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August 2006

Tuesday, August 22, 2006

JR名松線ディーゼル車無人走行の深層

うーん、何ともお粗末な事故が起きたものです。超辛口で参ります-_-;。

無人車両、8・5キロ“暴走”
津のJR名松線
名松線といえばJR東海で唯一の特定地方交通線引き受け路線で、国鉄末期の台風被害で廃止が検討されたものの、並行道路が未整備という理由で復旧し生き残った路線です。そんな路線ですから、線区別収支はJR東海路線中最悪であることは言を待ちません。

ただ、東海道新幹線を擁し、在来線もおおむね収支均衡ラインに近い優良路線の多いJR東海にあって、40km余のローカル線が垂れ流す赤字はものの数には入らないようで、JR発足後19年間、存廃が話題になることはありませんでした。むしろ冷房付の新車に置き換えられるなど、輸送実態からすれば破格のサービスがされていると言ってよい状況です。路線はほぼ雲出川沿いを走り、松阪から伊勢川口までは近鉄山田線-大阪線とほぼ並行していて、一志と近鉄線川合高岡は乗換駅として認知されております。そういう路線ですから、主な利用客は私鉄より割引率の高い通学定期利用者が主体となるわけで、収支が悪いのも無理もないところです。

この辺は国鉄から切り離された多くの三セク鉄道が存廃の危機に直面している現状からすると、何とも不公平感を禁じえないところです。台風で被災した高千穂鉄道が、原状回復で26億円、災害対策込みのハイグレード化で40億円の負担ができなくて復旧のめどが立たないのと比べると、何とも恵まれた話ではあります。ま、それはそれで良いんですが。

問題は乗務員のモチベーションが維持できるのかどうかです。記事によれば、主に紀勢線、名松線に乗務する運転暦2年4ヶ月の乗務員ということで、JR東海の中ではローカルな区間を担当していたのですが、JR東海では他社が採用している鉄道部や鉄道事業部といった特定線区の独立組織形態にはなっていないようです。JR各社でも最も株価の高い優良企業ですが、JRのような大組織では、現場のモチベーションを高める工夫は重要です。

JR東日本では現場への権限委譲が進んでいて、自律分散的な組織形態へ移行しており、例えば尼崎事故で表面化した悪名高き日勤教育でも、JR東日本では、規定変更や装備変更その他に伴う運転取り扱いの周知徹底のためにベテランの指導乗務員が代表で参加するなど、安全意識の共有に重点が置かれているのに対し、JR西日本ではイジメに近い精神注入が行われていたわけですね。JR東海も西日本と似たり寄ったりらしいんで、心配なところです。

該当する乗務員に気の緩みがあった可能性は高く、そのことは責めを負うべきことではありますが、それ以前に現場の雰囲気がどうだったのかが気になります。ワンマン列車の客扱いは結構大変な作業です。特に混雑列車ではかなりのストレスとなりますし、実際に客扱い時間も長くなってダイヤ維持に苦労する場面もあるわけで、この辺は実態を見ないとわかりませんが、運行経費を切り詰めるために編成減車や減便をわりとドライにやるJR東海だけに、一抹の不安を禁じえないんですね。

この辺は以前の記事でも指摘しましたが、企業経営上は正義であっても、サービスの切り下げや現場の過重負担で採算性を確保しようとすれば、次第にパフォーマンスが落ちて長期低落傾向に陥る心配があります。発表された10月改正で、ようやく名古屋地区の快速6連化その他の輸送改善が実現するようですが、在籍車両減車の中で名古屋地区へ車両が重点配分されるとすれば、中央西線中津川以北や飯田線辰野口などのローカル区間での減便は避けられないところで、結果として利便性が低下して乗客が逸走し、減便が繰り返される縮小均衡に陥る可能性大といえます。人口減少下で過疎化が限界的に進捗する状況下では、サービスの切り下げには慎重であるべきです。

あと最後に苦言ですが、このような事故を引き起こしながら、オフィシャルサイトで謝罪文ひとつ掲出しないというのはいかがなものでしょう。首都圏で乗客に低姿勢なJR東日本社員を目の当たりにしていると、こういった感性の鈍さが信じられないんですがね。

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Thursday, August 17, 2006

国交省LRT整備支援に乗り出す

お盆休みの時期なのに、落雷、停電、靖国、拿捕と、日替わりで騒がしいニュースが流れ、自然の猛威、大都市の弱点、権力者とメディアの狎れ合い、隣国との不適切な関係など、暑苦しさを増すばかりです^_^;。んな中でこんなニュースが流れました。

