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Sunday, June 04, 2006

阪急阪神経営統合で一件落着とならない今後

村上ファンドへの地検特捜部の捜査という意外な展開で、事態は大きく動きそうです。

(6/2)村上代表を聴取へ・東京地検、インサイダーの疑い
(6/3)村上ファンド立件へ、ライブドア情報を事前に入手か
プロの投資家であり、通産官僚時代にM&A法制の整備に関わった村上氏が違法行為というのは考えにくいんですが、ライブドア事件捜査の押収資料から何かが出てきたと考えられます。教訓、投資家は友人を選ぶべし^_^;。

というわけで、正式発表はまだですが、こんなニュースが流れております。

(6/4)阪急と阪神10月統合へ、TOB成立確実に
おそらく週明け早々に正式発表となるでしょうが、村上ファンドへ司直の手が伸びたことで、物言う株主としての活動は無理な状況となったとみることができます。結果的に以前の記事で指摘した展開に落ち着くことになりそうですが、いくばくか可能性のあった村上ファンドがTOBに応じないまま阪急阪神の経営統合が行われ、株式交換によって村上ファンドが統合新会社株式の10%超の大株主に残る可能性は消えたと考えられます。本当はそうなって物言う株主として睨みをきかせてほしかった気がします。というのも、盛んに言われる阪急と阪神の経営統合のシナジー効果とやらの正体が見えないからですが。

人口減少の影響で将来展望が見えにくい鉄道事業であり、統合による規模の経済を追求すること自体には、一見合理性があるように見えます。しかし現在言われているターミナル相互間の乗車券・定期券の相互利用は既に行われているわけですし、ストアードフェアカードのスルッとKANSAIやその発展系のPiTaPaで相互利用が可能ですし、資材の調達でもスルッとKANSAI協議会による共同調達など、資本関係を結ばなくてもできる協業化は既に始まっております。それをあえて資本関係を結ぶ意味というのは、あえて言えば大規模な資産リストラということになるでしょうか。資産のファンドへの売却とリースバックという、阪急HDが有利子負債圧縮に用いた手法を両社統合後にもっと大規模に行うということが考えられます。ということは、現実の両社の財務状況に当てはめると阪神の保有資産の含み益を阪急の有利子負債圧縮に使うということにほかなりませんから、どうにもバランスが悪いと言わざるを得ません。ま、その含みで阪急HDによる阪神電気鉄道のTOB価格930円/1株であり阪神株の株式交換比率1:1.4ということなのかもしれませんが。

大手私鉄にとって今がターニングポイントであることは間違いないようですが、決算の記事でも書きましたが、せっかく好景気で業績を回復している大手私鉄各社から、将来展望が聞こえず、むしろ買収防衛策に関心が集まっている風潮を危惧します。確かに現在投資ファンドの関心が大手私鉄に向かっている傾向はあります。元々安定株主対策として株主優遇策による個人株主の掘り起こしを熱心に行ってきた結果、高めの価格でTOBに応じるのではないかと見られているということですね。

それに対して経営陣は例えば含み益に依存したぬるい姿勢できてしまった感はぬぐえません。元々過去に取得したために簿価が格安なままの不動産を多数保有しているといわれる私鉄各社ですが、昨今の再開発ブームによる地価反転上昇の恩恵もあって、含み益を抱えた状態ですが、バブルの記憶も生々しい今、含み益を放置することで地価が再下落したときのリスクにさらされるという発想が欠如しているとしか思えません。買収防衛策に腐心する前にどうにかすべき問題です。

あと人口減少問題ですが、既に過疎化と高齢化が同時進行していて、あとは居住放棄するかどうかというところまで追い詰められた地方と違って、今でも部分的には人口増すら見られる大都市圏に立地する大手私鉄の危機感は薄い気がして仕方ありません。団塊世代のリタイアが始まる2007年以後、急速に高齢化が進むのはむしろ大都市圏であり、高齢化=国民の平均余命の短縮ですから、近未来の多死社会が含意されていることを考えていないとしか思えません。つまり今、地方で起きている現実がかなり急速度で大都市圏で実現するということです。そのときに営業エリアを移動できない鉄道事業者がどのように生き残るのか、需要面のみならず雇用面でも厳しい売り手市場に直面することを考えて、今のうちに省力化投資を計画的に進め、装置産業化していくことを考える必要があります。

