« March 2006 | Main | May 2006 »

April 2006

Wednesday, April 26, 2006

耐震偽装で別件逮捕、一罰百戒の愚

まずはニュースウォッチングです。

姉歯元建築士ら8人逮捕・耐震偽装事件
いずれも耐震偽装本体での逮捕ではなく、すべて別件逮捕というところに、捜査当局の計算違いが垣間見えます。

建築基準法違反では罰金最高50万円で軽すぎるということで、懲役刑となる重い罪状での起訴を想定し、一罰百戒を狙ったものでしょうけど、同時に各当事者が共謀しての詐欺容疑の立件ができなかったということでもあります。そもそもこの辺の捜査方針からして無理スジといえます。

といいますのも、そもそもは建築基準法の改正で、建築確認のやり方が大幅に変わり、IT化によって構造計算自体がブラックボックス化したことに問題の本質があるわけで、それがために強度偽装が誰にも疑われずに実行され、民間や自治体などの確認検査機関にも見抜けなかったし、監督官庁の国土交通省ですら、問題の本質を理解しているかどうか疑わしいところです。以前の記事で指摘しましたとおり、そもそも大臣認定ソフトなるものに数値を打ち込んで、エラーメッセージが出なければOKなどというふざけた仕組みに問題があるわけで、今回一罰百戒で関係者を訴追できたとしても、問題の本質は変わっていないという点を指摘しておきます。別件逮捕で国民に溜飲を下げさせて幕引きでは、のど元過ぎてまたぞろ不正が横行することを留める術はないのです。

構造設計は確かに専門性が高く、なかなか素人ではチェックが難しいのですが、かつては少数の専門家が経験則に基づいて行っていた構造設計を、98年の建築基準法改正で、検査方法を法令で定義したのですが、アメリカからの市場開放要求もあって、4つの異なった構造計算方法が法令で指定され、それぞれ異なった想定に基づいてみなしで数値を決めたために、同じ建物を別の検査基準に従って計算し直すと、違う結果になるというあいまいさができてしまいました。実際には実験で検証するわけにもいきませんから、みなしで数値を決めること自体は仕方ないことなんですが、異なった基準が入り込んだ結果、監督官庁の技官ですら判定が難しい状況が出現した一方で、IT化で構造計算自体はブラックボックス化し、いわばサルでもできるようになってしまい、ある意味誰も検証できない状況になってしまったわけです。かくして別件逮捕のオンパレードとなり、制度の瑕疵は質されないままとなってしまいます。

一応建築基準法その他の改正案が今国会に上程されてはおりますが、罰則を強化して抑止効果を期待するというのはおざなりですし、専門家による二重チェックなどを盛り込んだりしても、責任がさらにあいまいになるだけの話です。当事者への重罰は、民事訴訟を睨んだときに被害者救済に資する要素はありますが、だからといって肝心なところを障らずに済ませるならば、悲劇は繰り返されることになるでしょう。ホントしょーもない話です。

加えてこの辺の論点をまともに取り上げたメディア報道はほぼ皆無ですが、メディアの迷走は尼崎事故に限らないのですね。

| | Comments (0) | TrackBack (2)

Tuesday, April 25, 2006

阪急、阪神経営統合で当事者の思惑は?

阪急、阪神経営統合に関する続報です。

阪急HD、阪神株TOB方針確認・取締役会
既定方針どおり淡々とスケジュールをこなした感がありますが、まだまだどう転ぶかわからない状況に変わりはありません。

阪神株の46%を保有する村上ファンドからの株式買取りをTOB(株式公開買い付け)で行うということですが、さまざまな憶測で、TOB価格は800円台ということで、阪神j株に失望売りが広がって値を下げたようですが、それでも900円台ですからTOB価格が市場価格を下回るという状況です。これは大量保有する村上ファンドからの買い取りをピンポイントで実施しようということです。大量保有する村上ファンドとしては、現状では市場に売りに出せば値崩れを起こして利益確定が難しくなるわけですから、市場価格を下回っても、十分な利益確定が可能な水準の価格であれば、応じる可能性はあります。ただし可能性は低いと思いますが。

