東急相鉄相互直通、横浜市の横暴相鉄の涙
かねてより話題の東急と相鉄の相互直通が決まりました。
相鉄と東急、相互乗り入れを申請詳しくは記事にあるとおりですが、少し目新しい部分は、都市鉄道等利便増進法の枠組みを活用した事業ということで、上下分離を前提とした整備の枠組みなんですが、従来の第三セクターによる線路保有とは別の手法でして、整備新幹線の都市鉄道版とでもいえばピッタリくるものです。これを公設民営と呼ぶかどうかは判断に迷いますが。
基本的に整備事業費を国、自治体、鉄道・運輸機構(旧鉄道建設公団の資産管理部門を引き継いだ独立行政法人)で1/3ずつ負担し、そのうち鉄道・運輸機構支出分を事業者がリース料を支払うことで間接的に負担する仕組みですが、リース期間の定めなどがどうなっているかなど、やや不透明な部分があり、仮に将来事業者が買い取りを希望した場合の取り扱いなどが不明です。JRによる既存新幹線買い取りの場合を前例とすれば、再取得価格(同等の施設を譲渡時点で再度新たに調達すると仮定した場合の時価)ということになりますが、裁量の余地が大き過ぎて、実際整備新幹線建設費捻出のために鉄道整備基金に拠出する目的で約2兆円の上乗せがされて、なおかつその約半分をJR東海が負担させられ、しかも地価の上乗せで処理されたことから、減価償却できずにJR東海の資金繰りを縛ってしまったためにヘソ曲げられちゃいました^_^;。
とまぁことほど左様にあいまいな仕組みで問題があるんですが、元々地価が高いために整備が進まない大都市圏での鉄道整備を促進する意味で、事業者からみれば魅力的な仕組みではあるわけで、2004年8月に相鉄とJR東日本による相互直通計画が発表されたとき、おそらく相鉄関係者は悲願の東京都心直通を少ない負担で実現できるグッドアイデアと胸を張っていたものと推察されます。しかし皮肉なことにこの枠組みを利用するがゆえにハードルが生じてしまいました。
JR・相鉄両者合同の記者会見が予定されながら、横浜市の横槍で突如会見が中止となり、それ以降今日まで関係者の調整が続いてきたわけです。つまり1/3を負担する自治体のうち、神奈川県は当初から賛成表明をしていたわけですが、横浜市が業務地区として開発を進めてきた新横浜を素通りする計画に反発したわけです。
元々神奈川東部方面線の名称で、東横線日吉-大倉山間の線増と大倉山-新横浜-鶴ヶ峰ー二俣川間の新線建設構想は古くからあり、横浜市を中心に協議会を発足させるなどしてきたいきさつがありますが、協議会のメンバーでもある相鉄がJR直通構想を打ち出したことで、事実上神奈川東部方面線の計画は棚上げ状態になってしまいます。それを横浜市が嫌い、一方で東急も新横浜進出を希望していたこともあって、横浜市が東急を抱き込んで相鉄に圧力をかけたというのが、今回のニュースの真相と考えてよいようです。
相鉄は自社沿線特に新線であるいずみ野線沿線の開発の進捗が芳しくないことから、東京直通を希望してはおりましたが、同時に横浜駅西口の駅ビル事業(髙島屋へ賃貸とジョイナス)、地下街(ダイヤモンド地下街)、レジャー事業(ムービル=撤退)など、一連の不動産を管理する立場でもあり、東部方面線が実現した場合の横浜駅のターミナルの空洞化は避けたいのが本音でした。ですから東横線との直通は、商業地区として強力なライバルの渋谷への顧客流出を促すおそれがあるわけで、おいそれと乗れない話ではあります。
一方のJR東日本との直通ですが、横須賀線、湘南新宿ラインへの直通で、ラッシュ時最大4本程度ということで、スピード面も加味して東京直通の恩恵は十分得られて、逆にターミナルとしての横浜の分担率も一定に保てる計画だったわけで、なおかつ相鉄サイドから見れば新線建設区間は2.7kmと少なくて済み、投下資本の少なさと効果の大きさのバランスが絶妙だったわけです。
かつ東横線直通の難点として、東急の車両限界の小ささから、専用の直通車を用意しなければならない点もコストアップ要因ですし、相鉄の最大編成10連に対して東横線8連、噂される目黒線直通の場合は6連ですから、この点でも相鉄側で列車設定に制約が生じてしまうなど、正直なところあまりありがたくない話です。
それでも横浜市が協議に参加してくれないことには、JRへの直通も実現できない以上、相鉄にとっては苦渋の選択だったと考えてよいでしょう。かくして渋々東急との直通計画を呑んだと考えられます。救いは西谷-横浜羽沢間を2015年まで先行開業しJRとの直通を先行させる点でして、横浜羽沢-新横浜-日吉間は2019年開業予定と時間差がある点でして、県や市の財政事情によっては後半はキャンセルもしくは先送りされる可能性がある分、時間差によるリスクヘッジの可能性があるわけです。その間に本線に特急を走らせて海老名での小田急との継送のパイプを太くして、横浜対小田急沿線で需要を掘り起こして横浜のターミナルとしての吸引力を維持する時間も稼げる可能性があります。
というわけで、JRと相鉄のいかにも民間らしい投資効率の良い計画を横浜市が台無しにしたという評価をせざるを得ません。地元企業を大切にしないで地域活性化もないもんですよね。
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Thursday, January 05, 2006
相鉄と東急、新横浜経由直通報道の読み方
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