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May 2006

Saturday, May 27, 2006

東急相鉄相互直通、横浜市の横暴相鉄の涙

かねてより話題の東急と相鉄の相互直通が決まりました。

相鉄と東急、相互乗り入れを申請
詳しくは記事にあるとおりですが、少し目新しい部分は、都市鉄道等利便増進法の枠組みを活用した事業ということで、上下分離を前提とした整備の枠組みなんですが、従来の第三セクターによる線路保有とは別の手法でして、整備新幹線の都市鉄道版とでもいえばピッタリくるものです。これを公設民営と呼ぶかどうかは判断に迷いますが。

基本的に整備事業費を国、自治体、鉄道・運輸機構(旧鉄道建設公団の資産管理部門を引き継いだ独立行政法人)で1/3ずつ負担し、そのうち鉄道・運輸機構支出分を事業者がリース料を支払うことで間接的に負担する仕組みですが、リース期間の定めなどがどうなっているかなど、やや不透明な部分があり、仮に将来事業者が買い取りを希望した場合の取り扱いなどが不明です。JRによる既存新幹線買い取りの場合を前例とすれば、再取得価格(同等の施設を譲渡時点で再度新たに調達すると仮定した場合の時価)ということになりますが、裁量の余地が大き過ぎて、実際整備新幹線建設費捻出のために鉄道整備基金に拠出する目的で約2兆円の上乗せがされて、なおかつその約半分をJR東海が負担させられ、しかも地価の上乗せで処理されたことから、減価償却できずにJR東海の資金繰りを縛ってしまったためにヘソ曲げられちゃいました^_^;。

とまぁことほど左様にあいまいな仕組みで問題があるんですが、元々地価が高いために整備が進まない大都市圏での鉄道整備を促進する意味で、事業者からみれば魅力的な仕組みではあるわけで、2004年8月に相鉄とJR東日本による相互直通計画が発表されたとき、おそらく相鉄関係者は悲願の東京都心直通を少ない負担で実現できるグッドアイデアと胸を張っていたものと推察されます。しかし皮肉なことにこの枠組みを利用するがゆえにハードルが生じてしまいました。

JR・相鉄両者合同の記者会見が予定されながら、横浜市の横槍で突如会見が中止となり、それ以降今日まで関係者の調整が続いてきたわけです。つまり1/3を負担する自治体のうち、神奈川県は当初から賛成表明をしていたわけですが、横浜市が業務地区として開発を進めてきた新横浜を素通りする計画に反発したわけです。

元々神奈川東部方面線の名称で、東横線日吉-大倉山間の線増と大倉山-新横浜-鶴ヶ峰ー二俣川間の新線建設構想は古くからあり、横浜市を中心に協議会を発足させるなどしてきたいきさつがありますが、協議会のメンバーでもある相鉄がJR直通構想を打ち出したことで、事実上神奈川東部方面線の計画は棚上げ状態になってしまいます。それを横浜市が嫌い、一方で東急も新横浜進出を希望していたこともあって、横浜市が東急を抱き込んで相鉄に圧力をかけたというのが、今回のニュースの真相と考えてよいようです。

相鉄は自社沿線特に新線であるいずみ野線沿線の開発の進捗が芳しくないことから、東京直通を希望してはおりましたが、同時に横浜駅西口の駅ビル事業(髙島屋へ賃貸とジョイナス)、地下街(ダイヤモンド地下街)、レジャー事業(ムービル=撤退)など、一連の不動産を管理する立場でもあり、東部方面線が実現した場合の横浜駅のターミナルの空洞化は避けたいのが本音でした。ですから東横線との直通は、商業地区として強力なライバルの渋谷への顧客流出を促すおそれがあるわけで、おいそれと乗れない話ではあります。

一方のJR東日本との直通ですが、横須賀線、湘南新宿ラインへの直通で、ラッシュ時最大4本程度ということで、スピード面も加味して東京直通の恩恵は十分得られて、逆にターミナルとしての横浜の分担率も一定に保てる計画だったわけで、なおかつ相鉄サイドから見れば新線建設区間は2.7kmと少なくて済み、投下資本の少なさと効果の大きさのバランスが絶妙だったわけです。

