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Saturday, May 27, 2006

東急相鉄相互直通、横浜市の横暴相鉄の涙

かねてより話題の東急と相鉄の相互直通が決まりました。

相鉄と東急、相互乗り入れを申請
詳しくは記事にあるとおりですが、少し目新しい部分は、都市鉄道等利便増進法の枠組みを活用した事業ということで、上下分離を前提とした整備の枠組みなんですが、従来の第三セクターによる線路保有とは別の手法でして、整備新幹線の都市鉄道版とでもいえばピッタリくるものです。これを公設民営と呼ぶかどうかは判断に迷いますが。

基本的に整備事業費を国、自治体、鉄道・運輸機構(旧鉄道建設公団の資産管理部門を引き継いだ独立行政法人)で1/3ずつ負担し、そのうち鉄道・運輸機構支出分を事業者がリース料を支払うことで間接的に負担する仕組みですが、リース期間の定めなどがどうなっているかなど、やや不透明な部分があり、仮に将来事業者が買い取りを希望した場合の取り扱いなどが不明です。JRによる既存新幹線買い取りの場合を前例とすれば、再取得価格(同等の施設を譲渡時点で再度新たに調達すると仮定した場合の時価)ということになりますが、裁量の余地が大き過ぎて、実際整備新幹線建設費捻出のために鉄道整備基金に拠出する目的で約2兆円の上乗せがされて、なおかつその約半分をJR東海が負担させられ、しかも地価の上乗せで処理されたことから、減価償却できずにJR東海の資金繰りを縛ってしまったためにヘソ曲げられちゃいました^_^;。

とまぁことほど左様にあいまいな仕組みで問題があるんですが、元々地価が高いために整備が進まない大都市圏での鉄道整備を促進する意味で、事業者からみれば魅力的な仕組みではあるわけで、2004年8月に相鉄とJR東日本による相互直通計画が発表されたとき、おそらく相鉄関係者は悲願の東京都心直通を少ない負担で実現できるグッドアイデアと胸を張っていたものと推察されます。しかし皮肉なことにこの枠組みを利用するがゆえにハードルが生じてしまいました。

JR・相鉄両者合同の記者会見が予定されながら、横浜市の横槍で突如会見が中止となり、それ以降今日まで関係者の調整が続いてきたわけです。つまり1/3を負担する自治体のうち、神奈川県は当初から賛成表明をしていたわけですが、横浜市が業務地区として開発を進めてきた新横浜を素通りする計画に反発したわけです。

元々神奈川東部方面線の名称で、東横線日吉-大倉山間の線増と大倉山-新横浜-鶴ヶ峰ー二俣川間の新線建設構想は古くからあり、横浜市を中心に協議会を発足させるなどしてきたいきさつがありますが、協議会のメンバーでもある相鉄がJR直通構想を打ち出したことで、事実上神奈川東部方面線の計画は棚上げ状態になってしまいます。それを横浜市が嫌い、一方で東急も新横浜進出を希望していたこともあって、横浜市が東急を抱き込んで相鉄に圧力をかけたというのが、今回のニュースの真相と考えてよいようです。

相鉄は自社沿線特に新線であるいずみ野線沿線の開発の進捗が芳しくないことから、東京直通を希望してはおりましたが、同時に横浜駅西口の駅ビル事業(髙島屋へ賃貸とジョイナス)、地下街(ダイヤモンド地下街)、レジャー事業(ムービル=撤退)など、一連の不動産を管理する立場でもあり、東部方面線が実現した場合の横浜駅のターミナルの空洞化は避けたいのが本音でした。ですから東横線との直通は、商業地区として強力なライバルの渋谷への顧客流出を促すおそれがあるわけで、おいそれと乗れない話ではあります。

一方のJR東日本との直通ですが、横須賀線、湘南新宿ラインへの直通で、ラッシュ時最大4本程度ということで、スピード面も加味して東京直通の恩恵は十分得られて、逆にターミナルとしての横浜の分担率も一定に保てる計画だったわけで、なおかつ相鉄サイドから見れば新線建設区間は2.7kmと少なくて済み、投下資本の少なさと効果の大きさのバランスが絶妙だったわけです。

かつ東横線直通の難点として、東急の車両限界の小ささから、専用の直通車を用意しなければならない点もコストアップ要因ですし、相鉄の最大編成10連に対して東横線8連、噂される目黒線直通の場合は6連ですから、この点でも相鉄側で列車設定に制約が生じてしまうなど、正直なところあまりありがたくない話です。