新型路面電車、10都市に・国交省
よく読めば、すぐにどうこうではなく、2016年までに10都市程度でLRT整備を行う方針のもと、2007年度にとりあえずシステム開発費3億円を概算要求し、自治体や住民による「地域交通総合戦略」を定めることを条件に、具体的には2008年度以降支援を行うというもので、直ちにLRT整備に弾みがつくというものではないのですが、とりあえずの第1歩ということはできます。背景には富山港線を富山ライトレールへ移行させた事業で成果が見られる点が追い風となっているようです。

当ブログでも過去に取り上げましたが、LRT整備で政府与党が地方債発行を認めるということで、財政再建の中で公共事業費縮小を補おうという意図ミレミレでしたが、国交省が事業化に乗り出したことで、いくらかは実現可能性が高まったことは間違いありません。ただしいろいろ注釈つきではありますが。

記事中にある「地方総合交通戦略」ですが、内容については2007年度初めにも市町村に示し、国交省が選定したものについて重点支援をするというもので、透明なルールで運用されるかどうか、現時点では詳細はわかりません。整備新幹線のような尻抜けがあると、特にLRT整備に限定せず、モノレールや新交通システムも想定していることから、整備費用が高いモノレール等へのバイアスが作用して、いつしかフル規格オンパレードとなった整備新幹線のバラマキのようになりかねないので、注意が必要です。

ただ、住民参加を想定しているなど、いわゆる「まちづくり」の視点が盛り込まれているなど、欧米では当たり前の住民自治の思想が反映されている点は注目されます。昨今の地方財政の逼迫ぶりを見れば、公共交通整備のための増税などの議論は避けて通れないところですが、行政の独断専行に陥らずにことを進めるには、住民参加は欠かせませんし、住民サイドも無責任な言いっ放しに終わらずに、まちづくりに参加する姿勢が問われることとなります。ひとことでいえば費用対効果比が問われることとなるわけです。

というわけで、果たして実効的な制度となるかどうか、現時点では不明ですが、注目していきたい動きです。


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Sunday, August 13, 2006

神奈川東部方面線で横浜市のフライング

相鉄とJR東日本の相互直通構想が横浜市の横槍で、神奈川東部方面線の構想と合体したのは既報のとおりですが、神奈川県議会の6月定例会の代表質問で、興味深いやりとりがありました。

http://www.pref.kanagawa.jp/gikai/pg/107/d_q.htm
民主党平本さとし議員の質問で取りあげられておりますが、事業費の自治体負担分について自治体間で協議中にかかわらず、横浜市は本年度負担分6億4千万円の2/3相当の額を予算計上することで、フライングしております。

県側は一応理解は示すものの、困惑気味ですね。事業そのものは横浜市域内で完結しますが、大和市や藤沢市なども受益がありますので、県を含めて負担割合を決めなければならないのですが、協議中に決め撃ちで予算措置をするというのは、行政手続き上は強引なやり方と言わざるを得ません。そうまでして新横浜に新線を通したいのはわかりますがね。

新横浜地区のオフィスビルの空室率は確かに高いですし、ラーメン博物館のようなテーマパーク型アミューズメントが成り立つのも、賃料の安さの反映でもあるわけです。また商業施設に関しては、ほとんど何もない状況ですが、開業時点から40年以上新幹線駅があって、なおかつのぞみ停車駅であるにもかかわらずですから、結構お寒い現状といえます。MM線の開業でブームが起きたみなとみらい地区とは大違いです。横浜市の現実として見ておく必要があります。

4日の総務省の発表で人口減が住民台帳上でも確認されましたが、その中で9都道府県では人口増、神奈川県は増加して、やはり増加した大阪府を抜いて人口2位となり、市町村では横浜市がトップという具合に、人口減少の中で勝ち組地域ではあるんですが、いうまでもなく東京のサテライト(衛星都市)としての発展であることは押さえておく必要があります。ちなみに南びわこ駅問題で揺れる滋賀県も人口増となっております。

そういった点を踏まえてみると、自前の市営地下鉄を建設、運営し、4本の環状道路を整備するなど、横浜市の開発スタンスは独立都市を目指すフルセット型の特徴があります。実はそれが実情にあっていないということは言えるのではないかと思います。地下鉄にしても、例えば神戸市が神戸高速鉄道によって既存の鉄道事業者との連携で路線網を強化したのに対し、第三軌条集電の独自規格で1,3号線(ブルーライン)を整備したばかりか、横浜環状鉄道(4号線=グリーンライン)は規格の異なる小断面リニア地下鉄として建設するなど、自前主義で高コスト体質になってしまっている点も気になります。ひとことで言えば戦略性が欠如しているということです。

