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Tuesday, April 11, 2006

政府にCPE法を撤回させた仏国民の団結力

というわけで、全国規模のデモやストに揺れていたフランスですが、政府の大幅譲歩で決着しました。

仏政府、若者向け雇用策を撤回・学生らのデモ収拾へ
国際競争の激化で高い労働分配率が競争の制約要因となっているという議論は日本だけに留まらず、欧州でも見られます。グローバル化の結果として企業は若年者を雇用するハードルが高くなって、新卒雇用を手控える傾向にあるのが、結果的に若年雇用を減らし若年失業率を押し上げているという議論は日本でも見られます。結果的に日本では正規雇用の厳格化、即戦力化へと進み、新卒無業でフリーターやニートになるという流れになってしまっております。これを若者の不甲斐なさで片付けている日本ですが、フランスでは国鉄労組を皮切りに、怒れる若者の支援のストを打つという流れが加速し、ついに政府をねじ伏せてしまいました。

ま、基本的にデモは国民の権利だし、ストは労働者の権利という意識が強く、それを尊重する国民性が強いフランスですが、この部分はとかく迷惑と反応する日本の世論(と称するメディアの誘導?)とは大違いです。国民国家のナショナリズムの原点は、おそらくこういったことなんでしょう。万世一系の男系皇統だの靖国参拝だのでナショナリズムが語られる日本がなんとも幼稚に見えてしまいます。

CPE(初期雇用契約)法は、2年の試用期間を設けてその間は企業側が自由に解雇できるというものですが、企業にとってはパシリで使える若者を使い捨てることが可能になるわけで、これを規制緩和と称するセンスは相当のものです。ま、ただ豊かな国の抱える課題は洋の東西を問わず同じだということは確認できます。

豊かな国ってのは、つまるところ多くの過剰を抱えてしまっている社会なんです。少なくとも飢えから開放され、働くことの意義を見出しにくい社会ではあります。社会全体として生産性が高まれば、例えば日本でも戦後一貫して農業従事者が減少しながら、コメを中心に収量は増えているという現実があるわけで、少なくとも生活必需品は行き渡り、アクセク働くことの意味は失われている状況があります。

こういった社会でフローとしての生活費を稼ぐための労働を、労働は尊い、勤労精神を持てといっても無駄なんで、、労働に意欲を持って取り組むためには、個々人がいかにモチベーションを持ち続けられるかに懸かっているといえます。例えば携帯電話が典型的ですが、それ自体は生存に必須ではないけれど、劇的な技術革新の結果、思いがけない利用法が開発され安価に供給されることで、逆に付加価値部分の勝負となっているわけで、労働にも創造性が問われている状況があります。その観点から成果主義で所得に格差をつけることが、仕事へのモチベーションを高めるというのは、それ自体は正しい考え方ではあります。

しかし実際に高付加価値を生み出せる企業は少数に留まり、分業体制の組み換えによって、従来とは異なった分配の原理が働くようになっているのです。DRAMで大失敗した日本の総合電機メーカーの例が典型的ですね。しかしこれは同時に企業の経営の失敗のツケを労働者が負担する話であるわけです。企業が高付加価値を生み出し多くの利益を得るのは、ひとえに経営の力であって、だからこそ経営に責任を負うトップマネジメントは成果次第で高額の報酬を手にするし、逆に失敗すればクビというリスキーな世界なんですね。

逆に製造現場では、安定した操業のためにも技術の習得のためにも安定した雇用環境は必須なわけで、実はこの部分では終身雇用、年功賃金制が最も理にかなった方法なんですね。ただしその雇用環境を維持すること自体が難しくなっている状況はあるわけですが、経営者が将来を見据え適切な対応を取ることでしか切り開けないわけで、優秀な経営者はそうはいないので、結果的に企業の淘汰は進まざるを得ないわけです。

いわゆる勝ち組・負け組の議論ですが、とかく日本では結果ばかり注目されますが、重要なのは負ける勝負をいかにうまく回避するかなんですよね。そのために弱い分野から上手に撤退し、設備も要員も強い分野へシフトしていく必要があるのですが、多くの企業が負け戦を戦って惨憺たる結果となっているのは、ひとえに経営力のなさが原因です。少なくとも既に工場や工作機械などの生産設備を保有している企業にとっては、設備の更新投資の抑制だけで減価償却費による多額のキャッシュフローが生み出されるわけですから、これを明日のコア事業への投資に充てることは可能です。

格差社会が言われる昨今ですが、結果の格差よりも格差の原因に注目すべきです。現在問題になっている格差の原因は、ほとんどがリーダーの不作為によるもので、そのリーダーを甘やかす可能性のあるフランスのCPE法は、不適切であったといえます。ま、試用期間2年はエグいですが、日本では週40時間の労働時間の柔軟化が議論され始めており、虚妄の成果主義と相まってサービス残業の増加で過重労働を招きかねない話なんですが、メディアは伝えないし国民は無関心で、気がつけば過重労働の正規雇用と不安定なフリーターの究極の選択を迫られるということに相成ります。案外引きこもりのニート君が一番幸せだったりして^_^;。

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