一方で阪神の保有資産評価から見た株価水準は700円程度と言われており、TOB価格はそれを上回るわけですが、その差額は阪神のブランド価値であり、統合のシナジー効果を織り込んだときの適正水準という説明が阪急HD株主に対してなされるものと思われますが、それを実現するためには、少なからず阪神の事業のリストラを強いられることになると思われますので、今度は阪神労組筋の同意を得にくくなるなど、なかなか難しい微妙さがあります。

というわけで、まだまだ視界不良が続く経営統合ですが、そもそも村上ファンドにとっても、この展開は予想外だったのではないかと思われます。46%もの株式取得に至ったのは、早い段階で兆候を認識しながら、有効な対策を講じることができなかった阪神首脳陣の無策によるものである可能性があります。

村上ファンドによる阪神株取得は、梅田西地区の保有不動産が狙いではないかと言われました。実際梅田から福島にかけての地区で大規模な再開発が行われており、それを狙って阪神株を取得したのではないかと言われました。阪神の経営権を取得する意思があるならば、可能性はありますが、当初より純投資として経営参加の意思なしとしてきた村上ファンドにとっては、不動産投資は利益確定までの間に長い時間を要する非効率なもののはずです。もっと短期間に阪神の株式価値を高めることを考えていたのではないかと思います。ま、この辺は憶測の域を出ない話ではありますが。

元々阪神という会社は、創業以来チャレンジャーであったはずなんですが、戦後60年にわたって大手5社体制で安定していた関西私鉄界で、すっかりおとなしい虎になってしまったようです。そもそも阪神は汽車ダイヤで乗客の利便性など無きに等しかった官鉄線の平行路線として計画され、まだ鉄道網の整備途上で平行路線など論外で、少なくとも私設鉄道としては不可能だった路線を、都市内の路上交通の一部として府県知事特許で事業が可能な軌道法準拠で事業を立ち上げ、おそらく強烈なロビー活動の末に、路線の一部が道路にかかっていればよいという当局の見解を引き出したものです。その結果日本初のインターアーバン(都市間電車)として事業をスタートさせたばかりでなく、これを前例として後の京阪、阪急、近鉄、山陽など各社の事業に道をひらいたベンチャー企業だったわけです。同時期に開業した関東の京浜も、当初は大師電気鉄道の商号で官鉄川崎駅と川崎大師を結ぶ小規模な事業者に過ぎませんでした。

阪急との関係ですが、元々阪鶴鉄道の買収で現金を得た阪鶴の株主の資金を吸収し、配当を続けるという後ろ向きな事業としてスタートした箕面有馬電気軌道(以下箕有と記す)とは事業エリアも異なっていたのですが、箕有中興の祖小林一三による沿線開発が軌道に乗り、事業エリアを拡大してきたことで接点ができるのですが、当初は友好的なものだったようです。争いの始まりは六甲山の観光開発に関連するようで、ひょんなことから未成線の灘循環電気鉄道の経営権を箕有が取得したことで、箕有による阪神間の都市間輸送参入が実現し、よく知られたライバル物語となるのですが、どちらかといえば挑戦的だったのは阪神のほうで、神戸側のターミナル立地でも常に優位性を維持しようとしましたし、競争は阪神間に留まらず、系列の尼宝バスによる宝塚進出で阪急の肝を冷やしたりという具合です。戦時統合を逃れて独立を維持したあたりも、ある種の政治力を発揮したのかもしれません。逆に和歌山合同電気の買収や阪和電鉄への出資で失敗し、阪急に併合され、自ら建設した新京阪線を阪急に取られてしまった京阪とは真に対照的です。

灘高出身の村上氏が、この辺の事情をどれぐらいご存じかは定かではありませんが、ある種阪神経営陣への買いかぶりがあったとすれば、46%もの株式取得という、どう考えても短期に利益確定するには難しい局面を呼び込んでしまったことの説明がつくような気がします。戦後60年の安定が、阪神の起業家マインドを錆びつかせるには十分だったということではないでしょうか。村上ファンドの動きを早くに察知しながら、株価向上につながる対策を講じるでもなく、買い進むにまかせてしまい、結果的にライバルの阪急HDによる救済を歓迎するに至るというのは、何ともみっともない話です。しかも救済者は有利子負債9,400億円と、規模を除けばどう見ても現在の阪神よりも格下の相手です。