ま、ただ大手私鉄にとって気の毒なのは、例えば先日JR東日本と東急との相互直通計画を発表した相鉄のように、実態はともかく地域独占体として地方行政府の干渉にさらされるリスクを抱えている鉄道事業者の弱点を認識する必要があります。金を失う道と書いてテツドウと読むとは、昔から言われておりますが、だからこそ関連事業でより多くの満足を生み出し、含み益に安住するような姿勢を払拭してほしいと切に願います。

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Comments

ぬるい経営をしている大手私鉄といえば、大阪南部の…

関係者の声から漏れてくるのは、関西の私鉄はどれも将来の経営にめどが立たないというものです。某私鉄は省力化投資の原資の確保が出来なくて、行政側に泣きついている。行政も巨額過ぎて、財源の確保が出来ないという惨状です。
阪急の阪神株の取得もどうやって原資を確保しようとしているのか、私には分かりません。

スルッとKANSAIのサーバーは当初阪急が持っており、JR西のJスルーとスルッとKANSAIが磁気カードでは共通利用できなかったのが、乗客データーがJR西から阪急側へ垂れ流し状態になるからでした。今のICカードでは、照会情報を見る限り、精算情報のみの受け渡しで、利用情報には受け渡していないようです。逆に言えば、阪急は関西の各私鉄の利用実態を正確に握っていると考えています。

余談でしたが、今後の設備投資では阪神の近鉄なんば乗り入れや阪急神戸線の神戸市地下鉄へなど直通サービスの拡充という方向性ですし、山陽電車の苦戦が神戸高速という会社の存在ですから、JR西に対抗するには経営統合しかないと思っています。

今回の経営統合はこれが第一弾であると考えています。スルッとKANSAI同士での共同資材購入が行われていますが、コレよりも遙かに進んだこと、都市銀行と同じことが関西の私鉄で起きても何も驚きません。
資産と雇用問題さえ何とかなれば、小さな政府という政策目標から出てくる公営交通の民営化を巻き込んだ再編劇が数年のうちに起きてくると思っています。

Posted by: あんぱん | Monday, June 05, 2006 at 10:48 AM

うーん、どうなんでしょう。神戸高速鉄道については大株主の神戸市の態度で変わってきますが、北神線の線路保有を神戸高速鉄道が受け持つなど、どちらかといえば資産管理会社の性格を強めている状況から考えて、線路保有に特化した形でリストラされる可能性が高いと考えられます。そうなると通常の第三週事業者と変わらないわけで、第二種事業者としての乗り入れ各社の賃率で運賃通算するようルール変更も考えられます。

という具合に、経営統合だけが出口ではないと考えます。もちろん経営統合も選択肢の一つではありますが。阪急と阪神の経営統合の場合でいえば、記事にも書いたとおり、阪神の資産含み益を益出しすれば、とりあえずの買収費用ぐらいはひねり出せるという読みでしょうし、そのことに対する阪神株主への補償の意味を織り込んだ上で、阪急株主から高値買いを指摘されない水準のTOB価格と株式交換比率ということなんでしょう。つまり阪急サイドも価格交渉の余地はなかったと考えられます。

その意味では村上ファンドがTOBに応じず、統合後の新会社の大株主として残っていれば、面白い展開があり得た気がします。大見得を切った以上、統合会社は統合のシナジー効果を見せる必要があるわけですから。

また今回の証券取引法の厳格運用は、かなり異例のもので、いわばオフサイドトラップにかかったようなもんですから、阪急と村上ファンドの交渉決裂という形で、上記のシナリオが実現していた可能性は少ないながらあります。

というわけで、今回の一件が果たして大手私鉄の経営に一石を投じることになるのかどうかは注目されますが、買収防衛策に関心があつまる現状では、残念ながら期待が持てないといわざるを得ないのです。

Posted by: 走ルンです | Monday, June 05, 2006 at 06:21 PM

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Tracked on Sunday, June 04, 2006 at 09:51 PM

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