それでも横浜市が協議に参加してくれないことには、JRへの直通も実現できない以上、相鉄にとっては苦渋の選択だったと考えてよいでしょう。かくして渋々東急との直通計画を呑んだと考えられます。救いは西谷-横浜羽沢間を2015年まで先行開業しJRとの直通を先行させる点でして、横浜羽沢-新横浜-日吉間は2019年開業予定と時間差がある点でして、県や市の財政事情によっては後半はキャンセルもしくは先送りされる可能性がある分、時間差によるリスクヘッジの可能性があるわけです。その間に本線に特急を走らせて海老名での小田急との継送のパイプを太くして、横浜対小田急沿線で需要を掘り起こして横浜のターミナルとしての吸引力を維持する時間も稼げる可能性があります。

というわけで、JRと相鉄のいかにも民間らしい投資効率の良い計画を横浜市が台無しにしたという評価をせざるを得ません。地元企業を大切にしないで地域活性化もないもんですよね。

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Thursday, January 05, 2006
相鉄と東急、新横浜経由直通報道の読み方

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Comments

うおー、そういう見方したことが無かったので、目からウロコでした。
相鉄はJRと乗り入れだけじゃなくて、東急ともかー、欲張りだなぁ…くらいにしか思っていたので(^^ゞ
勉強になりました。

Posted by: waka | Monday, May 29, 2006 at 10:57 AM

コメントありがとうございます。続報では地方負担分の900億円について、神奈川県が300億円、横浜市が600億円負担することで基本合意したそうで、早ければ9月にも着工の運びとなります。

ただし西谷-二俣川間は複線のままですから、1時間最大JRへ4本東急へ10本の直通となると、相鉄の既存線で受け入れることは不可能なんで、後から開業する東急連絡線分の列車は、ほとんどが横浜羽沢で折り返すことになると考えられますので、投資効率は著しく見劣りすることとなります。果たして市民にどう説明するつもりでしょうか。

Posted by: 走ルンです | Wednesday, May 31, 2006 at 08:53 PM

東横線は13号線との相互直通(更には東武東上線・西武池袋線)の暁には車輌を10両編成にしますよ。(ただし鈍行は除く)
目黒線も日吉までの順延および急行運転開始の頃に8両編成化がなされる予定です。

Posted by: 非鉄っちゃん | Monday, June 05, 2006 at 12:43 AM

だけど車両限界は大きくなりませんよね。相鉄サイドから見れば、自社サイズの車両と別の専用車を用意することは、どのみちコストアップ要因となりますし、西谷-二俣川間の線路容量が変わらない限り、直通列車は増やせないことに変わりはありません。

Posted by: 走ルンです | Monday, June 05, 2006 at 06:36 PM

はじめまして。確かに二俣川以西から横浜への直通列車の本数を減らさないとすれば、
相鉄からのJR・東急直通列車は極めて限られることになります。
しかし、この前提を変えてみることは可能でしょう。
現状、相鉄沿線からの上り利用者の大半は横浜まで乗車しています。
鶴ヶ峰、星川、天王町、西横浜、平沼橋では一定の降車もありますが、対横浜に
比べれば微々たるもので、二俣川以西からこれらの駅へ直通で行けなくとも
さほど問題はないといえます。現状でもいずみ野線利用者しか直通ではいけないですし。
であれば、西谷始発横浜行きの列車を設定して横浜への本数を確保するという発想は
当然出てくるでしょう。http://job.yomiuri.co.jp/news/jo_ne_06052319.cfm
また、上記の記事からは14本という数字は西谷以西からの乗り入れ本数をさしていると読み取れます。

素人なりに考えると、まず、二俣川~西谷は2003年8月ダイヤ改正以前の30本を設定し、
このうち14本は直通、16本が横浜行きと仮定します。西谷~横浜の本数ですが、国交省のデータで
神奈川東部方面線開業を仮定すると2015年の相鉄本線の輸送力・輸送量は、2000年に比べそれぞれ30%、40%下げると予測しています。
今回の直通構想は東部方面線そのものではありませんが、同じように仮定すれば
21本ということになります。つまり西谷始発横浜行きは5本となりますね。
横浜口の本数をこれだけ減らすのは問題という考え方もできましょうが、私は新線建設によるバイパス効果や
本数減少に伴うスピードアップ、混雑率は悪化しないことを考えれば許容範囲かと思います。
例えば、二俣川以西発横浜行きの優等が11本、各停が5本、西谷始発各停5本と考えればどうでしょうか。
なお、問題となるのは鶴ヶ峰ですが、直通列車や横浜行き優等を一部停車させればいいでしょう。
これらを全通過させると各停5本しか停車しなくなってしまいます。
長文失礼しました。

Posted by: SAM | Monday, June 05, 2006 at 09:34 PM

コメントありがとうございます。で、水を差すようで申し訳ないんですが、ピーク時14本/時間の運転計画は、あくまでも事業構想を国土交通省に提出して事業認可を得るための手続きの一環である点には注意が必要です。財政資金が投入される事業ですから、ある種の公約が必要になるわけですね。