というわけで、まだまだ予断を許さない状況は続くと考えるべきでしょう。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

山手線、今度は線路が隆起

2月に線路が陥没してストップした山手線ですが、今度は線路の隆起です。

JR山手線、運転見合わせ
JR山手線など止まる・線路に異常
場所は高田馬場駅南600m地点の道路交差箇所で、道路拡幅のために線路下の盛土部分の工事をしていたところまで、2月の事故と共通ですが、前回は線路下に鋼管角パイプを挿入した後のトラブルであるのに対し、今回はパイプ挿入後、パイプにコンクリートを充填したところ、コンクリートが漏出して線路を押し上げたということで、長さ25mに亘って最大5cm程度の隆起となったものです。現場は西武新宿線が併走している区間ですが、なぜかJRの線路だけが隆起し、西武新宿線には異常は発生せず、何事もなく平常運転されておりました。

湘南新宿ラインの運転士が目視で発見して緊急停止したということで、大事に至らず何よりでしたが、駅間で緊急停止した山手線内回り電車が動けず、乗客2,000人が高田馬場駅まで線路上をJR東日本社員の誘導で避難する騒ぎとなりまして、改めて大都市の高密度運転線区でのトラブルの重大さを思い知らされます。

結果的に山手線と埼京線は前面運休、湘南新宿ラインは大宮と大崎で折り返し運転とし、運転再開は6時間後ということで、大混乱の1日でした。

JR山手線が運転再開
JR埼京線と山手線は運転再開
運転再開後も現場付近は地上職員の監視のもと、最徐行運転を行っており、25日始発後からは湘南新宿ラインも含めて運転再開されるものの、徐行運転は継続されるということで、安全優先の対応となっております。

原因は定かではありませんが、都内のJR各線では、現場のような盛土部を道路がアンダーパスしている箇所は数多くあり、自治体側の都市計画道路の整備に伴って、交差部の拡幅工事を行うケースは多く、鋼管角パイプを線路と直角に並べて水平に打ち込んで、内部をコンクリート充填して箱型の空間を確保して道路を通す工事は、各所で行われております。工法に問題があったかどうかは定かではありませんし、2月の事故とは原因も異なるわけですが、慎重を期して当面は同工法の工事を凍結することになったようです。

山手線トラブル影響32万人、同じ工法の工事中止
ただ問題は道路整備はいずれ必要なわけで、いつまで工事中止とするかは現時点ではわかりませんが、対策を講じて(工法の変更も含む)再開せざるを得ないわけですから、なかなか悩ましい問題です。ただ工事自体は道路側の工事であって、JR東日本は鉄道用地内ということで施工管理を請け負ってはいるものの、基本的にはとばっちりを受けた立場なんですが、メディア報道では1年前のJR福知山線事故と関連付けて報じるなど、相変わらずのミスリードぶりですが、つけるクスリはないもんでしょうか。

| | Comments (5) | TrackBack (0)

Wednesday, April 19, 2006

阪急・阪神経営統合は視界不良

何か関西方面が騒がしくなっています。

(4/13)阪急HDが引受先に浮上・村上ファンド保有阪神株
(4/19)阪急、共同持ち株会社案も・阪神株買い取りで
阪神電気鉄道株の46%を保有する村上ファンドですが、村上ファンドが株を買ったことによる値上がり期待で、いわゆる村上プレミアム状態では、売るに売れないまま決算を迎え、このまま6月の株主総会を迎えるならば、役員派遣によって経営参画し株主価値を高めるアクションを起こさなければ村上ファンドが出資者への説明がつかない状況になるわけです。

かくして決め手がないまま時間ばかりが経過する中、阪急HDが名乗りをあげたわけですが、やはり高い株価水準がネックとなり、今のままでは阪急HD自身が株主に説明がつかない状態です。狭いエリアで競合する両社ですから、統合によるシナジー効果は間違いなくありますが、だからといって、例えば人気球団の阪神タイガースのブランドを毀損するのは得策ではないですから、基本的には持ち株会社による経営統合はするものの、それぞれ事業会社としては別々でということになると思います。まして直近の収支では阪神が好調で、JR福知山線事故の振替輸送で息を吹き返した阪急が飲み込む形では、阪神の良さが生きないわけです。