かつ東横線直通の難点として、東急の車両限界の小ささから、専用の直通車を用意しなければならない点もコストアップ要因ですし、相鉄の最大編成10連に対して東横線8連、噂される目黒線直通の場合は6連ですから、この点でも相鉄側で列車設定に制約が生じてしまうなど、正直なところあまりありがたくない話です。

それでも横浜市が協議に参加してくれないことには、JRへの直通も実現できない以上、相鉄にとっては苦渋の選択だったと考えてよいでしょう。かくして渋々東急との直通計画を呑んだと考えられます。救いは西谷-横浜羽沢間を2015年まで先行開業しJRとの直通を先行させる点でして、横浜羽沢-新横浜-日吉間は2019年開業予定と時間差がある点でして、県や市の財政事情によっては後半はキャンセルもしくは先送りされる可能性がある分、時間差によるリスクヘッジの可能性があるわけです。その間に本線に特急を走らせて海老名での小田急との継送のパイプを太くして、横浜対小田急沿線で需要を掘り起こして横浜のターミナルとしての吸引力を維持する時間も稼げる可能性があります。

というわけで、JRと相鉄のいかにも民間らしい投資効率の良い計画を横浜市が台無しにしたという評価をせざるを得ません。地元企業を大切にしないで地域活性化もないもんですよね。

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Thursday, January 05, 2006
相鉄と東急、新横浜経由直通報道の読み方

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Thursday, May 25, 2006

買収防衛策に揺れる大手私鉄


















私鉄大手14社連結業績
単位億円上段=2006年3月期実績
下段=2007年3月期予想
括弧内増減率%
売上高最終損益
東急13,885( 32)
13,750( -1)
419( 18)
400( -5)
近鉄9,484(-14)
9,200( -3)
177(-14)
210( 18)
名鉄7,402( -6)
7,020( -5)
132( -)
110( -5)
東武6,463( 1)
6,480( 0)
268(120)
390( 45)
小田急6.104( -3)
6,200( 2)
152(280)
155( 2)/TD>
阪急HD4,861( 2)
4,940( 2)
253( -3)
286( 13)
京王4,382( 1)
4,234( -3)
198( 6)
198( 0)
西鉄3,203( 1)
3,497( 9)
79( 85)
80( 1)
京急3,119( -2)
3,270( 5)
116( 6)
120( 5)
阪神3,132( 5)
3,180( 2)
64( 29)
84( 31)
相鉄3,045( -2)
3,010( -1)
61( 1)
62( 2)
京阪2,630( 7)
2,570( -2)
72( 25)
70( -3)
京成2,260( 3)
2,420( 7)
84(-29)
94( 11)
南海1,904( -3)
1,960( 3)
-65( -)
94( -)

株主総会シーズンとなって各社の決算発表が相次いでおりますが、再建中で非上場の西武を除く大手私鉄14社の決算が出揃いました。全体としては本業の鉄道事業の売上好調とマンション販売その他の不動産事業の好調で、業績を軒並み上げており、景気回復の恩恵を受けたといえます。またバブル期の過剰債務に苦しんだ各社も事業の再編が進み、9社が純利益過去最高となるなど、全体として好調といえる結果となっております。

とはいえ阪神の村上ファンドによる株式取得問題を始め、京成をプリヴェチューリッヒ、東急を米キャピタルグループが株式取得するなど、キナ臭い雰囲気は漂っております。景気回復を受けて大都市圏で一部地価反転上昇が見られる中、鉄道事業者の多くは保有不動産に含み益を抱える状況になってきており、それが投資ファンドに狙われる理由になっているようです。それゆえ各社の関心事は買収防衛策だそうですが、何か阪神を笑えないですね。