現状は協議によって妥協点を探っているところでしょうけど、詳細がどうなるかはなお流動的です。完成時期の時間差もありますし、細部の詰めは結構タフな交渉となる気がします。特にラッシュ輸送以外での直通のメリットが少ない相鉄サイドで、東急線直通用の縮小限界車を多数保有することは避けたいはずですから、ラッシュ限定の片乗り入れに近い決着になる可能性は高い気がします。横浜市にしたって横浜駅の商業的な空洞化は望まないはずですから、この点は相鉄の言い分が通る可能性は高いのではないでしょうか。

Posted by: 走ルンです | Tuesday, June 06, 2006 at 12:58 AM

レスありがとうございます。そもそも1時間14本という数字は営業構想申請の段階で国交省に出されているものなんでしょうか?それとも次の段階の速達性向上計画で出されるものなのか、あるいははっきりした数字が構想や計画に盛り込まれるわけではないということでしょうか?
私はてっきり、1時間14本という数字は新聞で報道があっただけかと思っていました。

おっしゃるように、ラッシュ以外の乗り入れが限定的になる可能性も大いに考えられますね。新横浜を第2の都心として育てる気であれば、日中でも直通が一定数欲しいとも思いますが、東京都心・副都心への便が確保されればいいという割り切りでしょうか。
ところで、東急東横線・MM線・目黒線や西武池袋・有楽町・東武東上、三田・南北・SRの車両限界というのはそれぞれ同じ値なんでしょうか?

Posted by: SAM | Tuesday, June 06, 2006 at 02:19 AM

本文中にあります「都市鉄道等利便増進法」という法律の枠組みを用いた事業ですので、その法律で一連の手続きが定められているものです。

基本的には「既存ストックの活用」を前提に、既存の鉄道船同士の接続や直通などで利便性を向上することで、投資効率の良い交通インフラの整備を目指すものなんですが、事業認定を受けるためには、改善効果をあらかじめ明示する必要があるわけですね。そのための交渉家庭で出てきたのが「ピーク時1時間14本」の運転計画と考えてよいでしょう。

あと車両限界ですが、記憶違いでなければ最大幅で有楽町線ファミリーが2,870mm、東急関連が2,800mm、相鉄が2,930mm、やや異なった基準ですがJRが3,000mm(曲線部の偏倚を見込んで現状の実際は2,950mmというところです。相鉄からJRへの直通は問題ないですが、東急線へは専用車が必要となるわけです。

加えて東急、メトロ、都営各線はATCが必要ですし、建設中の13号線を含めてホームドア対応が必要になるなど、重装備を余儀なくされます。また相鉄線内の車両基地の収容力にも余裕が乏しいはずです。ですからかしわ台、西横浜、厚木に留まらず、いずみ野駅の副本線まで留置線として使われている状況です。JRとの直通ならば留置線を借用する余地もありそうです。

というわけで、東急との直通のために相鉄は過大な負担を強いられるわけです。

Posted by: 走ルンです | Tuesday, June 06, 2006 at 09:05 PM

民鉄界というか狭軌車両で日本最大でしたか、新6000系を導入した相鉄だけあって、JR以外に直通するには幅狭車がどうしても必要になってしまいますね。具体的な数値ありがとうございます。
利便増進法は一応存じておりましたが、新しい法律だけあってきちんと把握できておりません。でも、国会答弁なんか読んでみると意外に面白いものですね。運転本数についてはそういう解釈をしてみればよいのですね、なるほど。
色々ありがとうございました。参考になりました。

Posted by: SAM | Tuesday, June 06, 2006 at 11:34 PM

ATCに関しては「東急スタイル」とでもいうのでしょうか、東急が新玉川線で営団とともに開発したパターンのアレンジだと思います。13号と相鉄はそれに倣えばよいだけですからこの部分の装備はさほどかからないでしょうね。また乗り入れ時には7700も含め廃車が進むと考えます。その代替が乗り入れ準備車でホームドア対応とあれば普通であっても車輌置き換えの必要性は問われるわけですから費用追加はあったにせよ一定量の投資は止む無いと思います。車庫に関しては痛し痒しの部分もありますが、都営の西台が遊んでいますからここを借りるのも一考、埼玉高速も相当量持っていますね。

Posted by: SATO | Saturday, June 10, 2006 at 08:30 AM

多数のコメントいただきましてありがとうございます。SATOさんのご指摘は一考に価する部分があり、また続報もありますので、直接レスするのではなく、別スレ立てました。

http://btrainj.cocolog-nifty.com/hasirundesu/2006/06/jr_7828.html

よろしくお願いいたします。

Posted by: 走ルンです | Saturday, June 10, 2006 at 05:49 PM

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