みなとみらいのブームは、渋谷から直通で30分程度という時間距離がミソです。日産の本社移転も、ビジネスの足場として銀座との比較ですから、地価が安く、湾岸道経由で羽田、成田の両空港へのアクセスにも有利で、誘致企業優遇策を利用できるみなとみらい地区の選択には合理性があります。のぞみが止まるからといって新横浜は選択されないわけです。

人口減少社会への移行によって、人口動態は従来の常識では測れない状況になりつつありますが、滋賀県の場合もそうですが、地域開発には戦略性が問われる時代になってきたといえます。本当に必要な事業をきちんと見極めるとともに、コストパフォーマンスを高めることが問われるわけです。事業者の言い値で事業費を決定することも要注意というわけですね。

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Wednesday, August 02, 2006

路線価反転で負の遺産解消?

1日、相続税、贈与税の基準となる路線価が国税庁から発表されました。今回は都市中心部など多くの場所で反転上昇が見られ、バブル崩壊後の負の遺産解消かと思わせるものですが、よく見ればまだら模様は相変わらずです。

路線価、全国平均14年ぶり上昇・3大都市圏もプラス(2006年)
確かに今回は商業地のみならず、住宅地においても上昇が見られるなど、従来とはやや趣きを異にする部分はありますが、やはり大都市圏での上昇が目立ち、地方都市では県庁所在地クラスの都市の中心部などで上昇は見られたものの、全体としては下げ基調は変わらずということになります。下げ幅が縮小したのは、あくまでも平均値ゆえの数字上のものです。

過去にも何度の言及しておりますが、いわゆる再開発ブームや特定エリアへの開発リソースの集中は、そのエリアの地価を押し上げる一方で他の地域の地価を押し下げるものでもあるわけで、元々市街地の基準価格である路線価では、上昇傾向に上ぶれが生じることは注意が必要です。例えばつくばエクスプレス開業で沿線と沿線外の二極化が鮮明な茨城県が典型です。

加えて不動産投資信託(REIT)の影響も見落とせません。昨年既に東京圏ではこんなだったんですが。

REITマネー急流入――路線価、東京で上昇
1年を経てこの傾向が地方へと波及したという見方は可能ですが、気になる動きもまた多いのです。というのは、REITの物件の組み換えが頻繁に起きていることにより、REIT同士の取引実績が積み重ねられており、高値売買が結構見られる点で、実需を反映した地価といえるのかどうか微妙です。

同時にREIT自体の利回りも見直される傾向にあるんですが、元々物件の賃貸収入を配当するというREITの仕組みが、実需を反映した確かなものだから(地価上昇は)バブルではないという説明がされていたはずですが、利回りの見直しは、地価の根拠となる収益還元価格をあいまいなものにします。わかりやすい例でいえば、月額10万円年額120万円の配当がある物件の価格は、利回り4%として3,000万円ということになりますが、利回りを3%に下げれば、それだけで4,000万円と3割以上の評価アップになります。

つまるところREITの物件の組み換えと利回りの見直しは、かつてのバブル期のデベロッパーによる土地転がしとあまり違わない危うさがあるということになります。それでも破綻しないのは、長期に亘るゼロ金利と量的緩和のおかげで、現金が有り余っているいわゆるカネ余り現象に負うところ大ということです。市場ではゼロ金利解除後の利上げのタイミングに関心が集まっていますが、確かに利上げのタイミング如何では、投資バブル崩壊の危険性は皆無ではなさそうです。となると、やっぱ福井さんじゃまともな判断ができるかどうか不安です。

おまけですが、上昇率トップは名古屋市の名駅通りだそうで、建設中の高層ビルにトヨタ自動車本社が入居予定ですが、特定企業に依存した地域経済の活況には危うさを感じます。でもさすがトヨタというべきか、ステアリングロッド折損という自動車屋としては致命的な欠陥を隠蔽しても三菱自工みたいにならないし、アメリカでセクハラ訴訟で賠償金ふんだくられてもフォードを抜いて北米2位を確保するなど、説明がつかない強さがあります。これは危険な兆候だと思うんですがね。

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