しかし既に両社を含むスルッとKANSAI協議会による資材等の共同購入などは行われてますし、営業面でも提携が進み、また神戸高速鉄道を介して山陽電機鉄道との直通特急運転で関係を深める阪神に対して、特急の新開地発着で系列の神戸電気鉄道との継送にシフトする阪急という風に、棲み分けが模索されている現状で、あえて資本関係を持つことの意味はあいまいです。永年のライバル関係の印象が強いこともあって、ホワイトナイトのイメージを醸成するという説明も苦しいところがあります。

あとあえて言えば、既に人口減少が始まった関西圏で、現在の大手5社体制が維持できなくなる日が来ることが予想されますので、その日に備えて関西私鉄界の再編を仕掛けるという可能性は考えておく必要はありますが、それだと何か脂ぎったイメージで、上記のホワイトナイトとは程遠い感じになります。また阪神側に警戒感を生みますから、まとまる話もまとまらなくなるおそれがあります。

というわけで、まだまだ山あり谷ありで、簡単に結論には達しないと思われますが、一方の当事者である村上ファンドにとっては、早く売って利益確定したい事情がある以上、思いがけなく動く可能性はあります。ま、仮に経営統合が実現しても、京成電鉄と新京成電鉄のような、グループながら独自性の強い存在になる可能性が高いのではないでしょうか。少なくとも巷間いわれる阪急タイガースや京阪神急行復活という話ではないということは言えるのではないかと思います。

| | Comments (0) | TrackBack (1)

Monday, April 17, 2006

新幹線反対派市長当選、佐賀県鹿島市

長崎新幹線の続報です。

新幹線着工“反対派”市長当選 佐賀知事「今後も協議」
というわけで、佐賀県知事は協議を続けるそうですが、鹿島市長への切り崩しは熾烈なものになりそうです。

長崎新幹線問題ですが、武雄温泉-諫早間約45kmの新規着工に伴って、平行在来線区間の肥前山口-諫早間が経営分離されることに対して、平行在来千区間に立地する鹿島市が危機感を募らせるのは当然のことです。しかも長崎新幹線の今回着工区間には2,700億円の事業費がかかる一方、時間短縮効果は28分でしかなく、1分100億円弱という信じられない効率の悪い投資です。公共事業の問題点としてたびたび指摘される非効率な事業といえます。財政再建が議論されているそのときに、このような事業が新規着工されるとすれば、悪い冗談でしかないですし、それだけ中央政界での議論が地域の各論で否定されるのであれば、改革が名ばかりであることの証です。

公共事業であっても、投資効率の高い案件も当然存在しうるわけですが、長崎新幹線はとりわけひどい代物といえます。そもそも九州新幹線鹿児島ルートが実現すれば、ボトルネックとなっている博多-鳥栖間の輸送力増強は果たせるのであって、あえて作る必然性に乏しいのは自明です。推進派の説明としては、鹿児島ルートが博多まで開業すると、博多までの時間距離が逆転し、長崎が置き去りにされるというのですが、対博多で鹿児島と争うという志の低さに唖然とします。

元々徳川幕府の治世で、出島での大陸貿易の独占で栄えた長崎ですが、東シナ海の向こうには、東京より近くに上海があるという好立地なのに、それを活かす発想がないのが不思議です。まさか倒幕に動いた鹿児島への恨みだったりして^_^;。

あとフリーゲージトレインについてですが、長崎新幹線でも、新規着工区間をフル規格で建設し、フリーゲージトレインで新在直通すれば更に10分の時間短縮が可能というとらぬ狸な議論もされてますが、そもそもフリーゲージトレインは現在開発中であって、実用化のメドも立っていないということは忘れてはいけません。レールと車輪の関係に関わる基本技術に関わる技術開発ですから,開発要素が多く、実現のハードルは高いといえます。仮にはーd的には可能性が拓けたとしても、コストが高ければ営業運転には使えないわけですし、どちらかといえば、既存新幹線区間から末端の在来線への新在直通運転を地上線路の軌間変更なしに可能であるという点からすると、導入可能な場面は限られると考えるのが自然です。