含み益依存経営をしていた各社は、バブル崩壊による地価下落で塗炭の苦しみを味わったはずなんですが、のど元過ぎれば忘れてしまう熱さなんでしょうか。景気回復で業績が上向いている今だからこそ、中長期の明確なビジョンを示すべきときだと思います。村上ファンドの株式取得を許した阪神の例でいえば、元々時価転換社債を大量発行していたものを、村上ファンドに目をつけられて転換社債を大量に買い付けられ、権利行使された結果の大量保有です。言ってみれば目先の資金調達を既存株主の権利希薄化と引き換えに有利な条件で行い、地価反転上昇を追い風に不動産含み益を得たのであれば、何らかの株主還元策を講じるべきなんですね。たとえば不動産ファンドを組んで転売することで、現金収入を得ると同時に将来の地価下落リスクをファンドに移転することなどが考えられます。保有するホテルやオフィスビルの賃料を漫然と受け取る状況というのは、含み益の恩恵もなければ将来への保障もない状況だということは、バブル崩壊で学習したはずではないでしょうか。5月施行の改正新会社法でも、株式公開会社の取締役に株主に対する善管注意義務を求めております。地価の再度の下落があれば、訴訟を覚悟すべきでしょう。

あるいはそうして得た資金で本業の競争力強化策を実行し、来るべき高齢化と人口減少に備えることは、業績好調の今だからこそ考えるべきことなんですが、聞こえてくるのは株式持合いや事前告知型の買収防衛策の導入などなど、経営陣の自己保身を連想させることばかりです。既に京浜急行が近畿日本ツーリストとの株式持合いを決め、他社にも追随の動きがあるようです。京急に関しては羽田空港国際化を睨んで大手旅行会社との良好な関係をつくることは、それなりに理由のあることではありますが、株主価値向上のための戦略的提携であるということを説明すべきではないでしょうか。各社の奮起を期待します。

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Wednesday, May 24, 2006

改正都市計画法成立で改革逆行

以前記事にしましたまちづくり三法改正の第一弾として、都市計画法の改正が可決成立しました。

大型店舗の郊外出店を規制・改正都市計画法が成立
郊外の大型ショッピングセンターの進出でシャッター通りと化している地方都市中心部の衰退を阻止する狙いということです。

既に当ブログでは

Monday, July 25, 2005
商業施設と病院の立地規制?
Sunday, August 14, 2005
規制のためなら縦割りも何のその
という2つの記事でこの問題を取り上げました。原則として1万m^2以上の大型商業施設が規制の対象となり、従来出店可能な用途地域6つを3つに絞って、無制限な出店に投網をかけようということですが、いくつか疑問もあります。

元々用途地域自体が自治体の開発計画によってしばしば見直されるのですが、行政による線引きそのものに裁量の余地が多く、そのために土建屋の札束攻勢や議員の口利きなどなど、汚職の温床となっている部分なんですね。ま、早い話が、今回の改正都市計画法で、大規模商業施設を作ろうとすると、地方議員や有力者に金をばらまかないといけなくなるというわけです。これで果たして地方都市中心街の衰退を止められると言えるでしょうか。

元々都市中心部の商業地域の多くの土地建物は、代々世襲されていたいわば抵抗勢力の温床みたいなところだったんですが、おざなりに商売を続け、消費者の利便に背を向けてきた結果として、郊外立地のショッピングセンターに敗北したことを棚に上げて、出店規制で乗り切ろうとうするわけですから、時代に逆行しているといわざるを得ません。しかし国交省に言わせると欧米並みのコンパクトシティを実現するためなんだそうで頭痛くなります。

衰退してシャッター通りになっても、所有者が変わらずに世襲されてしまうことに問題があるのですが、その結果として代々続いた老舗商店が閉店し、跡地にコイン駐車場ができるという笑えない現実があります。その結果やはり今国会で改正法が可決成立予定の中心市街地活性化法で国庫補助によって整備された駅前地下駐車場よりも安い駐車場ができてしまうのですから、結果的に世襲された駅前の土地の所有権は移転しないままとなります。こういう状況を放置して中心街に賑わいが戻ると本気で考えているとすれば、悪い冗談としか言いようがありません。消費者ニーズに背を向けたままの駅前商店なんぞ、駐車場以下の経済価値しか生み出さないわけですから、本来はより効率的に経済価値を生み出す者に明け渡すことを通じて活性化されるはずなんですがね。

