都道府県が7/1時点の地価を調査し発表する基準地価が発表されました。
基準地価、3大都市圏16年ぶり上昇・全国平均2.4%下落(2006年)
テクニカルな問題として、基準地価は調査地点の単純平均で算出されるため、全国平均ではなおマイナスなのですが、特に商業地のみならず住宅地も、多くの場所で反転が見られたことから、記事にもあるように、一応地価は反転し資産デフレは解消したという見方がされているようです。
大きな流れとしては、三大都市圏を中心としたオフィス需要が堅調で、空室率が低下していることが、地価を全体的に押し上げているようです。2001年ごろに言われていた2003年問題というのを覚えている方がいらっしゃると思いますが、参考までに記事を見て見ましょう。
「2003年問題」ビル需給に影
丁度ITバブル崩壊の影響もあって、オフィス需要の先行きが心配されたのですが、実際はその後も新規のオフィス供給が続いたにもかかわらず、需要が旺盛でむしろ空室率が下がり、一部では賃料の値上がり傾向すら見られるという状況です。心配は杞憂だったわけです。
理由はさまざま考えられますが、2001年時点と比較して、何よりもブロードバンドの普及が大きな変化です。その結果企業のオフィスに大規模な構造変化が起きており、現在進行中という点が、かかるオフィス需要の旺盛さを生んでいると考えられます。新しいオフィスは新しい通信インフラを備えて登場しますから、企業がオフィスワークを見直すときには、新しいオフィスへ移転して、ついでにインフラの変更に見合った組織の見直しまで含めて対応する傾向にあり、空きオフィスもリフォームされて新たな借り手を迎えるという形で、構造変化の渦中にあることが、オフィス需要を押し上げていると考えられます。
ひと昔前までは、かなりの大企業でも、日本の企業のオフィスは雑然としておりまして、部屋いっぱいにデスクが置かれ、壁面はキャビネットで埋め尽くされ、書類の山の中で、決して良好とは言いがたい環境にありました。特に未決書類はなかなか処理されず、紛失も珍しくないという状況でした。それでも何とか業務がこなせていたのは、昼間は主に外回りに出る営業社員のおかげで、内勤のOLが使えるデスクの広さが確保できていたことに由来します。ですから定例会議で営業社員が出かけない日などは、酸欠で生あくびや舟こぎが当たり前に見られたという状況でした^_^;。
今では考えられないことですが、ブロードバンドの普及で業務連絡はメールで社内決済は電子化となると、こういった伝統的なオフィスの風景は様変わりします。オフィス内にはさまざまな電子機器が置かれ、LANでつながれて電子的に保存されるわけですから、特に未決書類の類いはなくなりますし、また期限が迫って担当者が持ち回りで決済印を集めるといった非効率な仕事の進め方も、過去のものとなりつつあります。つまりはオフィスワークの生産性が上がり、より少ない人数でより多くの仕事ができるようになったわけですから、オフィス賃料の原資となるオフィスワークの付加価値が高まったということができます。この限りにおいては悪いことではありません。
このことの負の側面としては、事務部門のリストラが進み、中高年失業者が増えたということはいえます。またオフィスワークのビジネスプロセスの中に、PCで行う非熟練的なルーティンワークが出現し、派遣労働者で対応可能になると、新卒などの若年正社員の採用も手控えられ、いわゆる新卒無業者を生み出すことにもなります。ただしこれらをひっくるめて、企業の生産性が高まったこと自体は喜ぶべきことには違いありません。
それらを全て認めた上で、なお残る懸念が、現時進行中のオフィスのビジネスプロセスの構造変化が一巡したときのことです。その日は間違いなくやって来るのですが、資金の懐胎期間の長い不動産投資の特性上、その日が来れば余るオフィスが一定量存在するという点は忘れてはならないところです。オフィスの好調はいつの日か反転するわけです。ノンリコースローン(非遡及型融資)で前のめりに資金提供している大手銀行にとっては潜在的なリスクとなります。
また別の悩ましい問題もあります。東京都区内ではオフィスが不足気味で、一部で賃料値上げの気配も見られますが、オフィスの好調は数字上では横浜、立川、さいたま、千葉といった近郊業務地、いわゆるサテライトオフィス地区でも空室率が低下している状況ですが、元々都区内の半分から2/3の賃料水儒のこれらの地域が、都区内のオフィス不足の受け皿になりにくいという点があります。短期的に空室率が下がっても、元々賃料の安さを評価した借り手が多いこれらの地域で、賃料を値上げして空室率が上がらない保証はないんですね。ということは将来収益が不透明ということで、投資資金の流入も限定的となるわけですから、これらの地域でオフィス供給が劇的に増える展望はひらけないわけです。横浜市がみなとみらい地区のマンション建設を制限したり、新横浜に無理やり鉄道新線を通したりしても、都区内の代わりは務まらないのです。
あと住宅地の地価上昇についてですが、近未来の人口減少が確定している状況で、持ち家の取得は必ずしも有利な選択ではないにもかかわらず、上昇していることが不思議です。35年ローンというのは、ほとんど人生を担保にするようなもので、年功序列で生涯賃金が保証され、社畜として働きづめでやっと手にするマイホームですが、今やそれすら保証の限りにあらずという、ありがたい世の中になりました。いや美しい国の実態たるや・・・・・。
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