というわけで、これから強烈な切り崩しに遭うであろう鹿島市の桑原市長と鹿島市民には、くれぐれも頑張ってほしいところです。

| | Comments (2) | TrackBack (1)

10年で経年劣化?ゆりかもめの苦悩

というわけで、ゆりかもめの続報です。

「ゆりかもめ」タイヤ外れ、金属疲労が原因
通常の加速時に車軸にかかったトルクでねじ切れたものということですから、結構深刻です。前の記事を書いているときも頭をよぎりましたが、オーバーユースによる経年劣化の可能性を疑っていただけに、正直なところ、ホンマカイナという感じです。10年でハブが金属疲労破断するぐらい乗客を運んでやっと黒字ということだとすると、ゴムタイヤ駆動の軌道系システムは結構使えない代物ということになりかねません。

こんなんもありました。

ゆりかもめ、17日始発から運転再開 金属疲労が原因か
ハブの損傷をチェックする磁粉探傷検査を11月に導入しながら、事故車両はその前に検査入場していたので、検査の網にかからなかったということのようです。ま、悪いことが起きるときってこんな感じなんでしょうけど。

対策は検査体制を見直すとともに、早目の部品交換で対応ということになると思いますが、想定外の追加コストを負担するわけですから、既に黒字を重ねているゆりかもめは良いとして、現在工事中の日暮里舎人線などでジワリと影響が出るかもしれません。

愛知万博のときのリニモが混雑でストップしたときにも書きましたが、使い込まれていない新技術は、思わぬところに落とし穴があるもので、特に輸送力を問われる公共交通において、輸送力の上方弾力性が乏しいというのは、致命的な欠点と考えて良いでしょう。鉄車輪と鉄レールの成熟した鉄道技術が見直されることが望ましいと考えます。

| | Comments (2) | TrackBack (1)

Saturday, April 15, 2006

ゆりかもめ、手痛い週末全面運休

ゆりかもめが動きません。

ゆりかもめ急停止、タイヤ外れる・午後8時から全線運休
ゆりかもめ、始発から全線運休・行楽客らの足に影響
ゆりかもめ、運転再開のめど立たず
ゆりかもめ、16日も始発から全線運休
というわけで、前代未聞の週末全面運休となり、行楽客で平日より1割増の稼ぎ時をフイにしてしまいました。

現時点では原因不明ですが、ハブの損傷といえば、三菱ふそうのリコール隠し事件発覚のきっかけとなった横浜市瀬谷区のトレーラー車輪脱落事故を連想させます。歩行者もいる公道の事故と専用の高架軌道上の事故の違いはありますが、死傷者がいなかったのは幸いです。また、非常発報装置が作動して緊急停止という報道を見る限り、無人運転のバックアップ装置が正常作動したということですから、無人運転がかえって安全に寄与したということになりそうです。

システム的には横浜の金沢シーサイドラインと同等の側方案内式ゴムタイヤ駆動新交通システムですが、公道上を走る自動車と違って、走行中のトラブルが許されない専用軌道上を走る新交通システムですから、タイヤもスチールラジアルですし、ホイールやハブの強度や耐久性も考慮されているはずですし、車両保守も作業平準化の目的もあって、計画保守体制が組まれているはずですから、通常ならば考えられない事故ということになります。しかし事故は起きてしまいました。

96年の開業以来好調が続き、02年のりんかい線全通で利用減はあったものの、黒字基調が続き今月豊洲延長もあって、三セク鉄道事業者としては例外的な存在といえるゆりjかもめですが、事故調の調査を優先させての運休ということで、先行き不透明感が漂います。鉄車輪と鉄軌道の通常鉄道であれば、ここまで大事を取る必要もなかったわけで、鉄道という成熟した技術の集積の信頼感の高さを痛感します。

ま、とりあえずはこれぐらいにして、事故調の発表を待ちましょう。

| | Comments (0) | TrackBack (1)

