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Thursday, June 01, 2006

出生率過去最低更新の1.25で年金官僚の高笑い

何か絶妙のタイミングで発表された昨年の出生率ですが、社会保険庁の不正免除問題でゆれるこのタイミングでの発表というのが匂います。

(6/1)出生率、05年「1.25」に・過去最低を更新
先に当ブログの立場を明らかにしておきますが、少子化対策は必要ないです。

そもそも先進工業国はすべからく少子化が進行しており、最近は韓国やASEAN諸国といった新興工業国でも同様の傾向が見られます。冷静に考えれば、経済が豊かになるということは、生産性が向上して労働の投入量が少なくなっても生存に影響しないということですから、豊かな社会ほど多産である必要性は低いわけです。加えて豊かな社会ほど医療の充実で少死社会となりますから、多産によるリスク回避の必要性も下がります。

また別の側面として、豊かな社会ほど労働の対価である賃金が上昇しますから、労働の継続に支障する出産・育児に対する逆インセンティブが働きます。人件費の上昇は労働者間の競争圧力を高めますから、出産・育児によるキャリアの中断は、競争上比較劣位となるわけです。また生まれてくる子供を労働者予備軍とみれば、親としてわが子に競争上比較優位を与えたいわけですから、教育課程に競争が入り込み、子供1人当たりの教育費は上昇圧力がかかることとなります。このことも出産をためらう重大な理由となります。つまりは少子化自体は豊かな社会では避けられない傾向ということになります。

一方の年金ですが、多額の積立金を積んでそれを管理するのが社会保険庁の役割のはずなんですが、年金が被保険者が自ら積み立てたお金を受給年齢になって取り崩すだけの仕組みであれば、少子化の影響は皆無であるはずです。つまり少子化が年金制度に影響を及ぼすと言うこと自体が、実は年金制度の不透明さをあらわしているということを指摘しておきます。何と言おうが現役世代が高齢者世代を支える世代間扶助の仕組みである賦課方式が公的年季制度の実態であることを年金官僚自身が認めているということです。

しからばなぜに積立金が存在するかが謎となります。実は積立金があるからそれを管理するセクション、すなわち社会保険庁が必要になるという、逆転した制度にこそ問題の本質があるという風に考えることができます。そもそも積立方式と賦課方式の違いを厳密に考えますと、年金制度を始めるときのことを考えると謎が解けます。

年金制度がスタートしたときに、積立方式であれば加入者は現役世代だけですから、積立金を積む一方で、受給する人はいないことになります。この場合その時点での高齢者は過去に積立をしていないことを理由に無視されるわけですが、年金制度が高齢化で働けなくなった労働者の高齢のリスクを回避する保険であるとするならば、年金制度がスタートしてしばらくは、制度が意味を持たないことになります。お金は積み立てられて増えているのに、現に困っている高齢者を救済できないという不自然な現実に直面するわけです。

一方賦課方式であれば、スタート時点で過去に積立をしていないその時点での高齢者は、受給だけのもらい得になりますが、これは第一世代だけのアドバンスであって、ほどなく積立をした世代のリタイアが始まりますので、以後は制度が続く限り、その時点での現役世代がその時点での高齢者世代を支える単純な繰り返しになります。もちろん世代別の人口変動の影響は受けますが、経済の高度化と技術革新が続く限り、将来の生産性は現在より高くなるわけですから、必要な経済的産出を維持すること自体は難しいことではありません。

日本の公的年金制度は、当初は積立方式を意図したと思われますが、原則をはっきりさせないままに、積み上がる積立金を取り崩し、また財政投融資や株価PKOなど不透明な運用を続けたこと、さらに金利変動を考慮せずに4%の割引率を前提に納付と給付のバランスを取る考え方を続けた結果、長期にわたる低金利時代に資産を劣化させてしまったことに問題があるのです。同じ時期に民間生保が予定利率の逆ザヤで苦しんだことに対して、公的年金は危機を叫んで納付を切上げ給付を抑制することに終始しました。その結果護られたのは、社会保険庁が管理する積立金だけです。つまりこれまでの一連の年金改革とやらは、社会保険庁の権益保護以外のいかなる意味もなかったわけです。

現実的には、現行の積立金は現行の給付水準を維持するために取り崩し、完全賦課方式へ移行することで、制度としての持続可能性がひらけてきます。しかしそれをすると社会保険庁が仕事を失うわけで、何かにつけて危機を煽って改悪を続けているわけです。そういった意味では今回の社会保険庁の不祥事はなかなか意味深です。

元々年金積立金の権益に群がっていただけの存在だった社会保険庁ですから、ビジネスマインドはいたってぬるく、とにかく働かない^_^;。年金相談窓口や取立ては臨時職員(アルバイト)に丸投げしているんですから、そんなところに民間出身のイケイケの生保マンをトップに迎えたんですから、働けと号令をかければインチキに走るのは必然です。そもそも政治家の未納問題にゆれたことで、世論のご機嫌取りに起用された民間出身トップだったわけですから、ホントに出来の悪いコントのような展開になってしまいました。かくして国会は空転し、事態を収拾するためには、少子化進行なんぞのショック療法が有効と悪巧みを巡らしたとかしないとか。

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Comments

こんばんは。
>少子化対策は必要ない

おっしゃる通りで、それよりも現時点で必要なのは「産婦人科医不足問題」への対応の方だと思うのですが。産科医不在地域(陣痛始まってから車で60分以上掛かったら生まれてる?)や僻地・離島での出産・分娩をどのように行っていくのかの指針・対策を政府・厚労省には早く出してもらいたいものですし、このまま手をこまねいて何もしなかったらこの国の医療制度はどのようになっていくのか。
「病気ではない」出産ということに対していかに国として臨むべきか、国家資格(医師免許)を持つ者に対して一定の制約をかけることは可能なのか、産科医が常に持つ医療訴訟に対するリスク軽減は?など方向性を一度示してみて欲しいですね。

年金問題は難しい問題なのですが、打開策としましては、大増税により国の借金をまず半減させ、国民一人当たりの所得(GDPやGNPも)を飛躍的にUPさせ世界№1にするための生産性向上を同時に計る…って無理というか無茶ですよね(-_-;)

Posted by: SAC | Monday, June 05, 2006 at 01:53 AM

コメントありがとうございます。おっしゃるように、少子化対策は不要であっても、出産・育児という国民の権利は保証されるべきですね。その部分のお寒い現状は、産科医の問題もさることながら、保育園の待機児童問題も一向に改善しないなど、まったくお寒い現状です。

年金についてですが、シンプルに考えて、将来の年金給付を政府債務と考えれば、それを管理するのに、破産も解散もない国が保険者として管掌する公的年金に限っていえば、積立金は必須ではないんです。必要なのは債務の適切な管理だけなんです。ま、これも国債や財投債の管理の現実を見ると、今の政府に任せられるかどうかは心許ないですが、意味もなく積立金を管理させて目的外に使われるよりはマシです。

少子化とは別に高齢化は待ったなしですが、これとて年金よりも、確実に需要が増えるのに現行医療制度のもとでの必要かつ十分な医療の供給が期待できるかどうか、こちらの方が解決困難な問題になる可能性が高いと思います。ホント長生きもイノチガケです^_^;。

Posted by: 走ルンです | Monday, June 05, 2006 at 06:32 PM

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