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Saturday, September 23, 2006

基準地価上昇で見えてきた土地神話

都道府県が7/1時点の地価を調査し発表する基準地価が発表されました。

基準地価、3大都市圏16年ぶり上昇・全国平均2.4%下落(2006年)
テクニカルな問題として、基準地価は調査地点の単純平均で算出されるため、全国平均ではなおマイナスなのですが、特に商業地のみならず住宅地も、多くの場所で反転が見られたことから、記事にもあるように、一応地価は反転し資産デフレは解消したという見方がされているようです。

大きな流れとしては、三大都市圏を中心としたオフィス需要が堅調で、空室率が低下していることが、地価を全体的に押し上げているようです。2001年ごろに言われていた2003年問題というのを覚えている方がいらっしゃると思いますが、参考までに記事を見て見ましょう。

「2003年問題」ビル需給に影
丁度ITバブル崩壊の影響もあって、オフィス需要の先行きが心配されたのですが、実際はその後も新規のオフィス供給が続いたにもかかわらず、需要が旺盛でむしろ空室率が下がり、一部では賃料の値上がり傾向すら見られるという状況です。心配は杞憂だったわけです。

理由はさまざま考えられますが、2001年時点と比較して、何よりもブロードバンドの普及が大きな変化です。その結果企業のオフィスに大規模な構造変化が起きており、現在進行中という点が、かかるオフィス需要の旺盛さを生んでいると考えられます。新しいオフィスは新しい通信インフラを備えて登場しますから、企業がオフィスワークを見直すときには、新しいオフィスへ移転して、ついでにインフラの変更に見合った組織の見直しまで含めて対応する傾向にあり、空きオフィスもリフォームされて新たな借り手を迎えるという形で、構造変化の渦中にあることが、オフィス需要を押し上げていると考えられます。

ひと昔前までは、かなりの大企業でも、日本の企業のオフィスは雑然としておりまして、部屋いっぱいにデスクが置かれ、壁面はキャビネットで埋め尽くされ、書類の山の中で、決して良好とは言いがたい環境にありました。特に未決書類はなかなか処理されず、紛失も珍しくないという状況でした。それでも何とか業務がこなせていたのは、昼間は主に外回りに出る営業社員のおかげで、内勤のOLが使えるデスクの広さが確保できていたことに由来します。ですから定例会議で営業社員が出かけない日などは、酸欠で生あくびや舟こぎが当たり前に見られたという状況でした^_^;。

今では考えられないことですが、ブロードバンドの普及で業務連絡はメールで社内決済は電子化となると、こういった伝統的なオフィスの風景は様変わりします。オフィス内にはさまざまな電子機器が置かれ、LANでつながれて電子的に保存されるわけですから、特に未決書類の類いはなくなりますし、また期限が迫って担当者が持ち回りで決済印を集めるといった非効率な仕事の進め方も、過去のものとなりつつあります。つまりはオフィスワークの生産性が上がり、より少ない人数でより多くの仕事ができるようになったわけですから、オフィス賃料の原資となるオフィスワークの付加価値が高まったということができます。この限りにおいては悪いことではありません。

このことの負の側面としては、事務部門のリストラが進み、中高年失業者が増えたということはいえます。またオフィスワークのビジネスプロセスの中に、PCで行う非熟練的なルーティンワークが出現し、派遣労働者で対応可能になると、新卒などの若年正社員の採用も手控えられ、いわゆる新卒無業者を生み出すことにもなります。ただしこれらをひっくるめて、企業の生産性が高まったこと自体は喜ぶべきことには違いありません。

それらを全て認めた上で、なお残る懸念が、現時進行中のオフィスのビジネスプロセスの構造変化が一巡したときのことです。その日は間違いなくやって来るのですが、資金の懐胎期間の長い不動産投資の特性上、その日が来れば余るオフィスが一定量存在するという点は忘れてはならないところです。オフィスの好調はいつの日か反転するわけです。ノンリコースローン(非遡及型融資)で前のめりに資金提供している大手銀行にとっては潜在的なリスクとなります。