Wednesday, April 12, 2006

東海道新幹線新ATCにバグ

1年前にもATCの制限速度の設定に誤りがあって、速度超過運転をしていた東海道新幹線ですが、3/18改正から全面的に使用開始した新型デジタルATC(ATC-NS)でまたもバグが見つかりました。

東海道新幹線の新ATCにプログラムミス・JR東海
自列車と先行列車の位置情報データの伝送タイミングに問題があったもようで、車上装置の処理能力をオーバーフローして非常停止したものということで、昨年のATCトラブルが僅かとはいえ日常的な速度超過という危ういものだったことに比べれば、とりあえず停止した今回のトラブルは、安全上の懸念がない分マシではありますが、何ともお粗末です。

ま、バグが見つかったということは、適切に対策される限りは、改善できるのですから、それはそれで良いのですが、今回は安全側へブレてくれたから良いようなものですが、報道だけではフェ-ルセ-フがシステム上で確保されていたのかどうかは定かではありません。というか、この辺は日本企業の弱点に直結する話なんで、またしてもかというのが正直な感想です。

日本企業の製造神話とでも申しあげますか、凝り性といえるほどに精密なつくり込みを得意とし、優秀なプロダクツを世界へ送り出した工業力が、デジタル時代になって、システム自体がソフト化している昨今、日本の精密加工の伝統だけでは、闘えなくなっているということです。そして日本が誇る新幹線技術も例外ではないということにほかなりません。むしろ精密加工などの得意分野があるために、ソフト力を磨くことがおろそかになっている気がして仕方ありません。

デジタル時代になってもアナログなリーダー達が変われないのは、メーワクではありますが^_^;、ある意味仕方ないところはあるんですが、若年層も含めて優秀なIT技術者が不足していて、インド人エンジニアに依存する日本のIT産業の弱点がそのまま出ているわけです。それを象徴するような出来事かと思います。

デジタル技術者の貧弱さは、とりもなおさず日本の数学教育の貧困の反映であって、以前話題になった「分数ができない大学生」(正確には「かつてはできたのに、やり方を忘れた大学生」だそうですが)問題の延長線上の問題なんですね。テクニックとしての計算能力に成果の比重が置かれているために、システム設計のような論理力を問われる場面で、証明問題など論理力を鍛える訓練が決定的に不足している結果といえます。これはそう簡単に解消できない問題です。

というわけで「愛国心」を法律で押し付ける前に、やるべきことがあるんですがね。


| | Comments (6) | TrackBack (0)

Tuesday, April 11, 2006

政府にCPE法を撤回させた仏国民の団結力

というわけで、全国規模のデモやストに揺れていたフランスですが、政府の大幅譲歩で決着しました。

仏政府、若者向け雇用策を撤回・学生らのデモ収拾へ
国際競争の激化で高い労働分配率が競争の制約要因となっているという議論は日本だけに留まらず、欧州でも見られます。グローバル化の結果として企業は若年者を雇用するハードルが高くなって、新卒雇用を手控える傾向にあるのが、結果的に若年雇用を減らし若年失業率を押し上げているという議論は日本でも見られます。結果的に日本では正規雇用の厳格化、即戦力化へと進み、新卒無業でフリーターやニートになるという流れになってしまっております。これを若者の不甲斐なさで片付けている日本ですが、フランスでは国鉄労組を皮切りに、怒れる若者の支援のストを打つという流れが加速し、ついに政府をねじ伏せてしまいました。

ま、基本的にデモは国民の権利だし、ストは労働者の権利という意識が強く、それを尊重する国民性が強いフランスですが、この部分はとかく迷惑と反応する日本の世論(と称するメディアの誘導?)とは大違いです。国民国家のナショナリズムの原点は、おそらくこういったことなんでしょう。万世一系の男系皇統だの靖国参拝だのでナショナリズムが語られる日本がなんとも幼稚に見えてしまいます。

CPE(初期雇用契約)法は、2年の試用期間を設けてその間は企業側が自由に解雇できるというものですが、企業にとってはパシリで使える若者を使い捨てることが可能になるわけで、これを規制緩和と称するセンスは相当のものです。ま、ただ豊かな国の抱える課題は洋の東西を問わず同じだということは確認できます。