中心街の老舗商店という抵抗勢力の財産保全を国の補助金を投入して行う話として整理できますが、郵政民営化もそうですが、改革を叫ぶ小泉政権下でこういったことが起こるのが不思議で仕方ありません。財政再建を叫ぶ一方での負担増で、しかも特定利益集団のみを利するという点でも逆行といえます。

あと平成の大合併で市制施行された自治体では、複数ある小規模な商業集積のうちどこを中心市街地に指定するかで悩んでいるそうですが、それが決まらないと都市計画自体が決められず、商業施設の誘致などもできないわけですから、合併したがために都市計画が作れないというジレンマに直面しています。小泉改革のことごとくがかくのごとしですが、もう笑うしかないですね。アホラシ。

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Monday, May 22, 2006

JR東日本E331系の凄く濃い中身

E331系が京葉線に登場し、次第に詳細がわかってまいりましたが、JR東日本が次世代車に求めるブレークスルーのもの凄さを実感します。今回登場した編成は先行量産車というよりは、長期実用試験と量産化時の課題発見を狙ったものであるとともに、将来の近郊輸送を見据えた最適システムの模索を兼ねた意欲作で、京浜東北線に901系として登場し、後に量産化改造で209系に編入された30両と似た位置づけの車といえます。ただしかなり革新的なコンセプトですので、実際の量産化はおそらくだいぶ先になりそうですが。

既にacトレインE993系が登場し、各種試験を行っているわけですが、その技術開発要素の大きなところは3つほどあります。

1.連接構造
2.DDM(ダイレクトドライブモーター)
3.ステンレスハニカムダブルスキンの薄肉構体構造
このうち1.と2.が反映され、構体構造はE231系に準じたステンレスツーシート工法で竣工しております。開発課題として難物だったのでしょうか。

高速電車での連接構造というと、真っ先に小田急ロマンスカーを連想しますが、E331系はかなり異なった構造となっております。4つの空気バネで前後の車体を支える4点支持で、中心ピンは荷重を支えないボルスタレス台車と同等の構造ですが、中心ピンが通常のボギー車の連結器の相当する連結体に固定されていて、シンプルで軽量なうえ、通常の連接車で見られる円盤状の渡り板がなく、ボギー車よりも偏倚が少ないので、連結面間400mmと狭くなっているなど、特徴的なメカとなっております。実際の走行シーンでどのような挙動をするのかは、ぜひ体験してみたいところです。

あわせて台車間距離が13.4mと短くなった結果、偏倚量の減少分を車体幅拡大に回して最大幅プラス39mmの2,989mmとしており、連接車で有効室内長が縮小した分をカバーしています。見送りとなった薄型構体構造とあわせれば、室内有効幅の拡大効果が目に見えるものになった可能性もあります。

あとDDMが目玉ですが、カルダン駆動でせっかくバネ上になったモーター質量がバネ下に戻ると思いきや、回転子軸を中空にして中を通る車軸へ自在継手で動力を伝達することでクリアするなど、巧みなメカでクリアしております。また回転子を永久磁石とすることで、誘導モーターよりも大きなトルクを得て制御の自由度も高まるわけですから、実現すれば夢のメカですが、メンテナンス性は未知な部分がありますので、営業運行で長期実用試験に供される意味は大きいですね。

今後どのように量産化されるかは未知数ですが、投入線区での最適性能をうたい転用を考えないと公式にいわれる209系以来の新系列車ですが、実際は微妙な車両需給から209系500番台の総武緩行線から京浜東北線へ転用されたり、E217系が編成をいじって東海道線に転用されたりと、小変化が見られます。仮に連接構造が量産車で本格採用されたとすれば、転用や編成変更に大きな制約があります。その意味では地下鉄直通車への投入がやりやすい気がします。車両限界の制約下で車体幅拡大というのも魅力的です。そのほかクロス-ロング可変座席の提案などもあり、ローカル路線への投入も場合によってはありかなと思わせます。

