はありません。また脳の作業領域となる一時記憶エリアに不活性なデータ群を置くことは、それだけ作業領域を狭めてしまいますから、非効率な脳の使い方です。
Posted by: 走ルンです | Saturday, April 15, 2006 12:17 AM
JR東日本や九州で、導入しているデジタルATCには問題がなくて、なぜ東海がというのが一番の問題でしょう。
東日本では、八戸~盛岡、盛岡~古川と、末端側から徐々に延ばしているのに対して、東海はいきなり全線導入を行ってしまった点が相当謎です。(山陽新幹線が旧式のATCが使う以上、いきなり全線導入して運用するメリットは少ない)
300系J1編成を使ってATCの長期テストを数年間繰り返してきたのにも関わらず、バグが見抜けなかった(改善されなかった?)というのも相当不可解です。
JR東海という会社は、JR他社やメーカーとの技術交流が途絶えている、その上、一番柔軟性が必要な技術開発や慎重さも同時に必要な設備投資でも組織決定が硬直化している面を露呈したと思います。
Posted by: あんぱん | Monday, April 17, 2006 06:21 PM
コメントありがとうございます。
なるほど、確かにいきなり新システムへの切り替えというのは、リスキーですね。東海道新幹線を収益の柱とするJR東海ですが、設備が古く低規格な設備の更新は一大テーマのはずですが、会社の命運を握る大事に対して、何か不用意な印象はありますね。
ま、ただ東海道新幹線の場合、末端からといっても、新大阪側の輸送ボリュームもそれなりに多いですし、山陽新幹線が旧型のままという点でもシステム的に整合性を取りにくいということはあるでしょう。他社との関係がまともなら、JR西日本に協力してもらって、山陽区間で先行切り替えすれば良さそうなものですが、おそらく主導権は手放したくないんでしょう。困ったもんです。
そんな風だから神戸、新北九州両空港の開港で、航空にジワジワ侵食されてしまうんですね。聞けば神戸空港は好調なようですが、開港前には関西3空港の並存が危ぶまれたのが嘘のようです。これで関西経済圏が浮揚すれば、JR東海が最大の功労者となりそうです(苦笑)。
Posted by: 走ルンです | Monday, April 17, 2006 08:55 PM