豊かな国ってのは、つまるところ多くの過剰を抱えてしまっている社会なんです。少なくとも飢えから開放され、働くことの意義を見出しにくい社会ではあります。社会全体として生産性が高まれば、例えば日本でも戦後一貫して農業従事者が減少しながら、コメを中心に収量は増えているという現実があるわけで、少なくとも生活必需品は行き渡り、アクセク働くことの意味は失われている状況があります。

こういった社会でフローとしての生活費を稼ぐための労働を、労働は尊い、勤労精神を持てといっても無駄なんで、、労働に意欲を持って取り組むためには、個々人がいかにモチベーションを持ち続けられるかに懸かっているといえます。例えば携帯電話が典型的ですが、それ自体は生存に必須ではないけれど、劇的な技術革新の結果、思いがけない利用法が開発され安価に供給されることで、逆に付加価値部分の勝負となっているわけで、労働にも創造性が問われている状況があります。その観点から成果主義で所得に格差をつけることが、仕事へのモチベーションを高めるというのは、それ自体は正しい考え方ではあります。

しかし実際に高付加価値を生み出せる企業は少数に留まり、分業体制の組み換えによって、従来とは異なった分配の原理が働くようになっているのです。DRAMで大失敗した日本の総合電機メーカーの例が典型的ですね。しかしこれは同時に企業の経営の失敗のツケを労働者が負担する話であるわけです。企業が高付加価値を生み出し多くの利益を得るのは、ひとえに経営の力であって、だからこそ経営に責任を負うトップマネジメントは成果次第で高額の報酬を手にするし、逆に失敗すればクビというリスキーな世界なんですね。

逆に製造現場では、安定した操業のためにも技術の習得のためにも安定した雇用環境は必須なわけで、実はこの部分では終身雇用、年功賃金制が最も理にかなった方法なんですね。ただしその雇用環境を維持すること自体が難しくなっている状況はあるわけですが、経営者が将来を見据え適切な対応を取ることでしか切り開けないわけで、優秀な経営者はそうはいないので、結果的に企業の淘汰は進まざるを得ないわけです。

いわゆる勝ち組・負け組の議論ですが、とかく日本では結果ばかり注目されますが、重要なのは負ける勝負をいかにうまく回避するかなんですよね。そのために弱い分野から上手に撤退し、設備も要員も強い分野へシフトしていく必要があるのですが、多くの企業が負け戦を戦って惨憺たる結果となっているのは、ひとえに経営力のなさが原因です。少なくとも既に工場や工作機械などの生産設備を保有している企業にとっては、設備の更新投資の抑制だけで減価償却費による多額のキャッシュフローが生み出されるわけですから、これを明日のコア事業への投資に充てることは可能です。

格差社会が言われる昨今ですが、結果の格差よりも格差の原因に注目すべきです。現在問題になっている格差の原因は、ほとんどがリーダーの不作為によるもので、そのリーダーを甘やかす可能性のあるフランスのCPE法は、不適切であったといえます。ま、試用期間2年はエグいですが、日本では週40時間の労働時間の柔軟化が議論され始めており、虚妄の成果主義と相まってサービス残業の増加で過重労働を招きかねない話なんですが、メディアは伝えないし国民は無関心で、気がつけば過重労働の正規雇用と不安定なフリーターの究極の選択を迫られるということに相成ります。案外引きこもりのニート君が一番幸せだったりして^_^;。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

Sunday, April 02, 2006

政治に翻弄された英国鉄道改革

3/18ダイヤ改正で華々しくスタートしたJR東日本と東武鉄道の相互直通による新宿-日光・鬼怒川間の特急が走り始め、オールドファンから国鉄時代には考えられないの声も聞かれますが、巷では旧国鉄型ブームだそうで、東海道線東京口からの113系引退は、全国紙での記事にされるようなニュースになりましたが、それだけ1987年の国鉄分割民営化が遠くなったわけで、昨今はリアルタイムな国鉄時代を知らない若いファンもふえております。