いずれにしても技術開発に対するJR東日本の骨太な哲学を感じさせるもので楽しみです。電動車のモーターを2個にして先頭車の重心を下げて脱線しにくくしましたとうそぶく某社とは大違いですね。

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Wednesday, May 17, 2006

京王の躓き阪神の迷走

京王と阪神は、結構類似点が多いのですが、どちらもバブルに踊らなかった点で、財務の健全性が言われます。厳密に申し上げれば、保有不動産の価格下落対策として、2002年3月期までの時限措置として、不動産損益通算の特例というのがありまして、関東では東武鉄道のみが適用を受けましたが、関西の5社はすべて適用されてますので、阪神の健全性はあくまでも関西の5社中で、という但し書きが付きますが、それでも含み益を吐き出してなお9,000億円以上の有利子負債が残る阪急HDに対し、再開発で地価が下げ止まった西梅田地区に不動産を保有する阪神には余裕があります。

両社ともに軌道法準拠で開業したインターアーバンを出自としますが、官鉄の汽車ダイヤに挑んだ阪神に対し、荷馬車や駕籠がライバルだった田舎電車の京王と、実態はかなり違いました。しかしインフラの脆弱さから戦後まで小型車が長編成で疾走する独特の風情から、不断の改良工事を経て大型車へと切り替えた歴史過程の類似性や、両端ターミナル駅が地下駅だったり、ホームへ向かう構内通路に地下道が多く跨線橋が少ないため、駅のたたずまいなども似ています。

そして片や耐震偽装事件で、他方は村上ファンドの標的として、ニュースな会社となりました。両社には思わぬ接点があります。まずは京王ですが、

耐震強度偽造事件で注目の京王プレッソイン
耐震強度偽装でホテルコンサル登場
この記事の中で、京王電鉄が純投資として宿泊特化型ホテル事業への進出を決め、そのときに総研のコンサルを受けたことを指摘いたしました。京王にとっては痛い授業料ですが、リスクをとって手元資金の有効活用を目指したそのスタンスは、結果は失敗だったとはいえ、経営面からは褒められるべきことといえます。

対する阪神ですが、保有不動産が下げ止まって上昇に転じたこと自体は、再開発の結果として地道な努力の成果ではあるのですが、それによって生じた含み益を活かす経営に思いを致さなかった結果、村上ファンドの標的とされたのですから、経営姿勢のぬるさを指摘されても反論できますまい。まして昨年9月時点で村上ファンドの大量保有が発覚してから、これといった株主価値向上策を打ち出すでもなく、ホワイトナイト探しに終始した半年だったといえます。

最初に助けを求めたのは、どうやら京阪だったようです。しかし京阪単独で村上ファンドの保有する阪神株を全て引き受けることなどできるはずもなく、京阪が呼びかけて在阪私鉄4社(京阪、阪急、近鉄、南海)を中心に関西財界の出資も仰いで、野村プリンシパル証券を監事とする受け皿ファンドを形成し、村上ファンドとの交渉を考えていたようです。阪急との経営統合は、これとは別に阪急単独で阪神株買い取りを検討していたものが、新聞報道でスッパ抜かれて表面化し、その結果阪急の意向で在阪4社の検討はストップしたようです。このあたりはさまざまな憶測が流れ、ネット上でもあれこれ詮索されたようですが、結論からいえば、1年前に比べて倍の水儒に値上がりした阪神株の時価が交渉のネックとなり、阪急HDと村上ファンドの交渉も不調が続いているというのが現状ということとなります。ま、村上ファンドの保有株式数が約2億株ですから、10円で総額20億円ずれるというスケールの話なんで、簡単にまとまるわけないんです。