また別の悩ましい問題もあります。東京都区内ではオフィスが不足気味で、一部で賃料値上げの気配も見られますが、オフィスの好調は数字上では横浜、立川、さいたま、千葉といった近郊業務地、いわゆるサテライトオフィス地区でも空室率が低下している状況ですが、元々都区内の半分から2/3の賃料水儒のこれらの地域が、都区内のオフィス不足の受け皿になりにくいという点があります。短期的に空室率が下がっても、元々賃料の安さを評価した借り手が多いこれらの地域で、賃料を値上げして空室率が上がらない保証はないんですね。ということは将来収益が不透明ということで、投資資金の流入も限定的となるわけですから、これらの地域でオフィス供給が劇的に増える展望はひらけないわけです。横浜市がみなとみらい地区のマンション建設を制限したり、新横浜に無理やり鉄道新線を通したりしても、都区内の代わりは務まらないのです。

あと住宅地の地価上昇についてですが、近未来の人口減少が確定している状況で、持ち家の取得は必ずしも有利な選択ではないにもかかわらず、上昇していることが不思議です。35年ローンというのは、ほとんど人生を担保にするようなもので、年功序列で生涯賃金が保証され、社畜として働きづめでやっと手にするマイホームですが、今やそれすら保証の限りにあらずという、ありがたい世の中になりました。いや美しい国の実態たるや・・・・・。

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Comments

もう一つ、耐震偽装問題が発覚し古いオフィスの建て替え需要が出て、改築費が出せずコインパーキングに化けたもの、デベロッパーに売って住居に化けたものがあります。これは2001年には予期できなかったパラメーターです。

IT化にはもう一つの側面が「在宅勤務」これが少子化対策の切り札とも言われています。子供ができたら出社ではなく在宅、大きくなったら託児所付きオフィス、学校に行ったら地域教室となんだか預けてまで子供を作って母ちゃん働くのって感じですが、団塊の引退や労働力人口の減少となるとこれしか方法がないようです。通勤ラッシュも遠い思い出となるかもしれません。

Posted by: SATO | Saturday, September 23, 2006 at 08:25 PM

コメントありがとうございます。

確かに古いオフィスでマンションやパーキングに化けたケースはありますが、狭かったり高さ制限があったり、その他訳ありの場合、収益還元法価格を前提とすれば、十分な資金を集められないで篩い分けされるケースはあり得ます。それもオフィスの構造変化の過程で顕在化したと見ることができます。

本来ならば企業の生産性が高まれば、当面の労働力人口の減少は十分カバーできるはずですが、旺盛なオフィス需要が不動産投資を呼び起こし、富の配分が経済学用語でいうところの地代に配分されてしまう、付加価値の大きな割合が土地所有者及びそれに連なる利害関係者(建設、不動産、金融など)へ配分されてしまう構造が温存されているところに問題があります。

結果的に地代の上昇は国内の企業活動を抑制してしまい、在宅勤務の需要は海外アウトソーシングへと向かい、国内は空洞化してしまう流れとなります。もちろん海外アウトソーシングはコスト面に留まらず、時差の有効活用という側面もありますので、これだけで全てを語れませんが。

というわけで、企業業績は伸びるけれど、国民に十分配分されないから、豊かさの実感がないまま、子どもどころではない生活実感を引きずることになります。美しい(苦笑)。

Posted by: 走ルンです | Sunday, September 24, 2006 at 12:45 AM

こんにちは。

いつも大変お世話になります。

結局これから地価や株価が上昇しても
企業収益がよくなっても雇用は増えないので、
ご教授のように美しい(苦笑)状態になるのですね。

これからもご教授のほどよろしくお願いします。

季節の変わり目なのでお体を大切にしてください。

では、失礼いたします。

Posted by: とまと | Sunday, September 24, 2006 at 05:47 PM

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