日本の国鉄改革は、間違いなく世界の鉄道改革を先導した改革であったと思いますが、その意義に関しては、あまり十分な検証がなされているとは言い難いところです。そもそも同じ“国鉄”を名乗ってはいても、各国で事情は異なり、改革すべきゴールも違うわけですが、そういったことはたいてい無視されて、結果だけが安直に比較され、例えば「上下分離は英国で大混乱を招き、事故を多発させている」などの言説がしたり顔で語られたり、ドイツのICEの事故が「民営化のせい」にされたりといった間違いが多数流布しております。

この手の問題を国際比較という視点で捉える問題意識自体が希薄ですが、欧州を中心に、かなり意欲的な改革が取り組まれ、それなりに失敗していること自体は、チャレンジ精神とポジティブに評価することも可能ですし、第一、他人の失敗を学んでこそ、自らも成長できるのであって、その意味では欧州の鉄道改革は、参考になる話テンコ盛りでして、知らないと損をすると断言しておきます。

そういった意味では1999年刊とやや中身が古くなっているのかもしれませんが、サイドバーで取り上げた鉄道改革の国際比較は、類書がないという意味で貴重ですし、EUの鉄道政策の各国での具現化過程をリアルタイムでレポートされているという点でも、また日本の国鉄改革から12年というタイミングでの刊行も、歴史をふり返る意味でも有意義であるということができます。

特に日本ではほとんどまとまった報告がされていない英国の鉄道改革に関して、臨場感あふれるレポートは秀逸です。特にいかに当時の政治状況に翻弄され、改革を推進していた現役運輸相が汚職事件で地位を失うなど、スキャンダルまみれで、何か東洋のどこかの国を連想させてくれます^_^;。下院優位の英国の政治制度は、ある意味日本とそっくりでして、国民的には不人気だった鉄道改革の否定に期待がかかった上院であっさり通ってしまったあたり、常に参議院の存在意義が議論される日本とよく似ています。

詳細をここでお伝えするには多すぎるボリュームですが、ざっくりいえば、鉄の女サッチャー元首相でさえも手を出せなかった難物の鉄道改革を推進したのは、サッチャーの後継者として政権の座に就いたメージャー前首相でした。しかもとかくサッチャーと比較され、国民的には不人気なリーダーだったメージャーが、起死回生に利用しようとしたのが、英国の鉄道改革だったといえば、何かしらきな臭い雰囲気を醸しますね^_^;。

功を焦った若きリーダーは、十分な確証を持たないまま、熱心な推進派を運輸相に任命し、いわゆる“丸投げ”をするわけですが、改革作業半ばでスキャンダルで失脚してしまいます。また日本の鉄道が私的所有によって改革が達成されたという間違ったプロパガンダまで行われたあたりは、日本人から見ると違和感が漂います。でも、今、日本で展開されている“改革”議論の多くが、外国の事例を無批判に引き合いに出しているあたりを見ると、どっこいどっこいってとこでしょうか。

ま、結果として当初民営化を見合わせるはずの線路保有機関のレールトラック社をいきなり民営化し、さらに政府補助金をカットするなどで改革の成果を大きく見せようとした結果必要な線路保守が行き届かず、高速化などの前向きな投資も先送りされ、事故その他さまざまなトラブルの種となりました。この辺はJR西日本のことを思い起こさせます。

また成果の極大化はリーダーの焦りの結果と見れば、贋メール問題で揺れる日本の民主党を彷彿させます。ま、同時に1億円小切手で訴追されない自民党と贋メールでガタガタになる民主党の違いは政権党かどうかであって、インチキな改革でも英保守党が政権の座にあったからこそ、曲がりなりにも実現できたという点も見逃せません。政権を取ったもん勝ちだからこそ、政治家は政権へ意欲を持つのであって、小泉政権下で切り崩されはしたもののの、長老が居座る自民党からは、小選挙区では政界へ出るルートを事実上閉ざされていた永田議員のような若手キャリア官僚の受け皿として党勢を拡大してきた民主党にとっては、試練ですが、万年野党政党から脱却するチャンスと前向きに捉えておきましょう。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

« March 2006 | Main | May 2006 »