現時点ではまだ不透明な部分はありますが、株主総会前に村上ファンド保有の阪神株は阪急HDが買い取ることで決着すると考えるのが妥当な雲行きです。理由はいくつかありますが、強気一辺倒に見える村上ファンド側の方が、実は追い込まれていると考えられます。理由はいたって単純でして、株主提案のように取締役を選任して経営に参画すると、大量保有する阪神株の売却はインサイダー規制の対象となるということです。取締役選任後は、実は村上ファンドの動きに自由度がなくなるという点で、本気で経営権を取りにきているわけではないと考えられます。加えて鉄道経営のプロをスカウトする気なら可能だったはずなのにそうしなかったことも、経営権取得の意思がないことを示す狙いがあると考えられます。第一経営というのは、村上ファンド以外の54%の株主の利益のために汗をかくということですから、何とも似合いません^_^;。

というわけで、メディア報道を含めて正しく把握されているとは言いがたいんですが、村上ファンドの現在の交渉相手は阪急HDであって、玉井取締役の件など、どう考えても過剰反応でしかないんですが、阪神経営陣がいろいろコメントを発しても、既に当事者能力を欠いているわけで、ありていにいえば負け犬の遠吠えなんですね。また阪急が買い取るにしても、今度は阪神の保有不動産の含み益が阪急HDの有利子負債の償還に使われる可能性もあるわけで、阪神にとってはけっして万々歳とはいかないんですが、そこまでは考えてないでしょうね。ホントしょーもなー。

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Sunday, May 14, 2006

神話高千穂トロッコ鉄道へ県が支援?

復旧が模索されている高千穂鉄道ですが、こんなニュースが入ってきました。

高千穂鉄道の新社への財政支援、宮崎県知事も「助成検討」
記事によれば、高千穂鉄道の鉄道資産を譲り受けて運行を予定する神話高千穂トロッコ鉄道(以下神話トロッコ鉄道と記す)への資産無償譲渡の可能性について言及したということです。意味するところは、支援ではなく助成というところがポイントです。

つまり直接的な財政支援を必ずしも意味しないと読むべきなんでしょう。県の立場として、運休中の高千穂鉄道の出資者の一員として、神話トロッコ鉄道から高千穂鉄道へ要請されている問題について、鉄道事業法で求められている事業の基本計画書などが判断材料となるわけで、特段目新しい内容でもないんですが、事業の継続性など、将来の全線復旧を含めた事業の見通しを示すというハードルを明らかにしたとおいうことです。というわけで、復旧への一里塚ではありますが、状況が好転したと考えるのは早計です。

神話トロッコ鉄道による復旧の取り組みの困難さは宮崎日日新聞の特集にまとめられておりますが、たとえばJR北海道が開発中のデュアルモードビークル(DMV)に期待するなど、実現性に疑問を持たざるを得ない部分もあります。

DMVに関してですが、道路走行を前提とした車両にとって本来不要な鉄道走行装置を搭載する結果、道路運送法に定められた重量制限をクリアする必要と、鉄道車両としての安全性の両立という難しい課題があり、簡単に実用化とはいかないでしょう。DMVがマイクロバスサイズとなった理由は重量問題からですし、背中合わせの2連となったのは、輸送力を持たせる意味と片側にしか客用扉のないバスボディの流用を前提とした苦肉の策でもあります。そもそもヤナセやコマツが鉄道会社に納入した保線用軌陸車の車検証記載重量の偽装問題で明らかになったように、業務用で低速運転前提の保線用軌陸車でさえ重量問題のクリアに苦慮している現実を見ると、旅客を乗せて安全に運ぶ営業用DMVの開発のハードルはきわめて高いといえます。

現実的なシナリオを考える必要があります。このときにネックとなるのは、鉄道資産の公的所有についての明確な定義がないことです。一応三陸鉄道で鉄道資産のインフラ部、具体的には線路、駅、信号装置などの建造物を取り除いた路盤、橋梁、高架橋などの部分について、公的保有とすることで、固定資産税負担を逃れていて、整備新幹線並行在来線の受け皿となった青い森鉄道でも踏襲されたいわゆる“公設民営”方式が実施されてますが、これは現行法の範囲内での負担軽減策として考えられたものの、元々鉄道資産の固定資産税は“公共性”を理由とし、また生産設備を構成するもので事業が継続する限り転売の可能性がないという理由で評価額を1/3に減免されているのですから、その中の素地部分についてだけ固定資産税負担をなくしたところで、負担減の程度は微々たるものといえます。

宮崎日日の特集にもありますが、とりあえずの復旧区間(槇峰-高千穂間)の無償譲渡を受けたとしても、被災区間である延岡-槇峰間を当面誰が管理するのかという問題は残るわけでして、仮に高千穂鉄道を清算するとなれば、何らかの処分をしなければならないわけで、たとえば道路用地として無償供出されるとしても、その時点で延岡側の復旧の可能性を閉ざしてしまうことになります。保留地として継続的に公的保有されることが望ましいのですが、現行法では難しいところです。本来は鉄道事業法などで公設民営の保有経営形態を定義できればすkっきりしますが。

公的助成といっても、場合によっては財政支出を必ずしも必要としないケースはありうるわけでして、制度を見直すだけで道が拓ける場合があるということを申し上げておきます。少なくとも高千穂鉄道の保有する鉄道用地は、転売できるような資産価値があるとは思えませんが、生きた鉄道として活かされる場合だけ、地域経済の下支え効果によって価値を生む性格のものといえます。地域の自立を制度面で支援することこそ、地方分権であり改革の名に値するものといえるのではないでしょうか。

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高千穂鉄道が問いかけるもの

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Monday, May 08, 2006

JR西日本は福知山線事故で変わったか?

JR福知山線事故関連の記事は以下の通りです。

Monday, April 25, 2005
JR福知山線尼崎事故の背景
Tuesday, April 26, 2005
スーパーひたち脱線に見る尼崎との違い
Sunday, May 01, 2005
尼崎事故ATS、緩和曲線、非常制動etc.
Tuesday, May 03, 2005
福知山線、ATS-P設置で運転再開とは?
Thursday, May 05, 2005
福知山線、ATS-P設置前に復活運転すべき理由
Sunday, May 08, 2005
尼崎事故の制度的側面
Monday, May 16, 2005
国土交通省ATS高度化に疑問
Sunday, May 29, 2005
福知山線6/13運転再開へ
Sunday, June 19, 2005
JR福知山線運転再開
Sunday, June 26, 2005
JR見習運転士の実技訓練、福知山線事故現場取りやめ(読売新聞)
Saturday, July 09, 2005
JR西日本321系設計見直しの怪
Saturday, August 06, 2005
尼崎事故、ブレーキかけず高速でカーブ進入…調査委
Thursday, August 11, 2005
:JR西の97編成、速度計表示に最大上下10キロ誤差(読売新聞)
Friday, August 12, 2005
公共交通の安全に新組織(共同通信)
Saturday, September 03, 2005
JR福知山線事故調中間報告
Friday, September 09, 2005
JR福知山線事故調中間報告の疑問

Wednesday, November 02, 2005
新型ATS、96か所で設定ミス…JR西が謝罪(読売新聞)
Thursday, November 03, 2005
みずほ、東証、JR、巨大システムに潜むリスク
うーん、リンク並べるだけでこのボリュームとは^_^;。

サイドバーのお勧め鉄道書で取り上げましたJR西日本の大罪ですが、メディア報道でもほとんど触れられていない労使対立を切り口として、JR西日本の問題点に迫っております。

同書でも指摘されてますが、国鉄民営化翌年の1988年12月5日、JR東日本中央緩行線東中野で起きた追突事故が、やはり直前のダイヤ改正で余裕時分を削ってスピードアップした結果、遅れが常態化し、事故列車も足の遅い103系で、回復運転中だったのですが、従来ならば運転士の赤信号見落としで済まされていたところを、JR東労組がヒューマンファクターの考え方で事故対策に労使で取り組む提案をし、粘り強く経営側を説得したことで、JR東日本の安全対策はJR他社に先んじることとなります。

何か戦後の労働運動大荒れの時代、日産労組のスト破りで辛酸をなめたトヨタ労組が結束し、打倒日産に燃えたことで現在の地位を築いたこととか、一昨年のプロ野球ストでプロ野球改革の方向性が認知されたことなどを連想させます。日本では労働組合といえば賃上げばかり言う圧力団体という印象が強いのですが、組合員の身分を護るために働いた労働組合があったというのは、日本では特質すべきことかと思います。

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Wednesday, May 03, 2006

高千穂鉄道が問いかけるもの

ウォームビズといえば、クールビズの冬版として環境省が提唱した省エネ運動で、室温20℃以下で厚着をすることで省エネを図ろうということでしたが、実は落とし穴があります。六本木ヒルズなどの高層オフィスビルでは、元々蓄熱性の高いコンクリート躯体の体積が大きく、また省エネ設計ということで断熱性能も高いのですが、その結果、IT機器の発熱で躯体が暖められ、冬季夜間の暖房オフ時間の室温が27℃という現実がありまして、ウォームビズのために冬でも冷房をしなければならないという本末転倒な現実があります。土地の高度利用、効率的利用のためには高層化が欠かせないと考えがちですが、実はかように資源浪費的で、果たして経済効率を高められるのかどうかは微妙です。

それでも都市の集積度が高い大都市圏の中心部の局地的なオフィス需要を満たしつつ、周辺の開発を抑制して公園その他の公共空間を作り出す手法としての高層ビル建設自体は意味のあることでしょうし、六本木ヒルズの例で言えば、麻布十番あたりのマンションや商業地としての発展に寄与したという意味での評価は可能です。むしろ問題はどこもかしこも高層ビルを建ててしまうことで、資源浪費を助長することにあると考えます。

しかしここ数年、不動産の証券化による流動性向上や、空中権など条件つきながら容積率緩和などで、高層ビルが次々と建ちあがり、再開発ブームの様相を呈しておりますが、既に高度集積となっている首都圏地域の再開発の結果、集積度をさらに高めても、国全体として見れば首都圏地域の人の移動や物流を非効率なものにする結果、国全体としての経済的パフォーマンスは低下することになります。

こういった観点から高千穂鉄道問題を見ると、首都圏と対極に位置する農山村の現実が浮き彫りになります。大都市部で資源浪費の結果、C02排出量が増えて温暖化が進み、結果的に台風で被害を受けるのは、高千穂鉄道沿線のような末端部となるということです。首都圏地域の再開発による利益はもっぱら首都圏のビジネスパーソンが享受し、開発の結果生じたコストは遠く離れた農山村地域が負うという、ある種自然の搾取と呼ぶべき現実があるわけです。

高千穂鉄道の被害総額は26億円といわれておりますが、これはあくまでも原状回復を前提とする数字でして、同等の水害を想定した高規格化を行う場合は40億円といわれます。首都圏の再開発による開発利益からすれば、けっして大きな数字ではないんですが、それ以前に開業以来赤字基調で推移し、利子収入を期待して積んだ経営安定基金も、長期に亘る低金利で赤字補填を果たせずに取り崩し、被災直前には車両の更新時期を迎えながら財源が得られないということで存廃の議論が始まったいただけに、県による復旧断念は、残念ですが現実的に避けられなかったといえます。そもそも低金利は銀行の不良債権問題があったから長期化したもので、結果的に融資を受けてきた大手企業が救済され、銀行自身もなりふり構わず不良債権の償却を進めて危機を脱した反対側に、高千穂鉄道のようなローカル鉄道の経営難へとしわ寄せされたということがいえます。

格差社会がいわれる昨今、なかには怪しげな議論も多数あるんですが、少なくとも地域間格差の拡大は、間違いなくここ数年拡大しております。格差拡大は市場経済に原理的にビルドインされた仕組みの帰結でもあり、格差を是正する仕組みが機能しなければ、格差拡大は避けられないところです。結果的に農業漁業林業などの第一次産業が疲弊し、補助金漬けで存続させているのですから、格差拡大のコストはむしろ高くなるのですが、三位一体改革でその補助金すらカットしようというのですから、地方の疲弊は留まるはずもありません。少なくともこの部分に関しては、小泉改革の負の側面と断定して差し支えないでしょう。

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